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リレー小説 2ページ目



超展開X2で物語が早速ぐちゃぐちゃにwww



<MC時計>、もしくは単に<エムシー>の愛称で若い世代から上の世代にまで親しまれている『ミムラクロック社』――これが梶岡家の経営する社名。

なぜ「ミムラ」なのかはユウキは良く知らない。
なんでも『ミムラクロック社』は大正時代から続く老舗が大きくなっていたものらしいから、おそらく最初の頃の主人の苗字が「ミムラ」だったとかおおよそそんな理由だろう。

元は細々とした個人経営の店だったのだが、何をしたのか知らないが曾祖父の代からいきなり二部上場企業への仲間入り。
そして次の祖父で一部上場企業へとIN、そして父が一気にのし上げ今ではシェア独占までとは行かないが、それでもこの国一番の時計メーカーへと成り上がった。

そして今ユウキの父は、そんな、卓越した商才の片鱗を微塵も感じさせない姿となっている。

救急車に担ぎこまれる際、一瞬だけ見えたその姿はやけにユウキの脳内へと鮮明に残った。

窓ガラスにいくつも肉を削がれたのか、所々に見え隠れする赤黒い痕。
元はしっかりとついていたのであろう両腕は、何やら人体としてあり得ない方向へと曲がっていた。
共にいたベンツのオブシディアンブラックカラー・CLS350型も、主(あるじ)のその姿を表すかのように新聞のごとくぐしゃぐしゃとなっていた。


そのとき俺にできたことといえば。


「親父!!おい起きろって!!親父!!!」


情けなく声らしき音を響かせるだけ――


■                             ■


「おい、ユウキ。んな不景気な面してるとただでさえ悪い顔が余計悪くなるぞ」
「お前のゴブリン面より遥かにマシだ」
「てめぇ、ゴブリンなめんな!集まったら合体してキングゴブリンになるんだぞ!!」

そらキングスライムの間違いだ。第一、ゴブリン面が集まるとかどこの万国ビックリ人間ショーだ。

5月半ば、夏が顔を出すにはまだまだ早い春の空気に包まれた教室。
青灰色の雲の隙間から覗くお天道様が、教室の窓へと陽光をゆったりと流している。

もう少し大きければ快適なのに、とユウキが常から思うお馴染みの机の並ぶ数は36。
朝、学校が始まる前には整然と並べられているわけだが、今は既に昼休み。
生徒たちの手により、およそ65点くらいの綺麗さ(汚さ?)で雑然と並べられている。

「お、もう12時半か。そろそろ俺の蜜月の時を過ごす時間だ」
「早まって早まっちゃうなよ?」
「小日向に既に手を染めた後のカジキ野郎にだけは言われたくない」

屋上へいけなくなる様、こいつの膝に柄の下段を決めてやろうかと思ったが、こいつの彼女に悪いのでやめといた。(そもそも俺は剣道部でもないのに柄を持つ武具を持ってるはずがない)
ちなみに「カジキ」というのは「梶岡ユウキ」を略した名である。こいつが勝手につけ、そしてクラスの他の連中にもやはりそう広まっている。
カジキだのアリクイだの、俺は何やら人間以外の生物と縁があるらしい。

中学時代からの付き合いであるこいつ――幾嶋一(いくしま かず)ことカズはコンクリ製の床をがんがんと鳴らしながらさっさと教室を出て行った。
頑張って蜜月の時を過ごせよ。心の中でとりあえずエールを投げやりに送っておく。
教室に残るおよそ15人ほどの生徒の何人かがちらとカズの方を見たが、すぐに興味を外して自身の談笑へと意識を戻した。


