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【宮永照-エピローグ-】(平行世界)
「と、いうことで京ちゃんと付き合うことになった」
「何が『ということで』、だ馬鹿者」
菫に何で罵倒されているのかわからない。
こんなに幸せに語っているというのに。
せっかく幸せのおすそ分けをしているのに、菫は心が狭い。
「この一日で何回『京ちゃん』を聞いたと思う?」
「それでね、京ちゃんがね」
「いい加減にしてくれ……」
菫がげんなりしている。
「せめて話のレパートリーをだな?」
「うん」
「毎回毎回、同じ話を繰り返される気持ちにもなってくれ。
それに、随分とまぁ急展開じゃないか」
「そうかな?」
「少し前には『自分のことを隠しながら魅力を伝えるにはどうしたらいいか』なんて相談しておいてこれだ。
次に会った時には解決しているとは」
「そういえばそうだった」
「全く、私も何かアドバイス出来ないかと色々と勉強してきたんだぞ?」
それは悪いことをした。
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|:.:.\:.:.:.∧ ' .::\:|:.:.| 「それはもう、ツタヤに行って少女漫画と昼ドラをだな……」
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「うん。やっぱり聞かなくて正解」
「人に相談しておいてそれか」
「人に話すだけでも楽になることはある」
「それは相談を受ける側の私が言うことじゃないだろうか」
だって菫だもん。
「関係も少しは先に進んだのか?」
「えへへ。
この前告白された時、手を繋いでくれた」
「それは……憧れるな」
「でしょ?」
胸を張って自慢する。
「手を繋いでデート、乙女の憧れだ」
「うん。すごく気持ちよかった」
「まぁ、手を繋いでいないとすぐにどこかに行ってしまうもんな」
「菫は失礼」
「彼氏からも『ドジ』認定されているんだろう?
演技をする必要なんてなかったじゃないか」
むぅ。菫が意地悪な笑みを浮かべている。
「キスはしたか?
それともお持ち帰りされたか?」
「!!?」
「……えっ」
「そ、そんな、恥ずかしいよ」
「人の家に勝負下着で乗り込んでいる奴の言うことか……?」
「菫はスケベ」
「なんで私が責められているんだ!」
だって……。ねぇ?
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「女子なら誰だって気になることだろう……」
「うん。私はいつでも準備オッケー」
指でブイの字を作り、菫に見せる。
菫はやれやれと手を振った。
「そんなことを言いながら、本番になったら真っ赤になってしまうだろうな」
「うぐっ」
「実はキスされそうになって、ヘタレて逃げ出したなんてありそうだ」
「うぐぐぐぐっ」
「……私はその彼氏くんに同情するよ」
「いいもん。京ちゃんに慰めてもらうから」
「はいはい。ごちそうさま。
噂の彼氏くんが来たようだぞ」
「えっ?」
菫の声に反応してみれば、サークルの入り口に京ちゃんがいた。
私に手を振っているようなので、犬のように駆け出す。
「京ちゃん、どうしたの」
「そろそろ終わりかと思って、迎えに来ちゃいましたっ」
「嬉しい。どきっとした」
「そ、そうですか」
これは本当。
京ちゃんが私のことを迎えに来てくれたことが嬉しくて、胸が温かくなる。
手をつないでいた時のドキドキとは異なる感情。
京ちゃんはいつも、私が知らないものを教えてくれるんだ。
「あー、彼氏くん。あんまりここでイチャイチャしないでくれ」
「すみません……。すぐに回収します」
「回収されます」
「ああ、それと。
私たちももう3年なんだ。進路のことはしっかり決めておけよ」
菫が最後に言い残した言葉に表情を曇らせる。
そっか、もう三年生なんだ。
進路のことを考えて、来年からは就職活動だ。
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……
…
「へっ、進路ですか?」
「うん。京ちゃんはどうしたいのかなって」
「何も考えてないんですよねー」
家の中でグデーっとしながら答える京ちゃん。
そういう京ちゃんは、きっと誰かのために働くことができる人だ。
どこに行ってもやっていけるタイプというのは、このことを言うのだろう。
「聞いていいのかわかんないんですけど……」
「京ちゃんなら何でも聞いていい」
「それなら。
『どうしてプロに入らなかったんですか?』」
この質問が来ることは覚悟していた。
周囲の環境、菫の追求、何から何まで『宮永照は高卒プロ入り』と決めつけていた。
きっと周囲が驚くような理由だ。
だからちょっと意地悪してみる。
「当ててみて」
「マジっすか。
えー……。
『麻雀なんてしがらみを捨てて遊びたかったから』なんてどうですか?」
-─===‐-ミ
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人_ u j.: .:| 「……当たり」
