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ようやく、左手が解放されたよ。これでキーボードが楽に打てる


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椛ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!俺だ!!結婚してくr(ry

嫁の発表がはやってるみたいなんで、便乗して((

椛かわいいよ椛





LAP33 大事な場面ではデジャブが勝利のカギを握る


「まずいな…どこかで何かいいものはないのか…」


 焦りで頭がいっぱいの俺はなんとかブレイクダークに勝てる策を練る。


 しかし、最初の緩やかなカーブでも一周目と同じようにデスシャドーに差をつけられ、ジャンプ台でも一周目と全く同じ展開だった。


「これだとまずい。どこかで何とかならないものか?」


 エンドレスフィアが視界から消えたところから俺は焦りだす。一重にまずい!


 2周目の直角コースは冷静に曲がりきるが、それでもデスシャドーはわずかに前。


 この直線コースでブーストを掛けてデスシャドーを競り合うが、最終的には重力的な問題が生じた。


 俺は精一杯デスシャドーについていったが、途中デスシャドーに減速された。そこで勝ったの思ったのが馬鹿だった。俺はそのままデスシャドーに後ろにつかれて突進されたため、ものすごい勢いで吹っ飛んだ。


 そして、当たり前だがそこでもかなりの差をつけられてしまった。


 俺はデスシャドーの重い一撃をくらって減速する。俺は目いっぱいブレーキをかけて吹っ飛ばされたブレイクダークを止め、体勢を立て直してから再始動するが、すでにデスシャドーとの差はとんでもない広さになっていた。


 三周目もデスシャドーを抜かせず、4週目に当たってはデスシャドーを見ることすらできなかった。


 4週目の直線コースに入り、もうすこしでファイナルラップに入るところだった。


「ちょっと、リュウ!これどういうこと!?」
 マグネットが急になりだした。俺はかなりびっくりする。


「なんだぁ!?」
 状況がまったくつかめないでいると、さっきの声の持ち主はそのトーンを維持したまま、


「あたしだよ、あたし!」
 と、怒鳴りつけてくる。なんだ?新手の詐欺方法か?ブレイクダークに詐欺をしてくるなんて、よっぽどのバカ者だな。


「霊夢よ!博霊霊夢!」
 その声の持ち主はそのまま名を告げた。霊夢と知ってほっとするが、すぐさま次の疑問が浮かぶ。


「なんでブレイクダークと通信が出来るんだ。ブレイクダークとの通信機はお嬢様と咲夜しか持っていないはずだぞ」


 すると、霊夢はバッカジャナイノといったような口調で、


「うん、知ってるわよ」
 と言ってきた。


 頼むから俺の問いに答えているような形式で話をしてくれ。それじゃあ全く俺との話と意味が通っていないじゃないか。


 そう心の中で突っ込みを入れた後、俺はさっきの質問をもう一度繰り返す。


「じゃあなんで俺とお前はこうやって連絡し合えるんだよ」


「借りたからに決まってるじゃない。馬鹿じゃないの」
 実に普通の返答が返ってきたものだから俺は拍子抜けしてしまった。


「それよりも、なんでこんなことになっているわけ?」


 さすが、幻想郷一空気の読めない女。


 傍から見たらばっちりガチレースに見えるはずなのになんで今そのガチレースの途中でパイロットにそんなこと聞くのかね。頭の中を一階覗いてみたい。


 まあ、除く前にまず返事か。


「この様子を見てくれ。俺は今このレースにガチで走っているんだ。悪いが、今は訳が話せる状況じゃない。後にしてくれ」


「今はなさないと奇襲するわよ!」


 俺がいいわけをしたとたん、マグネットの音量調整部が狂ったかとおもう程の怒鳴り声が俺の耳に入ってきた。


 慌てて耳をふさぐ。ふさいでも十分うるさかった。


 マグネット越しだが、霊夢は相当怒っている。


 あとでレースが終わったらマグネットの配線に異常がないか確認しておく必要があるだろう。


 おっと、そんなことを考えている暇はない。いつ、どんなところでもどうでもいい冗談を頭の中で張りめぐらせるのは、俺の昔からの悪い癖だな。


「おいおい、奇襲は勘弁してくれ。今攻撃されたらマジで困る」


 俺は霊夢を精いっぱい言葉でなだめる。いや、なんであいつが怒っているのか知らないんだけどさあ。


 と俺が思っていると、まるで心をよんだかのように、


「勘弁ってねぇ、こっちのセリフよ。どんな騒音でエンジンかけてんの!」
 と霊夢がまたお怒りの言葉を吐いた。


 しかし、随分と理不尽な理由だな。それじゃあまるで、一切音を出さずに歌えと言っているようなもんだぞ。


 理由を聞いて、なんとか彼女の怒りを抑えようと試みてみようと思っていたのだが、その計画は音をたてて崩れ去った。


 だって無理だもん。エンジン音立てずにレースしろなんて。


「F-FIREっちゅうのはこういうもんなんだよ」
 俺が半ば逆ギレ状態で言い返すと、


「馬鹿!ほんとにあんたぶっ殺すわよ!」


 霊夢がいよいよ怒りだした。そんなこと言われてもだな。じゃあどうしろと?


