1/10
537
照の誕生日
569
てるてるの挫折
「ふぅ……」
今日の対局は大変だった。
現役最強の小鍛冶健夜プロ、その他にも名を馳せた雀士との一局。
こうして戦うことは珍しいことではないが、今日は特に調子が悪かった。
調子が悪いといえば相手に失礼かもしれないが、実際は全く振るわず、追い込まれるだけ追い込まれて終わり。
長いプロ生活をしていればこういうこともある。
こんな経験は一回や二回ではないから負けたこと自体はそこまで気にしていない。
たった一局の勝ち負けどうこうで浮き沈みしていたら心が持たないから。
ただ、今日はちょっと問題がある。
「京ちゃん……」
そう、今日は私の誕生日なのだ。
だからこそ、家族に大言を吐いて来てしまった。
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2/10
……
…
「今日はお姉ちゃんの誕生日だよね」
「うん。そうだよ」
「今年で28歳だっけ」
「えっ、今まで28歳……」
「じゃあこれから28歳だね」
「う、うん……」
(´・ω・`)?
「今日はみんなで誕生日プレゼントを用意しておくよ!」
「うん」
「照さん、頑張ってくださいね」
「京ちゃん、お菓子待ってる」
「はい。会社の帰りにでも買ってきますよ」
「あっ、でも無理そうなら……」
「なーに言ってるんですか!
いつもの照さんらしく欲しい欲しいって言っておけばいいんですよ」
「てるー! がんばれー!」
「ほらっ、子供達も言ってますし」
「うん。勝ったら京ちゃんに頭撫でてもらう」
「いっ?」
「仕方ないなー、いいよー」
「咲まで!?」
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V | /::ノi!:/!:::::ノソ }ノ
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/\ヽ、 ||.ト、
ハ | |:| ||.| |
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3/10
……
…
「今日は負けたくなかった、かな」
勝敗にドライなところを持つのも重要だけれども、今日は素直に飲み込めそうにない。
出来ることならば勝って自信満々に帰って、ドヤ顔なんてして咲と京ちゃんを困らせる。
無理を言って咲を怒らせて、なんだかんだで収まるのがいつものパターン。
それが私なのに、こんな風に沈んでいたら台無しだ。
変に心配をかけさせたくないから、帰るまでにはポーカーフェイスに戻らないといけない。
「あ、いたいた。お姉ちゃん!」
「!?」
そう思って会場を後にすると、咲が出迎えてくれた。
「たまには駅まで迎えに来たよっ」
「咲一人で来るなんて、危ない……」
「駅までくらいは来れるもん!
た、たまに迷子になっちゃうけど……」
「もう……、こんな時間に外出するなんて危ない」
「お姉ちゃんだって同じだよっ!
いつもはマネージャーさんとかに送ってもらっているのに、なんで今日は一人なの!」
うぐっ、と唸る。
私にだってそんな気分になるときはある。
「ほらっ、帰ろ」
「うん……」
でも、咲が来てくれて嬉しい。
「咲、道はどっち?」
「え、えっと、うーんと」
……前途多難。
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4/10
……
…
, ⌒ ー  ̄ ̄ 、
/_,. - \
/´ / /⌒\ ヽ
, ´ , V :.
/ / / / / | V : V |
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/ イ { ':|_,斗| | 、_l__/_ィ |l∧
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/ イ / {∧{ 、__,.V {∨ 、_,/ イ}' ` 「なーんで駅から帰るのに迷うのかなー」
 ̄´ V∨乂l \ ムイ/
从 ' 八/
-〈〈/\ v-っ イ》く__
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i: : : : : : : :l /{ : /-一' レl: : ノー-,: : l: : : : : i
!: : : : ;、: :レ l〃⌒ヾ l/ 〃 ヾ: :l : : : : : !
