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京ちゃん、麻雀で覚醒!



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 京ちゃん、麻雀で覚醒!


 さて、今日は家族麻雀の日だ。

 なんやかんやで、家族でグダグダと麻雀をやるのは楽しい。

 三年間で全く勝てなくて、今なお界さんと二人で負け越しているけれども、楽しい。

 きっと麻雀を楽しんでいるというより、照れる咲やドヤ顔をする照さんを見ているのが楽しいかもな。

 また今日も界さんと焼き鳥かなぁ。なんて思いながら駅に近づく。

 すると、路地裏の方から喧騒の音が聞こえた。

 こういったものに関わるとろくなことにならない。周りの人たちはみんな聞こえない振りをしているのだろうか。

 俺だって家族がいるんだ。何かあったら大変だ。

 でもここで見逃したらきっと後悔する。

 そんな思いで一歩、路地裏に踏み込んだ。

 独特の匂いが鼻腔をくすぐる。あまり好きな匂いではない。

 そこには、白髪の老人が壁を背に座り込んでいた。


 「だ、大丈夫ですか!?」


 思わず近寄るが、手で制される。

 大丈夫、という意味だろうか。だがとても大丈夫には見えない。


 「失礼します。よければ救急車を呼びますけれど」

 「ああ、そろそろ迎えが来るから大丈夫だ」


 今度は返答があった。そういうと老人はタバコに火をつけた。


 「でも、傷がついてます。せめて消毒だけでもしましょう」


 半ば強引に近づいて、鞄から消毒液と絆創膏を取り出す。

 思えば、中学時代から咲がよく転んでしまうから欠かさず持ち歩くのが習慣になっていた。

 今は子供のために持ち歩いているが、まさかこんなところで役に立つとは思わなかった。

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 「ちょっと染みますよ」


 老人は止める気がないのか、俺に身を任せてくれる。

 ポケットのハンカチを取り出し、消毒液を吹きかける。

 ハンカチを見て、毎朝毎朝『もー京ちゃんハンカチは持ったー!?』なんて叫ぶ可愛い嫁の姿を思い出し、破顔する。

 頰についた傷を拭い、手持ちの絆創膏をつける。


 「その、子供用なんで柄はこんなんですが、すみません」


 渋い老人の顔に不釣り合いなカピバラの絆創膏が頰につけられる。

 思わず笑いそうになるが、必死にこらえる。


 「子供がいるのかい」

 「? ええ」

 「それならこんな怪しい爺さんには関わるもんじゃないぜ」

 「仕方ないですよ。見逃したらもっと後悔します」

 「損な性格だな」

 「本当ですよ」


 嫁さんもドジなのを引いちゃいましてね、なんて言うと老人は笑った。

 すると後ろから懐中電灯で照らされ、思わず目を覆う。

 わずかに見えた人影も黒服達の集まりのようで、正直かなり怖かった。


 「長生きしろよ」


 フラッシュで見えなくなったはずの老人がやけに若々しく見えた。

 次の瞬間には、老人はどこにもいなくなっていた。

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 3/11

 ……
 …

 「ハァ、驚いた驚いた」


 結局何事もなさそうだったので、そのまま帰宅することにする。

 電車を待つホームで、先ほど使った絆創膏とハンカチを見る。

 まるで夢のような気分だったが、血の跡のついたハンカチと、開封された絆創膏が現実であったことを伝えてくれる。

 人助けをしただけだ、忘れよう。そんな気持ちで帰りの電車に乗る。

 普段ならば座れるはずもないのだが、今日は運が良く座ることが出来た。

 帰るときに寝れば帰ってから子供達の相手を出来るな、なんて思っていると、次の駅でいかつい老人が乗ってきた。

 結構な歳をとっているようで、電車の中で立ちっぱなしは辛そうだ。

 そういえば、どこかで見覚えがあるな、なんて思っていたら体が勝手に動いていた。


 「あの、俺はそんなに遠くまで乗らないんで、席譲りますよ」


 正直、これも勇気がいる一言だ。

 最近は老人扱いされると怒る人も多く、素直にこういったことが出来ないのだ。

 心の中では『スッゲー疲れてるし見て見ぬ振りしちゃえよ……』と自分に呆れてしまう。

 だが、こんな性分だ。

 仮にそうして家に帰ったら、咲と子供達の前で笑顔で居られる自信はない。

 それを咲に目ざとく見つけられて、『もー、京ちゃんはいつも気にしすぎなんだからー!』と言われる図が浮かぶ。


 「悪いね」

 「いえいえ」


 席を変わると、老人は座る。

 満員というほどではないが他の場所に移動する余裕もないため、座った老人と向き合う形になる。

 ―――スッゲー気まずい!