 まあ、でも確かに、幻想郷管理者の目からすればこのレースは邪魔の他の何物でもない。


 これがもし真昼間だったら別にみんな寄ってたかってくるだけだろうけど、今は真夜中だしな。


 近所迷惑に他ならない。


 それに、これ以上霊夢を怒らせたら本当に俺死ぬかもしれん。とりあえず、


「すまない」
 と、一言謝っておく。


「これ、あとどれくらいで終わるの」
 当然霊夢の怒りがこれぐらいで収まるわけもなく、さきほどのテンションで怒鳴っている。そろそろマグネットが壊れるぞ。


「あー…残り1周半だから…3分程度かな」


 やべぇ!もう残り1周半かよ!はやく打開策を打ち出さないとマジでデスシャドーに負けちまうじゃねぇか!


「あ、そう。それならいいけど、こんな大層な事件巻き起こして、当然勝ってるんでしょうねぇ」


 霊夢の怒りは当分収まらなそうだ。これで今真実を言うとたぶんまた怒鳴られるだろう。


 かといって嘘をついて、もし霊夢が本当のことを知ったうえでこの問いを投げかけているのだとしたら、前者よりももっとでかい怒鳴り声を発するだろう。


 どっちが安全か。


 そりゃあ前者だろう。


「すまん、今俺は相手に相当差をつけられてるんだ」


「はぁ、負けたらただじゃすまないわよ!」


 やはり、霊夢は女とは思えない声量で怒鳴りかけてきた。


 カルシウムのとらなさすぎだ。もっと牛乳のめ。早死にするぞ、そんなんじゃあ。


 しかし、俺が思っていたよりも霊夢は怒りのボルテージが上がってしまっていたようだった。怒鳴り声だけなら俺は軽く流して話を終わらせるが、そうは言ってられない事態が飛んできた。飛んで来たのは事態だけじゃないんだがな。


 ――――ヒュッ


「ん?」


 目の前のコックピット越しに何かが飛んで来たのが見えた。何が飛んで来たのかはものすごい速さで横切っていたから全く分からなかったが、俺はこのレースで生まれた風流で木や木の葉が飛んできたものだろうと思った。


 実際、平均時速1500kmで走っているからマシンの後方じゃあ当然ながらかなりの風が生まれる。レースでもそんなことは日常茶飯事だったしな。


 その考えがどうやら甘かったようだった。


 やはり何が飛んできたのか気になるから、飛んできたものが飛んでいった方向を向くと、なにやら紙切れが数枚壁に突き刺さっていた。なにやら横と縦の比率が1対2ぐらいの長方形の紙に赤と白の模様が書いてあるっぽいな。


 あ、風にあおられてそのうちの一枚がこっちに飛んできた。


 その紙を目で追っていると(今は直線コースだからよそ見しても大丈夫なのだ)、だんだんブレイクダークのコックピットの蓋に近づいてきた。


 そして、そのままぺたりと張り付いた。その張り付いた物体は、どうやら御札のようだ。真ん中には赤字で『博霊神社』と書かれ……


「うわ、ちょ、馬鹿野郎!」


 俺は、さっきこの御札軍が飛んできた右を見てそこにいるだろう霊夢に怒鳴る。案の定霊夢はレースのジャンプ台の所に浮いていた。


 この野郎。何も怒りにまかせてレース中のマシンに向かって札を飛ばしてくることはないだろう。


 どれだけ怒ればそんな非常識というか、一歩間違えたら死者が出ていたという状況を作り出すんだよ。


「あら、今度無駄口叩いたら承知しないわよ」
 霊夢はざまあみろといった口調でゆっくりと言った。おのれ…!


