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来年2月に退院する予定だそうです。ええ。ハイ。




自分のアニメBest3の2位、Airです。
因みに3位はおお振り。1位は言うまでもなくグレンラガンです。


Airいいよ。泣ける。





LAP21 狛萩 零



「今日はどうしたの」
 さっきとは違う部屋に案内され妖夢、幽々子、青年と6人で居間で向かい合っている。


「ちょっと遊びがてらに寄ってみたぞ」
 萃香が答える。


「そう。じゃあゆっくりしていってね」
 幽々子がにこりと笑って答える。


 俺が青年を見ていると、


「あ、この子の紹介をしていなかったね」
 幽々子がそれに気づいたか、青年の説明をしてくれた。


 青年の名前は狛萩 零。俺と同じ外来人だそうだ。トレイキョウで買い物をしていて、狭い路地に入ったら下の地面が裂け、気が付いたら白玉楼にいたという。彼にも能力があり、封印をかける術を主に使えるしい。しかし、一度封印した物は自分では解除することができないという使い勝手の悪い能力だそうだ。普段は無口だが、戦闘には自信があるらしく幾つもの修羅場を超えてきたそうだ。


 幽々子は呑気に話しているが、俺ら三人は別のことで話がピンときた。


 ――――――アリスを封印したの、こいつだ。


 今は言えない。大騒ぎになると大事件になりかねない。ただ、いつかは処置をせざるを得ないだろう。しかし、こいつ自分で封印したものの解除の仕方が分からない、となると…アリスは完全に封印されし者に?


「ちょっと、聞いてる?」


「あ、ああ、すまん。全然聞いてなかった」
 考え事をしていた上の空だったのがばれたのか、幽々子に呼ばれた。


「もう。もう一回言うわよ」
「すまん」


 零は向こうではいじめられっ子だったらしい。能力をもった人物が人に怖がられるのは宿命といっていいだろう。事実俺もそうだったからな。そんな時、八百万の神のひとりであった朱鳥に出会い一緒に暮らし始めたらしい。両親は幼い時に亡くし一人暮らしだったため同居することにそんなに問題もなかったとのこと。


 朱鳥はあらゆるものを「熾す」能力があるらしい。例えば、キャンプの時にガスが無く、火がおこせない時に火を「熾す」といった用法。非常に優れた能力を持っており、神の世界ではかなり上の階級にいたらしいが、頭がたいして良くなく失敗ばかりしていたため、追放されたらしい。また、気合いが十分であれば本来切れないもの(例えば空気)を切れる刀を持っているらしい。零がここに来たときは、飛鳥の持っていた刀で幻想郷を守る結界を切って入ってきたそうだ。


「ああ…あの事件ね…」
 霊夢が若干イライラした声で反応する。たしかに管理している側から言わせるといい迷惑だな。


「そう。で、このあとが問題なんだけど…」


「?」
 幽々子が急に神妙な顔になる。



「幻想卿の力にあてられて、零の能力にコントロールが利かなくなっちゃったの」


 俺は何か危険なにおいを察知した。が、念のために話を促す。
「というと?」


「普段なら力を制御できるんだけど、驚いた時、また極度の恐怖を感じた時にその対象を本能的に封印してしまうようになってしまったの」


 幽々子がため息交じりに言う。その横では青年が相当しょげた顔を見せていた。


「!」
 それって…まずいんじゃないのか?


「それで…今日起きたことなんだけど…この子、アリスを封印しちゃったの」
 幽々子の言葉に俺は霊夢、萃香と目を合わせる。


 話によると、零はお使いを頼まれて妖夢と共に里に下り、その帰りにアリス・マーガトロイド邸の前を通ったらしい。そこで事件が発生したという。


「だ~れだ」


 急に眼を誰かの手のひらで隠される。それはアリスにやられた事らしいが、零はまだこの世界を全然知らず、一人で出歩くこともできないという。また、前前に妖怪は人間を襲うと言われてきたので、急に視界を隠された驚きと捕食されるという恐怖で本能的にアリスを黒玉に封印してしまったらしい。


「それがこれなんですが…」
 そういって妖夢がその黒玉を見せてくれた。ソフトボールほどの大きさに全体的に黒味がかかった玉。若干透明で、外から封印されて気を失っているアリスが少し見える。アリスは目を閉じてぐだっとしている。これは確かに封印を解くのは難しいかも知れん。