 そう思っても移動できず、目を逸らすことしかできない。

 しかも周りの目線も自分に集中しているようで、余計に恥ずかしい。

 さらに、電車が何度か止まることもあり、時間も長く感じる。

 ―――俺が降りるか、この人が降りるかしないかな。

 そう考えたのだが、残念ながら降りる駅は同じだったようで、その間ずっと気まずい思いをする羽目になった。

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 4/11

 ……
 …

 「坊主、すまんな」

 「いえいえ」


 結局同じ駅で降りて、お礼を一つもらって別れることになった。

 『うちの孫にもこういう相手がいればな』なんて褒め言葉まで頂いたので、大満足だ。

 さて、今度こそ家に帰るだけ。不思議なイベントが二個もあったんだ。もう大丈夫だろー。


 「よう、坊主。ちょっと道を聞きたいんだが」


 そんな気分で駅から出ると、今までの中で一番の最年長にもなる老人に声をかけられた。

 うわー、こういう日ってあるんだなあ、なんて思いながら話を聞いてみると、この場所で待ち合わせだったつもり友人が、すでに現地に行ってしまったらしい。

 薄情な友人もいたものだ。咲なら『もー京ちゃんったらちゃんと私を見ててよね!』なんて理不尽を投げかけてくるに違いない。


 「ここに行くにはどうしたらいい?」

 「そこだとバスかタクシーですね。ちょっとタクシー呼んできますよ」


 なんて言って、ロータリーを見回すが、なぜかタクシーが一台もない。

 少し電車が止まってタクシーを利用した人が多かったのだろうか。

 この時間ではバスを待つのも辛いだろう。

 ……この人を見捨てるのも、なんかなぁ。

 結局、普段なら絶対にしないような行動を取る羽目になる。

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 5/11

 「悪いな」

 「いえいえ、ちょうど家に向かう途中ですので」

 「こんな知らない爺さんに関わるなんて危ないだろう」

 「まぁ、そんな日もありますよ」


 自分の車に乗せて一緒に向かうことにした。

 普段ならば他人にそこまでするなんてありえないのだが、今日はすでに2つもお節介をしたのだ。

 今更一つ増えても仕方ないだろう、そんな投げやりな気持ちもあった。

 ここまでやったなら気持ちよく帰ろう!