始業式のあの日――親父が事故ってから、1ヶ月ほど。


時間の経過というのはなかなかのもので、このとおり俺は割と普通に日常を過ごせている。
まぁ、これでもし親父が死んでたりしたらどうなったか分からないが。

医者の話によると、主要な器官に目立った損傷は無く、命に別状は無いのだとか。
しかしそれでも全治3ヶ月。
造りが良いという評判のベンツ様でもそれが限界だったようだ。
といっても、当のベンツ様は天に召されてしまったので、自身の命を犠牲にしてでも親父を守ってくれたことに対しては心底感謝している。
よくよく考えると、そのベンツ様に乗っていたせいで親父は事故ったわけだが、それはまぁそれだな、うん。

我が会社である(じゃない。我が父の会社だ)『ミムラクロック社』は、トップのCEOが重傷ということでその機能はストップ・・・するはずもなく社長なり何なりがしっかりと経営している。
これが原因でトップが変えられたりしたら、ということも俺は考えたりしたが、そこまで恩知らずな社員たちじゃないだろう。きっと。

家内も当初こそおろおろびくびくしていたが、今ではなんら問題なく通常通り。
俺の使用人である霜月に至っては、当初から通常通りだった。
あいつに主をいたわる気持ちは・・・ないんだろうな。なんて女だ。
霜月を使用人に雇ったことが親父最大の間違いな気がしてままならない。

と、この通り、俺が存在を信じてるのか信じてないのか自分ですら分からない神様仏様の計らいのおかげか、基本的には元通り。


――基本的には。


「あいつは恥ずかしげも無く昼間っからいちゃいちゃ、か。見ているこっちが恥ずかしいどころかもはや呆れるわね」

妙に五月蝿いカズが消えたからか、机で読書なんかしていた――カズ同様中学時代からの友人である宮ヶ崎瑞乃(みやがさき みずの)がこちらへとおもむろに近づいてきた。

ん?こいつは今日はやけにくっきりと見える<時計>があるな。時間的には・・・放課後か。
<喜>と<楽>がかなり強いみたいだが・・・。
何の予定か気になるな。後で聞いてみるか。

「最大の問題はなぜあいつに彼女ができたか、だと思うけどな」
「ははっ、言えてる!」

他愛ない会話をしてる最中も、俺にはやっぱり見えている。
瑞乃の――瑞乃だけではなく他の奴らにも同じように。


ちょうど胸の辺りでちかちかと消えたり現れたりを繰り返している、<時計>が。




まさかのちょっぴりファンタジー要素を追加。
この<時計>に関しては、実は自分の中ではかなり設定は固まっとるのですが、あえてあまり深く踏み込まない状態で区切ることに。
とりあえず、文章から読み取れるであろう内容としては・・・

  • 予定(未来)が実行される時間を知ることが出来る。何の予定かは分からない。
  • その時計の表示者にとって、その出来事がどういう感情をもたらすか、ということも把握可能。

以上。他にもたくさん考えたが、全部自分が決めてしまうのも・・・なんだかなぁ。

…フヒヒ、超展開の後に超展開を書いてしまったZE。



「ねぇ、あのあとおじさん、どう?」
「ああ、命に別状はないそうだ」

学校からの帰りの際に、親父の話が話題に上がった。

今は公園のベンチに二人並んで腰かけているが、真正面からさしてくる夕日に嫌気がさしているのは俺だけなのだろうか。いや、いまじゃあ建築の立地条件に西日が入るか入らないかのデータも取るらしいから、そういうわけじゃないんだろう

その代わり、五月だというのに秋を思い出させるように公園の木々は橙色に染まっていた。木々だけじゃなく、公園の遊具すら赤く染められていた。たまにはこういうのもいいな。

というふうに人がたそがれているのに、そういうテンションがどんどん下がっていくような話題を出してくる話相手にセメント漬けにして海にほうりこんでやりたいところだったが、相手が彩菜なので、下手に反論できない。

理由?果たして君は例の事件を忘れてしまったのか?

