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あわあわの誕生日を祝う京淡(平行世界)
「ぬわーん! 疲れたよもー!!」
家に帰ってベッドに身を投げる。
今日はもう何も考えたくない。辛いことが多すぎた。
「また負けちゃったよ……」
大学卒業から3年。
麻雀プロとなった大星淡は、未だに芽が出ないでいた。
自分のことを無敵だと思い、麻雀に絶対の自信を持っていたのは高校一年生の頃だ。
準決勝にて初めての挫折。
決勝戦にて宮永咲に敗退し、白糸台の三連覇を逃した戦犯として扱われることになった。
淡本人の成績が悪かったわけではないのだが、やはり最後の一人ともなればメディアの目が向くわけで。
それから個人戦も含めた3年間、淡は一度も宮永咲に勝利することができなかった。
高校三年時の敗退後に心が折れた淡は一時的に麻雀から離れ、プロ入りを辞退。
そこから大学に進学できた理由が麻雀推薦だというのは皮肉な話だ。
しかし、大学も4年間過ごせば就職から逃れることはできない。
心を持ち直した淡は麻雀プロ入りを決意するが、照や咲どころか、他の相手にも遅れをとる始末。
『麻雀プロ』として人生を賭ける者たちとの壁を感じ、潰されかけていた。
「会いたいよ、キョータロー」
大学時代に自分を立ち直らせてくれた恋人の名前を漏らす。
彼がいなければ、こうして再び麻雀と向き合うことすらできなかった。
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2/10
……
…
大学に入ったのはいいが、目的も何もなかった。
普通の女子大生として青春を謳歌するには、挫折したものが大きすぎた。
「ここ、座っていいか?」
「好きにすれば」
相手の顔も見ずに了解を出す。
食堂でグデーンと人目を憚らずに机に突っ伏す。
「おいおい、混むんだから幅とるなよ」
「うっさい。人来たらやめるもん」
「もう来てるっての」
「あわっ、あわわ」
「あっ、すみません。すぐ退けますんで……」
「何さ、金髪が仕切っちゃって!」
「お前も金髪じゃねーか……」
初対面は、いい印象ではなかったと思う。
むしろ、友達がいない私に対して、横に座った人と仲よさそうに話す彼に嫉妬していた気がする。
「って、あれ。大星淡?」
「何さ、私のストーカー?」
「いや、お前有名じゃん。白糸台のエースって」
「……!!」
彼がどんな気持ちでそのセリフを言ったのかはわからない。
だけれども、その一言は私の心を抉った。
「帰る」
「おい、食器戻せよ……」
ガタンと大きな音を立てて逃げるようにその場を去った。
ああ、最悪の気分だ。
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3/10
……
…
淡の通っている大学は非常に大きい。
スポーツなどの部門でも有名で、施設が充実している。
推薦で入った以上、インカレのためにも麻雀部に所属しているが、不良部員だった。
掛け持ちが可能なことも知っていたので、他に何かないかなどとサークルを巡ってみるが、やはり合うものがない。
各サークルの案内として一周してみてもダメだ。
案内はこれで終わり。最後の一つと周ってみたそこで、見覚えのある人がいた。
「須賀ァ、へばってんじゃねーぞ!」
「ハイ! 先輩!」
食堂で隣に居合わせた金髪がそこにいた。
おそらく先輩であろう人に扱かれ、誰よりも懸命にコートを走り回る。
スポーツ系の体質らしく、彼に向かって厳しい叱責が飛んでいる。
それこそ、淡は負けたっていつも誰かにフォローされてきたし、叱責されたことなんてなかった。
だが、彼は罵倒にも等しい厳しい叱責を受けながらも雑用に勤しみ、誰よりも走り回り、体を痛めつけていた。
ルールが全くわからない淡でも。彼が活躍していないことはわかった。
大学自体が優秀な選手が集まる以上、他は見てわかるほどレベルが高い。
その中、息を切らせながら必死にくらいつく彼のレベルが劣っているのは見て取れた。
それでも、どんなに劣っていようが叱責を浴びようが、くらいつく彼を自然と目で追っていた。
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4/10
……
…
「あっ、金髪」
「お前もな。
って大星、前は俺が食器返したんだぞ」
「うん、それはごめん」
「うお? 素直じゃん」
少しして、また食堂で隣に合わせた。
今度は自分から声をかけて、前のことを謝る。
「いや、俺も何か怒らせちゃったみたいでごめん」
「うん、怒った。
でもこれでおしまい」
「ありがとうございます大星様ってね」
「なにそれ。つまんない」
「手厳しい!」
「金髪はスポーツやってんの?」
「何でいきなり」
「汗臭い」
「マジで!?
