病院生活も5カ月目を迎え……
湘南乃風新曲、「ガチ桜」2/10リリースです
どうぞ皆さんお聞きくださいな。
LAP51 幻想郷伝説
そして、俺は食後の運動がてら、倉庫のライフルを担いで紅魔館の庭に向かう。
夜になると、門番が本職の美鈴もさすがに仕事をやめ、妖精たちが門の周りを警戒している。妖精たちとはいっても妖精メイドのように紅魔館に住みついているわけではなく、近くに住んでいる妖精達が趣味でやっていることなのだとか。
そのおかげで紅魔館の夜は平和に保たれているから紅魔館側は門番をしてくれる妖精達にご褒美をあげるという。まあ、ご褒美といっても昼に庭を開放して遊ぶ権利をあげるだけのものだが。
「あ、リュウが出てきたよ」
妖精のうちの一人が俺の登場に気づく。
「よう。毎晩ありがとな」
「これくらいなら暇つぶし程度だよ」
俺が挨拶を返すと別の妖精が返事をしてきた。今日の夜の門番達は10人程度だった。
「美鈴より働いてるって咲夜が言ってたぞ」
「まあ、中国はいつも寝てるだけというか…」
「ハハ、違いねえや」
俺が妖精達を軽く会話をしてブレイクダークの調整に向かう。
「リュウ、どっかいくのか?」
俺がブレイクダークのセッティングをしていると、妖精の一人が聞いてきた。
「あ、まあな。詳しい行き先は決めてねえけどとりあえず人目の付かねえ所に行くつもりだ」
「そんなところに何の用で行くのさ」
俺がそう答えるといかにも怪しいと言った目つきで聞いてくる。
「これみりゃわかるだろうが」
俺は質問してきた妖精に担いでいたライフルのケースの中を見せる。
「軽いトレーニングだ」
「ほへー…」
妖精達は目を丸くしてライフルを覗きこむ。
「なんだ。お前らライフルを知らないのか?」
「実物は初めて見た」
俺が聞くと妖精達は口をそろえてこたえる。
(そうか…まあ最近の幻想卿は平和だと聞くし、知る機会がないのかな?)
「で、これで何か狩りに行くの?」
「あ、いや。ただ発砲の確認だよ。今はじめて撃ちに行くわけだしね」
すると、妖精の一人が口を開く。
「でも、なんか赤いライフルってなんか幻想郷伝説の道具の一つじゃなかったっけ?」
「幻想郷伝説?なんだそりゃ?」
俺は首をかしげる。幻想郷伝説というものを今はじめて耳にした俺は妖精達にその話を聞いてみる。
聞く話によると、紫が幻想郷を作った前の世界ではここは戦国乱世となっていたらしい。後で知ることになったのだが、倉庫で見つけた三節棍はやはり戦国時代のものだった。
各地で様々な勢力(基本的に人間、妖怪、幽霊など生物学的な種類で抗争していたそうだ)が争い、毎日のように戦が起こり何万という生物が散って行った。
まあ、あっちの世界でも戦国時代というのは歴史内でもあったそうだ。トレイキョウで考えると約1100年前に戦国時代に活躍したオダ ノブナガとトヨトミ ヒデヨシ、それにトクガワ イエヤスの三人が有名であろう。生物がそうやって抗争を繰り広げることは必ずどこかの時代にあるものなのだろうか。
幻想郷においてもそれは例外ではなかったらしい。でも、その混沌ぶりはトレイキョウの戦国時代をはるかにしのぐものだった。
幻想郷では敵への礼儀や義を唱え戦を止める者などは誰一人として登場せず、さらに各勢力の力は均衡状態で潰れることがなかった。
それは戦国時代が長引くことを象徴しており、幻想郷の戦国時代は1500年にも及ぶとされていたそうだ。
しかし、終わりを感じさせることのない幻想郷の戦国時代にも終止符がうたれるときを迎えることになった。
そして驚くべきはその方法だ。