「誰が無駄口だアホ巫女が!」


 俺は霊夢にこれでもかというほど罵声を浴びせる。


 レース中にこんなことしてくる馬鹿がどこにいるか。たぶん宇宙中のどこを探してもいないだろうな。こんな堂々とレースを妨害してくる大馬鹿野郎はな。


 と、霊夢と口げんかしているところであることに気づく。


「大体お前はどういう教育を受けて……ん?」


「何よ。私の顔に何か付いてる?」


 急に黙りこんだ俺を不審そうに言いながら霊夢は空を飛ぶ。まるで、俺に自分の姿が見えているかをアピールしているかのようだ。


 しかし、残念ながら俺は霊夢に意識はなかった。俺が見ていたのはジャンプ台だけだった。


 そのジャンプ台に何かしるしが付いているというわけではなく、かといってそこがだんだん壊れてきているというわけでもなく、また俺は頭の中でデスシャドーに大差をつけられてしまったこの状況を打開する方法について、ただただ模索しているだけであった。


 あのジャンプ台は、コースが始まって緩やかなカーブがあり、その後に位置している。

 つまりは、あのジャンプ台が位置するのはだいたい全コースのはじめ10分の1程度の所だろう。まあ、スタートラインからだいたい20秒程度でたどり着けるぐらいだ。そんなに遠くはない。


 たいして、今走っているこのだだっ広くてくそ長いこの直線コースは、コースの終盤中の終盤だ。


 こちらも、あと20秒も走ればスタートラインに到達できるだろう。割合にして、全コースの後ろ10分の1と言ったところ。


 そうすると、今考えればコース終盤10秒程度はとんでもない坂道なんだろう。


 なぜって?そりゃあ、今走っているところから見れば、ジャンプ台は左右ではそんなに離れていないものの、高低差がかなりある。


 だいたい80mほどあいているだろうか。だから、重ければ重いほど最後の坂道で減速せずに済む。


 故にデスシャドーは速いとなるわけだ。


 いや、そんなことどうでもいい。


 なんだ。この感覚。


 前にもこんなようなコースを走った気がする。いわゆる、デジャブってやつか。


 その、あったような気がする前のコースは確かジャスティスウィング内での訓練中だっただろうか。




とうとう、総文字数10万超えましたねー
いつまで続くんでしょうね。この小説は



LAP34 リュウサトウは過去の経験からレースに大きな旋風を巻き起こす



「ほら、リュウ!遅いわよ!」


 うーん…確かこんなスーザンの怒鳴り声が聞こえた気がする。


 あれは、3年前のことだったろうか。ジャスティスウィングトレーニングコースに新しいバリエーションが出来たというんで、早速走ろうというマイケルのらしいといっちゃあらしい提案で走ることになったんだ。


 そんで、スーザンは皆のコース取り、スピード配分、ブーストのタイミングなどの細かいテクニックの指図、いわば監督を務め、ジェームズはスタートラインでラップ数を図る、監督という例を使ったからには審判というたとえがいいだろうか、と努めていたような気がする。


 そんで、他の5人は全員そのコースを走ってレースを行った記憶がある。


 んで、俺はその時たまたま世紀希に見る大スランプに陥っていて、前回レースでも25機中22位という大惨事が起きたんだっけ。


 あのスランプは生涯忘れる事が出来ないだろう。


 あの時はスーザンだけでなく、ジャスティスウィングを管理下に置く治安庁のお偉いさんにも怒鳴られまくり、ジャスティスウィングのメンバーにはすごく心配をかけた。


 何回も悩みごとがあるなら相談に乗ろうかと持ち込まれたし、俺自身も本当に自分では気づかない悩みがあるんじゃないかって本気で思った。


 そんで、またその時のレースでも俺はビリを走っていた。


「分かってんだよ、遅いのは!」


 もうあの時の俺はスランプの出口をがむしゃらに見つけることしかできなかった。あの時の自分を思い出すと、恥ずかしく思えるね。もっと大人らしくふるまえよ、と。


 だって、あの時は本当にだだをこねた子供のような態度しか取れなかったしな。スランプによって周囲からかけられるプレッシャーで俺自身がつぶれそうになっていたし、無理もないかと思うこともしばしばあったが。


 あの時代は黒歴史という言葉がすっぽりはまっただろうな。精神科医に行くなんて後にも先にもあの時代だけだろう。


「あれー?リュウくんはそんなに遅かったんでちゅかー?ぼくしらなかったでちゅー」


 そのレースで、馬鹿にしながらマイケルが俺のことを周回遅れにした時は、ガチで泣きそうになったね。俺はここまで深刻にスランプに陥っているのか、とね。もう俺は終わったな。


 F-FIREじゃない生き方を考えておかないと、とまで思った。


 でも、あの時はがむしゃらに目標に向かって進むことを学んでいたから何とかしてこのレースで優勝してスランプから抜けたいと思った。


 あの雪辱の燃えるような感覚は今でもたまに思い出す。あのスランプがあって俺があると思っても問題なかったね。


 俺は、自分で言うのも何だが、目標に向かってひたむきに努力する長所はこの世界のだれにも負けない自信がある。それに、その目標だって世界トップクラスに入る大きさだと思う。


