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【宮永への連絡】(平行世界)
目覚ましの音が鳴る。
今日は早めにセットしておいたんだった。
いつもは周りの人に不潔と思われない程度にしかしない身支度を時間をかけて整える。
朝からシャワーを浴びて清潔にする。
昨日買ってきておいた少しお高いシャンプー。匂いは彼の好みだろうか。
シャワーを浴びたらドライヤーで乾かし、ヘアアイロンでくせ毛を治す。
軽く朝食をつまみつつ、歯を磨いて口臭にも気をつける。
万に一つでも匂いを気にされたら立ち直れる気がしない。
昨日のうちから準備しておいたお洒落な服に着替える。
新品だから値札を剥がさなきゃいけない。
服のサイズなんかが貼ってあったら台無しだ。
いらないものをバッグから取り出し、最低限のものだけ持つ。
普段は最低限で済ませる化粧もキッチリこなして、テレビの前に立つ女優の気分。
あまり匂いのキツくない香水をつけて、準備万端。
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厶イ |: : ヽ{{ 午不か}/ 午示下}.: : :| : : |
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緊張してうまく笑えない。
いつものようにダラけた顔でいいはず。
どうしても浮かれてしまう。
だって、京ちゃんからお誘いがあるなんて初めてだから。
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「笑顔」
写真の前で笑顔の練習。
ぐぎぎ、なんてひきつった表情が映っている。
おかしいな、テレビの前だとあんなに綺麗に笑えるのに。
好きな人の前なら一番いい笑顔が見せられるなんて間違っている。
だって、緊張して笑えそうにないから。
「あっ……」
駅までの時間を考えると、今から出るのがギリギリだ。
遅刻するなんて以ての外。
……うまくたどり着けるか自信はないけれど。
いや、そんなことはない。
私はドジじゃない。ドジな振りをしているだけ。
「行って、来ます」
家に飾ってある写真たてに声をかける。
お父さんとお母さんと咲が和解した日に撮った記念の一枚。
私にとって何よりも大切な宝物だ。
写真たてに飾って、毎日眺めている。
そこに映る私は営業スマイルなんかじゃない本物の笑顔を浮かべている。
こんな笑顔を、京ちゃんに見せられたらいいのに。
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いつもの『照さん』に気持ちを切り替え、ゆっくりと外に出た。
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……
…
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. ´ `ヽ、
/
/ ,
/ / /| ト、 ′
∠._/ / i| i \ 〕
〔 |/ 八〔\ .' \ /
. |∧ :| ┯:┯ V ┯:┯∧ / j
' ∧| 乂ノ 乂ノ ∨、 |
. /:Ⅴ "" ノ | 「京ちゃん、おはよう」
/::::入_ _ < / /| /
/\ /∧ノ へ ̄ ̄/ \リイ/ / 〔′
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\ヽーヽ └─ー/─' \
丶ー| 〉 〈 | 〈
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 ̄ {〃 Ⅵィ斧从 } /-}/-/、 , /-、 ∧}
/ , 从 Vり ∨イ ,イ斧ミ、}/ /⌒ } | '
/ イ从 l ム Vり ム' ノ/}' 「照さん、おはようございます」
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、 v ァ / 从/
\ `こ イ _|、
` r ´ //∧
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「駅まで迷わず来れて良かったですよ」
「京ちゃんは失礼。
そこまでで迷ったら生活できない」
「それもそうなんですが、家まで迎えに行っても良かったんですよ?」
「……」
「照さん?」
むぅ。京ちゃんは乙女心がわかってない。
「待ち合わせ、したかった」
「あっ……」
「……」
「じゃ、じゃあ行きましょうか」
「うん」
京ちゃんが顔を逸らす。
少しは意識してくれたかな?
「そういえば照さん」
「何?」
「その服、とっても似合ってます」
「本当?」
「はい。それに心なしかいい匂いが……」
「京ちゃん?」
「な、なんでもないです」
「……えへへ」
喜んでもらえたなら嬉しいな。
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今更だけれど、京ちゃんはとっても格好いい。
今日はデニムにシャツから上着を羽織るというラフな格好だけど、とっても格好いい。
高身長だから何を着ても似合う。
ずるい。
「京ちゃんはずるい」
「えっ、いきなりどうしたんですか」
「なんでもない」
「なーんでご機嫌を損ねちゃったのか……」
京ちゃんが苦笑いしている。
そんな風に京ちゃんを困らせて、京ちゃんの関心が自分に向いているのが嬉しい。
好きな人に意地悪をしちゃう気持ちがわかる。
「京ちゃんも」
「ん」
「とっても似合ってるよ」
「……そ、そうですか」
京ちゃんがそっぽを向いてしまう。
格好いいなんていつも言っていることだと思うんだけれども、今日の京ちゃんは様子がおかしい。
いつも京ちゃんのことを見ているからわかるよ。
一体どうしたんだろう。
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「今日はどうするの?」
「動物園でも行こうかなって思ってます」
「うん、いいよ」
「照さんは美術館とか行きます?」
「全然わからない」
「ははっ、俺もです」
「動物なら好き」
「俺もです。
実は実家でカピバラを飼っていまして、動物好きなんですよ」
京ちゃんは動物を飼っているんだ。
まだまだ知らないことがいっぱいある。
もっともっと京ちゃんのことを知っていきたい。
「やっぱり初デートは動物園か美術館かなーって考えてたんで、良かったです」
「デート?」
「デート……、ですよね?」
京ちゃんが不安そうな目でこちらを見つめてくる。
私としては京ちゃんとのデートのつもりだったけれど、京ちゃんまでそう思ってくれているとは思わなかった。
「うん。デート」
「良かったー。
じゃあ、行きましょう」
「うん」
えへへ。嬉しい。
顔がにやけるのを必死に抑える。
京ちゃんもそう思ってくれているのが本当に嬉しい。
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「照さんは動物好きですか?」
「うん。かわいい」
「どんな動物が好きなんですか?」
「えっとね。えっとね」
頭の中で浮かぶのは小動物みたいに怯える咲。
犬のように尻尾を振って懐いてくる淡。
「兎や犬」
「なんか極端ですね」
「そう?
