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仲良く鍋をする京淡(平行世界)
今日も今日とてキョータローのハンドボールを見に来たよっ。
まだまだ入ったばかりのキョータローは雑用や筋トレなどの地味な作業が多い。
見ていてつまらないな、なんて思うこともあるけれども、たまに試合なんかをすると胸が沸き立つ。
やっぱりキョータローは活躍できないんだけれども、試合をしているのはとっても楽しそう。
そうだよね。麻雀だって牌磨きするより実際に打ってた方が楽しいもんね!
私だって、雑用しているキョータローを見ているよりも試合しているキョータローを見ている方が楽しいもん。
「よっしゃ、今日は結構動けてたはずだ!
どーだ、淡!」
「すごいじゃんキョータロー!
褒めてつかわそう!」
「やっぱり偉そうなのな」
「ふふーん。レディースランチがかかっているからね!」
「うぐっ。
しかし、淡に褒められるなんて初めてじゃないか?」
「そ、それだけキョータローがダメダメだったってことじゃないかな!」
「うっ、否定できねーし」
そ、そんなことないもん。
キョータローがすごく頑張っているのは伝わってくるし、ただちょっと結果に出てないだけだもん。
そう思っていても、口から出てくるのはいつもの悪態。
……うん、素直なあわいちゃんなんてなんか違うもんね!
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「はい、これ」
「えっ」
「スポーツドリンクだよ!」
「え、えっ」
目を見開いて私の方を凝視する。
何かおかしいことやったかな?
「淡がそんな気遣いしてくれるなんて……」
「むっ、失礼だよ!
そんなこと言うならいらないよね!」
「い、いるいる!
いやー、あわいさまは優しいなー!」
「ふふーん。
あわいちゃん優しいでしょ!」
意外だなんて失礼だよっ。
そういえば、誰かをこうやって労わるなんて初めての経験かな?
そ、そんなことないもん。ほら、テルーたち相手に……。
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「(やったことない……かも……)」
そう考えると、頬が熱くなってくる。
今までこんな、女の子らしいことなんてした覚えがない。
レギュラーになってから、同年齢や後輩に無理をさせてたことはある。
ただ、こんな風に男の子に甲斐甲斐しくするなんて初めてかもしれない。
「(こ、こんな、コイビトとかフーフみたいな!?)」
「あわわっ! 返せっ!」
「えっ、もう飲んじゃったけど」
「はやっ」
「運動した後ならフツーだろ」
「う、ううー」
なんか気恥ずかしい。絶対顔赤くなってるよ……。
「んじゃ、もう一回行ってくる!」
「あっ」
顔の火照りが収まらぬまま、キョータローは行ってしまった。
うー、誤解されたらどうするの!
キョータローのことが好きとか、そういうのじゃないんだからね!
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「ねぇねぇ。大星さんって須賀君の恋人なの?」
「あわっ!?」
そんなことを考えていたら、後ろから女の人に声をかけられた!?
この人は見覚えがある。他の人に色々と差し入れをしてた人だ。
「マネージャーさん、ですか?」
「そうよー。大星さんがよく来てくれるって、須賀君が言ってたわ」
「わわわわ」
「だから、恋人なのかなーって」
「ち、違うもん違うもん! 誰がキョータローの恋人なんか!」
「ふーん……。
じゃあ私がアピールしてもいいかなぁ」
「だ、ダメダメ!」
「あっ」
「うへっ」
なんでか理由はわからないけれども、それはなんかやだ!
だって、私に恋人がいないのにキョータローが先に恋人を作るなんて生意気じゃん!
うっ、この人ニヤニヤしてる。そんなんじゃないもん。
「やっぱりハンド部に関係ない人がずっといるっていうのは問題なの」
「う」
「だから、みんなで考えたんだけどね。
須賀君の専属っていう形でもいいから、うちのマネージャーにならないかな」
う、うう。
「でも私、麻雀部で……」
「うーん、それじゃあ仕方ないよね。
一応、他の人には大星さんがたまにくることは伝えておくからっ」
「あ、ありがとう、ございます……」
な、なんだかキョータロー以外の人と話したのは久しぶりな気がする。
あわいちゃんがキョータローのマネージャーかぁ。
……えへへ。
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……
…
「あわいさまー!
