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キッカケ(平行世界)



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 【キッカケ】(平行世界編2話)


 サークルの案内で見かけてから、あの目立つ金髪を自然と視線を向けてしまう。

 目立つ金髪に、高い長身がいけないんだ!

 私だって156cmあるし、女の子の中では小さい方ではないはずだもん。

 平均身長には微妙に足りないのが悔しい! もうちょっと伸びろ!

 横で見ている女子大生、いわゆるJDは高いヒールの靴なんかでアピールしている。

 机に突っ伏して話を聞かないように努めているが、キンキン響く大声で話されてはたまったもんじゃないよ!

 曰く、『彼氏が身長が気になるからヒール脱げとか言うんだよねー』だそうだ。

 うるさいうるさい。なんでそんなことを大声で漏らす必要があるんだ。

 きっと、女子内での権力闘争のために『彼氏がいるアピール』をしているんだろうね。

 実際に女子の間に入っているわけではないので聞いている限りだけど、こういう奴らには2パターンいる。

 一つは『私彼氏いないし』とアピールするタイプ。本当は彼氏がいても、協調するために隠すタイプ。

 酷い奴だと今の彼氏より良い男を探すために合コンに呼ばれるように隠しているみたいだ。

 一つは『彼氏いるよ』とアピールするタイプ。自慢のためにさらけ出すタイプだ。

 だが、そういうタイプはその女がいない時に悪口を言われてたりする。

 ……もう一つは、私みたいに友達がいないタイプ。

 高校生の頃のトラウマは未だに抜け出せない。

 サークルを見て回ろうと決意できただけでも成長できたと思うべきなんだと、自分に言い聞かせる。

 あの時のことを考えると、やはりあの金髪が思い浮かぶ。

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 2/10

 あの男は、なんであんなに頑張っていたんだろう。

 机に伏していた頭を上げ、教室の中心を見る。

 偶然にも同じ授業を取っていた彼はみんなの中心で笑っていた。

 彼がずっと話しているわけでもなく、たまに相槌をうったり、小話を挟んだり、周りを飽きさせない。

 横で見ていれば、彼が中心にいるのはよくわかる。


 自分と正反対なことが恨めしい。


 今ここで机に顔を突っ伏して、彼を見ている私。

 みんなの輪に入って、誰にでも好かれる彼。

 それなのに、サークルでは逆なんだ。

 私は適当にやっているだけでも負けなしの強さ。

 彼は真摯にやってもなんども叱責を浴びる。

 そのことに少し優越感が湧いて、優越感が湧いたことに自己嫌悪。


 それから、彼をずっと見ていたから中心にいるように見えていたということに気づくまで、5分ほどの時間を要した。

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 3/10

 ……
 …


 「(またやってるよ)」


 授業終わりに体育館を覗いてみれば、前と同じようにコートを走り回る彼がいた。

 体格でもセンスでも劣っているのが見てわかる。

 生き生きと動く他の人たちに対して、明らかに動きが硬い。

 競技が違っても、ああいう人は見たことがある。

 『典型的な弱い奴』だ。

 麻雀でも迷う時間が長いだとか、ツモ切りの動作に自信がない奴。

 私の中での強い人は迷いを持たないし、自分の読みと心中するような人たち。

 私にとっての、宮永照と……宮永咲……。


 サキ……っ!!


 私の高校三年間を潰したサキのことを思い出して胸が痛くなる。

 そうだ、私だって人のことをバカになんてできないんだ……。

 苦しいよ、辛いよ、助けてよ……。

 泣きそうになるのを堪えながら頭を上げる。

 そこには変わらずにハンドボールに打ち込み、叱責されている彼がいる。

 特にすごいことなんて何でもないし、他にも同じように叱責されている人なんていっぱいいるはず。

 それでもなぜか、彼から目を離せなかった。

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 4/10

 ……
 …


 『よろしく、大星』


 それから食堂でお互いの自己紹介。

 笑った彼の顔を思い出す。

 硬い手のひら、皮が破けてボロボロ。

 仲直りした後でもすぐに仲良くなるなんてありえない!

 私自身の性格も相まって、仲良くなれるなんて思っていなかったんだ。

 気づけば講義と講義の間で机に頭を突っ伏している自分。

 アイツと自己紹介したからって何も変わらない。

 私はここで時間を潰す。アイツはみんなに囲まれて仲良くしている。

 そう、何も変わらないんだ。

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          / ,  从 Vり ∨イ ,イ斧ミ、}/ /⌒ } | ' 「よぉ、大星も同じ講義だったんだな!」
           / イ从 l ム        Vり ム'  ノ/}'
         ´    \∧  '        ,r ' /
               、  v   ァ    / 从/
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            , </////// ∨__∨//////////////////>、


 変わらない、はずだった。

 最初は気のせいだと思ってそのまま突っ伏していた。


 「おーい、大星。寝てるのかー?」


 気のせいだ。私に話しかける人なんていないんだもん……。

 高校三年の頃もそうだった。私に話しかけているふりをして、反応を伺うようないじめだ。


 「大星、教授きたぞ!」

 「うそっ!?」

 「うそ」

 「こ、このっ」

 「だって大星反応しねーんだもん」

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 5/10

 「なんで話しかけたのさ」

 「え、知り合いがいたら話すだろ」

 「……」


 ふーん、そんな風に話しかけられるタイプなんだ。

 私だって、私だって照たちの前ではそうだったんだよ!

