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小瀬川白望-エピローグ-



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 【小瀬川白望-エピローグ-】


 結局のところ、一人で空回りして、一人で納得して終わってしまった。

 何かあっても京の笑顔を見るだけで癒されてしまうあたり、自分のちょろさが憎らしい。


 「おーい、シロ姉?」

 「何?」

 「へっへー、呼んでみただけー!」

 「……」

 「あいたたた」


 まるで付き合いたてのバカップルのようなことを繰り返すようになった京の手を抓る。

 全く、なんでそんなことをするようになったのだろう。


 「だってこうすると、シロ姉かわいいし」

 「?」

 「顔、真っ赤だよ」

 「……!?」


 それを言われてもっと顔が赤くなったのを感じた。


 「だからさー」

 「……京、生意気」

 「俺だってシロ姉に振り回されてばかりじゃいないんだよ!」

 「……ハァ」


 元気な弟の……『彼氏』の面倒を見るのはすごく大変だ。

 大変だけど、胸が温かくなる。

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 「姉の威厳を忘れた?」

 「えっ?」


 再び、触れるようなキスをする。

 京、顔が真っ赤。


 「……シロ姉、それは反則」

 「お返し」


 なんだろう。

 すごくバカップルみたいになっている気がする。

 こんなの私の性格じゃない。


 違う

 こう考えるのはやめたんだ。


 これもまた、私の一つ

 その考えが、ゆっくり体に染み込む

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 ……
 …

 そのまま夜になって、いつもと変わらず家事をこなす。

 京が『手伝うよ』なんて言い出したけれども、私の仕事は譲らない。

 これは私が好きにやっているだけ、と言ってもいまいち納得してもらえない。


 「でも、前に倒れちゃったし」

 「あれはただ風邪気味だっただけ。

  京だって風邪をひくことくらいあるでしょ」

 「へへーん。

  俺、風邪とは無縁なんだ!」

 「……ああ」

 「あっ、今『バカだから』とか思っただろ!」

 「思ってない」

 「このー!」

 「家事をやっている最中にほっぺたを摘まないの……」


 まったくもう。

 こんなことをしていながら、精神的には大人になっている。

 そんなところがすごく卑怯だと思う。

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 思えば、小さな頃はどうだっただろうか。


 あの頃からダルがりだったはずなのに、落ち着かない京のために手を引いて歩いていた。


 それから再開して、告白された。


 あの時の私のことを好きになったのだと思って、ずっと頑張ってきた。


 頑張ってきたつもりだったことはすべて私の本心だった。


 好きな人のために、何かをしたい。


 ダルい、という感情を超えていく。


 そして、もう一つ。


 変わったのは私だけではなく……


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 ……
 …


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        )/(\ノ/}>   ´ イi:i:ト、)ノ /     「久しぶり……」
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 ああ、またこの場所だ。

 『もう一人の私』と出会った場所。

 曰く、『私と京だけの理想郷』


 「覚悟は決まった?」

 「うん」

 「そう……」


 お互い口数が少ない。

 目の前にいる私も、私と同じような性格なんだろうか。


 「今のあなたはどう思う?」


 それを聞かれることはなんとなくわかっていた。


 「好きな人のためならダルくない」


 考える前に、自然と口から出てきていた。


 「きっともうあなたと会うことはない」


 霞ゆく意識の中で、私が、彼女が、笑った気がした。


 …
 ……

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 7/12


 「シロ姉?」

 「ん」

 「今ぼーっとしてなかった?」

 「してない」


 白昼夢、ではない。

 きっとあれは、私の可能性の一つ。


 「ねぇ」

 「なんだー?」

 「京はダルがりな私は好き?」

 「どっちも好きだよ」

 「どっちがいいのか聞いてる」

 「個人的には、普段ダルがりなシロ姉が俺のために何かしてくれるの嬉しいよ」


 まっすぐ京を見据える。

 負けじとこちらを見返してくる。


 「京は、大きくなった」

 「えっ?」

 「あの小さくて、やんちゃで、私を呆れさせていた頃から」

 「ちょっ、やめてくれよ。

  懐かしいけど恥ずかしい!」

 「やめない。

  再会したのは、高校生だった」

 「ううっ」


 自然と言葉が口から漏れてくる。 

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 「それから京が告白してくれた」

 「そ、そうだったっけ。

  っていくらなんでも恥ずいって」


 「また、私が京の手を握っていた」


 「ずっとそう思っていた」


 「実際には、京が私の手を引いていた」


 キョトンと、何を言っているのかわからないと言った顔をしている。

 うん。わからなくていい。

 私は口下手だから、伝わるとは思っていない。

 あとはもう、自分が納得していればいいんだ。


 「なんだかわからないですけど、抱きついていいですか」

 「……ちょっとだけ」


 『やったー』なんて言いながら抱きついてくる。

 腕を胸に当てて楽しんでる……。

 そういうところ、分かりやすい。


 そうだ、よく考えてみればいつもこんな風だった。

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 小さかった男の子は男になっていた。


 人の想いを察せる、とっても優しい人。


 私が京のために『何かしたい』と思えば、自然と『何かさせてくれる』


 『お姉ちゃんのようになりたい』と思えば、先ほどみたいに抱きついてくる。


 形にしてお世話にしていた『あの世界』と同じで、わかりにくくても手を引かれていたのは私だった。


 京はずっと、私のことを考えてくれていた。


 本人はきっと否定するだろうけど。


 変わったことが後ろめたくて、恥ずかしいのかもしれない。


 やっぱり京は、生意気だ。

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 それなら私にも考えがある。

 ずっと前から考えていたことだ。

 付き合い始めてからこれまで、言葉にできなかったことがある。

 お姉ちゃんぶって、ダルさを隠して、京が大人になっていたことに気づいて、なおまだ言い出せない。


 でも、今の自分を受け入れて、今の京を受け入れるためにも言っておきたい言葉。

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 「すき、だよ」




 
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 人生で初めて口に出した単語。


 京の体が硬直したのを感じた。


 京の体に顔を埋めているからよくわかる。


 これからの自分は認めていく、そう決めたのに―――




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              ̄      -|  `  ‐      | 八
                  / ヽ!         /   ヽ
                 /    \      イ      |::::<..
             ,, - ''"|       ` ヽ  / 、         l:::::::::::::::::::...<



 ―――さすがに、今の顔は見せられそうにない。


最終更新:2016年03月10日 19:09