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i.: .: .:i .: : _;〕ト _/| h ≦.:.:.|: 八/
ト、.: .:|/⌒ 、_| | | | ト、`〉、|/
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「すっごく俗物的な理由ですね……」
「ダメかな」
「いいと思いますよ。
たいていの大学生なんて遊びたい目的っすよ。
照さんのことですし、優等生ぶるのに疲れた反抗でしょ。
それでも頭のいい大学を選ぶあたりが照さんらしいというか……」
「なんでばれてるの」
「好きな人のことならわかる。男の子だから!」
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見事に一本返されてしまった。
やっぱり京ちゃんにはかなわない。
かなわないことがとても嬉しい。
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「それでも、京ちゃんに会うまでの二年間は何も変わらなかった」
「あれ、そうなんですか?」
「うん。
手厚い待遇に努力して勉強、遊び方なんてわからなかったから」
「今もそんな遊んでないですよね」
「私にとっては、京ちゃんと一緒にいるだけで幸せ」
「そんなこと言わないでください。
いっぱいデートしましょう」
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/: : ィ: : :{: |r----从\: : |, ---- ミ: : :,: :/: : ,
 ̄´ |: }从:{ ⌒Y ∨ ⌒Y }: :/}/Y : ′
|: : : :/ 乂_ノ 乂_ノ /:イ /: :,′
|: : : { //// ////r-: ': : /
从: : 乂 ^ー( イ: : :/: :/ 「……うん!」
∨: {:从{¨¨, ィ「 ̄ 7¨´、_: 从:イ: :/
\| / \ ∨^/ />/' }:/
/ |乂\∨_,イイ/ }
{/⌒ア `ー介 -‐´ {__〉
{`ー∧ /:∧:.、 |- r'
やっぱり京ちゃんは卑怯だ。
何も考えてないようで、人の心を溶かしていく。
私が一番欲しい言葉をかけてくれる。
とても嬉しい。胸がポカポカする。
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「あー、ちょっと重い話になるんですが」
「何?」
「俺は別に、照さんが麻雀辞めても気にしませんからね?」
「えっ?」
言っている意味がわからない。
自分で言うのもおかしいが、『宮永照と付き合っている』というのは京ちゃんにとってのステータスになると思う。
京ちゃんのためなら麻雀だって頑張れる。
「照さんが麻雀好きでやってるなら話が変わるんですが」
京ちゃんは頭を掻きながら話を進める。
私はあえて全てを聞こうと思った。
「咲みたいに特別好きじゃないって場合なら、無理に続けなくてもいいんじゃないですか」
「それは、どういうこと?」
「あー、そのー……だからさー……」
京ちゃんの物言いがはっきりしない。
何を言いたいか、本当にわからない。
「俺の側にいてくれればいいんだよっ」
私の頭が爆発した気がした。
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「もし麻雀嫌いだけど無理に続けているなら、他にもいっぱい遊びを教えます。
照さんはプロになりたくないからこんなことをしているのかなって。
そうだとしたら、無理にプロになる必要だってないですからね」
「ほう」
顔が焼きあがって京ちゃんの顔を見ることができない。
格好いい。
素敵。
だいすき。
「夢がある」
「なんですか?」
「……主婦になること」
今なら、普段は言えないような恥ずかしいことも全部言ってしまえそうだった。
「麻雀は嫌いじゃない。
むしろ好きだけど、それはそれで……」
「ああ、うん、わかりますよ……」
二人して顔を赤くして俯いている。
付き合い始めの大学生カップルがする会話じゃない。重すぎる。
何をやっているのかわからなくて混乱する。
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「俺が養いますから、その辺は気にしなくても……」
「お、お願いします」
なんだかよくわからないことになってきた。
雰囲気はまるでお見合い。
「でもそうなると貯金を貯めたりするのに時間がかかりそうですね」
「あっ」
話が飛躍しすぎているけれど、私は結婚を思いついた。
京ちゃんと結婚したい。すごくしたい。
須賀照になりたい。ドヤ顔したい。
結婚するのは女の子の憧れ。
「決めた」
「照さん?」
「プロになる」
「照さんが決めたなら、俺はそれを支えます」
京ちゃんは安心したような表情を浮かべている。
大学生には重い会話だろう。
でも、京ちゃんを逃がす気はない。
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/ : : : ィ: :{: : :/ィ-、 }:∧: : : | -}:|-|---く: : : : : : ,: : : : : :|