 だって、その目標が達成されると同時に全世界の生物に本物の平和と届けることが出来るのだから。


 でも、その性格はこのスランプがなければ作られることはなかった。


 スーザンをはじめ、周りの人はみんな口をそろえて『スランプに陥る前のリュウと、スランプに陥った後のリュウはまるで別人だ』と言ってくれる。


 現に俺だってそう思う。さっき、俺はあのスランプ時代を黒歴史と呼んだが、とらえ方によっては人生の転機とも言えるだろう。


 さて、俺の記憶誰かに改ざんされているか、もしくは何かの拍子に一部分の記憶がすっぽり抜けてしまっているようなことがなければ、確か俺はこのレースで見事な逆転優勝劇を繰り広げられた記憶がある。


 スーザン以外のメンバーからは祝福の言葉をもらったが、スーザンからは罵声を頂戴した記憶があるから、恐らくとんでもない無茶をしでかして優勝したのだろう。 


 そして、そのレースがきっかけで俺はスランプから抜け出したことになっている。


 そして、次のレースから一年前の最後のレースまで俺はずっとレースでTOP5を維持し続けていたんだ。それは大会新記録なんだそうで、俺は一時期F-FIREの神様とまで言われたよ。正直、俺よりスーザンの方がうまいと思うけど…


 話をスランプ克服のきっかけとなったレースまで戻そう。


 マイケルに周回遅れにされた時が丁度4週目の終盤あたり。当然の如くビリっけつだ。でも、どうにかして優勝したくて、打開策を頭の中で考えまくって、そしていい案が思いついて1位に躍り出たんだ。




 丁度その時、このコースの風景を見た気がする。




 そう思った時、俺は見事にすべてを思い出した。そして、


「これだ!あいつに勝つにはこれしかない!」
 俺は頭の中の回路が一気に繋がったような気がした。かなり無茶だがデスシャドーの前に行ける方法がただ一つある。


 そう、あのスランプ克服時のあの方法だ。


 俺の大声にいささか霊夢もびっくりした様子だ。


「何よ。いきなり大声出して」
 先ほどの怒鳴り声とは打って変わって、随分と引いた声を出した。が、今の俺に言わせてみれば、そんなこと本当にどうでもよかった。


「お前のおかげでこのレース勝算が見えた!」


 そうさ。もっといえば、お前が怒って俺に向かって札を投げつけてきたことのおかげだ。俺はそのおかげで霊夢を目で追って、その結果昔見た風景にたどりつくことができたのだからな。


 このレースが終わったら博霊神社にいって大量に賽銭をしてやってもいいぞ。


「え?何よ?ちょっと…」
 いよいよ霊夢が引き始めた。が、さっきもいったように、そんなこと構うものか。


「今は話しかけるな。後でじっくり説明するから」


「……分かったわ。少し見守ることにするわよ」
 少しの沈黙の後、霊夢が不満そうにぼそりとつぶやいた。


「すまない。ありがとう」
 俺はそれだけ言うと、レースに全神経を集中する。そして、デスシャドーにかなりの差を付けられたままファイナルラップに突入した。




何を思いついたんだろう、この中二病真っ盛り主人公は((((



LAP35 リュウサトウは次第にレーサーとしての感覚を取り戻す


 本来なら俺はここでああ、もうだめだと諦めるか、ああやばいやばいと動揺するかのどちらかを選択することになるのだろう。


 レース前に、俺が負けた場合のことをデスシャドーは明言しなかったが、それは逆にレース前に言うとレースを断られてしまう危険性があるほど理不尽な要求を俺に突き付ける気なのだろう。


 そうでもなければデスシャドーがあんなにレース前にやにやするわけがない。大方、幻想郷住人のうちの一人を殺して、死体を持ってこいとかそういうたぐいのものだろう。


 それを考えると、やはり焦った方が物語に花があるのかもしれない。


 アクション系の映画のように見ている側には冷や冷やした雰囲気を提供できるかもしれない。


 だが、残念ながら今の俺はそんなにサービス精神に富んではいなかった。俺はさきほど挙げた二つの心情とは全く違う気持ちになっていた。


 全神経をレースに集中させているため、ほぼ感情など持ってなどいない。そりゃあそうだろう。感情を持っていたら、頭の中に雑念が生まれてレースに全神経を集中などできるはずがない。