向こうの戦国時代ではトクガワイエヤスが天下を統一して終焉を迎えたが、ここの戦国時代は一人の人間によってかく勢力が和平条約を結び終焉を迎えたのだという。
彼女の名前は分からない。
幻想郷では彼女のことを「伝説の女」と呼んでいるらしい。彼女は各地の勢力の首脳と話し合うことで和解を促し、すべての生物が協力して住むことを誓わせたそうだ。そして戦国時代は終わりを告げ、今の幻想郷に至るという。
彼女は他にもライフルを使う腕がすごかった。いつも赤いライフルを肩から下げ、狙った獲物はどれだけ遠くに行ったとしても仕留めた。
彼女は通り名として「紅いスナイパー」という名をもらった。
彼女のことは幻想郷を救った英雄として今日まで語り継がれているという。
「へぇー…」
俺は一通り話を聞いて感心してしまった。1500年も抗争していた勢力を話で和解させるとは、相当の話術の持ち主のようだな。
「その人は、ライフルだけじゃなくて服から髪から赤かったんだって」
妖精が口々に幻想郷伝説の補充説明をしてくれる。
「それで、彼女は突然姿をくらましてだれも彼女を見なかったんだって」
「まあ、典型的なヒーローの立ち去り方だな」
俺は少ししみじみとしてしまう。やはりこんな呑気な世界にもそういう歴史を持つのかあ…
「あ、時間取らせてごめんね」
話し出した妖精の一言で当初の目的を思い出す。
「お、そうだそうだ。じゃあまたな」
俺は妖精達に手を振るとブレイクダークを発進させた。
今回は第1章内でTOP5に入る重要な回ですね~
LAP52 ライフルの威力
夜を一人で飛行することはもう慣れたが、ライフルの扱いに少し不安があった。警視庁の義務としてハンドガンと普通の銃は撃てるがライフルは初めてだ。
俺のイメージだとすげー撃った後の反動が大きいような気がするが、実際に撃ってみて感じないと分からないと思う。まあ、後は野となれ山となれという言葉が世の中には存在するわけで、楽観視しても問題ないかななんて思ってみたり。
「さて、ここいらでいいだろう」
10分飛ばしたところで眼下の森が急に開けるところがあった。暗くてよく見えないが、おそらく安全だろう。うん。安全であれ。俺はそこをライフルトレーニングの場として選択し降下する。
ブレイクダークを丁寧に着陸(F-FIREマシンは頑丈だから、無造作に地面に着地しようとすると地面に突き刺さるのだ)させてコックピットから飛び降りる。
ここは相当山奥らしく、月の明かりでやっとこさ周りを認知するほどが出来る暗さだった。俺はえっちらおっちら歩を進めていく。
「こんなもんか…はぁっ!」
自分の立ち位置を決定すると、俺は波動波(回文だな。なんちって)で周りの雑草を一掃する。そんで、ライフルを準備する十分なスペースを確保した上でライフルの組み立てに取り掛かった。
といっても、二つに分かれた銃口を合わせるだけだが。
簡単にライフルが組み立てられたので弾の制作にかかる。といっても、作成する弾俺らの武器の性質に使われてる即効性の麻酔を波動で囲って弾にするという至ってシンプルなものであり、撃つと対象付近で破裂して麻酔が飛び散り眠らせるだけなのである。つまり、万が一生物に当たってしまったとしてもこれならば死なずに眠るだけで済むし、今から撃とうとする的も常識外れの威力を誇っていないならば破壊せずに済む。
他にも、俺が頑張れば当たった相手が痺れて動けなくなるような麻酔弾、着地したところで起爆する手甲榴弾、さらには一応一発で生物を殺められる普通の弾だって作れる。
だが、とりあえず今日は最初に説明した麻酔弾だけを使って練習しようと決めるが、次に頭に上がってきた問題が的の作成だ。