「ふむ…」
 俺はその黒玉を見て少し考え込む。


「……」


「これはやはりベールに閉じ込めるタイプであったか」
 これは先ほど永遠亭の話から推測はしていた。


「これなら、リュウでも勝算はあるんじゃない?」
 霊夢の言葉に妖夢が反応する。


「リュウさんは封印を解除することもできるんですか!?」
 霊夢の発言にピンと来たのか、妖夢がびっくりした様子で話しかけてくる。


「ああ……向こうの世界にいたとき少しやらせてもらった」
「じゃあ、アリスも…」
 周囲が期待の空気になる。が、俺は今回の事件に勝算を見出すことができなかった。


「……無理だ」
「え?なんでですか?」
 俺の言葉にいささか怒り気味の声で妖夢が問いかける。


「今、この球から生命反応がない。ということは、精神は他の所に別に隔離されたか……」


「されたか?」
 霊夢が後を促すが、俺は次の言葉をいうのにかなりためらいがあった。


「お前たち、取り乱さないな」
 一応確認を取る。


「何よ…」
 霊夢が少し引く。


「私は別にいいけど…」
「そうか。なら言うが、もしくは、封印されたこの空間で精神が無くなったか…」
「それってどういうことだ?」




「死んだ」




「!!!!!!」
 場の空気が凍る。


「しかし、もし意図的にではなくとっさにやったものならば幾らかは封印しやすくなるはず…」


 誰が封印解除すんだよという疑問を抱えつつ、自分を含む周囲を励ますだけ意味のない発言をする俺。


「動物だってそうだ。狙って与えた傷より、危機を感じて本能的に与える傷の方が軽い。意図的と本能的の関係をあてはめるだけなら、これだって例外ではな いはず」


 そうであると信じるよ俺も。


「……そうですね」
 零が口を開く。オーラから彼は相当自分を責めているな…このままだと彼も崩壊しかねん。


「解決方法は必ず見つかるわ。絶対に見つけてやる」
 霊夢が気合いのこもった声を出す。



シリアスさいこー(何



LAP22 寄り道


 夕方になり、白玉楼を出る。


「リュウ、あなたどうするの?」
 萃香と別れて、霊夢と二人きりになる。


「紅魔館に戻るのはちょっと今までと同じでせっかくの休暇がもったいない気が するから、どこかに泊まると思う」


「……ウチに来る?」
 ……駄目だ。体が駄目だと叫んでいる。金を絞りとられて泣くだろう、そうに違いないと体が叫んでいる。


「遠慮します。まあ行くあてがなかったら神社行くよ」
 とりあえず好意はいただいたというようなニュアンスの言葉を発する。意地でも泊まる場所探すぞ。


「……チッ」
(舌打ちした!この人舌打ちしたよ!)
 たった1分の出来事で霊夢の腹黒さは異常ということを思い知らされた。


「じゃあ、ここまでくれば迷わないでしょう。私は神社に戻るわ」
 森から抜け、見晴らしがよくなったところで霊夢と別れる。


「今日はありがとうな」
「ま……ちょっとやな事件なったからね、今日は寝ないで文と調査かも…」
 霊夢の表情が曇った。まあ、確かに落胆しても仕方がないことだ。


「お疲れ様です」
 そういって霊夢と別れる。俺の行き先は決まっていた。ローラーボードを飛ばしてそこへ行く。


 そこへの生き方は自然と頭に入っていた。それはまるで、初めて入った小学校も一年経てば人に小学校への行き先を聞かれても適切に教えられるというようなことに似ているかもしれない。それはどんな人間でも当てはまることであり、6年小学校に通っていても道を覚えることができないというようなことはない。それは人間が持つ能力でもあり、人間ならば誰しもができなければならないという必然性をも持つ。しかし、その対象が日常に密着したものではない限り人はそれを未知、または必要性のないものと認識し頭の中の意識から省いてしまう。道を覚えるのだってそうだ。小学校という物は小学生にとって日常に一番接している場所であるが、中学校は小学生にとって必要性に乏しい。よって、小学生は中学校に行けないし、行くことを必要としていない。


 だが、俺には小学生にとって小学校のような存在の物が幻想郷には二つある。一つはいうまでもなく紅魔館。もはや生きるために強制的に覚えさせられたようなものでもある。そしてもう一つは、紅魔館のような半強制的に覚えたわけではなくただ「楽しいから」という単純な理由から道を覚えたのであった。


 俺はある家の前にいた。西洋風の建物だが外見は白黒という珍しい採色の家。結構な広さの家だ。窓の数から2階建てだろうか。しかし、一階ごとの床面積が大きい。その門には「マーガトロイド」という表札がある。


 そう、ここはアリス・マーガトロイド邸。アリスが封印と聞いた時、極めて落ち着いた気持ちを維持しようと踏ん張ったが、正直言うと人生一番のショックだった。紅魔館の皆を除けば、魔理沙とアリスには一番世話になっていた。アリスにいろいろな魔法を教えてもらおうと試みた事もあった。結局全部失敗してボロボロになったことはいい思い出になった。この家への道の行き方は何処よりも早く覚えた。暇さえあればここに行って三人で遊んでいた。今日だって始めはそのつもりだった。


