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小ネタ
「なんだこのー!」
「ふん!」
麻雀部で喧嘩している二人を見て頭を抱える。
このサークルでの問題児、大星淡とネリー・ヴィルサラーゼだ。
二人とも麻雀特待生ということで推薦を受けて大学に通っている。
だが、そんな二人は致命的なほどに仲が悪かった……。
「おい、須賀。
早く止めてこいよ」
「なんで俺が……」
「あの二人が懐いているのお前くらいだろ」
そんな二人は高圧的な発言を繰り返し、他の麻雀サークルの部員からは距離を置かれている。
麻雀の卓上ではまるで魔物のように振る舞い、それ以外でも常に気を張り詰めている。
二人に好意的に接しようとするのはコミュ力おばけこと須賀京太郎しかいなかった。
「あっ、キョウタロウ!」
「キョータロー聞いてよ!
コイツさっき淡ちゃんの真似した!」
「真似される程度の麻雀でしょ」
「なんだとー!」
喧嘩の内容は千差万別。
よくもまぁくだらないことで喧嘩できるほどだ、というレベルだ。
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「この前はきのことたけのこ、その前はポッキーとトッポだっけ」
「あっ、思い出した!
あの時の決着もまだついてないんだからね!」
「ふん、今着いたじゃん」
「一回勝負じゃないもん!
雑魚が混じってたからいけないんだし!
私直撃受けてない!」
「コラッ!」
その発言を聞いて京太郎は怒鳴った。
先ほどまで卓についていた二人が萎縮している。
「言っていいことと悪いことがあるだろ」
「……ゴメンなさい」
「俺に謝ってどうすんだ。
あの二人に謝りなさい」
「……うん」
先ほどまでの不遜な態度は何処へやら、シュンとして落ち込む淡。
落ち込んだ後は先ほどまでの態度が嘘のように対局相手に謝りに行った。
京太郎自身理由はわかっていないが、淡は京太郎が叱ると素直に言うことを聞くのだ。
「淡、素直なところはいいところなんだけどなぁ」
「キョウタロウ。私が勝ったよ」
「凄いじゃん。
これで戦績は五分だっけ?」
「私の方が少し勝ってる!」
「あれ、五分だったような……?」
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「なんでもいいから、私が勝ったから、何か頂戴」
「なんで俺があげるんだよ。
それに何も持ってないぞ」
「うーん、なら……」
先輩に謝罪している淡をチラ見する。
そこでニヤリと笑ったかと思うと、京太郎に思い切り腰掛けた。
「何やってんのお前」
「いいからいいから」
「?」
ネリーに乗られても小動物に乗られているような気分でしかない。
しかしネリーは嬉しそうに座り、淡の方向をずっと見ている。
「あわっ!?」
「ふふふ」
「ああ……」
何となく京太郎は理解した。
淡は般若顔……というには可愛らしい顔だが、怒りを表に出した顔で走ってくる。
「なんでコイツがキョータローに乗ってるの!」
「『私が、麻雀に、勝ったから』」
「むきーっ!
もう一回、もう一回勝負!」
「ネリーは無駄な手の内を晒さないよ。
麻雀はお金のためにやってるの」
「ヒキョーだ、ヒキョーだ!」
「普通にやって勝っただけじゃん」
だんだん淡が涙目になってくる。
京太郎も呆れて、そろそろ助け舟を出そうかな、などと考え始める。
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「ネリー、そんなことだと人に嫌われるよ」
「……っ」
少しキツい言い方だが、ネリーのことを友達だと思っているからこそ言わなければならない。
ネリーもまた、淡と同様に友達がいない。
数少ないコミュ力魔王の京太郎以外とは会話が成立しない。
しかしなぜか京太郎の言うことは渋々聞くのだ。
「……別に嫌われたっていいし」
「よくないだろ。
俺と淡くらいしか友達いないよね」
「「こんなの友達じゃない!」」
「……あー、もー面倒くせー!」
いい加減面倒くさくなった京太郎が少し大きな声を出すと、二人とも小動物のように怯えた。
それを見て罪悪感が浮かんだが、もう止まることはできない。
「はい、仲直り!」
「「……ゴメンナサイ」」
「よろしい」
明らかに不満タラタラだが、形だけでも仲直りだ。
このいつ壊れてもおかしくない関係は、微妙な均衡で成り立っている。
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5/7
……
…
「…・…キョータロー、私のこと嫌いになってないかな」
何かと高圧的な態度を取ってしまう淡に対して、友好的に接してくれたのは京太郎だけだ。
彼だけには甘えるし、言われたことはしっかりやる。
そもそも淡自体は誰かを嫌いたいのではなく、接し方がわからないだけなのだ。
それに加えてネリーの挑発に乗ってしまう発言から距離を置かれてしまう。
麻雀部に居場所はない。
今の淡にとって、大学生活を送る上で京太郎の存在はなくてならない。
それと同時に、ネリーの存在もまた淡にとっては欠かせない。
「アイツ、次は絶対に負けない!」
戦績は大体五分、……淡に言わせれば有利だそうだ。
「今日もアイツ、キョータローにベタベタして……っ!」
淡の唯一の居場所である京太郎にベタベタすることが気にくわない。
その行動一つ一つが淡をイラつかせるためにやっていると思うと、ますますイラついてくる。
「淡ちゃんは負けないのだーっ!」
そう、なんだかんだ言いつつ『ネリー・ヴィルサラーゼ』の存在は大星淡にとって欠かせない存在だ。
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6/7
……
…
「……今日はアイツにやりすぎた」
ネリーは一人反省する。
いつもは京太郎に成敗される前にうまく撤収することが出来ているのに、今日はやりすぎてしまった。
ネリーは淡に比べてその辺りの押し引きがうまい。要領がいいとも言うべきか。
しかし今日は淡をからかいすぎ、京太郎に怒られてしまった。
ネリーにしては珍しい失態だ。
「別にキョウタロウに嫌われたっていいのに」
京太郎にも、淡にも嫌われたっていい。
ただ自分が強ければいいはずなのに、何かモヤモヤした気持ちが残る。
「キョウタロウがアイツの胸ばっかり見てるから」
そんなこと、自分には関係ないのに。
それが気に食わなくて、京太郎の膝の上に乗ったんだ。
妙にイライラする。ああ、今日は最悪だ。
「負けない」
大星淡には絶対に負けない。
こちらもまた、ネリー・ヴィルサラーゼにとって『大星淡』の存在は欠かせない存在だった。
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お互いに名前を呼び合わない仲。
京太郎にとっては二人は友達。
二人にとっては宿敵。
では、二人にとっての京太郎は何かと聞いてみても答えは返ってこない。
奇妙な三角関係、台風の目である当人の目から見てみるとーー
「アイツら、仲良いだろ」
との回答。
「だってなんだかんだでずっと二人一緒にいるじゃん」
ーー余談だがこの麻雀部、魔王と言えば『コミュ力の魔王』須賀京太郎を指している。
二人の魔物を携える魔王の姿は、あながち間違っていないのかもしれない。
カン!
最終更新:2016年05月30日 20:12