波動を使って作るという手もあるが、この暗闇で下手に移動するとそれだけでかなりのタイムロスになってしまう。かといってやたらめったらライフルを乱射してたらそれこそ文に記事のネタとして取られて俺が幻想郷の見せ物になってしまうわけで。
いろいろと考えた結果、俺は近くにある森の木をターゲットにすることにした。あれくらいなら破壊されても大騒ぎすることもないだろうし、手間もかからない。とりあえず目印にダーツの矢を作り、あらかじめ木に投げて刺しておく。
「よし…」
その後、俺は麻酔弾を銃口に入れて標準を合わせる。ライフルは撃った後の反動が大きいのでライフルの真ん中あたりにある足掛けに足を入れて抑え込むという体制を取るのが普通。このライフルも例外ではなかったので足掛けに足を入れてしっかりと固定する。
暗闇の中にかろうじて浮かび上がる木の幹。その幹の真ん中にレンズの十字印の中心を合わせる。辺りの気味が悪いほどの静寂が、今は逆に俺の集中力を高めていった。標準があったところで、気持ちを落ち着かせて銃に手をかける。体の全神経を俺の目に集中させてひとつ息をつく。そして、銃を引く。
――――――だーーーん
俺が銃を引くと弾は青白く光りながらものすごい速さで木の幹に突進していった。当の俺は反動撃った後2m程後方に滑って行った。
「ぐっ……」
とてつもない威力だ。俺の想像をはるかに超えていた。
俺は銃口を木の幹から離さないよう必死で抑えながらこの反動に耐える。周りには弾が通った後に発生した気流の影響で小さい竜巻が発生している。このライフルどんだけ威力あんだよ…竜巻できるってかなりやばいぞ!
2m程後退し、俺の脚がようやく踏みとどまってから撃った木の方へ歩み寄っていく。いくらあそこまでの威力とはいえ、麻酔弾だから粉々になってはいないだろう。ただ、あれくらいの威力だと穴ぐらい開くかも…いや、下手したら折れてるかもな。この威力だとどんな弾を使っても生物を殺められるな…困ったことだ。
しかし、そんな呑気なことを考えていた俺はもっと恐ろしいことに気づく。
「あっれ…おっかしいな…?」
俺は暗闇の中を模索するが撃ったはずの木が見当たらない。どこに行ったのかと必死に探すがどこにも矢が刺さった木がない。
「矢、外したかな?」
それに、おかしいのはそこだけではない。それどころか、木があったはずの地域は草むらになっており、木の群れはもっとその奥にあった。
「あんな遠くにあったっけ?」
俺は首をかしげてそこの木の方へ歩こうとしたその時、
「あだっ!!」
頭に何かが当たった。なんだろうと思って地面を見ると、木の一部が薄い状態になって落ちてきていた。
「ん?」
俺はいま何が起きているか分からなかった。なんで空から木片が落ちてくるんだろう。と、俺が考えていると、
「いってぇ!」
また頭に何かがぶつかった。今度は葉がついた枝だ。
「なんだろう?」
俺は今自分の身の回りでどのようなことが起きているか判断ができなかった。
周りを見渡してみると、大量の木片が空から落ちてくる。
「なんだなんだ?」
俺は頭の上にシールドを張りつつ頭上を見上げる。すると、そこには木片と葉が地上にどんどん降ってきていた。木片がものすごいスピードで地面に突き刺さり、葉がひらりひらりと舞い降りてくる。非常に不可解な状況であることだけは分かった。だが、次に俺にあたった物で俺は全てを知ることとなる。
「いってぇええええ!!!!」
急に肩に激痛が走り、俺はその場で悶えこむ。何だこの刺さったような痛みは!