 だが、だからといって人造人間のように心は鋼の如く冷たい無感情なのかといわれると、それもちがう。


 やはり俺だって人間だ。


 いくら全神経をレースに集中しているとはいえ、感情のカケラは心に残っているさ。


 じゃあ、その感情のカケラは一体何か。といわれるとこれが非常に答えにくい。

 この小さい感情のカケラの中にたくさんの種類の感情が込められているからだ。、その中には当然、焦燥や不安だって入っている。


 だけど、その感情のカケラで一番多くの割合を占めている感情はといったら、


 ――――ワクワク


 といった感じの心情だろうか。今から行う賭けに等しい作戦の結果が待ち遠しくてしょうがない。


 俺の頭の中のビジョンによると、この作戦が行われた後の結果は2パターンある。

 一つは、その作戦が成功してデスシャドーから華麗に優勝の栄光を奪い取ることが出来ること。この結果に至れば言うことなしだ。


 しかし、もう一つの結果はマシンが爆発することだ。天国と地獄、二つの局地を具現化したような結果が待つこの作戦を実行するのが、今の俺にとっては楽しみに思えてしょうがないのだ。


 いつだろうか、本で生き物というのはポジティブな条件とネガティブな条件が与えられたとき、本能的に意識はネガティブな条件に傾くことを読んで知った。生き物の本能の中にある危機感のセンサーが、それを頭の中で理解した瞬間にものすごい音量で叫ぶのだろう。


 だから、賭けを好む人間が賭けを好まない人間のわずか15%しかいないという統計が取れるのだろう。


 それは仕方のないことだ。その思考は本来の人間の本能に備わった自己防衛に基づく考えかたなのだから、そんなものを否定しても多数派にぼこぼこにされて潰れるのが宿命だろう。


 人間はそれを『当たり前』と定義して、『当たり前』が許す範囲目いっぱいでその理念を有効活用してきた。


 しかし、俺はそういう考えを持つ人間が大嫌いだ。


 確かにそういう考えもある。なにも間違っちゃあいない。逆に、俺の考え方の方がぼろぼろで、穴だらけで、だれにも相手にされないような考えである。


 だけど、一つだけ言えることがあると思う


「理屈をだらだら並べるよりも、目の前に置かれた状況を目いっぱい楽しんだ方が人生楽しいだろうが!」


 俺はいつしかコックピット内でその言葉を叫んでいた。


 そうだ。F-FIREパイロットがF-FIREレースをしていて、どうしてネガティブな思考を持つ必要があるだろうか。もし、年がら年中F-FIREからネガティブな感触しか感じ取れない大馬鹿野郎がいたら、そいつはF-FIREにかかわることを禁止する。


 それはF-FIREがいけないんじゃない。F-FIREの中に意義のあるものを見つけることができなかった、そいつ自身の負けだ。


 F-FIREに限る必要もない。どんなことだって、その区画の中で自分にとってポジティブなものを見つけることができずに、その区画を避けて通るような奴は人生において負けだ。


 ブレイクダークはファイナルラップに突入した後、軽快にカーブを抜ける。そして、カーブを半分すぎたところで、


「作戦開始!!」


 ブーストハンドルを力いっぱい引いた。そして、F-FIREレースをいままでやってきて、数百のコースを体験してきた俺までもが驚くほど、ブレイクダークは、風となってジャンプ台にもう突進していった。


 すべての神経をこのジャンプ台にかける。そうだ、この作戦も、俺の命も、この出だしでミスってしまったら何もかもが終わる。しかし、慎重すぎてもこれまた終わってしまう。


 慎重に、かつ大胆に。過去に一回しか体験していない感覚だけを頼りにそのままジャンプ台にむかって猛進していく。そして、


「いっけぇ!」


 俺はとんだ。


 そう、真正面にある着地点へではなく、大きく右にそれた形で。


「ちょっとリュウ!!何してんのよあんた!!」


 不意にマグネットの電源がONになった。


 そして、霊夢が悲鳴に近い声でマグネット越しに言葉を投げかけてくる。そりゃあそうだろう。まるでやけになったかのように着地点から大きくそれ、そのままどんどん落下していっているのだからな。


「俺は、諦めたよ。あとはよろしく頼んだぜ」
 俺は霊夢をおちょくる。当然の結果だが。


「馬鹿じゃないの!!」
 と、大地が裂けそうな大声で霊夢が怒鳴る。


「見ていればわかる」
 俺はそういってマグネットの電源を切り、再び全神経をレースに捧げる。


 そう、今の俺を作り出したあのレースの感覚だけを頼りに……



とりま、ここまで。
涼宮ハルヒシリーズみたいになってきたのは仕様
題がハヤテ風からバッカーノ風になったのも仕y(ry
文が長いのも(ry



LAP36 ブレイクダークは主を運ぶために自らを犠牲とする


『くそっ……またおんなじことの繰り返しかよ!』


 俺は半ばあきらめたまま4LAP後半に差し掛かった。


 もう、何日レースで一位という栄光を手にしていないだろうか。むしろ、レースでビリという屈辱を味わいそうな日々を送っている。


 何度俺はF-FIREパイロット生活をやめようと思っただろうか。事実、治安庁のお偉いさんの中には俺の成績に満足していない連中のほうが多数を占めていた。


 ジャスティスウィングの連中にもものすごい迷惑かけていることは身をもって知っている。スーザンは俺を早く立ち直らせようと必死に俺を指導してくれるし、ジェームズやリチャードには何回も相談に乗ってもらっている。マイケルやロジャー、メアリーは俺に変な負担をかけまいといつも通り俺を接してくれている。