あれだよ、あの小説事件。俺のネーミングセンスに期待したやつはこれから俺のネーミングセンスに期待しないように。ほら、今日で一個学んだことがあるだろ。十分だと思え。

あれ以来、俺は毎日こいつを帰路をともにすることになったわけだが、俺にとっては大迷惑だ。あいつが生徒会の仕事を終えるまで帰れないのだからな。

因みに、彩菜の言うおじさんとは言うまでもなく俺の親父である。小さいころから仲が良かったのが原因か、彩菜は俺とだけでなく俺の親父とも妙に仲がいい。それに、あの二人はかなり息が合うようで、俺にとってこれ以上めんどくさいツートップはない。

「そう……よかった」

心底安心したのか、彩菜はほっと息をつく。俺は、今手に持っているメロンパンに群がるハトどもを足で適当に払いながら、それでも逃げないハトに少々怒りを覚えていた。

「でも、車のほうは?」
「会社の資金で何とかするらしい……あ、いや会社じゃなくて個人の資金か」

会社の資金で買い物をしたら即警察行きだ。

「いいなあ…お金持って」
「俺はそんなに金に埋もれてるわけじゃないがな。現に今月分の小遣い使い果たして困っているところだ」
「あはは、ユウキ君らしいね」

今度は心底おかしそうに彩菜が笑う。こいつ、ホント感情に嘘つかねぇな。うらやましいぐらいだ。

「な…なんだよそれ」
「ユウキ君は、あまり計画性がないってこと」
「な、そんなこたぁねぇ!」
「じゃあ、なんでお金使い果たしちゃったのかなぁ~?」
「ぐ…」
「あはは、ユウキ君かわいい!」
「う、うるせぇ!」

ったく、こいつの揚げ足を取りたくなる性格だけは昔っから治らないな。なんでかはしらないけど、かまってほしいのかな。真面目に考えたことがないな。

とりあえず、このかまってほしそうなハトをどうにかしてほしいわ。

「あ、そうだ。もうひとつお願い事しよっかな~」

不意に、彩菜が空をて言った。つられて空を見ると、西の夕日に染められたのは公園だけじゃなくて、このだだっぴろく広がる空もその一員だというのがよくわかる。きれいな橙色に、すこしだけ黄色みがかかった白い雲。そして、その空にシルエットのようにして飛んでいく鳥の群れ。

「ユウキ君」

そういって、彩菜はベンチからぴょんと飛んでこっちをみた。その動作にびっくりしたのか、ハトたちが一斉に飛び去って行った。

「……」

今、俺の目の前には彩菜が立っている。彩菜の真後ろには大きく膨れた夕日がいる。その夕日は、彩菜の体を赤く染め、まるで幻想的な影を作り出していた。そして、その間にはびっくりしたハトが、夕日の逆光でシルエットになって飛んでいた。それが、ぴったり彩菜の背中方飛んでいるように見えて…

―――――きれいだ

俺はおもわず彩菜にくぎ付けになってしまう。普段はあんな子悪魔的な言動をとって俺を困らせて、すこしだけドジっ子が入っているこの昔からの幼馴染が、夕日に赤く染められるだけで、ここまで幻想的になると思わなかった。

チクショウ、めちゃくちゃかわいいじゃねぇか

「あのねっ」

そのかわいい彩菜はいつもよりしっとりとした口調で語る。その口調があまりにも意外すぎて…

俺の胸がはねた。

あれ?俺、こいつ、心からこいつのこと、かわいいって思ってるのか?

