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京穏次元3
【何の変哲もないデート】
急にデートだなんて言われて混乱した。
私はそんなつもりじゃなかったし、きっと彼もそこまで深く意識したつもりはなかったんだろう。
こ、これくらい軽いほうが普通なのかな?
「そこはデートじゃないよって言っていいんだぜ?」
「えっ」
「あー、ごめん。
ちょっと厚かましかったかな」
やっちゃった、と言わんばかりに頭を掻く須賀さん。
違う、私もそう思わせたいわけじゃない!
「そ、その、嫌なわけじゃないですよ!」
「悪い悪い。
割と馴れ馴れしくやっちゃうんだよね」
「私も!
結構相手に鬱陶しがられないかなーって」
「俺はそっちのほうが楽だなー。
和に聞いたんだ。高鴨さんって活発な人だって」
「えっ!?」
のどかぁー! 変なこと言ってないよね!?
普段から変なことしか言ってないかも……。
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「だから仲良くなれるかなって思って声かけたんだ」
「そ、そうなんだ」
「大会期間中くらいだし、仲良くしようぜ!」
そう言って彼は笑いかけた。
その顔を見るとなんだか胸が切なくなって、でも悪い気分じゃない。
「こ、こちらこそ宜しくお願いします!」
「んじゃ、行こう。
高鴨さんは何か目的あったりする?」
「特にないんだけど……」
「それじゃ俺の目的に付き合ってくれないか?」
「えっと、須賀さんは服を見るつもりなの?」
「買うかどうかはわからないけどさ。
商品見ながら世間話するのも楽しいよ」
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: : : : : .:∧ :: ::| ,,, , V ソノ: ムイ 「うん、そうしよっか!」
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……
…
須賀さんが慣れたように服屋に入ると、幾つかジーンズを見繕っているみたい。
私は基本的に街中で遊ぶなんてしないから、なんだか落ち着かない。
きっと憧といたって落ち着かないと思うのに、隣にいるのは須賀さん。
キョロキョロと周りと見て、須賀さんに目を映す。
じっと須賀さんを見つめている自分が恥ずかしくて目を逸らす。
ずっとそれの繰り返しだ。
「やっぱ高校生の小遣いには高いよね」
「服ってこんなにするんだ」
「高鴨さんはあんまり見ないの?」
「私は見ないかな……」
言ってからすごく後悔した。
『普通の女の子』だったらそういうものに興味があるのが当たり前だと思う。
私服にもだらしない、なんてイメージを持たれたくない。
でも彼の前では嘘をつきたくない。
そんな悶々とした気持ちが自分の中で渦巻いている。
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「もったいないなー。
なんでも似合いそうなのに」
「えっ」
「あんまり気を悪くしないで欲しいんだけどさ。
髪の毛すごく綺麗だし、どんなものも似合いそうだけど」
「ーー!?」
心臓が爆発したかと思った。
彼がじっと私の髪の毛を見つめている。
そういえば憧が髪は女の命って言ってた気がする。
私は手入れなんて全然わからなくて、そのままポニーテールにしちゃってるだけだ。
憧はそんな私に『こっちは手入れが大変だっていうのに』なんて文句を言ってたっけ。
「そ、そうかな!?」
「うん。普段から手入れしてる?」
「え、えっと……」
また質問。
手入れなんてしていない。
走り回るのに邪魔だから切っちゃおうかと思ったくらい。
でも、手入れをしていないだらしない女の子だと思われたくない。
その結果、なんとか口から出した言葉はーー
「ひ、秘密」
「えー、なんだよ教えてくれよー」
「(わあぁぁっ!?)」
彼も本気で聞こうと思っているわけではないのはわかる。
でもなんだか気恥ずかしくて俯いてしまった。
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「くせっ毛とか大変だって聞くよね」
「私も憧……幼馴染から髪の手入れが大変だって聞いたなー」
「俺の幼馴染もくせっ毛だよ。
あんまりヘアアイロンとかかけてないみたいだし。
まー、男の俺にはあんまり関係ないけどさ」
それを聞いたら羨ましい、なんて言うのが普通の女の子なのかな。
ううぅぅー! わかんない!