消臭してるはずなんだけど」
「んで、なにやってるの?」
「ハンドボール。あんまり有名じゃないからわからないかも」
口の中でこっそりハンドボールと呟く。うん、覚えた。
「そういや自己紹介もまだだったね。
俺は須賀京太郎」
「私の名前は知ってるくせに」
「そうだな。よろしく、大星」
そう言って握手する。
男の子とした握手は初めてで、大きな掌に包まれるようだ。
皮が破けてゴツゴツしていて、ボロボロの掌を忘れない。
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5/10
……
…
それから淡は何度も、サークルを抜け出してはハンドボールを見に行った。
ルールがわからないとつまらないからネットで調べて、目立つ金髪を背伸びして探した。
結果的に、まだ一年の彼は雑用や基礎練習をしていることが多かったので、ルールを急いで覚える必要はなかったのかもしれない。
基礎トレーニングばかりしていて、球拾いをしている。
麻雀で言えば山の積み立て方やツモ切りの練習をひたすら繰り返しているものだろうか?
―――やっぱり、わかんない。
ずっとエースとして試合経験を積んできた淡には理解ができない。
楽しそうとは言えないが、黙々と基礎練習を繰り返す彼を理解できない。
たまには部内の練習試合を行っていて、その時には彼が出場することもあった。
だが、同年代に比べて体格や身長に恵まれている彼以上に、この大学には大きくて強い人たちが集まっている。
何度も弾き飛ばされて痛そうに起き上がる。
思わず目を覆ってしまったり、悲鳴をあげそうになったこともある。
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r''´,-=、::`''ー==≧:.:.:.{{::';|:/ ゝ_, r';_; }. ./ 5、_/;}lノ:.:.:.|.:.:.:.:|.// ,Xァ
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自分が彼を応援していることには気づかなかった。
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6/10
……
…
「淡さまー。レディースランチお願いしますっ!」
「キョータローはたくさん食べないとダメでしょ!」
「ぐえー」
食堂で声をかけたり、ハンドボール部で見つかることが多かったので、気付いたら仲良くなっていた。
それはきっと彼のコミュ力のおかげで、彼は誰にでもこうだった。
自分が特別じゃないことがなんとなく悔しい。なんで悔しいと思うのかはわからない。
『おっ、また淡ちゃんが応援に来てるぞ』
『別にキョータローの応援になんか来てないし!』
『名指しで指名だ! おい須賀ァ! 一声かけてやれ!』
『あ、淡?
なんだかわからんがありがとうな!』
『あっ、スポーツドリンク渡しといてくれれば……』
『そこは直接手渡ししようよー。私たちと女子マネやらない?』
『賛成だ! 淡ちゃんが入ってくれれば男子もやる気が出る!』
『男子きもーい。淡ちゃんは須賀の嫁さんだしー?』
『よ、よ、よめさん!? 違うもん!』
『須賀の嫁さん、かァ……なんか複雑だな……』
『高久田ァ! サボってんじゃねーぞ!』
『ゲェ!?』
女子マネージャーの人たちともそこそこ仲良くなれて、お手伝いくらいはするようになった。
自分が第一線で戦うのではなくて、誰かを応援するなんて初めての経験だった。
それから1年、彼の応援を続けた。
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7/10
……
…
「ねぇ、キョータローは怖くないの?」
「何が?」
「だって、レギュラー取れないかもしれないじゃん」
「やってみなきゃわからないっしょ。
確かに、みんなに比べたら一歩劣るけどさ」
「……なんでそんなに物分かりいいのかな」
「挫折ばっかしてるからなー。負け慣れてるのかもね。あはは……」
そう言って寂しそうに笑う。
ああ、辛いんだ。隠そうと笑っているのがわかってしまう。
ずっと見てきたから、彼の表情の変化がわかってしまう。
「わからないよ、わからないよキョータロー」
「何が?」
「だって、勝てないって怖くて、期待されることが怖くて、頑張っても届かないんだもん。
私だって、サキに勝てなかった」
漏らした言葉に後悔する。
つい、言ってしまった。
この1年間、京太郎が麻雀に関することを聞いてくることはなかった。
彼特有の察しの良さだったのか、非常に居心地が良かったのに。
泣き出しそうになるのを堪えて、俯く。
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8/10
「俺は持ってないから」
「?」
「淡だって、3年間ずっと咲に挑み続けたんだろ。
俺だってそうだよ」
「でも、私は諦めちゃったんだよ。
キョータローとは違うもん」
「俺さ、ハンドボールやんの2回目なんだ。
中学生時代に3年間やって挫折して、高校では逃げて麻雀やってさ。
そっちでも挫折して、また出戻りだ。
淡が言うように格好良いものじゃない」
彼が初めて弱音を吐いた気がする。
今まで、そんな弱気な彼を見ることなんてなかった。
「人に説教なんて出来ないよ。
でも、淡が麻雀やりたいなら俺にできることはする」
「……麻雀やっても良いのかな」
「楽しければ良いじゃん。
勝てなくても、さ」
「……ふふふ」
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_人_ ' ` 、 \
Υ'/ / / ト、 丶
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.′ il / | | \ | / `、 リ |
i | _|l__∧ト、八 | メ´ ニニ / } |
| | || `>x、\| 斗チ芋ミ、∨ ,′j
| |l l|斗示芋ミ、 ''h!::::::::} ,′ ,
|l 八 И'h!::::::} 乂___ノ / / 「やるからには一番を狙うんだよ!
