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大星淡-エピローグ-(平行世界)



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 【大星淡-エピローグ-】(平行世界)


 キョータローと恋人になってから三年!

 いっぱいイチャイチャして、恋人らしいことをしたよ!

 大学で有名なバカップルなんてあだ名まで付いちゃった! えっへっへー!

 ……とまぁ、良い事ばかりじゃないのが人生なんだよね。

 キョータローのおかげで麻雀にも復帰し、インカレでもそこそこの成績を残ることはできた。


 麻雀プロのスカウトも来たんだよ。……経歴が経歴だからあんまりいい条件じゃないんだけどね。

 すぐにクビを切られかねないし低年収。

 夢を追おうと思わなければとてもやっていけない。

 それでも、私にとって麻雀プロは夢だった。



 一方キョータローは、お世辞にも良い成績を残せたとは言い難かった。

 キョータローの頑張りは私が認める。キョータローの努力をバカにする奴は私が許さない。

 麻雀に時間を取られている以外の時間は全部キョータローの専属マネージャーをしていた。

 だからこそ、キョータローが辛くてもハンドボールを続けていたのがわかるんだ。

 恋人になってすぐ、キョータローに聞いた事がある。


 ……
 …


 「ねぇ、キョータロー。

  やっぱりまだハンドボールを続けるの?」

 「?

  そりゃまぁ、やること自体好きだしね」

 「その、結果を出せたらサキに教えたり、する?」


 一番不安だったのはそこなんだ。

 自分でも嫉妬深いし、浅ましいと思う。

 でも、私にとってサキはトラウマそのもので、もしキョータローがサキに取られてしまったらって考えちゃうんだ。


 「あっ、俺が咲に取られるんじゃないかって考えたろ」

 「なっ、なんでわかるの!?」

 「エスパーだから!」

 「もー! それ恥ずかしいからやめてよ!」


 事あるごとにそのネタで弄られちゃう。

 ぐぬぬ……。大人になるにつれて昔のノリが恥ずかしくなってきたよ!

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 「続けるよ」

 「そうなんだ」

 「言っただろ、『俺だって凄いんだって伝えたい』ってさ」

 「……うん」


 やっぱり、キョータローの中にはサキが残っているのかな。

 ズキリ、と胸が痛んだ。


 「凄い奴の隣に立ちたいって気持ちは変わらないよ。

  淡の隣で胸を張って立ちたいんだ」

 「……あわっ?」


 キリッと真面目な表情でこちらを見るキョータローに、少し顔を赤くする。


 「わ、私なんてあんまりすごくないよ?」

 「いやー、十分凄いだろ。

  麻雀復帰して速攻レギュラー。インカレで大暴れしてプロのスカウトも来てるんだろ?」

 「で、でも本当に強い人たちはもう高卒プロになっちゃってるし。

  こう言うと恥ずかしいけれど、テルやサキにはかなわないし……」

 「それでも、俺からしたら天界の人なの!

  俺は凡人代表だから、せめて淡に見合う男にならないとな!」


 キョータローがグッとガッツポーズする。

 ……やばい、超嬉しいかも。

 すっごく愛されてるってわかる。

 キョータロー大好きだよ……!


 「ふふーん、じゃああわいちゃんに合わせられるように頑張りなさーい!」

 「任せろ!」

 「私も一緒に手伝うから、ね?」

 「淡、それ反則だろ……」


 なぜか顔を真っ赤にして目を逸らされた。

 ムー、確かに素直に嬉しいって言えなかったけれどその対応はないよ!

 ……ってあれ、照れてる?

 手伝ってもらえることが嬉しいのかな、えへへー!

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 ……
 …

 そんな呑気でいられたのは、ハンドボール最後の大会が終わるまでだった。

 ハンド強豪校のうちではキョータローは1.5軍。

 何回か出番はまわってきたけれども、特別活躍出来たとは言い難かった。

 それでも、あわいちゃんは知っている。

 そもそもキョータローがこの大学で1.5軍になるために、どれだけ努力したのかを知っている。

 並大抵の努力では2軍3軍の雑用で終わっていたと思う。

 それを、私のために貫き通してくれたという事実に顔が赤くなる。

 キョータローが格好いいのが悪いっ!


 なんと、うちの大学はそこそこいい所まで勝ち進みました。

 お世辞にもキョータローが活躍したとは言えないんだけれども、私はずっとキョータローを見てたよ!