 その三人から一人が消えた。この虚無感はなんとも言えない…。いままでずっと遊んでいた幼馴染が死んだような悲しさだ。


「くそっ……」
 一度向こうの世界でスーザンがデスシャドーに封印された時は全身全霊の力を込めて解除したことがあるが、これは訳が違う。相手は封印専門職。それも自力で解除することができないほどがちがちに封印するわけだ。これを解除するのは極めて無理だ。


「アリス……」
 だが、何かしら解除する方法を探して封印を解除したい。心からそう思っていた。知略が駄目なら武力で切り開く。


「絶対復活させるからな」
 とりあえず…今日は紅魔館に帰るか。





次回は感動のレミリア(何



LAP23 家族


「あら、おかえりなさい」


「ただ今戻りました」
 庭先で池のふちに座っていたお嬢様に一礼する。結局あのあとマーガトロイド邸からまっすぐここに帰ってきた。特に寝る場所とか考えてなかったからここを選んだわけだが。


「あなたの分の夕飯用意されてないと思うわよ。咲夜に言って作ってもらいなさ い」
 お嬢様が言った。暗くてあまりお嬢様の顔が見えない。


「そうさせていただきます」
 そういって俺は庭に止めてあるブレイクダークの荷台からポルウを取り出す。


「あら、今日は演奏するの?」
 俺がポルウを取り出したことにお嬢様が興味をもったのか、俺に尋ねてきた。


「3日後のプリズムリバー楽団のコンサートに友情出演することになりまして」
 俺はお嬢様に事情を話す。


「そう…どこでやるの?」
「白玉楼です」
「ぜひ見に行きたいわね」
 お嬢様はそのコンサートに対する興味を隠すことなくしゃべる。


「ありがとうございます、では、ちょっと湖畔の方まで行くので、失礼いたしま す」
 俺はお嬢様の反応を嬉しく思いつつも練習にいこうとお嬢様に許しを得る。


「ここからあなたの演奏聞いているわ」
「ありがとうございます。では、失礼します」


 俺はなぜか今日は湖畔でポルウを吹きたかった。たぶんここに初めて来たときの名残だろう。ここで吹くと心がリセットされるような気がしたのだ。


 しかし、今日の心はいつまでたっても黒い雲がかかっていた。理由がアリスであることは言うまでもない。


「アリス…」
 本来ならいち早く助けたいところだが……すまない。魔理沙よりも俺の方が沢山借りているのに何もできなくて…


 しかし、俺の心情とは違いここに一人で立つと、幻想郷に初めて入った時から本当に周囲が変わっていないように感じる。森が醸し出す不気味さ。ホラ貝のような妖怪の鳴き声。大きい月。本当にここは変わらない。あの時と状況が違うことといえば隣にブレイクダークがないのと…


「お?珍しいのがいるね?」
 ………馬鹿がいるということだ。


「今は事情があるんだ。チルノ。弾幕ごっこはレティとやってくれ」
 俺は後ろにチルノがいることに思いっきり不快さを抱き、精一杯だるさを強調した声でチルノに言う。が、馬鹿にはそのようなことは気づけなかったらしい。


「じゃああたいその事情手伝う!」
 と、非常にはきはきとした返事を返してきた。


「……めんどくせーのが来ちゃったな……」
 ゆっくり練習したかったのに…仮に誰か来たとしても、よりによってこんなに使えないやつが来るとは。


「……まあいい。じゃあそこら辺に座ってみていろ」
 チルノの相手をするのが非常にめんどうだったので、俺は適当にあしらっておく。しかし、チルノがそんな暇なことを飲み込むわけがなかった。


「えー…あたいもっと暇じゃないのがいい」
「楽器演奏に手伝うも何もないです。嫌ならお引き取り下さい」
「ぶー」


 チルノは頬を膨らませてこっちをにらんでくる。馬鹿は無視して早速ポルウの準備をする。そして、練習を始める


 ポルウを吹きながら、昔のことを考えてアリスのことを紛らわそうとする。だが、俺にとってアリスという人物が占めていた割合が大きすぎた。幻想郷ではらを割って話せる相手は魔理沙、アリス、そして咲夜の三人だけ。アリスがいなくなった今、アリスだけでなく魔理沙もおそらくショックで精神的に滅入ってしまっているはず。いくら魔理沙とアリスと俺がつるんでいたとしても、その三人の中だったら俺が一番接点がない。魔理沙とアリスは友達を言う枠を超えてもはや恋の域に達してしまっている部分もあると思う。彼女たちの絆はどんなに頑張っても引き裂くことが出来ないと霊夢が言っていたのを思い出す。俺もその輪の中に入ってからしみじみ感じさせられた。