 ̄´ |: ∧: :| _)雫ミ从: : :| _}∧:_:/ }ヽ : : : /: : : : : :
|: : : Ⅵ V::ノ \|´_)笊雫ミ/: : : :/:/: : : : : : ,
|: : : ,: | , V:::::ノノ' : : イ:.イ: : : : : : ,′ 「プロで結婚資金と貯金を稼いでから寿引退する」
|: : :j:从 /:/ /' ノ: : /: : :/
|: : ,|: {: : . _ ´ ィ: ー ´: : :/: : :/
|: :/|: 从: : : . ‘ ’ イ |: :/ : : :/: : :/
|:/ 从{_r--'´` ー 、-=≦ ∨: : : /: : :/
}' / ||:| ∧ /,': : : /: : .イ
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,く ̄´ ` / /^T \ { マ〉
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, ´ / ,' : 、 ヽ
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「えっ、なにを言っているんですか!?」
「これに決めた。やりたいことは全部やる」
「ワガママですね」
「今の私はワガママ照さん。
もう我慢しないって決めた」
「……とってもいいと思いますよ。
照さんは昔から我慢しすぎなんですよ」
京ちゃんがハッっと口を漏らしたような表情を浮かべた。
すぐに元の京ちゃんに戻ったけど、私は見逃さなかった。
あえて気づかないふりをして話を続ける。
「これから麻雀に本気で取り組んで、プロ入りする。
お金を稼いで、子供ができたら主婦になる。
主婦でも京ちゃんを支えたいからパートさんの仕事をしたい。
……もちろん、京ちゃんの意見があればそれに従う」
「いやぁ、いいと思いますよ。
俺なんてまだ何にも考えてませんから……。
麻雀、やりたければやって、やりたくなければやらなきゃいいんですよ」
「うん、そうする。
京ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして。……でいいのか?」
京ちゃんが笑った。
「しかし今から結婚の話は、さすがに雲の上ですね」
「重い女の子は嫌?」
「照さんなんて軽いですよ。
ずっと一緒にいますから」
「うん、それに、ね」
「?」
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「結婚したら許してくれるって言ったでしょ」
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京ちゃんの顔が真っ赤になる。
ようやく反撃できたかな? 勝利のVサイン!
そんな京ちゃんを見て、私は―――
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... ´. . . . . . . . . . . . . \
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′ー―ァ: :/: :从: : : ト--ミ: i: : : :|: : :'
′: : : ://⌒/ }: : :リ }: :ハ:|ト: : :i: : : ,
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/: :从: : 八《´んハ. j/ r==ミ /: ::/| . . .|
// _ }ト: : :ハ 弋 ソ :::::: 厶イ: |: . . |
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. i し' ./ .i} i: ::::i:::::>o。.. < i::::::::/::/: :/: |
ノir―-ミ |:∧:::八::::::::::r'ス´ / ゝ-、 :/}: / }/
f入 `ー 〉 /' V_ゝ/.〈 Ⅹ / i`/イ、_
辷ーく / / / rヘ/__rヘ_/ | ヽ
{ ̄` 入 i / | /:::| / . / ハ
. Y i 圦 |. `> 1 /::::|l ∧ _彡 /
ハ. // ‘, 」:::/ / |/::::::|l/ \ / |
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マ:::::::::::. 八:::::::::::::\く L:::::::::::::| ′ {
`マ::::::::. :∧:::::::::: ヽ} ::::::::::::::::::::/ .j
マ::::::: }i :::i Oj ::::::::::: /
―――初めて、心の底から笑えた気がした。
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最終更新:2016年03月01日 01:47