レディースランチお願いしますっ」
「ダメ!」
「えっ」
「キョータローは体を鍛えないとダメだよ!」
「そ、そんなァ……」
いつものようにレディースランチを頼みに来たキョータローを一刀両断!
ほ、ホントはちょっと怖い。
これで『じゃあいいや』なんて言ってキョータローとの繋がりがなくなるのが怖い。
私にとって、キョータローとのレディースランチは特別な繋がりなんだ。
でも、キョータローならそんなことはしないはず。
「お肉食べよっ」
「お前、花の女子大生がお肉って」
「私は食べないよっ。
キョータローがお肉食べるの!」
「ど、どうしたんだいきなり」
「ハンドボール部のマネージャーの人に頼まれたんだよ!
あわいちゃんはキョータロー専属のマネージャーなのだ!」
「げっ」
「……いやなの?」
いつもみたいに元気が出ない。
こんな風に管理されるなんて嫌かもしれない。
「いや、俺から言い出したことだろ」
「えっ」
「『ダメなところがあったら言ってくれ』ってな」
「……うん!」
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「それで、俺は何を食べればいいんだ?」
「やっぱり、体を大きくするって言ったら……ちゃんこ鍋とか!」
「力士か!
軽快に動けなくなってもダメじゃね?」
「でもキョータローはまず体を鍛えないとダメだよ。
横で見ていても他の人より細いもん」
「うぐっ」
「確かに、運動してない人よりは大きいけどね!」
「ぐぬぬ、高校時代サボっていたのが響いてなァ……」
「あれ、高校時代はやってなかったの?」
「別の部活やってたんだよ」
「ふーん」
ちょっと気になるけど、今はキョータローの食生活!
「とにかくお鍋!」
「じゃあ晩飯にでも食べるか。
さすがに学食に鍋はねーし」
「うん!
じゃあうちで食べよっ」
「えっ」
「?」
「淡の家で?」
「……あっ」
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/ ヽ
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. 〔 八! l圦 ,, ' ,, l // | 「あわわっ?」
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ノ厂| l 〔, / / `丶、 `
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「それはまずいだろ……」
「だ、大丈夫だもん!」
「ホントかー?」
「女に二言はないよ!」
「いや別に二言はあってもいいんじゃ……」
「いいから来るの! 今日来るの!」
「いぃ!?
今日でいいのか!?」
「何さその言い方!
まるで私の部屋が汚いみたい!
別にあわいちゃんには見られて困るものなんてないもん!」
「お、おお、そうか」
「信じてないね!?
絶対絶対、今日はお鍋だからね!?」
「お、おお。わかった……」
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……
…
「ま、またやっちゃったよぉー!!」
いつもの大口でとんでもないことを言っちゃった!
よりにもよって今日とか!
一人暮らしの部屋はぐっちゃぐっちゃだし、何にも準備していない!
それに、男の子を部屋にあげるなんて……。
う、ううううう。
バタバタと部屋を片付けながら、もやもやと妄想が浮かぶ。
キョータローが部屋に来るなんて……うう……。
そ、それに気をつけないと、いくらキョータローがハンド部の中で細いと言っても、それは比べる対象が悪いだけだもん。
一般人の男の人から比べれば、圧倒的に屈強なキョータローに襲われたらいくらあわいちゃんでも手も足も出ない。
そ、そんなの嫌だよ。私だって初めては好きな人としたいもん。
キョータローは……、ううん、まだそういうのは考えられないし!
でも、きっと、キョータローなら大丈夫……だよね?
急に不安になる。
や、やっぱり早まったかな?
