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【女の子はいつまでも乙女だよ】
『女性プロ雀士は結婚できない』というジンクスがある。
主に小鍛冶健夜のあまりの強さと、同時に男っ気のなさから生まれたジンクスではあるが、それ以降本当にそうなってしまっているのが困りものだ。
それどころか、強い女性は女性の憧れになり、普通の女性からモテるということもある。
女性が女性にモテるのは雀士に限った話ではないが、この世界では麻雀の強さがモノを言う。
彼女たちが女性にモテ、バレンタインにチョコをもらい、告白されるのもよくある話なのだ。
「あ、あの、これ受け取ってくださいっ!」
―――ああ、これで何人目だろうか、苦笑いを抑えて笑顔でラブレターを受け取る。
プロ雀士になってから愛想笑いばかりが上手くなった気がする。
ふと、高校生インターハイチャンピオンも営業スマイルがうまかったな、と思い返す。
渡してくれた女の子は一目散に逃げ出してしまい、ヒラヒラと手を振ってみる。
その後、受け取ったものは開封せずマネージャーに渡すのだ。
アイドルのように、それに属するものは受け取っても本人が見たり食したりすることはできない。
それこそ、何が入っているのかわからないし、手紙一つとっても中傷の言葉が羅列されている可能性があるからだ。
申し訳ないな、と思ったのも最初だけだ。今は少し疲れた顔で帰路につく。
今日はもう、何も考えたくなかった。
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周りの女性は結婚したり、していなかったりとまちまちだ。
今現在親しい友達であり、ライバルはまだ未婚ではあるが、噂によると男の影が見え隠れするらしい。
ここまでくると、周りからは結婚しないように思われてはいるが、そんなことはない。
女の子はいつまでたっても女の子。恋に恋する乙女なのだ。
年齢的に青春染みた恋が難しいことは理解している。
それでも、憧れてしまうことは罪だろうか。
変なところで現実を見てしまうが故に、それが辛いことなのがわかってしまう。
例えば、現役プロ雀士の同年齢として『宮永照』を超えることは自分には難しいことはわかっている。
下手をすれば後輩として最近躍進してきている『大星淡』にも追い抜かれてしまうかもしれない。
プロ野球と同じで、才能は残酷だ。
全ての人は努力して努力して努力して、その中で才能があるものが芽を出し、その才能があるものの中で才能があるものが傑出する。
それを何度も繰り返して、純度の高い天才こそが『小鍛冶健夜』や『宮永照』に当たるのだ。
宮永照の同世代として、彼女は今スランプに陥っていた。
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3/8
「大丈夫?」
飲み会で、そんなライバルが声をかけてくる。
いつもは自分から笑って声をかけているのだが、今日はそんな気分ですらない。
世界ランカー、日本代表、そして友人である宮永照だ。
こんなところに気がきくところすら苛立つ。
昔はこんなことなんてなかったのに、最近はどうも調子が狂うのだ。
「悩み事があるなら聞く」
今の悩み事なんて話せるわけがない。柄じゃない。
「大丈夫、誰だって悩みはあるもの」
この何も考えてなさそうなぽんこつにも悩みはあるのだろうか。些か疑問である。
でも、他に悩みを相談できそうな相手もいないので、酒に酔った勢いで相談してみる。
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「なるほど、気持ちはわかる」
このポンコツに何がわかるんだ。やっぱり相談しなければ良かった。
「そんなことはない。私だって絶賛片思い中」
片思い……? ということは、照の側によくいる男は照の彼氏ではないのだろうか。
「私なりに頑張っているけれども、恋愛は難しい。
だから、一緒だね」
このポンコツと一緒扱いされるのは些か納得がいかないが、照なりに私を励ましてくれているのだろう。
そう考えるとなんだか胸が熱くなる。むず痒い。
思えば、誰かの相談役になったことは多いけれども、誰かに愚痴を聞いてもらったことはなかった気がする。
「こうなったらとことん飲んでお話ししよう」
そうだ。たまにはハメを外すのも悪くはない。
これだけ言ってのけるということはそこそこ飲めるのだろう。
酔い潰してやるのも悪くはない。
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……
…
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うん。先ほどまでの自分を殴り倒してやりたい。
ビールを数口苦々しく飲んだと思ったらこれだ。弱いにも程がある。