|| \| 乂__ノ /i/i/ / /l|
.八 ゝ /i/i/i i / / / / | キョータロー!!」
‘,\ ハ r ア /l/ / /:: |
ト、 込、 _ノ // ,イ::: l|
|l l\ \> .,_ /∨ /l|: 八_
|ヽ. 八l_\ \-─=ー ァ--< / / 八 { \ `ヽ
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9/10
……
…
それから色々とあって、恋人同士になって、同棲してる。
喧嘩もいっぱいしたし、時には『私はサキの代わりなの?』なんて詰め寄ったこともある。
それでも一緒にやってきたし、これからもやっていくんだ。
「淡ー! 誕生日おめでとー!」
「あわっ!」
精一杯の笑顔で彼をお出迎えする。
結局ハンドボールのプロへの道はあきらめて、普通に就職して淡を養ってくれている。
『俺が養うから失敗なんて恐れなくていい。麻雀のプロになれ』なんて言ってくれた。
私の大好きな王子様!
「もー、キョータローおそーい!」
「遅くなってごめん。
ケーキ買ってきたぞー」
「ケーキ!?」
「先にお風呂か晩ご飯食べてからなー」
「そ、それより、わ、私にする!?」
「……そっちはベッドに入ってから」
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人八 ∨ 个ト ,,_ <「∨ :/i i :.
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10/10
「わっ、チョコレートケーキ!」
「今年はこれにしてみた」
「えへへ。
そうだ! キョータロー、口開けて!」
「ん?」
「はい、あーん」
「うむ。
……淡が食べていいんだぞ」
「あーんをしたいの!」
「(あわいい)」
「ほら、今度は私にやるの!」
「はいはい。あーん」
「あーん!
……甘い! 美味しい!」
今でも麻雀では咲が遠い。
でも、それよりも大事なものがここにある。
だから負けてもまた立ち上がれるし、何度だって挑んで見せる!
でもね、キョータロー。
_, -──- .,_
'´ `丶、
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, / \
. / . / ヽ
′ / / `、
. .' / /, // /| | `
i . / 」_ ′/ | | i| . i
. i | j/, /イ`メ、 | 小 || ト.!
j .| ∨/ / |/ ヽ | ァT丁l | |
ノ i| V j 抖竿ミ ノ ノ ,ノイjノ | i
___ ____彡' , i| i| j 八|:x:x: /ィ竿ミ 刈 | } 「(そろそろ須賀淡になりたいな。
 ̄¨ え≠ / 八 i|/l | | :x:x:/ ノ | ′
/ -‐ ' ハ 八 ト、 ヘ.__ ` 厶 イ ノ なーんて……えへへー!)」
/ __,.斗‐=≠衣 ヽ八\ 丶.__ソ . イ(⌒ソ イく
jア¨¨^\ \ \ >-=≦廴_ ア /ノヘ\
斗ァ'′ \ \ ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 | 、\ ヽ 、∨tl `ヽ . ∨ V\ i
{ `| Vi:\ ハ i } | } i } ∨,} }
≧=- | 辻_V\`i} i } | /} iハ} 辻ノ
ノ ¨〕V//リ iノ ////V〔 ¨〕
カン!
最終更新:2015年12月16日 13:26