木片が刺さったと思って刺さったものをとっさに抜く。すると、刺さったのは木片ではなかった。
「これは…」
それは細い針の先に風車のように三つの羽根受けが付いているものだった。そう、先ほどどの木を狙ったかを分かりやすくするために木に刺したダーツの矢である。
「!!」
俺はそれを見て全てを理解した。
このダーツが空から降ってきたということはこのダーツの矢と空から降ってくる木片らは同じ場所にあった。つまり、あのライフルでこの木を撃った時、ライフルの銃口から出て行った弾はこの木だけでなく周りにあった木を粉々にしたのだ。あたればすぐに麻酔が飛びちるようにコーティングを極力弱くしている弾なのに、ざっと100本程の木を一瞬にして粉々にしてしまったのだ。
俺はその事実にただ呆然とすることしかできなかった。このライフルの威力を完全に舐めていた。これは俺が知っているライフルじゃない。いや、これはライフルじゃない。なにかの大量殺人兵器だ。俺はそう考えると急にこのライフルに対して恐怖が湧いてきた。こんなものは実践に使えない。こんなに恐ろしいもの生物に撃ったらどんな弾でも即死だ。
「嘘だろ…」
俺は恐怖のあまりライフルのケースをその場に置き去りしてブレイクダークに乗り込み、全速力で紅魔館に帰った。そして、紅魔館につくと声をかけてくる妖精達には目もくれず自分の部屋に走り込み、ライフルを金庫の中にぶち込んだ。
うっわ、読みづら…
ライフルの設定がチートすぎた。反省反省
LAP53 落ちつかない眠り
「落ち着こうぜ、俺」
ライフルを封印した後、俺はしばらく自分を落ちつけようと試みた。あれは全部夢だと自分に言い聞かせまくった。
ケースをほったらかして裸になっているライフルをぶち込んだ金庫を一瞥する。
「…馬鹿力が…」
周りでカモフラージュされてるから運が良ければばれないだろうが、果たして文の目までをもだませることができるか。
「しかし…」
やはり気になる。
幻想郷伝説…赤いライフル…
「伝説の物とありゃあ、それなりの威力はついてくるか?」
あの、大柄な俺をも吹っ飛ばすほどの反動。
伝説の道具とすれば…申し分ない。
「もしや…」
今一度、ライフルを取り出して眺めてみる。
この禍々しき気、その中にはいくつもの修羅場を超えてきた証であろう傷が残っている。かなり使い古されているはずなのに、落ちることを知らない艶。
「神々しい…か」
まさにその言葉がふさわしい。
赤をモチーフに煌めく胴体は、何かを俺に訴えてくるような…そんな気がした。
「しばらくは、携帯するか」
ベッドの脇にライフルを寝かせ、俺はベッドに横たわる。
そして、そのまま眠りについた。
手抜きwwwwww
ひどすぎたなwwww
LAP54 レディー・コンサート
――――――――――――アリス爆破まで、あと1日――――――――――――――――
「リリカ、またミスしたわね」
開始早々いきなりルナサの怒鳴り声が空に響く。
今日は言わずと知れたコンサート。俺の腕も鳴るといったところだ。朝は6:00に設定しているアラームよりも先にメルランが起こしに来てくれた。そんなに早く来て意味があるのかと思ったが、この練習のぎこちなさを見ていると納得できる。
まず、白玉楼に集まった時点でリリカがオルガンを忘れるという失態をし、風で飛ばされて行ったルナサの楽譜の回収をし、ようやく練習スタートというところでメルランのトランペットに異常が発見された。
呼ばれたこっちはまだ何もしてないのにのにプリズムリバー3姉妹がいろいろとやってくれるのだから、イライラしないわけがない。ルナサは俺がカッカカッカしているのに薄々気が付いているようだったが、メルランとリリカは一切俺に気を配らずに能天気に生活している。やはりなんか姉妹内でも随分性格の違いが出るのだなと改めて思った。俺には兄弟がいないからそこがうらやましく見えたりもした。