 そして負けてしまった瞬間を見たんだ。

 ベンチからの途中参戦とはいえ、試合が終わった瞬間にコートに立ち尽くすキョータロー。

 とても見ていられなくて、本当は走って行って抱きしめてあげたかったけれど、それは出来ない。

 キョータローは男としてあそこに立って戦い抜いたんだ。

 讃えこそしても、私から慰めるなんて絶対に違うもん!

 ……こんな考え方、キョータローと会うまでは絶対にしなかったよね。

 それでも、遠くから見て立ち尽くすキョータローの姿は、私の胸を痛めた。

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 キョータローの活躍でも、プロのスカウトは来た。

 それはとっても生活も苦しくなるような条件での契約。

 もともとハンドボール協会がそこまで大きくないもんね。

 キョータローのために何かしてあげたいけれど、何もできない。

 一つだけ考えついたことがある。


 麻雀プロの道を蹴ることだ。


 すごく、すごく考えたんだ。

 麻雀プロにはなってみたい。

 あの時と違う私がどれだけ通用するか試してみたい。

 サキにもテルにもリベンジしたい。

 私の試合をみんなに、キョータローに見てもらいたい。



 でも現実、私の実力じゃテルやサキには及ばない。

 安定した収入は難しい。

 でも、フツーの企業に就職すれば収入は安定するよね。

 そうやってキョータローを支えてあげれば、キョータローのハンドボールはまだ続けられる。

 仕事しながら、主婦みたいに支えてあげるんだ。

 昔だったら絶対に考えられないよね。

 でも、今はそうしてあげたいと思った。

 ずっとずっと続けてきた麻雀を辞めることには抵抗が強かった。

 それでもキョータローのために何でもしてあげたい。そう思ったんだ。

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 それを切り出そうとした日だった。

 私とキョータローは同棲みたいな状態になっていて、同じ家に帰ってくる。

 家事は分担だけれども、今日は張り切ってちょっとだけ奮発しちゃった。

 キョータロー落ち込んでると思うから、せめて美味しいものだけでも食べて欲しいな、って。

 お肉なんかも用意して、エビフライも用意して、準備万端!


 「淡ー」

 「あっ、おかえりキョータロー!」


 エプロン姿でキョータローに抱きつく。

 えへへー、あざといけどかわいいでしょ!

 落ち込んでるキョータローにはそれくらいがいいの!


 「話があるんだ」

 「えっ」


 私を抱きつかせたまま、深刻な顔をして宣言した。


 「とりあえずご飯食べるか」

 「う、うん」

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 胸の内は不安でたっぷりだ。

 目標を達成できなかったから別れてくれって言われるんじゃないかとか。

 そんなこと言われたら引っ叩いちゃうもん!

 ……ムリ、多分泣いちゃってそれどころじゃなさそう。


 「淡」

 「は、はい」

 「その、な」


 とても言いづらそうに首筋を掻いている。

 もー、あわいちゃんも気が気じゃないんだけど!?

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 「俺、ハンドボールやめる」





 

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 覚悟を決めた表情で言われた。

 あまりに真剣だったから、止めようとすら思えなかった。


 「俺はもう上に行けない。

  わかったんだ」

 「そ、そんなことないもん!

  キョータローが努力してきたことは私が知ってるもん!」

 「もう就職しなきゃいけない。

  いつ首を切られるかわからないような不安定な状況でハンドボールを続けられない」


 それは現実的な考えだった。

 私が考えていた理想とは大きく離れていて、それでも事実なことはよくわかっていた。


 「じゃ、じゃあ」

 「普通の企業に就職するよ」

 「そ、そっか……」


 この結論を出すのに、どれだけの苦悩があったのかな。

 私が麻雀を捨てる決意をするのだってすっごく大変だったんだもん。

 キョータローのため、って思わなかったらそんな考えなんて浮かばなかったと思う。

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 「俺、スッゲー格好悪いよ。

  すごくなって淡の隣に立つ、なんて言っといてこれだ」

 「そんなこと、そんなことないもん!」

 「だけどさ」


 キョータローが手を私の唇に当てて遮る。

 やだよ、別れるなんて言わないで。

 どんなキョータローでもいいから、一緒にいてほしい!