でもここで負けるなんてあわいちゃんらしくないもん!
急いで部屋を片付けなきゃ!
……いちおー、シャワーを浴びてかわいい下着にしとこ。
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……
…
キョータローと一緒に準備してお鍋の具材を買いに行って、一緒に作り始めることにしたよ!
家に食材がない、というか料理したことなんてないからなんだけれども、何とか誤魔化せたはず!
「おーなべーの具材ー!」
「なんの鍋にするんだ?」
「……お鍋って何入れればいいのかな?」
「おい」
む、お鍋の具材なんて食卓によって違うでしょ!
別にあわいちゃんが料理できないこととは関係ないもん!
「は、白菜とお肉が入っていれば何でもお鍋だよ!」
「間違ってはない……のか?」
どーせキョータローも料理できないんだから、バレないよね!?
そうだ! 今回の目標はキョータロー改造計画だもん!
とにかく筋肉になりそうなのを入れるんだ!
「まずはお肉!
安くて美味しい豚肉!」
「いいねー!」
「キョータローはいっぱい食べてね?」
くるくる回ってキョータローをじっと見る。
あっ、顔を逸らした! あわいちゃんの魅力にやられちゃったかなー?
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……
…
「お、おおおおっ?」
「ちょっ、その包丁の持ち方と切り方は違うっ!」
そしていざ作り始めると、嘘の砂上の楼閣は脆くも崩れ去っちゃった。
何とか部屋の掃除を間に合わせて家に入れたまでは良かったんだ。
でも料理が始まると、普段包丁やら何やらを使ってないことがバレバレ。
場所がわからなかったり使い方が怪しかったり、すぐにバレちゃった。
「俺だってタコスくらいしか作れねーってのに」
「キョータロー、タコスなんか作れるんだ?」
「タコスしか作れないんだよ」
「タコスなんてめずらしーじゃん!」
「まぁ、確かに」
料理すらしたことない私に比べればキョータローはまだ出来た。
もちろん、サクサクーってお料理番組みたいに出来るわけじゃなくて、たどたどしくて形もバラバラだ。
それでも、キョータローは『淡に包丁握らせるよりはマシ』なんて言って自分でやり始めた。
ムググググ、悔しい!
「隊長! 灰汁取りはいい感じであります!」
「うむ、精進したまえ」
結果、あわいちゃんは灰汁取りという重大任務を任されたのだっ!
これだって美味しくお鍋を食べるのには必要なことだもん!
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……
…
そんなこんなで、お鍋は完成!
あんまり時間をかけて煮込めなかったんだけれども、見た目は美味しそう!
「キョータロー、料理できるんだ」
「鍋は料理に入るのか?」
「それじゃ私が鍋すら作れない女の子になっちゃうじゃん!」
「それは、まぁ?」
「むきー!!」
そんなやり取りをしながら、キッチンから鍋を運ぶ。
一年中、出しっぱなし予定のコタツに移動し、早速食べ始める!
「フツー」
「普通、だな」
「美味しいけどフツー」
「淡の灰汁取りが足りなかったんじゃないか?」
「むむ! あわいちゃんの灰汁取りは完璧だよ!
灰汁取りマスターだよ!」
「ハンドボールマスターから灰汁取りマスターですか」
ケタケタ笑うキョータロー。
ムー! キョータローだってたいしたことしてないじゃん! お鍋だもん!