',: : f⌒\{ {l l} {l l}Ⅵ : 、 : : ! 「うぐぐっ」
',: { 乂_ノ 乂ノ .l: : :} \ノ
',:乂_ ` .!ヘ:ノ
',: : : : 丶、 U ,--、 u ノ
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-─===‐-ミ
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.: 八.: :|┬─┬}/ ┬‐┬‐ .:.:|`ヽ}
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.:{ '└─┘  ̄ └‐┘ l.: .:| 「ムムム……」
人_ u j.: .:|
i.:.: .: .> )‐┤ イ.l: ::'
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ト、.: .:|/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/
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5/10
少し考えた結果、変に迷うより京ちゃんが帰ってくるのを待つことにした。
ちょうど30分くらい後に帰ってくるとのことだったから良かった。
うん、変に帰ろうとして迷わなかった。京ちゃん褒めて。
「京ちゃんの運転好きだよ」
「私だって好きだもん!」
「へいへい。
お姫様達、家に帰りますよー」
「「はーい」」
そんな風に仲良く声を重ねて。
運転している最中は咲が助手席にいるからちょっと距離が離れて寂しかったり。
「ケーキとか買ってあるのか?」
「ふふーん。
今日は私が作ってみました!」
「おっ、そりゃ楽しみだ」
「お姉ちゃん、食べ過ぎちゃ駄目だからね!」
「私の誕生日なんだから私に多く食べる権利があるはず」
「それはそれ!
みんなの分なの! お父さんの分は食べていいから!」
「界さんェ……」
「仕方ない、それで手を打つ」
「いいんですか!?」
ああ、落ち着くなぁ。
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6/10
……
…
_ -‐==‐-
/. . . . . . `
-‐==ニ二 ‐‐- _ `ヽ
/ : . . .
/ / / `ヽ : : : :
/ / .i .ト : : : . __ニ=-.
./ . :/ | | ヽ : : : :\
/ . :/ { i‐-ヽ : : : :._\ \
./ .: :{ i ', ! ___\ .: : :/ ヽ:\: : :ニ=- ̄
/ : : :| i : :| | |≠r:::rュミヾ i{ .ハ ∨:∨ミ、
./ /|: : :i :.{ : : !`ヽ !| {つ:i!::::} `ヽ| 〉j. 〉: : :}
// |: : ', : :i: : :!ニミヽi\{ 乂zzソ /|: : !|
|: :i:ヽ : ム:.:|fっi!:} {: :i : :|‐-─ 、-
|: ト: : \ヽ|匁ソ , / i/| : :|:.:.:.:.:./ ヽ
|:.| }: : : :ゝ ‐- / !/i|:.:.:/ i 「てるー!」
t|ノノ~|/Vハ くi ノ /. ヽ/ |ゝ、
\ -‐ /. : / ヽ
>‐──.、. : : :. / -‐‐、 /
_,「 . : :): . / イ ニ=- ~
/ f .:| : :r / // ~ ‐-ヽ
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/ __ i: . : :、/|__ ∠ / ‐ // |
/`-‐ / / | __ -‐/ / |
/ : : : : .:|:.:|: : :| : :./! :.,.'|: : : |',: : : : ト: : :ヾ:: ',
. / : { : !_,|.-‐|‐:.,' {: : :| |: : :ィ¨',゙ ̄:|ヾ、, : !: |:: i
/: : : : |: : |: :ィ":,'マ:.!::,' .',.:.::| |: : : | _,.',: : | ヽ:`ト:. : : |:: |
: : : : : {: : { :,'.|:.| ',:レ ヽ;| |: : : | ,≧:|_ マ:|',:. : |:: }
__,.ィ: : '.: :',:.{:.|/ _,.ィ==ミ ヾ,: :! ィ ,..'⌒.ヾ、.ソ !!: : :リ::./
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. |: : : : :,:.A | { :::::::::: } .ィ゙::::::::: ノ / /: /!/
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.レi: : / ヽ∧ ⊂⊃ ` ⊂⊃ " /: : : :..: : : : ̄` ' 、 「おかえりなさい!」
ー==,.∨ ̄ミ=', .___, . /≡ィ゙\: : : : : : :
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7/10
いつもは京ちゃんに飛びついてくる娘まで私に飛びついてくる。
私は支えきれず、倒れそうになるけれども京ちゃんががっしり支えてくれる。
役得。
それにしても、どうしたのかな?
「おめでとー!」
「これっ!」
何かを渡されたと思えば、それはお菓子袋。
子供達が少しずつ食べていたものだ。
さすがにこれは受け取れない……。
そうだ!