その時、

―――――サーーーッ

もう夏前だというのにすこし肌寒い風が吹いた。彩菜の、うなじのあたりで結ばれたポニーテールの尻尾がなびいて流れる。木々の葉っぱがカサカサとこすれあってまるでか弱い女の子の震える声のような音を出す。

その音で聞こえなかったわけじゃないが、

「……は?」

俺はもう一度彩菜に聞き返していた。その、お願いと彩菜が言った、もはやお願いじゃないだろと突っ込める願望を。




時計の設定が難しいので、無視して書かせていただきました。
あと、期末の結果があまりにも散々なので、文章内容がカオスになっています。



「ユウキ君には、私がどう見えてる?」

春と夏の間の趣を持つ風が、キィ、と錆びたブランコを揺らし、それに共鳴して寂びたベンチが、かた、と軽く軋む。

それは、ユウキの動揺が原因で軋んだ音だったのかもしれない。

お願いというかそれは質問だろとか、なんでお前はそんなに切羽詰ったような、なけなしの勇気を振り絞ったような、期待してるような目線で俺を見るんだとか色々と思ったことはあるのだが。

瑞乃と同様、この時間帯――放課後を指していた<時計>がちょうど今の瞬間にふっと消えた。
やはり彩菜にも見えている、そのノイズがかったぼやけたビジョンの<時計>。

(どう”見えてる”・・・だって?)

当然ながら、俺はこの<時計>のことは誰にも話していない。
話した所で精神科病棟をやんわりと勧められるだけだ。

そして、この幼馴染である彩菜にも話していなかったのだが。

(もしかして・・・俺が”見てる”事を知っているのか?)

あの事故以来、何が起こったか分からないが急に見えるようになったこの<時計>。

知られてたらマズいわけではないが、仮に知ってるのだとしたら、なぜだ?
彩菜にも俺と同じく”見えてる”のか?
そんな馬鹿な。俺は親が時計会社だからともかく、彩菜の親は百貨店経営だったはずだから関係ないだろ。いや、この理論は色々と間違っているがそれはとにもかくも。

彩菜は、先程と変わらずこちらへとその目線を向けている。
まばたき一つせずひた、と。だからその目はやめてくれって・・・。

俺は俺で、食いかけのメロンパンを片手に呆けたような間抜け面を晒している。
おい、どうすりゃいいんだこの状況は。教えてくれよ神様。


メロンパン 夕焼け小焼けに 照らされし 其れが模様は 己の心映す


そんな何を言いたいのかよく分からない狂歌を頭に浮かべてしまうほど、俺は混乱していた。

彩菜の目も、お願いの意味も全く分からない。
ヤバイ、他力本願過ぎるがマジで誰か助けてくれ・・・。

「あ、やっぱりここにいたねカジキ!ひなっちも!」

!? 何だと!? 俺の心の叫びが神に届いたのか!?
いや、待て。
この低いような高いようなしかし真ん中でもないような声は・・・。

そいつが夕日に染まる砂利道を小走りでこちらへとかけてくる。

肩の辺りで揺れる、無造作な襟足が風になびくショートヘア。
人より若干大きめの瞳に、人より若干小さめの顔。
身に着ける服は、学校指定の古風なセーラー服。しかし学校規定より少々短めのスカート。

「み、瑞乃?」
「え、みずっち?」

焦ったような互いの声が見事に被る。

「やっほう、お二人さん」

そう言って瑞乃はこちらへと笑いかける。


…こいつが俺の救世主となるのか。銃弾を喰らわないあの某グラサンとなるのか。
いや、この際誰でもいい。
さぁ・・・瑞乃!もとい救世主様!この状況を救ってくれ!お頼み申す!!

「どうかしたの?」
なにやら微妙な表情で彩菜が尋ねる。
「えぇ~、用がなけりゃ来ちゃだめなんてのは友人として悲しいよひなっち」

ウェイト、俺は大いに用がある!
ちなみに余談だが、「ひなっち」というのは彩菜の苗字「小日向」からきてるものだ。
また、もう余談の域を越えてるが、この二人も中学時代からの仲だ。したがってこの三人でいることは割と多かったりする。

「てのは冗談として。最近オープンした喫茶店があるんだけど、いっしょ行かない?」

んん?

おいおい、救世主様がそんなその場限りの策・・・いやいや嘘です感謝してますよ?

