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違和感(平行世界)



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 【違和感】(平行世界)


 どこかふわふわとした感覚。

 まるで夢を見ているようだ。

 自分は『小瀬川白望』という中で、自分とは別の『小瀬川白望』がすることを覗いていた。


 「京、だるい」

 「はいはい。ちょっと待ってくださいねー」


 京は私の言う通りにお茶を入れてくれて、コタツに入っている私の背中に毛布をかけてくれる。

 すぐに飲もうとする私に『まだ熱いですよ』、なんて注意をして、ゆっくり背中をさすってくれる。


 「京」

 「今取ってきますよ」


 声をかけると、今度はみかんを持ってきてくれた。

 持ってきてくれたみかんをじっと見つめる。

 京と目を合わせて、すぐに視線をみかんに戻す。


 「仕方ないなー」


 そんなことを言いながら、京はみかんを剥いてくれる。

 私はまるで妹や娘にするような扱いを甘んじて受けていた。


 「はい、あーん」

 「あー……」


 それはちょっと恥ずかしい。

 だけど嬉しいから食べてしまう。

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 ボーッとしながらもいつもの無表情。

 京はそんな私を見ながら、ニコニコしている。


 「ゴミ捨ててくるよ」

 「うん……」


 そろそろ動かなくては、なんて思っても京が先に動いて全て終わらせてしまう。

 言ってはなんだが、すごく楽だ。

 『小瀬川白望』のあるべき姿とは、こちらの方が正しい気がしてくる。


 (ずっとそうだったな)


 塞や胡桃に何度注意されたかわからない。

 いつもこうしてだるだるしていて、自分から行動なんて滅多にしない。

 二人ともなんだかんだ言いつつ私のフォローをしてくれるから、それに甘えてしまうんだ。


 「シロ姉、お風呂湧いたよ」

 「おぶって……」

 「さすがにそれは危ないって」


 私はこんなことを言えたっけ。

 京と密着するなんてなったら真っ赤になってしまう気がする。

 でも、こっちの私の方が正しい私な気がする。


 わからない。

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 「シロ姉、どうしたの?」

 「ん」

 「?」

 「なんでもない」


 そんな私に気づいたのか、わざわざ回り込んで私の表情を確認する。

 私はいつも通りコタツに突っ伏して、顔を横にそらす。

 京はその顔が見える位置にまで移動してこちらを見てくる。

 なんだか気恥ずかしい。


 「シロ姉お風呂ー」

 「京が先に入っていい……」

 「俺、他にもやることあるんだけど……」

 「じゃあ入る……」


 私はダルそうに立ち上がると、京をじっと見つめた。

 『どうしたの』なんて表情を浮かべる京に、一言付け加える。


 「一緒に入る?」

 「バッ、何言ってんだよ」


 京が顔を真っ赤にする。

 わずかな優越感が胸に飛来する。

 挑発するように上着を脱ぐと、京はそそくさとその場を離れた。

 それをぼーっと見つめる。

 特に何か考えていたわけではなかった。

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 それからも、京に料理をしてもらったり、髪を梳いてもらったりと至れり尽くせりを味わった。

 私の知っている京は料理なんて出来なかったと思うけれど、とても美味しい料理が出てきた。

 何より、京に料理をしてもらっているだけで嬉しいかもしれない。


 「今日は自信あるんだけど」

 「美味しい」


 ちょっとは女の子として危機感を覚えた方がいいはずなのに、私はそれを享受する。


 「あっ、お味噌汁おかわりする?」

 「する」


 パタパタと主夫のように動く京。

 高身長も相まって違和感を覚える。

 それでも、だるがりの私にとっては関係ないらしい。

 私をお世話してくれる京が、とっても可愛らしかった。


 「シロ姉、機嫌いいね」

 「そう?」

 「表情変わらないけど、わかる」

 「んー」


 ちょっと恥ずかしいから顔を背ける。

 自分を理解してくれているということは嬉しいものだ。

 ただ、それを直球で外に出すのは難しい。

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 「明日の講義は俺出られないんだから頑張ってよ」

 「だるい……」

 「そんなこと言うなよ。

  シロ姉はやればできるんだから」

 「生意気」

 「実際成績いいんだもんなー。

  かなわないよ」

 「……そんなことない」

 「なんだかんだ言ってなんでもできるし」

 「だるい」

 「だるがりなんだもんね」

 「うん」

 「俺がいなかったらどうなっていたことやら、なーんて……」

 「きっと大変だった」

 「そ、そっか?」

 「うん。

  だからお世話して」

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 思えば、小さい頃からこんなことを夢見ていた気がする。


 誰かが自分のお世話をして、自分は何もしない。


 出来れば好きな人にやってもらいたい。


 そんな小さな乙女心は誰にだって話したことはない。


 だるいから何もしないで生きていたい。


 そんな考えが払拭されたのは……。

 

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 ……
 …

 「変な夢」


 朝から変な気持ちで目が覚めた。

 それは今が夢か幻かわからない感覚。

 本当に目が覚めたのか、さっきのは夢なのかが判断できない。

 じっと自分の掌を見つめて、ちょっと摘んでみる。


 (こんなことをしても、わからないけど)


 鈍い感覚。

 リアルな夢ではそういうものを感じることもある。

 それでも、だんだん目が覚めてきた。


 そうだ。

 自分にはやらなければいけないことがいっぱいある。


 「朝食と、京のお弁当」


 頭の中でやるべきことを整理していく。

 横を見れば京はまだ寝ている。

 ギリギリまで寝かせてあげたい気持ちが強いから起こさない。

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 (京が、主夫?)


 先ほどの夢を思い出す。

 意外と細かい性格だし、責任感も強い。

 でも、自分の前の子供っぽい部分を思い返して、それはないなと結論づける。

 何より、女の子として色々としてあげるのは、嬉しいし楽しい。


 それに、主夫に収まるような人でもないなと、何となく思っていた。

 お嫁さんに文句を言われながらもいい旦那さんをして、仕事をしている姿が浮かぶ。

 なんだかんだで男の子だし、プライドもあるから。


 そのお嫁さんは自分であることは譲らないけれど。


 そこまで考えて顔を赤らめる。

 自分がお嫁さんで、京が旦那さん。


 …


 全く、京は卑怯だ。

 寝ているだけで人の感情を動かす。

 こんなことを考えている場合ではない。早く朝食を作ろう。


 (……?)


 体が重い。

 無理に起き上がってふらつく。

 ダメだ。もうちょっと頑張らないと。


 「……シロ姉?」


 後ろから声をかけられる。

 京に支えられたとわかった途端、安心して脱力した。


 続く


最終更新:2016年03月10日 19:06