 結局、そんなに距離はなかったので大変だったわけではない。

 ただ、連れて行った先が超有名な高級料理店なので引いた。


 「若い奴にしては感心だ」

 「へへっ」

 「ああ、そうだ。

  何かと周りに呼び寄せるタチのようだが、ほどほどに気をつけろ」

 「?」


 老人が最後に残した言葉はわからなかったが、これで気持ちよく帰れる。

 結局、家に着くのが遅くなってしまい、咲に『遅くなるなら言ってよー心配したよー!』と怒らせてしまった。

 咲よ。メールは送ったんだが見てないだろ……。

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 6/11

 ……
 …

 「ツモ、う、嘘みたいですけれど、国士無双13面待ちです……」
 
 「京ちゃん!?」

 「京ちゃん裏切ったな! 俺の気持ちを裏切ったな!」

 「これで2回連続役満……」


 須賀咲ちゃんです。

 京ちゃんがおかしいよ! 今日の麻雀、2連続で京ちゃんが役満上がってます。

 一回目は地和。二回目はこれ……。

 まずいよまずいよ……お祓いに行った方がいいんじゃないかな……。


 「ぐ、偶然ですよ偶然!」

 「偶然ってレベルじゃないよ!」

 「京ちゃん。私も不安だから、次の局は照魔鏡で見てみる」

 「そうですね……。何か呪われてたら嫌ですし」

 「京ちゃんが裏切った!」

 「おとーさんうっさい!」


 とりあえずお父さんを黙らせ、配牌を行う。親は京ちゃん。

 まぁ、和ちゃんじゃないけど確率的にはないわけじゃないから、一生分の麻雀運を使ったと思えば……。


 「……うげぇ!?」

 「どうしたの!?」

 「……天和。しかもこれ九蓮宝燈じゃん初めて見た」


 速攻で麻雀卓を片付け、京ちゃんを確保しました。

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 7/11

 ・次の日


 「京ちゃん。会社休もうよ……」

 「そんなこと言ってたらキリがないだろ」

 「だって、絶対死んじゃうよ!?」

 「確かに一生分の運を使い切った気がする」

 「ダメダメダメダメ! 絶対に死んじゃダメ!」

 「で、でも仕事が……」

 「もしもし、私は日本プロ雀士の宮永照と言います。

  すみません。妹の旦那の須賀京太郎さんなんですが、体調不良により本日はお休みを頂きたいのですが」

 「照さん何やってるんですか!?」

 「そうだ! お祓い行こう!

  霞さんにお願いすれば大丈夫だよ!」

 「すぐに連絡する」

 「お、大げさだって」

 「じゃあみんなで行くよ! 京ちゃん車出して!」

 「俺が車出すのかよ!」

 「咲、結局事故の可能性が出てくる」

 「照さんがまともなことを言ってる!?」

 「うえぇぇぇん! どうしよー!」

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               _ -‐ァ'/       ´⌒ヽ  、 ヽ、_ 彡 ´
              /⌒ィ'´ /            ',  \  ヽ
                /´ア´ /  / /       !   ',   ヽ
            ({ /  ノ  / /       ! l    \   、   \
             `Y ィ´   / /    i l  '.   、 ヽ.  ',_  `ー- ←何か起こらないように24時間寝ずに監視中
             / /    /イ/i{    j{ j  、      \ ヾ  ̄´
            , ィア,' イ  /`7~ヽ   ハ 八  (ヽ    ト、 }  ー、
           j/ / { { イzx、_エ、  j |~~、 ヽ Y`ヽ }! ソ \}⌒j
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               `ヘハ ト          j       /´j}   ハ ノ
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 ・先日 高級料理店

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       {       f'′     !       i     }
.     γ⌒ヾ  _`,;'           ',
     { { rノヾ''''"       ー- 、     }   .{
      ', 、 {          ミ 、' ̄  ̄彡  ノ |
      从ヽ}         ` ` ーf弍ァ `ヽ ,.' 〉}
.      /''´ー、     ヽ     -‐ノ     {tッ' ′
     /     i     ',            v'
、    ′   |       }      ィ       ',  「珍しいガキに会ってよ」
:::\/     |           /     ー ノ
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   |:::::、                以/
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.   |::::::ノ  i    /    、 .,ノ/
  |''"´  |,   f´ ー-、__   | / 「こっちもいたぜ。っていうかシゲちゃんかわいい絆創膏つけてんな」
  /     \, , , ,   ー-ニ\
'´〈_   |    \/ノノ/ /i i / \、
   \  |     \/,ノ///
    \|       /  ̄´


    //    l l
 //    川     ヽヽ
   //     川
ノノ   ノノノ       ヽヽ
.     ,  ト、ヾ  .,ヘ i
 ノノノ ./} ll.| .} ll ./ リ|  ll
    ,.ノフ .メ./ ./   .| ll /
ll 「´ ー '"∠ へ    _| .ム
 .| . ゙゙̄¨'tァ‐-, ,,, / レ"
!!,' ヽ` ‐--‐ ,;;'' :├-tァ‐,-
/   ` ー ''´   : ト-‐ ´  
     ,. -‐"   : |-‐ ´ ./
    /   '´- ' ト、  / 「ククク……」
ヽ  /  '‐- 、_   ¨´ }./
. ヽ        `¨''→ /
.  ヽ     ヒァ   , '
.   ヽ        , '
    \     /|\
      /\/:::::::| l`ヽ、



 なお、次の日の麻雀ではよわよわダメダメ京ちゃんに戻りました。カン!


最終更新:2015年12月03日 05:20