転瞬、瑞乃の胸の前で明滅していた銀縁の丸時計の黒針が、ちょうど「ⅩⅡ」を指し、ふっと消えた。
――後から分かったことだが、この<時計>は予定が実行され始めたら消えるらしい。全て実行された後ではないわけだ。

…よく考えたら、今消えた<時計>は俺が昼休みに見た、あのくっきりとした<時計>じゃないか、今の?
重要な案件であるほどくっきりと見えるみたいだが、これが瑞乃にとっての重要な案件か・・・。
そういや、あれ俺に関することでもあったな・・・。(自身に関することかどうかということも分かるらしい)

なぜこれが重要なことかは分からないが・・・まぁ断る理由も無いし、うん。

「あー・・・だな。小腹もすいてきてることだし、じゃあ行くか」

先に歩き出した俺と瑞乃を、彩菜は何かを考えるかのような素振りを見せていたが、焦ったかのように後から追いかけてきた。

■                             ■

我が校生徒の御用達である、学校からおよそ10分で着く繁華街。
いくつもの店がわれ先もと主張するようにぎゅうぎゅうづめに並んでおり、道は広めなのだが軽く狭めに見せるのに貢献している。
ちょうど放課後の時間帯ということで生徒達で賑わっており、あちらこちらの店へと出入りする姿が見える。主にファーストフード店。

そんな中の一つに、件の喫茶店があった。
深緑色の蛍光看板に「れすと」と書かれたその店は、まさに開店ばかりという風な小奇麗な面持ちを外へと晒している。
さすがに新しいからなのか、客入りもなかなかのようだ。

俺が手動開閉式の扉を開き、後から瑞乃と彩菜がくぐってくる。
店内は淡茶色が基調となった落ち着いた配色の造りで、まさに「れすと」といった雰囲気だ。

店内BGMとして流れているのは”Bentley Jones”の「Dreams of an Absolution」。・・・うん?
なんだそのシブすぎる選曲は。いや確かに雰囲気には合っているがもうちょっと粋な曲を流すべきだろう。
とりあえず、これを流している店員と俺の趣味が合うということだけはよく分かった。

「私は王道のブラックのアイスコーヒーにするかな」
「よくみずっちブラックで飲めるね・・・。私は甘そうなロイヤルミルクティで」

メニューを見ながら楽しそうに話す彩菜と瑞乃。
配席としては、俺が窓側、その隣に彩菜、そして俺の前に瑞乃だ。

「なら俺はウーロン茶でいいかな」
「はいちょっと待とうかカジキ君。何その会社の飲み会で一人だけ浮いてる人みたいな発言は」
瑞乃のごもっともな突っ込みに俺は言葉に詰まる。

んなこと言われてもなぁ・・・何気に俺は喫茶店に入ったのはこれが初めてなんだが。

「とりあえず好きなもの頼んでみればいいと思うよ?」
「ひなっちの言うとおり!」
「んー、じゃあカプチーノにするか・・・」

店員を呼び、無事注文を告げる。

そして、それから落ちる不自然な沈黙。

あれから俺は相変わらず先程の彩菜の”お願い”の意味は分からないままだ。
公園からの移動中も、一言も彩菜と話していない。互いに瑞乃と話していただけだ。

そういや、瑞乃は彩菜の”お願い”を聞いたのだろうか。
それなら、ぜひとも助言をお伺い奉りたい所存であるが・・・。なんだこの日本語は。

「私が今日お二人さんを誘った理由は、実はカジキの方に折り入って相談があるからなのです」
妙に格式ばった口調で唐突に瑞乃が口を開く。

ほほう、相談?これはもしや以心伝心?助言してもらえるのか?
…逆か。俺が相談される側だ。

あ、これがさっきの<時計>がくっきりと見えてた理由か?
他の<時計>に関しては相変わらずちらちらと姿を現している。誰にも彼にも同じように。流石にこれほどだと鬱陶しく感じるな・・・。

