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あなたが好きです(平行世界)



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 【あなたが好きです】(平行世界)


 「なんで、そんなこと……」

 「嘘じゃない。

  これは本当の気持ち」


 ドクンと胸が高まる。

 口の中の水分がなくなったようだ。

 こんなに緊張したこと、麻雀でだって経験がない。


 「いつからですか」

 「いつからだろう。

  忘れちゃった」


 これは少し嘘。

 それを言うのは恥ずかしい。


 「好きならなんで、咲の真似なんか」

 「それは……」


 少し怒ったような顔をして京ちゃんが詰め寄る。

 それを聞くのは、ちょっとひどいかな。

 京ちゃんだってわかっていることだよ。


 「京ちゃんが、咲のことを好きだから」


 自分で言って、頭をガツンと殴られた衝撃を感じた。

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 私はいつもお姉ちゃん。

 いつだって優先されるのは妹。

 そのことについて全く不満に思わない聖人なんかじゃない。

 過去のことがあって、不貞腐れて、妹のことを忘れようとしたくらい。

 みんなが私のことを美化する。


 私は『優等生のインハイチャンピオン』なんて記号じゃない。


 私だって人間だ。

 姉妹喧嘩をすれば妹を優先されて不貞腐れる。

 私はお菓子が好きだ。ついつい食べ過ぎてしまう。

 本当は誰かに甘えるのが好きだ。

 迷子になって咲と一緒に泣いてしまったこともある。

 タブレットの操作だって必死に覚えた。

 嫉妬だってする。

 麻雀で手を抜かれた時には本気で怒った。

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 私のことを何も知らない貴方が眩しかった。





 

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 最初は咲に関わっていたということで近づいた。


 彼の人となりを知った。


 とっても優しくて、エッチだけど、人を気遣う強さを持っていた。


 駄々をこねて足を止めて、手を伸ばした。


 貴方はやれやれと呆れながら手を取ってくれる。


 いつもなら迷子にならないようにちゃんと下準備をして出かける道も、貴方が前もって調べてくれる。


 私は誰もいない家で一人、仕事に行った母親と自分のために料理を作っていた。


 その寂しさを埋めるように、文句を言いながらも構ってくれる。


 苦手な料理だって、誰かを見捨てられない貴方は作ってくれる。


 1・2年の頃は講義の時間を必死に覚えた。ドジにならないようにメモを持っていた。


 今は貴方が心配してくれる。その時に講義の時間を確認するだけでいい。


 いっぱい甘えて、いっぱい助けてもらった。


 そんな貴方が大好き。

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 「私は貴方にとっての咲になりたかった」




 

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 それは叶わないことだとわかっていた。


 「京ちゃんが辛いのはわかっていた」

 「そんなの、照さんにわかるわけないじゃないですか。

  誰にだって相談したことない」

 「わかるよ」

 「なんでですか」

 「恋する乙女は、好きな人のことには敏感」

 「……」

 「京ちゃんが誰かにお世話をして、誰かのために動く。

  それが当たり前になるくらいの関係の人。

  ……そして、それは今いない人」


 咲と話せば出てくる、貴方の思い出。

 仲直りした日の思い出話。貴方の話をたくさん聞いた。

 その時からずっと気になっていた。


 「京ちゃんは私の中に咲を見ていた」

 「そんな、ことは」

 「そんな顔をしないで。

  そういう風に思わせたのは私自身」

 「そんなわけっ」

 「自然と迷う誰かのために、見ていないと不安な誰かのために、京ちゃんが好きな咲のために」

 「やめてください」

 「……」

 「俺はそんな大層な人間じゃない、です」

 「知ってる。

  私はそんな京ちゃんだから好きになった」

 「なんで」

 「私はこのままの関係でも良かった。

  京ちゃんが咲を求めて、私は咲になりたくて、いつか京ちゃんの心の傷が癒えるその時までいられれば良かった」

 「そんな自己犠牲なんてあるわけない!」

 「女の子だから」


 その言葉に息を飲んだのを感じた。

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 「でも、これでおしまい」

 「照さん?」

 「私は咲の真似事をして京ちゃんの気を引きたかった。

  京ちゃんも、私も、こんなことを知ったら一緒にはいられない」


 震える声を無理やりしまう。

 大丈夫、愛想笑いは得意だ。


 「今までありがとう」


 今日会った時には浮かべられなかった笑顔がすんなり出てきた。

 嬉しくて楽しくて、昨日は夜眠れなくなるほどだったのに浮かべられなかった笑顔。

 京ちゃんが格好良くてニコニコ笑おうと思ったのに、ニヤァなんて笑っちゃう私。

 まるでこれから記者会見を受けるかのように、綺麗に笑えた。


 せめて京ちゃんにとっての最後の宮永照が、笑顔で終わりますように。

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 「俺の名前の意味って知ってますか」




 