 だけど、今のおれに言わせてみればそれは恐縮を通り過ぎて苦痛に近かった。みんなに心配をかけている。だから俺自身がしっかりしなきゃいけなかった。そう思うたびに俺の胸には痛みが走った


 だから、このレースでビリをとったら俺はF-FIREパイロットを止めるという旨をスーザンだけに話した。


 そうやって、自分をギリギリのところまで追いつめて追いつめて、そして初めて自分の才能っちゅうのは発揮されるもんだと俺は思っていた。いや、そうであってほしいと俺は信じていた。


 もう今までにいろんな対処法は実践してみた。一から筋肉トレーニングだってやったし、精神トレーニングということで1500年代後半に盛んに行われていたという座禅だってやった。


 でもそれらはことごとく失敗してきている。俺に気合いが足りないという理由だけじゃあ片づけられないんじゃないかと、最近になって真剣に考え込むようになってきた。


 それで、俺はこういう風にして自分を追い込んでみた。


 でも何が変わるというわけでもなかった。


 また、もう日常と化してしまっているビリという位置をのうのうと走っている。俺は自分の情けなさ、ふがいなさに心から絶望した。俺が今まで歩いてきたF-FIREの道のりは、気合も根性もなくて、ただの勢いだったのかと自分を卑下していた。


 俺は、俺自身を捨てていた。


 でも、スーザンは俺を捨ててなどいなかった。


『リュウ!気合いが足りないのよ!』
 スーザンが俺に対して怒鳴り声をあげた。そんなの、いわれなくてもわかってるっつの…


『十分俺は気合を入れているよ!』
 半ば切れ調子で俺はスーザンに反抗する。が、


『いいえ。あなたは昔のあなたのように生き生きとレースをしていない』


 確かに未来の俺からみればあの時は俺らしさなどかけらもなかった。


 だが、スーザンは今の俺をバッサリと切って捨てた……とそのレース中の俺は捉えた。情緒不安定だったとはいえ、子供っぽい言動をとった俺が情けない。


『じゃあどうしろってんだよ!!』
 俺は完全に子供の怒りにスイッチが入った。


 だけど、そのスイッチは一瞬でスーザンに切り替えられる。


『じゃあなんでブースターパワーが4分の1も残ってんのにブーストをかけないのよ!!』


 俺はその言葉にはっとする。


 見ると、確かに最高値が100のブースターパワーの数値は25を指している。まだあと3回はブーストができる量をためていた。


 昔の俺はパワーポイントに入る直前にはパワーは1桁まで削って入っていた。


 つまり、それだけブーストを乱用していたということだ。


 まあ、せっかくブースト機能がAのマシンを使っているのだがらブーストしないのは損だというのが当時の俺の考え。そして、未来の俺の考え。


 だけど、今の俺は何を考えているのかブースターパワーがまだ25も残っているというのにブーストハンドルから手を離してしまっていた。


 もう、これ以上ブーストをかけるのは危険と判断してしまっていたのだろうか。


『それでも気合を入れてレースしているとでも言えるの!?』
『それは……』
 真実をズバッと突きつけられてごもる。


 くそっ、何も言い返せない。自分が情けない。


 こんなにF-FIREを恐れていたら優勝なんて狙えるわけがないじゃないか…かつての自分はどうしてあんなにいきいきとしてF-FIREに臨んでいたのだろうか。完全に俺はあの時代の感覚を無くしてしまっていた。


 心の楽しみというのを、悩みとかスランプとかいう本当にどうでもよくてくだらないもので蓋をしてしまっていたんだ。


 でも、じゃあどうすればそういう邪念を振り払える…くそっ、なにも思いつきやしない。


『このコースの序盤に何があるか覚えてるかしら』


 スーザンは俺に問う。俺はその問いを考える。必死に。この迷路から抜け出すカギのヒントを得るために。


『……ジャンプ台がある』
『そう、そこまでわかっているならもういいわね。いい、私にあの昔の、あぶなっかしくて、無茶苦茶で、F-FIREに命をささげているリュウサトウを見せなさい』
 そういうと、スーザンはマグネットの電源を切ってしまった。


 どうすんだよ。ジャンプ台に何か罠があるってのか?そのジャンプ台に行けばなにか特典でももらえるのか?そこを通過するだけで俺は1位に躍り出れるのか?