「うーん、やっぱ値段的にもしっくりくるのがこないし、服はいいかな」
「えっ、じゃあこれからどうするの?」
「ファミレスでも行こうよ。
ずっと立ちっぱなしで疲れただろうし、座ってダベろうぜ」
……ごめん、全く疲れてないや。
山の中を走り回ってたことに比べたらずっと立ってるなんて疲れない。
「足は全然大丈夫だよ?」
「でも顔色ちょっと悪いよ」
「えっ?」
言われてみて少しフラっとする。
体は疲れていないのに、なんだろう。
「あんまり人多い場所慣れてないとか?」
「あっ……」
言われてみたらそうだ。
体が丈夫だからといって、慣れない場所にずっといれば疲れるのかもしれない。
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ーー普段から、そんな気遣いなんてされたことはない。
憧だってみんなだって、私は常に元気だと思ってる。
なんたって私本人ですらそう思っていた。
でも、慣れていない時にはやっぱり疲れるんだな。
彼がそれに気づいてくれた、という事実に気づいた。
ーーうん、今は顔を真っ赤にしていると思う。
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ハ: : :ハ! V レ ` V: /:}:./: : : : : : ハ
ヽ: ハ 三三 三三三 i:V: :.ハ: : : : : : : : :ヽ
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_ゞくトニiiニニ-:´ノ::::レく レ i: : : :ハi
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今までに味わったことがない感覚。
なんだろう。心地よくて、とてもうれしい。
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……
…
「適当にご飯頼んでドリンクバーにしよう」
「えっと、それじゃ……」
いろいろと頼んだ後に、いつものように頼んだことに気がつく。
うう、憧だったら控えめに頼んだりするのかな?
「いやー、高鴨さんは元気よくて喋ってて楽しいよ。
知り合いになれてよかった」
「うん、私もこんなに楽しいと思わなかった!
その、あの時は逃げちゃってごめんなさい」
「いや、あれは和との再会の場に俺がいたのが悪いから!」
ケタケタと笑いながらポテトを摘んでいる。
ふと、彼の呼び方に気がついた。
「須賀さんって、和のこと『のどか』って呼んでるんだね」
「うん」
あんまり男性耐性がないはずの和が彼と仲がいいのが気になる。
それに、なんだかもやもやする。
私の体、どうしちゃったのかな。
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「そ、それなら、私のことも穏乃って呼んでよ!」
「いいの?」
「そう呼んでくれたら嬉しいな!」
「おっけー、穏乃」
彼が何気なく口にした私の名前で、私の頭は茹で上がった。
名前で呼ばれるだけでこんな風になるなんて、やっぱりおかしいよ!
「それじゃ、穏乃も俺のことを名前で呼ばないとね」
「えっ?」
「俺の名前、わかる?」
「わかるよ!」
気づいたら私の中に入ってきた。
忘れようと思っているわけじゃないけど、ずっと『京太郎』の名前が表に出てきていた。
「きょ、京太郎?」
「やっぱこれくらいの方が気楽でいいよね」
「うん!」
呼んだ瞬間に緊張で体が硬くなる。
でもそれに負けないように元気を出す。
だって、京太郎も私の元気を褒めてくれたんだもん。
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……
…
その日はそのまま帰って、ホテルに戻ってきた。
和と憧は二人で出かけていて、なんだか『計画を考えるから待ってくださいね』なんて言っていた。
なんの話だろう……。
頭の中に、京太郎の言葉が蘇る。
『穏乃』
名前で呼ばれるなんて当たり前だったのに。
『穏乃』
たった一人に呼ばれただけでこんな風になってしまう。
『穏乃』
気づいたらニヤけが止まらない。
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/ / / し'/ : : /: : : : : : :∧: : : : . ヽ
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叫びを枕に埋めて押し殺す。
それでもにやける顔は止まりそうになかった。
続く
最終更新:2016年05月30日 20:24