 「俺、淡から離れたくないんだ」「やだよ離れないでよお!」




 「あれ?」

 「あわっ?」

 「いや、幻滅したろ?」

 「するわけないじゃん!

  キョータローすごく頑張ってたし、それを横で見てたのはあわいちゃんだよ!」

 「約束守れなかったし」

 「関係ないよ!」

 「そっか……そっかぁ……」


 キョータローが泣きそうになっているのが伝わる。


 「それでも、ハンドボールは辞めるよ」

 「う、うん」

 「これまで俺の夢に付き合ってくれてありがとう。

  ……だからさ」

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 「今度は俺が、淡の夢に付き合う番だ」




 

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 「えっ」

 「麻雀プロ、未練があるんだろ?」


 ドキッと胸が打たれた。

 あわいちゃん専用エスパーのキョータローには見抜かれているのかな。

 本当は、麻雀をしたい。

 麻雀って、本当に楽しいんだ。

 キョータローがそれを教えてくれた。

 私には麻雀しかなかったから、ずっと麻雀だけをやってきた。

 それがなくなって初めて、世界は曇った。

 そしてキョータローがその世界を照らしてくれた。

 照らされた世界でする麻雀は本当に楽しかった。


 「でも、高校の成績も相まってあまりいい条件が来てないってことは知ってる」

 「うぐっ」

 「だからさ、俺が普通の企業に就職して養うよ」


 ……あわっ!?


 「や、養うって……?」

 「言葉の通りだよ!

  あー、もう!」


 キョータローが顔を真っ赤にしていることしかわからなかった。

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 「俺が養うから失敗なんて恐れなくていい。麻雀のプロになれ!」




 

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 正直、急展開でついていけない。

 キョータローが言っていることは、私が考えていたことと同じだ。

 不安定な麻雀プロの道を蹴って、その道がクビになったとしても私の収入で養っていく。

 さっきまで、そう考えてた。


 「で、でも」

 「でもじゃない。

  淡は麻雀プロ、やってみたいんだろ?」

 「でも!」

 「でもじゃなくて、やりたいかやりたくないかを教えてくれよ!」



 「……やりたい、よ」



 「私には麻雀しかなかった。

  キョータローと出会ってから、また麻雀を楽しめるようになった。

  どれだけ戦えるか、やってみたい!」

 「ならやればいいさ」

 「だって、私のスカウト条件じゃいつクビになるか……」

 「なったら俺が全部養ってやる。

  俺の給料で生活させてやるから」

 「ね、ねぇ、それってつまり……」

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 「淡、結婚しよう」




 

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 「……ふみゅ」

 「卒業してすぐに……とはいかないかもしれないけれど、淡のことは絶対に責任取る。

  もし麻雀プロがダメだったら……、その、嫁に来い」

 「キョータロー……!」

 「な、泣くなよ……」

 「バカ! バカ! 本当にバカ!」

 「な、なんで怒ってるのさ」

 「私だって同じ気持ちだったのに……」

 「俺は淡のおかげで夢を追えたんだ。

  格好悪い終わり方だったけれど、今度は淡のために尽くしたい」

 「……そんなこと言われたら、やるしかないじゃん」

 「麻雀は嫌いか?」

 「ううん」



 「麻雀って、楽しいんだ」

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 ……
 …

 ・数年後


 『やるからには一番を狙う』と約束した。

 麻雀よりも大切な人が私のことを応援してくれている。

 今の私は『サキを倒す』ためじゃなくて、一人の麻雀プロとしてここに立っている。

 ルーキーオブザイヤーの称号をもらって、日本代表選手と挑むためにここにいるっ!


 まだまだ実力差はすごく遠い。

 今戦っても勝てないかもしれない。

 それでも私にキョータローがいる限り!

 だから負けてもまた立ち上がれるし、何度だって挑んで見せる!



 「チャレンジャーはルーキーオブザイヤー!

  与えられた初号は『The Big Star ! !』

  そして対戦相手にも因縁があります!

  高卒でプロになった同年齢の日本代表相手にどう戦うのか!?」


 大音響で流れる実況も聞こえないほどに集中する。

 これは宣戦布告なんだからね!

 対戦相手を見据えてから、カメラに向かってVサイン。

 大きく息を吸い込んで……。

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 「未来の須賀淡ちゃんは負けないのだ!」




 

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カン

最終更新:2016年01月19日 20:39