 無性に悔しくなって、でも当たり散らすほどの元気はなかった。


 「ふーん。かわいい淡ちゃんと仲良くなりたいんだ」

 「うるせー。俺だってイケメンだし」

 「ププッ、自分でイケメンとか言っちゃうとか!」

 「大星だって自分でかわいいって言っただろぉ!?」

 「ふふーん、淡ちゃんは許されるのだ!」

 「まぁ、確かに大星は平均以上あるよね。

  仲良くなりたいってのはあるよ」

 「えっ、ガチナンパ?

  それは引く」

 「違うって」


 戯れるように話しかけるも、私の話し方に合わせてくれているのかな?

 まるで旧知の友のような感覚を覚えて不思議に思う。

 私ってそんなに仲良くない相手にこんな話し方をしてたっけ?

 ……ああ、そうか。

 きっと、テルーたちと喋っていた感覚が恋しかったんだ。

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 6/10

 「ふーん。私と仲良くなりたいんだ」

 「おお。知り合い多くていいじゃん」

 「金髪はもう知り合い多そうだけど?」

 「そうかな?」

 「そうだよ」

 「ってかお前、その金髪って呼び方やめろよ。

  須賀でも京太郎でもいいからさ」

 「何か金髪の言う通りにするのヤダ」

 「お、お前な」

 「金髪だって『お前』ってやめてよ」

 「大星って呼んでるじゃん。

  淡でもいいのか?」

 「金髪は他の人をなんて呼んでるの?」

 「俺は名前で呼ぶことが多いかなぁ」

 「じゃあ、私も名前でいい。名字は呼ばれ慣れてないし」

 「んじゃ、よろしくな。『淡』」

 「うん。よろしく、『キョータロー』」

 「あれ、『京太郎』は嫌なんじゃなかったのか?」

 「イントネーションが違うもん!」

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 7/10

 なぜかキョータローと喋っていると心が躍る。

 出会ってからまだ数回しか喋っていないのに、こんなに仲良く話せる!

 横にいるだけで楽しい人っているけれども、キョータローがそうなのかな。


 「じゃ、俺は席に戻るぜ」

 「あっ……」


 そう言ってキョータローは元の席に戻ってしまう。

 その席では、残った時間で多くの友達と喋る彼の姿が見える。

 そうか、キョータローにとって私はその他大勢の一人なのか。

 この白糸台のエース、大星淡を『その他大勢』扱いするんだ。



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 8/10

 ……
 …

 ポツンと一人、食堂でご飯を食べる。

 寂しいよ、テルー。

 最近は食欲がないからレディースランチを食べている。

 いろいろなおかずを少量で食べられるからお得だ。

 他の人たちはグループを組んで食べている。

 まるで、初めてキョータローと会ったあの時のようだ。

 こうして憂鬱な気持ちでご飯を食べていた時に、後ろから……。


                        _ , 、
                      /ィ--∨  :.- 、
                    __/  , ,:   } l \
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                   /_/  | / 从 :  ,-}/、 |l |
                    /   从 -rォⅥ /rォ- }イ {
                 _` ̄´ { {rI ゞ ,}' ゞ  } }∧
                  Y {{ |Y }  从∧  _    八{
                「l | || | | |    Ⅵ 、 ` ー` イ / '  「よっ、淡」
                { ー '' ' | /^〉 「//}` ー ´r'-、
                    |       ' ノ_,」// |    |/()|
                 :.   /´ //////∧_ r '///>- 、
                   ∧ _人 イ///////∧-}//////////> 、
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               マ//// |//////////(_)///////// {//////}
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                  //==///////////////==/\///イ


 「キョータロー?」


 後ろから、声をかけてくるんだ。

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 9/10

 「あれ、一人?」

 「そうだよ。悪い?」

 「別に、俺も一人だしー。

  一緒に飯食わね?」

 「……いいよ」

 「そのエビフライ美味そうだな。

  今日の定食?」

 「残念でした。レディースランチだからキョータローは食べられないのだ」

 「えっ、レディースランチ!?」

 「何その反応」

 「だって美味そうじゃんか!