 ………ばっかじゃねぇの、俺。そんなことが起きるわけないじゃん。第一、スーザンがそんな甘ったるいことするわけがないじゃん。


 じゃあなんだ?俺がかつてのF-FIREで見せていた気迫を持つことで初めて優勝できること……。そこまで考えて、俺は昔の俺を思い出す。


 昔の俺は、マイケルやロジャーよりも何十倍も怒られていた。治安庁にうわさが広まるほどにがみがみ怒られていたそうだ。


 まあ、そんな事実はどうでもいい。問題は理由だ。だいたいは『あんなにパワーがぎりぎりになるまでブーストかけて、馬鹿じゃないの』とか、『あれだけデスシャドーを刺激するなって言ってんのになんでアタックするの』とか、そういうたぐいものだった。


 つまり、俺が何を言いたいかというと、昔はいつも俺が無茶をしでかしたときにスーザンに怒られていたんだ。それで、スーザンに怒られて反省するも次のレースまでにはきれいさっぱり忘れていて、またスーザンに怒られる。その無限ループのサークルが俺とスーザンの関係でもあった。


 だが、いまはどうだろう?今も確かにスーザンに怒られている。さっきだってマグネット越しにだが怒られてしまった。スーザンに怒られているという結果だけを見れば今も昔も変わらない。


 だけど、今俺がスーザンに怒られている理由って何だろう。『もっと根性出せ』とか、『もっとスピードあげて』とか、そういうたぐいのものに激変している。


 つまりは、俺に無茶をしろと言っているのだ。いや、無茶は要求されていないけれど、そこそこの覚悟は必要だといわれている。ひっくり返していえば、俺にそれほどの覚悟がないということなのだ。


 これで、今と昔の俺の違いが把握できた。次は、どうやって今の情けない自分を昔のたくましい自分に戻すかだ。


 ……愚問だな。


 昔のように、スーザンに怒鳴られるほどの無茶をすればいいのさ。


 それに、スーザンはジャンプ台というヒントを与えてくれた。つまり、ジャンプ台でなんらかの無茶をすれば、俺のこの気持ちも吹っ切れるというわけだ。


 だけど、なにをすればいい?


 ……今の俺にはなにも思いつかない。


『ああ、駄目だ俺!』
 そういう風に自分の可能性に蓋をするんじゃない。気が滅入っちまうだろうが。


 俺は上を向いて大きくため息をついた。上にはさっきスーザンが言っていたジャンプ台が見える。そこを今誰かが飛んで行くのが見えた。みんな早いな…


 と、心の芯になにか熱いものが流れるのを感じた


 ……あれ?


 さっきまで、皆がどんどん越えていったレース序盤にあるジャンプ台が、今ビリの俺が走っているレース後半にあるこの直線コースの真上にある。ということは、あのままジャンプ台から落下してここに来れば…


『これだ!!』


 俺の中にあったもやもやしていた気持ちは俺の叫び声にびっくりしたのか、どこかに逃げ帰ってしまっていた。俺はひらめいてしまった。


 そうだ。ショートカットだ。


 ジャンプ台などで一度コースから飛び出し、普通に進むよりも早い位置に着地する、レースゲームなどでよくある、あのショートカット。


 それが今、このシチュエーションでできないかと俺はひらめいた。


 つまり、作戦としてはこうだ。まず、あそこのジャンプ台まで行く。その後、あのジャンプ台から飛んだ瞬間に機体を180度回転させて今走っているこの直線コースに着地する。


 成功すれば間違いなく俺はこのレースで優勝するだろう。コースの8割ぐらいを切れるのだからな。しかし、着地地点がずれてしまったり着地する時の態勢がうまくできなければ、ボディEのブレイクダークは間違いなく木っ端みじんになるだろう。


 まさしく、昔の俺がやりそうなことで、かつスーザンに怒鳴られそうなことだ。


 急に俺の気持ちが跳ねる。俺のマイナスな気持ちはどこへやら、もうわくわくとかどきどきとか、今後の展開に期待を持たせるような感情しか残っていない。


 もし、このショートカットが成功すれば…間違いなくこの長いスランプのトンネルから抜け出すことができるだろう。


 気がつけば、俺はとてつもないスピードでジャンプ台に迫っていた。


 こういう風に無意識のうちにブレイクダークを暴れさせているこの感覚は、長い間ご無沙汰していた昔のF-FIREの俺が抱いていた感情とまったく同じものだった。


 ―――――いける!