「だってぇ、ここメル姉が走るんだもん」
ルナサに注意されたのが不服だったのか、人のせいにしようとするリリカ。今この状況で一番迷惑を被るのはメルランだろう。
「なんで私のせいにするの!」
演奏の練習を始めてまだ30分も経っていないのに姉妹喧嘩が始まった。
…はぁ。
「あれ、なんとかできない?」
小学生みたいな喧嘩を見せられて耐えきれずに俺はルナサに話しかけた。
「手のかかる妹だわ…」
そうため息をつくと、ルナサは徐にバイオリンを取り出し、
――――ギィィィィィィイイイイイ
適当に音を出して引いた。
「「ひぎゃあああ!!」」
二人の悲鳴が白玉楼にこだまする。
しかし、ルナサの演奏効果で喧嘩で興奮していたメルランとリリカは次第に我を取り戻したようだった。
ただ、
「ルナ姉、ああなるって考えなかったの?」
ここで問題を起こすのが俺。
「はぁ……」
ただでさえ姉妹喧嘩を見せつけられてうっぷんが溜まっていた状態の所に、ルナサの追い打ちがかかりテンションはこれまでにもないくらい低くなる。
「あー…考えてなかったわ」
ルナサがしゃがみ込んでため息をついている俺を見て疲れた様子で言う。
「メルラン。お願い」
「任せて!」
そういってメルランが俺の精神状態を元に戻してくれた。
しかし、こんな状態で演奏中俺は大丈夫なのかね?今はまだ序盤でリリカが二人の演奏効果を抑えてくれるが、曲が進んで行って、ルナサ、メルランの二人のソロに突入したらトンデモナイことになるのは安易に予想がつく。話によると、集中していれば彼女たちの演奏効果はあまり人体に影響を及ぼさないらしいが、そんなにうまく物事が進んでたら苦労しない。
「ふぅ…」
メルランに助けてもらい立ち上がる。
「すまなかった」
俺が三人に謝るのを尻目に、ルナサはメルランとリリカに説教を始める。厳しいんだなあ…
とまあ、こんな雰囲気で練習がどんどん進んでいくわけだが、俺は正直後ろからそっと覗いてくる幽々子がきになってしょうがない。どうせ見たいんならプリズムリバーに直接言って堂々と見ればいいものを…やけにそわそわしてるし。たまに幽々子がふすまに当たって出す「ゴトッ」という音に殺意さえ感じてくる。さすが能天気に生きている幽霊だ。妖夢が毎日毎日大変だと言っている意味がわかるよ。
「ちょっと、聞いてる?」
幽々子に完全に気を取られていた俺はルナサに呼ばれてハッとする。
「ぬおわっ!あ、ああ…すまん」
「もう…」
俺が慌てて言葉になっていない返事を返すと、ルナサが一つため息をついた。
「あなたのソロパートはテンポが安定しないから慎重にやりなさいよ」
「あ、ああ。承知の上だ」
ルナサさん、機嫌が悪いからって俺に八つ当たりするのはどうかと思いますぞ。
と、メルランが幽々子の存在に気づいたようだ。ルナサの裾を引っ張ってしきりにふすまの方を指さす。否が応ルナサは気づいたようだった。すぐに幽々子の元に向かう。幽々子はルナサが近づいてきたのにびっくりしたのか、一度ふすまを閉めたがルナサは幽霊だ。しまっているふすもすり抜けてしまった。それ以降ふすまの奥で何が起きているのか俺には分からなかったが、しばらく経ってルナサが戻ってきた。俺が声をかけようとすると、
「リュウ、幽々子に呼ばれているわよ」
と、ルナサの方が先に口を開いたので、
「おう」
と返事をして幽々子の元へ向かう。どうせ今日の演奏のソロパートを自分だけに聞かせろとか言うのかと思っていた。が、話の内容はそんなものではなかった。
一か月ぶりの更新、ごっつぁんです!