  なんでレディースランチは女子しか頼めないんだろう」

 「男でレディースランチに興味持ってる奴なんて、初めて見た」

 「い、いいだろー!

  ……ところで淡さん。お願いがあるんですが」

 「なにー?

  言ってみなよキョータロー。

  頼み方次第では寛大な淡ちゃんが聞き入れてあげるかもしれないよ?」

 「ぐ、ぐぐぐ……」


   /  /     |  ハ       |  | i 、 ヽ  \     \_
.   i  /     |  | |       |  | |、 i  ゙、 、 \_     _>
   |  i   | i  |  | |       |  ハ ハ _i!_ i   \ ヽ` ̄ ̄
   |  |   |+--|、_|! |   | i! ,/.ィ'|"i´ ハ  | i  ヾ 、 ヽ
   |  |   |.|ヽ |、_|王!ー  |./i .;"´/=、!/ | ! |   \ 、i      人
.   !. r|   i.|、!,,ィ'":::._iミi!  |/ /彳:::: r:!ヽ,| ,イ | 、_   \      `Y´
.   | |^!.  N 《 _、o;;;;i_ 丶、/ / ┴゜‐'"´ !イ | λ i` ー--ヽ
    ! | i、i、 ゙、  ` ̄ ̄   メ(        /^|イ `、|
   ノi \ヾi:.、、         i!      i ノリ   `
    |  ヽ__i                 |イ|/  「あわいさま、俺の代わりにレディースランチ頼んでくださいっ」
    ヽ i、  i    ____....,     |/
      ヽ!、  i\   `ー-- ―'´  /、!
       i !i 、 \     ̄´  /!/       人
         |ハ,i、! 、 \      / ./.|       `Y´
         ト、! ゙、  `ー---'′ /|V

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 10/10

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 _人_ '                      ` 、  \
  Υ'/ /  /              ト、        丶
   / /  /         |    | | Χ     }
  .′   il  /   |  | \ | / `、  リ   |
  i | _|l__∧ト、八  |   メ´  ニニ  /   } |
  | |   ||  `>x、\|   斗チ芋ミ、∨   ,′j
  | |l   l|斗示芋ミ、    ''h!::::::::}  ,′    ,
  |l 八  И'h!::::::}      乂___ノ /     /
  ||  \| 乂__ノ       /i/i/ /     /l| 「しょーがないなー。いいよー!」
  .八   ゝ /i/i/i    i       / /  / / |
   ‘,\ ハ      r    ア  /l/ /  /:: |
     ト、  込、         _ノ   //  ,イ::: l|
     |l l\ \> .,_       /∨  /l|:  八_
 |ヽ.  八l_\ \-─=ー ァ--<  /   / 八 {  \ `ヽ
 | | ./ /´  ハ 〕     { 〉     ,′ /   ` ヽ  \∧
 | |/─、_ / |∨  __ Ⅴ__=|   /     〕\  \
 | | Y´ \\.ノ (`ヽ \\)     |  ,′         \ 丶


 レディースランチを代わりに頼んであげるなんて、淡ちゃんくらいだもんね!


 「レディースランチ好きなんだけど、頼む相手がいなかったんだよね」

 「だっさー!

  私がいる時なら条件次第で聞いてあげなくもないよ?」

 「うぐぐ、背に腹は変えられない。

  これからお願いしますっ」


 ……これから、話し相手が出来るのかな?

 キョータローのレディースランチを頼んであげられるのは私だけ。

 これで、私にも友達が出来たのかなっ。


                _, -──-  .,_
               '´         `丶、
            /              \
           ,          /         \
.           /     .   /            ヽ
           ′     / /              `、
.          .' /   /,     // /|   |       `
         i     . /    」_ ′/  |   | i|  . i
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          j .|  ∨/    / |/ ヽ  |  ァT丁l   | |
         ノ i|  V    j 抖竿ミ    ノ ノ ,ノイjノ   | i
___ ____彡' , i|  i| j   八|:x:x:    /ィ竿ミ 刈    | }
 ̄¨ え≠  / 八 i|/l   |  |        :x:x:/ ノ    | ′  「えへへっ」
 /  -‐ '    ハ  八  ト、  ヘ.__ `  厶 イ   ノ
/    __,.斗‐=≠衣  ヽ八\ 丶.__ソ  . イ(⌒ソ  イく
     jア¨¨^\   \   \ >-=≦廴_  ア /ノヘ\
  斗ァ'′     \   \   ヾ. \___ ⌒ヾく<,_ `ヽ )ノ
/圦 |       、\   ヽ   、∨tl  `ヽ . ∨ V\ i
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≧=- |         辻_V\`i}  i } |  /} iハ}   辻ノ
   ノ          ¨〕V//リ  iノ ////V〔    ¨〕


 続く


最終更新:2015年12月31日 20:13