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 フラッシュバックのように何かを思い出す。

 忘れてしまった何かの記憶。

 思い出せそうで思い出せない。


 「小さい頃、とある人に教えてもらったんです」


 困惑する私に対して、京ちゃんは顔を上げる。

 さっきまでの不安そうな顔をしている京ちゃんはどこにもいない。

 意を決した男の子の顔。

 こんな状況なのにドキッとした。


 そんな顔をしないで。

 諦めきれなくなる。


 「『京』は京都の京。

  日本の中心って意味です。

  『太郎』は日本男児の名前で健康優良」

 「名前……」

 「『須賀』は須賀の地を指し、『落ち着く』と」

 「それは……」


 私だって知っている。

 名前に関しては、自分や咲の名前について調べたことがある。


 「照さんは言いました。

  俺の隣にいると『落ち着く』って」

 「……うん」

 「すごく嬉しかった」


 そうだ。

 名は体を表す。

 京ちゃんには京ちゃんの良さがある。

 隣にいるだけで、とても落ち着く。

 私を引っ張ってくれる、私の中心。

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 「俺が好きなのは咲じゃない。

  照さん。あなたが好きです」


 ……


 えっ?


 「京ちゃ……」

 「またせちゃってごめんなさい。

  俺はまた、あの時みたいに何も言えないままになるとこだった」

 「う、うそ」

 「この数ヶ月、俺の隣にいたのは咲じゃない。照さんです」

 「……それは咲の真似をした私」


 心が嘘をついている。

 代替えでもいいと騒いでいる。

 受け入れてしまえと叫んでいる。

 それでも、私の中の面倒くさい部分が顔を出した。


 「咲の真似をした照さんなんていませんよ、照さんは照さんです」

 「そんなこと……」

 「言っちゃアレですけどね。


  全 っ 然 似 て な い で す っ ! !」



 えっ


 「まじ?」

 「マジです。

  咲はあんなお菓子マシーンじゃありません。

  まぁ面倒くさがりなところとか、姉妹っぽいなってところはありますけど」


 あれ?


 「そもそも咲は俺に対してもっと辛辣です。

  照さんとのデートで咲の名前をあんまり出すのもアレですが、何頼んでも嫌そうにするし」


 それは照れ隠しじゃないかと、姉の感が言っている。

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 「照さんは素直で、まっすぐに感情をぶつけてくれる。

  『照さんが知っている咲』って、『照さんに甘える咲』なんじゃないですか?」

 「あっ……」


 そういえばそうだ。

 咲といえば甘えん坊。

 私にべったりと甘えてきてるイメージが強い。

 だから私も京ちゃんに甘えていたんだ。


 「あんなべったり甘えてきたりなんかしません。

  俺の知っている照さんはここにいる照さんだけですよ」

 「……」


 顔を伏せる。

 嬉しい。


 「京ちゃんはすごい」

 「えっ」

 「そうやって人を笑顔にする」

 「へへっ、どーですか」

 「とっても嬉しい」


 やっぱりそうだ。

 こんなワガママを言っても、自分だけの理屈を言っても。

 京ちゃんはブレない。

 私が『咲の真似をしている』なんて言ったのに。

 本当の『ありのままの私』を見ていてくれる。


 ああ、やっぱりこの人が好きだ。

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 「もう我慢できない」


 「はいはい。

  これでいいですか」


 「もっと強く抱きしめて」


 「む、難しいです」


 「えへへ」


 「照さんいい匂いがするから……」


 「もっと嗅いでいいよ」


 「積極的ですね……」


 「京ちゃん」


 「なんですかー?」


 「日本の中心を照らすのは、太陽?」


 「……詩的ですね。

  結構本を読むんですか?」


 「うん。本は大好き」


 「そうですね。

  照さんだけのこと、もっと知りたいです」


 「うん」

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 「これからもたくさん覚えてね」





 

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最終更新:2016年03月01日 01:46