 だが、いまアリスが封印されたことによって完全に二人の絆に亀裂が入った。お互いの気持ちの支えになっていた絆が崩壊した魔理沙は確実に今後取り乱す可能性があるだろう。今一番怖いのはアリスの封印を解除することではなくて、魔理沙が暴走してしまうことかもしれない。


 しかし、感傷的になっている場合ではなかった。
「あ?」


 ポルウの演奏を止めて楽譜を凝視する。チルノがなんか演奏を中断したことに文句を言ってくるが華麗なスルーで受け流す。


「……」
 侮っていたが、この楽譜、結構難しかったりするな。中指の運指が鬼である。ファーストボタンからセブンスボタンに飛び、その後セカンドボタンに動くという動作があるのだが、ファーストボタンからセブンスボタンの間は20cm近くである。これをとてつもない速さでかつ正確に演奏しろだと…??


 俺はプリズムリバーからもらった楽譜を改造して自分にとって吹きやすい譜面に変える。まあ練習すれば出来ないこともないだろうが、3日でこのテクニックを身につけろというのには無理がある。その後も順調に改造していって練習を進めていく。


 気がつくと、練習を始めてから2時間がたっていた。辺りも始めたころと比べるとだいぶ暗くなってきている。俺は引き上げることにした。


「ふぅ…こんなもんか…ん?どうしたチルノ?」
 チルノがじっとして動かないのを見て声をかける。


「すごい…あんたすごいね…」
 すると、チルノが目をらんらんと輝かせながらこっちを見て言った。
 駄目だ…アリスのことが頭から離れない。雑念を抱けばポルウに限らずどの楽器にも乱れが出る。口では「こんなもん」と強がったが、内心では今日はひどいと思った。これじゃあ魔理沙の心配なんてできる暇がないような気がしてならない。俺さえもが精神が崩壊してしまったら元も子もない。


 そんなボロボロの演奏でもチルノはすごいと言ってきた。やはり自分の世界に存在しないものを体験するとそう思うんだろうか…


「そうか?」
 俺はチルノがあまりにもオーバーな反応をしてきたので戸惑う。


「あんたすごいよ!また聞かせて!」
 チルノの声には確かな興奮が見られた。こりゃまた吹くときに来るな…


「じゃあ、またな。弾幕ごっこはレティとやれ」
 俺はそういってチルノと別れようと言うが、


「えー…」
 さっきまで生き生きとしていた目は途端にしぼんでしまった。いつもなら一緒に遊んでくれる相手にあっさり断られたら、そりゃすこしへこむか。少し悪いことしたかなと俺は思った。


「俺、今日は疲れたから」
 だが、確かに俺は言葉通り疲れ切ってしまっていた。理由は言うまでもないだろう。疲れたというのも、肉体的ではなく精神的に疲れたわけだから眠いというわけではないが、少し一人になりたかっただけだった。


 俺はそういってチルノに背を向ける。チルノがぶーぶー言っているのが聞こえるが、無視して紅魔館に帰る。チルノはまだあの事件を知っていないのだろうか。しっていたらあんなに生き生きした顔を見せることはないだろう。まあ、チルノなら仕方がないという気持ちがなかったというと嘘になるが。


 俺は紅魔館に着いた。見ると、池のほとりにお嬢様はまだ座っていた。


「お疲れさま。演奏がよく止まってたみたいだけど」
 お嬢様は俺が門から姿を見せると声をかけてきた。何もかも聞こえてしまっているみたいだ。


「いや、初見の楽譜ですからね」
 俺は慌てていいわけを口走る。


「初見の楽譜を3日で完成させるの?」
 お嬢様は初見というキーワードに少々驚いたようだ。


「結構簡単ですよ」
 お嬢様の驚きを少し和らげようと俺は嘘を言う。まあ、あながち間違ってはいない。なぜなら俺が勝手に改造したからだ。


「そう……」


 話が途切れる。俺は無言でお嬢様に一礼した後にブレイクダークにポルウをしまいに行く。その様子をお嬢様は終始見つめてきている。すばらしい威圧感に脱帽せざるを得ない。ただ見つめられているだけなのになぜか余計に緊張してしまう。全然落ち着かねえ……。背中になんかついているのだろうか?


