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貸し借り契約は永遠です


音が密集した昼が終わり、音が拡散しはじめる夜。

『・・・お前んトコの奥さんそんな怖いん?―あ、はいそうなんですよ。僕が以前テレビでつい、うちの嫁は家事とか全然しないから~とか言っちゃったんですけど、嫁はそれを見てたみたいで本当に家事しなくなっちゃったんですよ。―いや、それはお前が・・・』
塗装が剥げコンクリートがむき出しになっているアパートの部屋から聞こえてくる中年らしき男2人の会話。おそらくテレビから流れているものだろう。

「本当に家事をしないだなんてそんな・・・。」
安物ベッドの上でオレの隣にいる継美がそうポツリと呟く。もうそろそろ何も身に纏わないというのはさすがに寒いので二人一緒に毛布に包まっている。

「ん~・・・そりゃあんなこと言われたらねぇ。仮にもテレビなわけだし。」
「でも、だからといってしないだなんてそんなこと有り得ませんよ!旦那様はちゃんと働いていらっしゃるんですからちゃんと自分も仕事をしないと!」
もうそろそろレトロと言われてもおかしくなさそうなブラウン管テレビの中では、相変わらず中年男たちが何か言い合っている。そこへどうやら本人の奥さんまで登場しているようだ。うはぁ、色々と修羅場(?)だなこりゃ。

「はは、真面目だねぇ継美は。ま、でもやっぱ奥さんが怒るのは仕方ないんじゃない?テレビといったら全国に広まるわけだから。オレが友人とかに家事をしないんだよ~とか言うのとはワケが違う。」

そこまで言って、しまったと思った。
「な・・・!そ、そんなこと言ってるんですか、桐也さん!」
ああ、怒らせてしまった。しかし、やはりというか、怒った継美も可愛いなぁと思ってしまう。うーむ、困った。顔がニヤける。

「いや、んなこと言ってるわけないって。」
そう言ってやんわりとたしなめる。にしてもまぁ、アレだ。上目遣いでしかも裸で怒るなんて頼むからやめてほしい。色々な意味で。
「第一、継美はすごく真面目に家事してくれてるでしょ?どこを探してもそんなこと言う理由なんて見つからないよ。」
軽く微笑みながら。継美は少し照れつつ、だがまだ怒っているのか口をぱくぱくさせたり、視線をさまよわせたりしている。こういう反応を見れるのもオレだけの特権。

と、継美は何を思ったか、ふいに悪戯っぽい笑みを浮かべて。
「ふふ、当たり前じゃないですか。だって、桐也さんには私を立ち直らせてもらった恩がありますからね。いわば恩返し、です。」
…そうきたか。ここで過去の話を持ち出すとは。しかし、継美はもう怒ってはないらしい。
「だから、恩が返しきれたら桐也さんとはお別れですね。」
芝居がかった仕草で。そんなこと言いつつもしっかりとオレの胸に頬を押し付けてくる。まったく・・・ホントに可愛いな、継美は。

「それは困る。もっといっぱい恩を与えないとかないと。どんなものがいい?」
ここはこう答えるしかないだろう。こんなに可愛い芝居をしてくれてるのだから、のらないほかに選択肢はない。

「そうですね・・・。」

口に指をあてて、一時考えるような素振りを見せてから。

「じゃあ・・・桐也さんの心をください。」
おおぅ、爆弾。防壁はちゃんと整っていたにもかかわらず、一瞬で消し飛んでしまった。
「心か・・・。でも高いよそれは?家事ってだけじゃ返せないよ?」
オレも貪欲だな、と思う。でも、やっぱりその言葉だけじゃ物足りない。

「ふふ。」
そんなオレの気持ちに気づいたのか、もしくは単に恥ずかしいだけなのか、頬を少し赤らめながら軽く笑って。

「私の心でお支払いいたします、旦那様。」


AMAAAAAAAAAAAAAAAAAAIII!!!!!!!

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最終更新:2009年10月19日 08:39