「ん、我輩に答えられることならなんでも答えるぞぅ?」
こちらも格式ばったそして間違った口調で応じる。
ここで恩を売っておけば、後で彩菜の”お願い”について聞けるかもしれないからな。
同姓なら何か分かることもあるだろう。

店内BGMが終わり、別の曲へと切り替わる。
イントロは「テーレッテー」。
…あぁ、もう何も言うことはない。そんなにインパクトが欲しいんだな店員は。

ということを、本来の俺なら脳内に浮かべて散々突っ込みを加えていただろう。

が、しかし。
今は更にインパクトの強い事柄に俺は対応する羽目となっていた。

瑞乃がBGMに一瞬顔を引きつらせ、しかしすぐ我に返ったかのような顔をし。


「私たち、付き合わない?」
「は?あぁ、いいけど」


その原子爆弾的問題発言に気づいたのは、俺が条件反射でうっかり答えてしまった後のこと。

「あら、あっさり。じゃあ、私たちはこれから恋人同士ね!」

彩菜が今にも泣き出しそうな顔をしていたが、それに気づく余裕が今の俺にあるはずもなかった。



なんていうんだっけこういうの。
…うん、修羅場だね!

うーむ・・・時計設定難しかったのかー。
とりあえず自分の方でてきとーに取り入れていきまする。



「さて……」

どうしたものか。

瑞乃が俺にこくってきたあと……

なぜか瑞乃はピアノのおけいこがあるとかですぐに帰っちゃったし(もうすこし恋人らしい後ろ髪を引かれるような思いはないのかね?)、彩菜に帰ろうかと促したところ、

「私、今日は一人で帰るね」

などとボソリと言って帰ってしまった。随分と元気がなかったように見えたが、昼飯が当たったりでもしたんだろうか。まあ、彩菜のことだ。いつものあの元気ですぐさま吹っ飛ぶだろうな。

というわけで、今俺は一人でこの喫茶店の4人テーブルに取り残されたというわけだ。取り残されたというと二人の聞こえが悪いが、事実そういう結果になってしまったものは仕方がない。

俺は若干残った紅茶が見えるグラスを回してボーっとしていた。

いや、考えていたと考えるが妥当か。いや、正確には思い出していたんだろうな。

公園でのあいつの立ち振る舞いを、だ。あいつという指示語が彩菜を指しているのは言うまでもない。

なにがしたっかんだろう……

あいつの発した『ユウキ君には私がどう見えてる?』という言葉が頭から離れることを知らない。

あいつは……俺に何を求めていたんだろう。

あいつは、本当に軽く「かわいい」とか「きれい」とか言われるのが大っきらいだ。昔っからの付き合いだからよく知っている。どうやら本人はそういう褒め言葉は大事な時に使うものだろうという意見らしい。

まあ、言われたことはないが俺もかっこいいと軽く言われたら、正直いらっとくるかもしんねぇ…

でも、あの時の彩菜の目は俺に何かを求めていた。

それがもしかしたら俺にそういうことを言ってほしいわけじゃないかもしれない。

でも、人への頼み方がいつもとは打って変わっていたことだけは確かだ。あいつはフレンドリーだ。だから人にものを頼む時もいっつも軽い。だいたい、「ねぇねぇ」とか「ちょっといいかな」で始まって、相手の意見を言わせないぐらいの勢いでまくしたてて終わらせる。

なんどそれで俺が被害にあったかわかったもんじゃねぇ。数えたくないね。

でも……

また公園でのあいつが鮮明に脳裏に浮かんでくる。

何だったんだろう……

俺は、回して遊んでいたわずかな紅茶を一気に飲んだ。

そして、脇に置いてあった請求書を見つける。

………あいつら、食い逃げしやがったな。まあいい。俺は心が広い男だ。さっきだって瑞乃の告白をしっかり受け止めてやったんだからな。

……告白、か……

俺は今まさに立ち上がろうとしたが、もう一度椅子に座りなおす。

告白ってあんなさらっとしたものだったっけ?