「おっ、ハンドボールの雑誌あるじゃん」
「あわわわわっ!?」
「本当にハンドボールに詳しかったのな」
そんなことを言いながら雑誌をペラペラめくる。
……急いで勉強しようとして、買ったやつだ。
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「キョータローは、さ」
「ん?」
「ハンドボール好きなの?」
決定的なことを聞いた。
ずっと気になっていた。
「そりゃまぁ、好きだからやってるんだろ」
「好きでもさ、結果が出なかったら辛くない?」
「……辛いよ」
キョータローが俯いた。
「すごく辛い」
聞いたことを後悔した。胸が痛くなった。
「それでも、俺に自慢できそうなのはこれしかなかったんだ」
「へ?」
キョータローはすぐに頭を上げ、自信に満ちた声て言った。
「俺だって負けねーんだよ、スゲー奴なんだよって」
「……」
「淡みたいに全国大会で活躍するようなスゲー奴にさ。
『俺だって負けねーぞ』って胸張って言えそうなのが、ハンドボールしかなかったんだ」
ううん。
私なんて全然すごくない。
普段は考えるだけで否定するけど、今だけは頭の中で考える。
私がキョータローのことを気にするのは、そうやって頑張れる人だからだ。
もしキョータローが才能の塊だったり、あるいは負けることを悔しがる人じゃなかったら気になんてならなかった。
全力で頑張って、それでも芽が出るようには思えなくて、それを全力で悔しがって、あきらめない。
私は、そんなキョータローだからこうしている。
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「……それじゃ、頑張って肉食えー!」
「入れすぎィ!」
「体鍛えろー!」
なんか恥ずかしくなってキョータローの器に鍋の肉を一気に入れる。
私はサキに負けて、それが辛くてこんな風になっちゃった。
もう辛くて辛くて、麻雀だってやりたくないとすら思っていたけれども。
キョータローを見ていたら、もう一回チャレンジできる気がする。
だって、サキにはキョータローはいないけど、私にはキョータローがいるんだ。
「それなら、高校でもハンドボールやってればよかったのにね。
『動きが硬い』のって、ブランクのせいだったんだ」
ずっと思っていた違和感。
一番最初にキョータローを見たときに感じたそのつっかえがようやく取れた。
「まァ、高校時代の経験があるからハンドボールに戻ったとも言うんだけれど」
あれ、高校時代はスポーツ自体もやってなかったのかな?
ちょっと気になるかも。
「高校時代、何やってたの?」
そんな、軽い気持ちで問いかける。
今ならキョータローに、素直になれる。
きっとキョータローに辛いことがあったなら、聞いてあげることだってできるもん。
「あれ、言わなかったっけ?」
「聞いてないよっ!」
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__,.ィ ̄ ̄`ヽ/ヽ__
> ´ ̄ / ` `、 、
、 - ´ / ' } ヽ ヽ\ \
`  ̄ >' / ,: | ∧/! | } ヽ ヽ
/,ィ / ' / /| _/,.ム斗}-/ ハ :.
{/.' ,| ,.|-}/-{ | / ,ィチ斧ミ }/ } | .
/ イ/{ : ! ィ斧从}/ Vzソ ノ /イ ,:
<__ ´// 从{ Vソ / / イ- 、 |
{'{ { , ' /' ⌒ } |
从Ⅵ /.: ノ | 「俺、清澄高校麻雀部出身なんだぜ。
叭 v_ ̄ヽ ,rー' 从
、 イj / / だから淡のことも知ってたんだ」
:. < |' /}/
、__ ´ } イ从/
| |/
「 ̄| 「 ̄ ̄ ̄ ̄}
|//l| |//////// 、
,. <// ∧ |//////////> 、
/. . . . . . . . . . . . . . \
/. . . . . . . . . . . . . . . . . . .\
/. : : : : . . . . . . . . . . . . . . . . . :.ヽ
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ノ, : : : // : : : : ;.ィ: : :∧: : : : : :|: ゙、
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シ;.ィ: : : : /:/ /: // !:|/: : : :|: : :|: : | ゙、
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リ / !イ: : : ハ! .,ィ=≧ミ、 ,/._,∠二/!|: : !: :| ノ
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i: :r―ー-‐'"/: :!: i:.丶.i ヒ二⊥ ,/ /ヲ-:!/ ;! :/:/リ
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'" `ヽ、: : :/ ! |:| iー- 、` ´ _,..-‐'/: :/  ̄/7ヽ,
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続く
最終更新:2016年01月08日 15:01