 荷台にポルウをつんだのち、俺はお嬢様の元へ行き、


「では、自分は先に失礼させていただきます」
 と一礼し紅魔館に入ろうとする。だって、こんな威圧感に長時間いたらさらに精神的に疲れるかもしれないからな。


 が、お嬢様は俺を紅魔館の中に入らせてくれなかった。原因は予想だにしない言葉を発したことによる。


「やはり、アリスがいなくなるのはきつい?」


「!!!」
 俺は予想していなかった図星を衝かれ、呆然とする。


「……なぜ……」
 しばらくの沈黙の後、俺はお嬢様に背を向けたまま声を発する。


「あなたの音色には迷いが感じられた」
 お嬢様は俺の問いに冷静な声で答えを返す。


「迷いが感じ取られたとしても、なぜアリスのことだと…」
 自分でもわかるほど今俺は冷や汗をかいている。まずい、お嬢様にばれた…


「あなた、永遠亭にいたでしょ」
 お嬢様は一つため息をついたあとにそういった。そこでようやく俺はお嬢様の方に向き直る。


「……分かっておられましたか」
 まさか木の上にいることがばれていたとは…


「萃香の声が聞こえたから。すくなくとも私と咲夜は気づいていたわよ」
「……そうでしたか」
 お嬢様の理由に、俺は肩をすくめることしかできなかった。今考えると萃香がこえを抑えることなどできるはずもなかった。


「あなた、結構溜めてるんじゃない?今二人きりだから全部吐いちゃいなさい。後が楽よ」
 お嬢様は極めて穏やかな声で俺に話しかけてくる。


「………」
「……」
 長い沈黙があたりの暗闇により一層あやしさを与える。


 俺はいまお嬢様に精神を崩された。自分でアリスがいなくても大丈夫と一人で強がっていたことで保っていた精神がお嬢様の一言で崩壊し、力を入れなければ涙があふれそうだった。でも、お嬢様は全部出せと言った。これは、お嬢様に甘えろということなのか。いずれにせよ、何かしゃべらないとお嬢様に失礼だし、俺も壊れそうだった。俺はお嬢様に本音をぶつけることにした。


「永遠亭で魔理沙はアリスに借りたものが多いと言いました。確かに、魔理沙と アリスはああいう関係だったかもしれません。しかし、あれは彼女だけに言え たことではありません」


「……」


 お嬢様は手を組んで庭に生えている花を見つめたまま何も言わない。それでも、俺はお嬢様に語りかける。


「私にも、アリスに借りた物は数多くあります。それは、魔理沙と同じく一切返 しておりません」
「………」


「今、私にできるアリスへの恩返しは彼女の封印を解くことだと思います。です が、封印解除の手掛かりはいまだ一切つかめていない」
「………」


「でも、ここで返さなければ、アリスにはもう何も返せません。この自分の不甲 斐なさに嘆いても嘆ききれないんです」
「………」


「だから…私は…」


 本音を全部言った俺は泣いていた。本当に自分が情けなくて、でも自分を責めても何も始まらない。だから行動を起こさなければならない。頭では分かっていてもいざとなると何もできない自分が本当に悔しかった。


「本当に……自分が……」


 本当に俺は自分が情けなかった。アリスのために何もできず、アリスには恩をもらっただけ。それなのに、アリスが封印されたと言って俺に何が出来る?ジャスティスウィングなんて大層な肩書を掲げて、人一人助けることが出来ないのか?俺の能力はそんなに自分にしか理がない自己中な能力なのか?自分を責める材料は探せば、掃いて捨てるほどあった。


 でも、肩を震わせて泣く俺に、お嬢様はそっと手を置いてくれた。


「あなたは自分を責めすぎている。そんなに責めているとあなたが壊れてしまう わ。もっと楽に行きなさい。アリスの封印を解く前にあなたが壊れたら意味が ないじゃない」
「……お嬢様……」


 俺はお嬢様が肩を置いてくれたことに少し驚いていた。お嬢様がまさかこんなことをするとは…


「あなたはすべてを自分の中で解決しようとする癖があるの。傍から見たらそれ はいい癖かもしれないけれども、でもそれは嘘。それは自分を追いつめる足か せにしかならないの」


「……」
 長い沈黙が流れる。が、この沈黙はさっきの沈黙とは違い暖かささえ感じる。お嬢様が俺に言ってくれた言葉はいままで考えたこともなかった。だから、俺はハッとしたのだ。


 やがて、お嬢様が俺に過去の話をしてくれた。
「私にもそういう時期があったわ。ある吸血鬼が大事件を起こしてから吸血鬼が 嫌われた時期があったの。それで私は一人ぼっち同然になったんだけれどもそ のときにパチェにあったの」
「……」


「パチェはあの時本当に私によくしてくれたと思うわ。私が落ち込んでいるとい つも励ましてくれて、時には喧嘩をして気を晴らした時もあったわ。でも、吸 血鬼が嫌われた時に出会ったから私はパチェのことが心から信じることができ なかったのだから、パチェに悩みごとを相談することができなくて鬱な気持ち を自分で押し込めていたの。でも、押さえつけることにも限界が来て、封印さ れる前のフランみたいな修羅になりそうなときがあった。でも、その時パチェ が私のことを家族って言ってくれたの」
「……家族…ですか…」