京ちゃんはカピバラ?」
「そうっすねー。
やっぱり飼っていると愛着湧きますし、スッゲー可愛いんですよ」
カピバラの話になると興奮する京ちゃんが可愛い。
本人に言うと拗ねちゃいそうだから言わないけれど、私は満足だ。
「触ってみたい」
「あいつの毛ってめっちゃ固いんですよ。
良かったら今度触りに来ます?」
「!?」
それは京ちゃんの実家?
うん。お義父さんやお義母さんに挨拶しなきゃ……。
「是非」
「じゃ、今度予定が空いた時にでも……」
そう言って京ちゃんは顔をそらす。
やっぱり、なんか雰囲気がおかしい。
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……
…
動物園を回って、外に出てからお昼ご飯を食べる。
入ったのは値段もお手頃なファミレスだ。
変に高い店じゃない方が嬉しい。
ご飯を食べている間にも京ちゃんに凝視されているのがわかって、なんだか恥ずかしい。
いつも見たいな杜撰な対応じゃない。
「京ちゃん」
「なんですか?」
でも、これを聞くのはとっても怖い。
聞いてしまえば、今の曖昧で心地よい関係がなくなってしまうことがわかっているから。
私はこの立ち位置でいい。
京ちゃんのためにいられればいい。
そう思っていたのに、聞いてしまう。
「なんか様子がおかしいよ」
言った。
言ってしまった。
言った後にすぐに後悔して顔を俯かせる。
京ちゃんはどんな顔をしているんだろうか。
案外、私の考えすぎで『何を言ってるんですか?』なんて言ってくれないかな。
「……そうですね。
俺がヘタレで、伸ばしすぎちゃいました」
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「あなたの妹のことを考えていました」
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心臓が飛び跳ねる。
胸が締め付けられる。
唇が乾いて声が出ない。
「わ、私に妹はいない」
「せっかく仲直りしたんだから、そんなこと言っちゃダメですよ」
呆れ顔で諭すように喋る。
「と言うか、本気で誤魔化してる気だったんですか……」
「ぐぬぬ」
「……昨日初めて『照さん』に電話したんですよ。
咲から聞いた『宮永照』さんの電話番号に」
「……えっ」
「顔を覚えるのは得意な方なんで、まぁ9割は本物だとは思ってましたよ。
でも、あの時チラッと見た『宮永照』さんの印象と目の前にいる『照さん』の印象が違いすぎて、念のため」
「……」
「そうしたら、『照さん』に教えてもらった電話番号と咲から聞いた『宮永照』の電話番号が一緒だったんで、もう間違いないな、と」
「そう、なんだ」
「ごめんなさい。
頑なに隠そうとしていたから、聞かない方がいいと思っていました。
でも、どうしても聞きたいことがあったんで、調べちゃいました」
京ちゃんも震えている。
やっぱり怒っているのかな。
困惑しているのかもしれない。
京ちゃんがゆっくりと唇を開いた。
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「照さんはどうして、こんなことをしてたんですか?」
口を紡ぐ。
何も答えられない。
菫にすら話せなかった自分の浅ましさが露わになる。
それを目の前の彼に話すことがとっても辛かった。
でも、もう逃げていられない。
「京ちゃんは好きな人はいる?」
「!?」
「私には、いるよ。
京ちゃんの好きな人は、『憧れの人?』」
雰囲気が重苦しい。
もっと楽しいデートになるはずだったのに、なんて考えると目から涙が溢れそう。
こうなってしまったのは自分のせい。しっかり受け止めないと。
「それとも、咲?」
空気が固まった。
時計の針が止まった気がする。
京ちゃんが瞬きひとつしない。
「それ、は」
「私はね、京ちゃんのことが好き」
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12/12
「だから、咲の真似をしていた」
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続く
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最終更新:2016年03月01日 01:45