いや…この先も作ってあるんだけどね…骨がね?だからね?(何
あと、MF文庫Jに送る際のペンネームを「池袋 又津」にしました。
知らなくても自分だって気がつくような名前を選んだつもりっす。
LAP55 大胆に練られる作戦
「おはよう」
幽々子が挨拶をしてきた。
「おう、おはよう」
心なしか、随分と焦っている様子だった。
ただごとではないような雰囲気を醸し出しているが、与太話で場の雰囲気を和らげる。
「俺を呼びたかったんなら最初っからそう言えばいいのに…」
かるい挨拶を交わしたあと幽々子と軽く会話を交える。
「だってぇ、あなた忙しそうだったじゃない」
「確かに忙しいですね。今日コンサート本番ですから」
俺はわざと硬い返事を返す。嫌味を含んだつもりだったのだが…
「じゃあ、そのコンサートの前に重要な話をしてもいいかしら」
その嫌味をスルーするほど、やけに今日は幽々子がまじめだ。
「俺に重要な話?まあ、いいが…」
俺は幽々子のテンションに不信感を抱きつつ歩きだした彼女のあとについていく。果たして何をやられるのだろうか?
幽々子についていった先は一つの部屋。そこには妖夢と零、そして朱鳥と名乗る女性がそこにはいた。三人とも厳しい顔つきで正座している。また、幽々子もその部屋に入るとより一層厳しい顔つきになる。俺も思わずネクタイをしめなおして居住まいを正す。
幽々子に促されて俺は零、朱鳥の前に座る。そして、そのわきに座っていた妖夢の隣に幽々子が座った。
暫く場を支配したのは沈黙だった。皆が皆、ただならぬ想いを抱えている様子である。この空間に流れる異様な空気に耐えることがきつい…。
やがて、その重い空気が破られた。朱鳥だった。
「はじめまして、リュウさん」
彼女はそう言ってていねいにこっちにお辞儀してくる。俺もあわてて
「こちらこそ、飛鳥様」
と頭を下げた。お互いのあいさつが終わった後朱鳥は口を開く。
「リュウさんは恐らく今回零がやらかした事件について知ってると思います」
「はい、まさにおっしゃるとおりです」
俺は朱鳥の真剣さに少々おどおどしながら答える。何を言う気なんだろう。
「その件についてなんですが、どうかアリスさんの封印解除を手伝っていただけないでしょうか?」
朱鳥は極めてまじめな顔をして俺に土下座してくる。
「というのも、零がリュウさんは向こうの世界で封印解除をしたことがあると言うのでたずめて見ました。どうでしょう。本当にお願いします」
朱鳥はなかなか頭をあげない。こりゃ本気で俺を頼っているな。
だが……アリスを解除すると俺が死ぬ。俺の命を優先するとアリスが死ぬ。その板挟みの中で俺だって悩んでいるわけだ。
「しかし……」
俺が対処法はないと言おうとすると、朱鳥は涙を流しながら、
「本当に迷惑をかけていると思います。ですが、何とかしてアリスさんを解放して幻想郷の方々に多大な迷惑をかけないようにしたいのです。どうかお願いします」
と先ほどよりも頭を下げて彼女は叫びに近いほどに俺に訴えかけてくる。
俺は簡単には断ることができなくなってしまっていた。確かにアリスを解除することは俺にとってリスクが高すぎる。というか、もはやリスクではなく生贄だよ。うん。
だが、俺が自分の命をかばってアリスを見殺しにしたらどうなる?まず確実に魔理沙の精神が崩壊するだろう。そしてこの外来人二人は罪悪感でこれまた精神的に崩壊し、確実に俺が死ぬときよりも代償がひどい。だけど、俺だってまだ死にたくない。うぅ……
俺がしばらく沈黙していると、今度は零が口を開く。
「リュウさん。お願いします。お礼なら何でもします」
そして、零も朱鳥と同じように深い土下座を俺にしてくる。
「いや、え、ちょ……」
二人に土下座されて逆に困惑する。相手に硬くされたらこっちも堅い態度を取んないといけないような衝動に駆られてしまうではないか。
「え、まあ、でもだなぁ…」
いつまでたっても答えを出せない俺に、今度は妖夢が追い打ちをかける。
「私も、彼女たちを応援しています。どうか、ご協力願えないでしょうか?」
さすがに土下座はしないが、それでも深くこっちに頭を下げてくる。
ここまでされたらNoとは言えない。俺の良心がこれほどの期待を跳ね返すことを許さなかったからだ。じゃあ俺はそうやすやすと死ぬのか?それは俺のプライドが許さない。だったらどうするのか?