 家族―――――俺は両親を幼いころに亡くし、ずっと姉と二人で生活をしていた。俺は幼い時本当に問題児だったらしい。外出すれば外出先で必ず問題を起こして近所では有名な悪ガキだった。だけど、そんな俺を姉は根本からしっかりとしつけてくれた。俺を殴ることも躊躇があってこそ俺は今俺でいられ続けることが出来る。その姉も、3年前に死んだ。いや、殺された。デスシャドーの手によって俺には今家族はいなかった。だから、家族という言葉をお嬢様が発した時に俺は懐かしい気持ちと共に非常に悲しい思いも込み上げてきた。


「そう、家族。不思議な言葉よね。たったその言葉だけで私はパチェが私を信用 していることを知ったわ。それで、相談に乗ってもらった。そして二人で吸血 鬼が安全だって証明したの」
「…そうですか…」


 俺はお嬢様の言葉をかみしめる。俺にとってこの説教は非常に身にしみるものであった。


「あの時の言葉を借りるけど、もはや私たちはあなたの家族同然。もっと周りに 頼っていいのよ。あなたの家族は、あなたの思ってるより頼りになるはずよ」


「…お嬢……様…」
 力一杯涙を我慢するが、涙が眼からこぼれてきてしまった。


「まず、今日は私を頼りなさい。あなたが今までためていた苦しさ、悲しさ、辛 さ、全てを涙に変えて出しなさい。私の中で」


 そういってお嬢様が俺を抱いてくる。俺はまさかお嬢様が俺のことを抱いてくるとは予想にしていなかったが、やがてお嬢様のあたたかさを感じ、涙腺が緩んでくる。


「…失礼します…」
「……いいわよ」
「…う…うわあああああああ」


 俺はお嬢様の優しさの感動も重なり、声をあげて泣いた。お嬢様のいうことはすべて本当だった。何もかも、向こうにいた時代から、俺は人生を人に迷惑を変えないように生きてきていた。だから、怪我もそう、悩みもそう。ジャスティスウィングの皆に気づかれないようふるまってきた。それが正しいと思ってた。


 でも、お嬢様に言われて考えが変わった。今までの考えは自分を追いつめるだけにすぎなかったということに気づいた。ある程度なら人に頼ってもいい。俺はこの夜、人生にとって大きな勉強をした。


「う……ひっく……」
「……」
 俺が泣きやむまで、お嬢様はずっと暖かく抱いていてくれた。


 今日の夜の月は、とても赤かった。



なんというレミリャ



LAP24 vs美鈴

「あー…疲れた」


 目覚ましのものすごい怒声で起きる。


 朝になり俺はもぞもぞと起きあがるが、非常に目が痛い。正確に言うと目尻が痛い。昨日は相当泣いた自信がある。まあ、おかげで非常に気分だけはいいのだが。


 実は昨日俺が泣きやんですっきりするまで1時間かかったそうだ……マイケルやロジャーにはとてもじゃないけど言えないことだ。あいつらにいったらなんていわれることやら。まあ、それだけ自分の中でいろいろと溜め込んでいたっちゅうことじゃないのかと自己完結したが、まーだなんか水分不足に悩まされそうだ。


「さて、今日はどうしようかな…」
 俺は今後の予定を無理やり作ろうと考える。特に決まってないんだよなあ…今日は。仕事漬けの日々を送っているとそれが日課のように感じてしまい、いつしか急に休暇をもらってもそれを弄ぶだけになってしまうようになってしまった。前の世界だったらマイケルとかロジャーを誘って大騒ぎしていたんだが…


 いつもの三人組と遊ぼうってったってアリスはいないし魔理沙にはあまり接近しない方がいいかなと思うし…じゃあ霊夢と遊ぶのかって言うと、昨日の夕方の別れ際の話もあって逢いづらいな…あってもどうせ文達と調査しているかもしれないし。永遠亭は生き方が分からないし、白玉楼に行くにしても妖夢がいなければいつ幽々子に食されるか知ったもんじゃない。かといって紅魔館から動かないでいるのももったいない気がするし…


「今日は…どっかいって特訓するか」
 いろいろ苦悩した揚句、とてつもなく平凡な答えにたどりつく。


 なぜこんな結果にたどりついたかというと、久々に動きたいというのもあった。最近は幻想郷では特に大きい事件などは起きて……ああ、アリスの封印の件は除くよ。でも、本当に戦闘を伴う事件は起きていない。戦うとしたら弾幕ごっこであそぶくらい。それだって本気を出して戦うことが出来る相手がいない。あ、このことは皆には秘密にしていてほしい。知られたらどんな目で見られることか。