 俺は確信した。そして、飛んだ。


 反射的にハンドルを壊れんばかりに切る。


 ブレイクダークはゆっくりながらも確実に機首を180度回転させた。


 俺はそのまま機首を上にあげる。


 そして、そのまま直線コースに猛烈な速さで落下していく。







「『うおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』」






――――――――ガシャーン


 鈍い音をたててブレイクダークは着地した。


 俺はその着地の振動にハンドルをしがみついて耐える。いくらF-FIREのマシンとはいえ、さすがに80m近くの落差を落ちるのは痛い。


 ブレイクダークは?……爆発はしない。なんとか耐え抜いたようだ。


「っしゃあ!!」


 俺はこのデスシャドー戦に勝利を確信した。過去一回のみの経験とはいえ、その一回がかなり脳に染みついていたようだ。落ちる時には全く悩みなどはなかった。


 しかし、あのときのコースとは高低差が違ったようだ。あの時はまだブーストをかけて余裕でゴールできたが、今のブレイクダークのパワーは1程度。もう、ただの突起に引っ掛かるだけでクラッシュだ。


「まあ、いいだろう」


 大規模なショートカットは大成功に終わった。あとはゴールするだけだ。デスシャドーを抜かせたかどうかは知らないが、おそらくぬかせただろう。俺はそう信じて、ゴールまでがむしゃらに走る。


 しかし、さすがはデスシャドーだ。発信してから間もなく後ろからエンジン音が聞こえた。振り向くと、エンドレスフィアがブレイクダークをものすごい勢いで猛追してきていた。


「リュウサトウ!ショートカットとは大胆なことをする」
 デスシャドーは俺の大胆さにかなり満足なようだ。何が満足なのか俺は詳しく聞きたいが、興奮した今の俺はそんなことまで頭が回らない。


「褒め言葉として受け取るよ」
 俺はそういってさらにアクセルを深く踏み込んだ。しかし、


「しかし、私は負けんぞお!!」


 マグネット越しのデスシャドーの声とともに相手が急に加速し始めた。ブーストをかけてきたのだろう。


 あいつのブーストの性能はAぐらい。俺がブーストをかければ、同じぐらいの速さで逃げ切れる。が、パワーが1のブレイクダークはブーストをかけると爆発してしまう。だが、このままだと確実にぬかされる。


 どんどん差が詰まっていく。あと5km、4km、3km…


(だめだ、このままじゃあ追い抜かれる)


 俺はブレイクダークのパワーメーターに目を落とす。相変わらず数値は1を示し、終始警告音が鳴り響く状態だ。


 だが、こいつも俺の無茶に何度も耐え抜いてくれた。今さっきだって俺の無茶なショートカットによく耐えてくれた。なら…こいつを信じてもいいだろうか。


「まだいけるか?」


 俺はブレイクダークに問いかけるようにつぶやく。


 と、俺の問いに『まだいきたい』と答えるように僅か時速2kmだが加速した。


「そうか……」
 俺はそうぽつりとつぶやくと、目を閉じてブーストハンドルに手をかける。


 ブレイクダークはジャスティスウィングのメンバーよりも、F-FIREよりも長い付き合いだ。


 ブレイクダークのことは俺が一番よく知っているし、俺のことを一番聴いてくれるのはスーザンでもなくて、治安庁のお偉いさんでもなくて、こいつだってことも俺はよく知っている。


「いくぞ!!!」
 俺は目をかっと見開いて、壊れんばかりにブーストハンドルを引いた。


 瞬間的に時速は3000km近くまで上昇するが、すぐに後方にとてつもなくでかい衝動が走る。


 エンドレスフィアに追突されたかと思って振り返ると、そうではなくてブレイクダーク後方が燃え上がっていた。エンジンが耐えきれずに爆発したのだろう。機体がどんどん燃えていく。


 しかし、今の俺はどうかしていた。普通なら慌ててコックピットから抜け出すだろう。いくら昔の俺だってここまできたらさすがにコックピットの外に逃げる。


 しかし、俺はブレイクダークが体を張って俺をゴールまで運んでくれているとしか捉える事が出来なかった。


(この爆風ならあいつに勝てる!)


「うおおおおおお!!!!」
「ぬぅああああああ!!!!」


 エンドレスフィアとブレイクダークはほぼ一直線にゴールラインに向かっていった。そして、


 ―――――ピーーーン


 ゴール音が鳴り響く。すぐにコックピット画面に目を落として自分の順位を確認する、そこには大きい文字で


『1st』


 と書かれていた。


 ―――――勝った!


 俺がわずかに勝ったのだ。このデスシャドー戦に。


 そして、


 ―――――ドカーーーン


 激しい音をたててブレイクダークは爆発した。ゴール地点にはただもくもくと煙が立ち込めていた。



いつもこのくらいの頻度で更新できるといいなぁ…

※次回の展開から、先に言っておきたいことがあります

 咲夜が嫁のやつはざま……もとい、すいません









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最終更新:2009年12月22日 21:10