彩菜にこくる男子を腐るほど見てきたが、みんな必死になってお願いしていた。それでも、彩菜はかたくなに拒んでいた。

そういやぁ……あいつ、なんでいつも告白をバッサバッサ切ってたんだろうな。

あいつ、男に興味ないのかなぁ。でも、フレンドリーな性格ゆえ男ともすげぇ仲良く遊んでるし、そういうわけでもなさそうだな。

じゃあなんだろ。

あと彩菜が告白を拒み続けている理由ねぇ…

ふっと俺は顔を上げる。見ると、正面の壁には映画の広告が貼ってあった。

『4つの瞳と2つの唇』

あ、これか。キムタクと堀北真希のキスシーンが話題を呼んでものすごい大ヒットしている映画か……そういや俺も見に行ったな。一と一緒に。

あんな映画、カップル同士が見るものだろ。男二人で見に行ったらものすごく怪しまれたぞ。

確か…告白を拒み続けていたヒロインは、他に好きな男がいるからって理由で他の男子からの告白を全部断って、最後は作り物特有の鈍さを誇る主人公に告白して愛が実るって奴か。

まるで彩菜だな………

……………………

もしかしたら、真の理由は他に好きな男がいるから?……かな?

もし…本当にそういう理由だったら、本当は誰が好きなんだろう?

あ、小桧山かなぁ。あいつ勉強できるし。いや、柏木のほうが体系がっちりしてるし、守ってくれそうな感はある。……笈川はおっとりした性格だからそっちの方が彩菜のタイプかも。

いや、映画の中じゃあ主人公は鈍感…だもんな。

じゃあ誰だろう。見当がつかない。

確か、二人の間にはもうひとつステータスがあるはずなんだが……

……………………

………やめた。

もうあまり考えるのはよそう。

そもそもあの破竹破りの彩菜がコピーみたいな人生を進むわけがない。

それに、これ以上他の女を考えると瑞乃に失礼だ。いいといってしまった以上は彼氏らしく振舞わないと…

………でも、それでも………

公園でのあいつが頭から離れない。

そんなに俺の中では印象に残ったのだろうか…疑問だ。

でも、確かに印象には強く残っている。

でもじゃあなんでだ?

『ユウキ君には、私がどう見えてる?』

頭の中の彩菜がそんな言葉を俺に発する。

彩菜…お前……

見えているんだろうか。この<時計>が。

だとしたら……

あいつには、俺がどう見えてる?

…………

……いけね、長居しすぎた。

見ると、二人が出て行ってからすでに1時間が経過していた。

俺はようやく腰を上げ、脇に置いてあった領収書を手に取る。

……あ?

二枚?

俺ら、追加オーダーしたっけ?

俺は椅子から立った状態でその二枚目に目を通すが……

―――――とすっ

また椅子に逆戻りしてしまった。今日で三回目だ。

まあ、椅子に座りなおした理由としては一番正当化できるだろうな。

「おいおい……」

俺は力なく笑う。そこには

『追加オーダー 紅茶4杯 1000円』

ふっと横を見ると、いつ頼んだのか彩菜の席に紅茶のグラスが5本立っていた。

いつ頼んだんだよ。ったく……

……………

……いや、違う。

あれは俺らが飲んだものを彩菜の席に集めたやつだ。

じゃあ、この紅茶4本ってなんだ?

………………

……わからん。

まったくわからん。

でも、机の番号はどっちもうちの机だ。間違いない。

「おっかしいな…」

どっかでウェイトレスさんが持ち帰ってくれたのかもね。

俺はそう軽くこの事件を見てレジに向かった。

………

「残金3円ってなんやねん……」



展開0で何が悪い!!!!

あ、サーセン。次はまじめに書きます。






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最終更新:2009年12月19日 23:05