 そこでふと、前前からやろうと思っていたことを思い出す。フランドール様の事件で分かったことが一つあるんだが、俺のスペルカード「波符『ピンポイントスマッシュ』」は発動した後に自分の体に出てくる反動があまりにも激しすぎる。だって、使った後気絶するスペカだぜ?そりゃああの時は体がぼろぼろだったということもあっただろうが、もっと使用代償が軽くて、使いたいなあと思った時に頻繁に使用できるスペルカードが欲しい。また、アリスの封印を解除するならピンポイントスマッシュよりももっと強いスペカを作らなくてはならない。力で開放するのは極めて危険な方法だとは思うが、やってみないと分からない点だってあるだろう。え?フランドール様の暴走事件が発生してから9か月経ってもなんでスペカを作らないのか?……本気でやるような戦闘がなかったからとでも言っておこうか。


「さて…起きるか」


 のそりと起き上る。なんか休みなのに早起きするのも癪だが、習慣にしておかないと仕事に復帰した時に起きられる自信がないしね。今は寒いので私用でも執事服で行動する。この服あったかいからな。今思うと、霊夢とか冬ですごく寒いのに(幻想郷の冬は寒い。しっかり雪も降る。実際今窓の奥ではゆきがしんしんと降っているし、銀の様な世界が紅魔館の庭を覆っている)脇をさらして生活をしている。風とかひいたとこは見ていないが風邪をひくのも時間の問題だろう。でも、俺はこの服で夏を熱中症にならずに乗り切った。それとおんなじようなことなのかなあ…。


 俺が着替えを済ませ、ドアを開けると、丁度フランドール様が前を通り過ぎているところだった。


「おはようございます、フランドール様」
 俺はフランドール様をみて頭を下げる。


 が、フランドール様は未だ俺に恨みを持っているようだった。あの事件の後、俺はお嬢様にフランドール様と時々遊ぶよう促したので幾分か俺に対する恨みも消えたようだが、母集合が多すぎる。俺がこういう風に挨拶しても、鼻を鳴らして拗ねた子供の様にそっぽを向かれてしまう。人間(?)関係を築くのも楽じゃない…


 その後俺は朝食を済ませ、お嬢様と別れをつげた後に湖に行く。ここは三節棍を振り回すにはちょうどいい広さがある。とりあえずスペカを作る準備がてら三節棍を振ってみる。


「ふっ……はぁっ……せいやっ!!」


 しばらく扱っていなかったが、さすがに三節棍の扱いに腕の落ちはないようだ。自分の三節棍の軌道を読み、その行く先に手を置いて待つの行動にさして支障はない。あったらその日から猛特訓になるだろうなと頭の中で考えるが…


 しかし俺は考える。三節棍を振るのが平気でもシャドーでは意味がない。手合いの相手がいないと腕が落ちているかどうかを判断するのに無理がある。誰か対戦相手はいないかなあ…


 そんなようなことを考えていると、まるで俺の心を悟ったかのように後ろで声がする。


「練習ですか?お相手しますよ」
 振り向くと、美鈴が立っていた。あまりのタイミングの良さに俺は飛び上るほどに驚く。


「お、手合わせしてもらえるか。助かるぜ」
 俺は一つ首をまわして三節棍を構える


「では、行きますよー!」
 美鈴も気合十分だ。手を目の前にかざし、基本体形を取る。そして、朝の手合わせが始まる。


 美鈴は気を操る妖怪だ。だから、下手に隙を作ると、そこに攻撃をされる。だから常に集中力全開でいなければならないし、空気は波動のシールドで防ぐことに限界がある。そして厄介なのはそれを美鈴は知っているのだ。だからシールドを抜かれないために、美鈴には気を操って繰り出す攻撃をさせてはならない。美鈴に気を使った攻撃をさせない方法としては、こっちが三節棍と波動攻撃をテンポよく切り替えて相手に気を扱うほどの暇を与えないようにするしか方法がないのだ。


 さらに面倒なのは、相手が中国拳法づかいであるということだ。俺が扱っている三節棍は、ヌンチャクとともに中国拳法で非常にメジャーな武器としてよく挙げられる。日本武芸でいう刀のようなものだ。それ故中国拳法を取得している人間ならばからなずと言っていいほどヌンチャク、三節棍使いとの手合いを経験するし、それはヌンチャク、三節棍に対する対処法が多くの中国拳法取得者に知れ渡っているということに結び付く。つまりは、中国拳法を取得している者との手合いは俺が一番苦手とする分野なのだ。


 が、こっちだっていくつもの修羅場を超えてきた身だ。これくらいの不利、長年の経験でひっくり返してくれるわ!


 中国拳法の基本は蹴り。そこて、中国拳法の基本的戦いとしては、まず蹴りを決めるために甘い突きなどで相手を翻弄する。そして、相手のが疲れて動きが鈍くなり、位置取りが甘くなってきたところで一気に決める。ならば、その蹴りの時になんとかできないだろうか。一番手っ取り早い方法としてはわざと蹴りが出てくるように動き、足が動いたところで三節棍で足をすくい上げる。そうすれば勝てるか?