酔ったと思えば爽やかな笑顔で、「京ちゃん京ちゃん」だ。
曰く、とっても優しい。
曰く、とってもすけべ。
曰く、そんなところも好き。
全く、随分とベタ惚れなものだ。
これがインターハイ団体個人3連覇、ルーキーオブザイヤーカらの日本代表宮永照の一面だと誰が知っているだろうか。
これがライバルで、これに歯が立たないのだから笑うしかない。
しかしこうなってしまってはどうしたらいいのだろうか。
照の住所はさすがに知らないし、どこに連絡をしたものか。
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/\'´ /{ | 从{__,. \∨Vソ }イ ト、 ∧{
////\ r--- ´八 !∧  ̄ ,: :.:.: }/ノ/ リ
. ///////\ \}∧ u 八/ 「照さーん。迎えに来ましたよー」
//////////〉 込、 __ ,.: /
///////// / }>、 ` イ |从
,'//////// / _ /--、l ` ̄ :, |--、
.///////// / イ/////\ {////} / 「///|
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そんな中、一人の男性がこちらに来た。
もちろん、見知らぬ男性に友達を預けるわけにはいかないので素性を尋ねてみると、あの『京ちゃん』だと言う。
試しに照の携帯番号や、照の携帯に入っている本人の番号や住所まで聞いてみたが全て正解。
連絡先で妹さんにまで確認を取ったので、おとなしく引き渡すことにした。
「あっ、貴女も送りますよ。こんな夜中に危ないですし」
サクッと照を持ち上げておんぶしたと思ったらそんなことを言ってのけた。
自分がそんなにか弱く見えるのか、と聞いてみる。
「か弱いか弱くないじゃなくて、男の子は女の子を守りたいものなんです」
……そんなナンパなことを言ってのけた。
ナンパか? と聞くと、『ちょっ、違いますよ!』なんて慌てて反論。
そんな距離感がちょっと近くてむず痒かった。
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案内すると言っても駅までで十分なので、お願いすることにした。
照とは付き合ってるのか、なんて聞くと真顔で否定された。
彼は仕事帰りなのか少しシワが多いスーツを脱いで、シャツの上から照を背負う。
簡単に背負えるあたり、やっぱり男の子なんだな、と年を考えずドキッとした。
これなら自分も簡単に背負えるな、なんて茶化すと、『勿論ですが、すぐタクシーを呼びますよ』と答える。
そんなに自分を背負うのは嫌か、と答えると、『男のプライドで女の子を傷物には出来ません。おんぶで落としたら危ないでしょう』と返す。
それに加えて『男のプライドを捨てるくらいで安全を買えるなら安いもんです』と言ってのけた。
顔を赤くすると、ニヤニヤと笑う。どうやらからかわれたらしい。
それでも、この男性との会話がとても楽しかった。
この男性のことが好きになったという、照のことが羨ましかった。
こんなに話していて楽しい男性なんて今までいなかった。
例えばこの男性と恋ができたら、自分は女の子になれるのだろうか。
みんなからは女の子っぽくないだとか、女の子っぽい格好をしろと言われるが、最近はかなり意識している。
部屋の中にはプロの初任給で買った白いワンピースが眠っていたり、誰にも見せたことのないぬいぐるみがある。
最近は人気の少女漫画なんかも読んでいる。……高校時代はラフな格好や少年漫画を読んでいたことは否定しないけれど。
『京ちゃん』は照と一緒に手を振りながら去ってった。
……恋がしたい。
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8/8
……
…
自分はもう手遅れで、恋愛に関しても宮永照に負けてしまっているのか?
そんなことはない!
高校時代の親友は非常に女性的な側面を持っていた。そんな彼女は言ってくれた。
『女の子はいつまでたっても乙女』と。
遅かったとしても、最後まで足掻いてみせる。
それが、俺の戦い方や!
あの時も思った。『より多く、奪う』
宮永照から、男を奪う!
それだけの話なんや!
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〉: :\__ `¨¨´ /:..:.:|/: : :| Ⅵ \: : : 「負けへんで、宮永照!」
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照が狙っているあの男は狙い目やな。
狙っているということはあの男もお相手がいないやろうし、頭ハネ、狙わせてもらうで! カン!
最終更新:2015年12月01日 00:31