「うん、一緒に食べようね」
「「やったー!」」
これで解決。
私だって小さな子供からお菓子を取るほど悪い人じゃないもん。
「お姉ちゃんって、本当子供受けがいいよね」
「好き勝手にする妹がいたからね」
「ぐぬぬ……」
「はいはい。
照さん、お先にお風呂どうぞ」
「一緒に入ろ?」
「ダメ!」
「ははは……」
むぅ、冗談じゃないのに。
さっきまで疲れていた体が癒されていくのを感じる。
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8/10
みんなお風呂に入って、ケーキを食べて、リビングでゆっくり。
ソファーに座ってボーッとしていたら、咲が京ちゃんを引っ張ってきた。
どうしたんだろう?
「咲、なんだなんだ」
「いいから京ちゃんはここに座る!
抵抗しないの!」
「抵抗してないんだけど。
咲、力弱すぎ……」
「うるさーい!」
なにやら騒がしく京ちゃんを私の横に座らせる。
咲、なにを考えているんだろう?
「ほら、お姉ちゃん!」
「(´・ω・`)?」
「うりゃー!」
「(´・ω・`;)!?」
「うおっ!?」
いきなり咲がのしかかってきたと思ったら、京ちゃんの方に体が倒れていく。
二人で京ちゃんの膝の上に頭を乗せる形になる。
「咲、なにしてんだ……」
「うちの旦那の膝枕はどーですか!」
「うん、なかなかいい」
「これでいいんですか!?」
気づけば咲は私の体の上からどいて京ちゃんの横に座っている。
私一人で京ちゃんの膝に乗せてもらっている形だ。
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9/10
「硬くて高い」
「ね。
膝枕とか腕枕って意外と心地悪いんだよ」
「そりゃ人が寝るためのものじゃないし……」
「でもね。お母さんの膝は子供の頭が乗るのにちょうど良いようになってるんだって」
「そうなんだ……」
「それに、これはこれでいいでしょ?」
「うん。好き」
「まぁ咲と照さんがいいならいいですけど……」
京ちゃんが手持ち無沙汰に焦っているのがわかる。
かわいいな。
「京ちゃんの頭撫で権はダメだったけど、私が撫でる分には何も言ってないもんね」
「むにゅ」
「女の子の頭を撫でちゃダメだって散々言ってたじゃん」
「女の子が女の子にするのはいいんですー!」
「そっか」
そう言うと咲はゆっくり私の頭を撫で始める。
普段から子どもたちのことを撫でてあげているからか、先の撫で方はとても上手い。
ずっと前に、お母さんに撫でてもらったことを思い出す。
まるでお父さんとお母さんに包まれているみたいに安心する。
「須賀夫婦の特別サービスメニューです!」
「咲、元気だなァ」
「京ちゃんは手持ち無沙汰なら私の頭を撫でていーよ!」
「いや、どんな形にする気だよ……」
咲に撫でられて意識が遠くなる。
でも、この心地よさを味わっていたいからまだ寝ない。
咲の匂い、京ちゃんの匂い、いろいろなものが混ざって私に伝わってくる。
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10/10
/: : : : : : : : : : : : ,ィ: : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : : ヽ : : : : : : ヽ
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_,. :´: : : : :/: : : : : : : :/:/ ': : : : : : : : : : : : : : : : | : : : : : : : : : ∨: : : : : : :.
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{八: : :|:,: :},ィ≠≠ミ \| -- 从: : : :/}/: : : : : : ,: |
l 、 : |: V ィ≠≠ミ、 / |: : : イ/⌒V: : : :/:/ 「お客さーん。具合はどーですかー?」
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V{ :.:.:.:.:. / ノ 人:,:' /
人 __ _ イ:/
` 乂 ̄ ー‐ァ イ: :/: : :/
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|: : : { //// ////r-: ': : / 「(……幸せ)」
从: : 乂 ^ー( イ: : :/: :/
∨: {:从{¨¨, ィ「 ̄ 7¨´、_: 从:イ: :/
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カン!
最終更新:2016年02月23日 14:09