 俺はそう予測したうえでわざと美鈴の蹴りの攻撃範囲に迫っていく。わざと迫っていることを悟られないように疲れたというアピールをしながらだ。でないと、相手に何か策があるだろうと察知されてしまう可能性があるからだ。しかし、美鈴は俺の軌道誘導に気を取られているようで俺のことには一切眼もくれない。俺は今がチャンスだと思った。


 一気に美鈴の足元に踏み込んだ。そして三節棍を足をすくい上げるためにスタンバイする。案の定美鈴は蹴りのモーションに入った。そこですかさずまず三節棍で美鈴のすねを押さえつける。そして、足の勢いをなくしたところで一気に足に三節棍を引っ掛け持ち上げた。俺のシュミレーション通り美鈴の脚は宙を切り、そのまま美鈴は背中から倒れこんでしまった。見事なる俺の戦略眼勝利である。


「ふぅ…勝ったか」
 なんとか美鈴に勝てた。いくら勝ったとはいえ中国拳法同士だから結構強く感じちゃうんだよなあ。


「ああ…負けちゃったわ」
 服に付いた土を払いながら美鈴が悔しそうにつぶやく。


「中国拳法でジャンルが同じだからこっちも結構苦戦するよ」
 本当にその言葉には嘘はない。やはり、美鈴も例外ではなかった。確実に三節棍の攻撃範囲を知り、それを知っているうえで攻撃を出してきた。俺にとっては久々に頭をフル回転して頭脳的に勝った気がした。


「でも、それでも強いですよ」
 だが、美鈴はそういって俺を褒めてきた。


「そ、そうかな…」
 俺は自分でも顔が赤くなるのが分かり、顔を伏せた。そんなにストレートに言われたら照れるだろ…


「でも、まだ実力を全部出し切れてないようですね…」
 そんな俺を見ながら美鈴が言う。


「え?」
 意外というか、図星というか、ドキッとして俺は美鈴を見る。どうやら相手にもそれを悟られるほど腕が落ちていたか?


「何かのせいであなたの本当の強さが出し切れていない」
 美鈴が極めて落ち着いた様子で話してくる。すると、


「スペカの少なさ…じゃないですかね?」
 声がする。見ると、文と椛がいた。


「リュウさんが力を出せていないのはそのせいだと思います」
 文がデジカメを片手に言う。あまりにも図星で反論できずに、


「う…うぅ…」
 と口ごもってしまう。


「……どうやら図星のようですね」
 そんな俺の様子から考えたのか、文がそう言った。


「今日スペカ作る予定だったんだけどね」
 俺はとりあえず言い訳の一つになりそうな言葉を発してみる。


「そうだったんですか…」
 俺の言葉に椛が反応をしてくるが、文は熟練されたスルースキルを発動しているようだ。何か考えているようだった。と、急に表情が明るくなったかと思うと


「今日私達暇なんでお手伝いいたしましょうか?新聞のネタにしますけど」
 と、俺に媚を売るかのように話しかけてきた。


「全力で却下します」
 俺は厳しい目つきをして文に言う。溜まったもんじゃない。俺は動物園の動物のように見世物じゃないんだ。俺にあだって拒否権があるんだ。


「冗談ですよ冗談!そんな眼で睨まないで下さい!」
 文がいささか慌てた様子で手を振る。


「文さん、何やってんですか…」
 文の世話役みたいな椛がため息交じりにあきれる。こいつの世話役は疲れるだろうなあ…


「……まあ、撮影しないという条件の下なら喜びたいのだが…」
 今いち信用ならない。文に頼みごとをして新聞にそのことが乗らなかった日はない。


「しません!この目を見てください!」
 文が必死の目で俺を見つめてくる。俺がしばらく黙っているとだんだん近づいてきて、終いには鼻と鼻がくっついてしまいそうなぐらいまで近づいてきた。


「わーった、わーった。手伝わせてやるよ」
 俺は文の根性に負けて折れた。


「あ、ちょっとだけ上目線ですね…」
 文はちょっとだけへこんだそぶりを見せた。


「気にしたら負けだ」
 こいつを調子に乗らせると絶対撮影される。そのことは重々承知だったので上から目線を保つことは効果的だったりする。


「それでは、私は仕事に戻りますね」
 すっかり存在感がなくなっていた美鈴が口を開く。


「おう、ありがとな」
 美鈴が紅魔館に帰り、湖のほとりでスペカ制作に俺たちは取りかかることにした。途中レティと馬鹿(チルノ)がきて5人(実質使えるのは4人)になった。




長め~









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最終更新:2009年12月23日 21:17