でも、少なくとも俺には少しは予想がついていた。ブラックシャドーは俺が波刀を使う前にまずあの二人を外に返すことから話は始まると言っていた。
それはたぶん二人がこの世界から抜けることでアリスを囲っている媒体の結晶結合が若干軽くなるのではないか?もっと簡単に言うと、封印を解除しやすくなるのではないか?
そうだとしたら、まずあの二人をここの世界から出したあとに対策を考えても大丈夫だと思っている。だから、まず彼女たちを今日中にここから出すことで始まる。
俺はそのことを彼女たちに伝えた。
「そうですか…」
俺が説明をし、全てを知ってもらったところで朱鳥と零はようやく頭をあげてくれた。
「そう。だからこのコンサートが終わったあとすぐに出発しよう」
俺はたぶん一番適切だと思われる行動を促す。
「ですがリュウさん」
と、妖夢が俺に聞いてくる。
「どうやって外に出るんですか?紫さんが今行方不明だというときに…」
俺は朱鳥に目を向けながら妖夢の問いに答える。
「朱鳥、君の刀は幻想郷の結界を切れるんだったよな。だったら、勢いをつけることが出来るような場所に行ってここの結界を思いっきり切ってみれば、おのずとそこに亀裂が出来るはず。そうしたらそこの亀裂から出ることができるはず。君がここに入ってきたことと逆のことをするんだ。わかるな」
すべては賭けだった。
幻想郷の結界がそんな柔なものではないことも知っているし、朱鳥の刀がどれほどの威力を誇るものなのかも俺は知らない。それに、結界が破壊されることを知ったら霊夢が黙っているわけがないだろう。霊夢を防ぎつつ朱鳥にスムーズに事を進ませる。そんなことが流れ作業でできるわけもない。
だが、他に方法がないのも事実だ。妖夢の言うとおり紫はいまどこかに行ってしまっている。霊夢一人ではこの結界を捻じ曲げることは無理であろう。ならば、リスクは生じるものの、こうするしかないだろう。
「はい」
朱鳥は気合のこもった声で返事をする。
「そして幽々子、妖夢」
俺は今度は話を脇にいた二人に振る。
「もちろん、護衛に来るよな」
もし霊夢が他のメンバーを連れてきた場合、勝てる気がしないのである。
「もちろん行くわよ」
幽々子は快く承知してくれた。
「それじゃあコンサートが終わった後、一度ここに集まることにしよう。プリズムリバーにも話は付けておこう」
俺はそういってこの会議を打ち切ろうとする。が、一個気になることがあった。
「幽々子」
俺はそばにいた幽々子に声をかける。
「あら、なにかしら?」
「アリスの封印された黒玉を見せてくれるか?」
なぜそんなことを言うかというと、この前見せてもらった時にアリスの封印媒体の結晶を波動で透視るのを忘れていたのだ。波動で透視れば封印媒体の詳細情報が読み取れるかもしれないと俺は咄嗟に考えた。
だが、幽々子の口からは予想にしていなかった言葉が漏れる。
「あれなら紫に渡したわよ」
「馬鹿野郎!!!!!!!!!」
俺は精一杯の声で幽々子をどなりつける。
「なんであいつに渡したんだよ!というか、あいつが行方不明の状態でどうやって渡したんだよ!!」
俺の様子とは対照的にいつものほんわかな雰囲気を幽々子はたもっていた。
「急にスキマからでてきてちょうだいって言われた」
「なんで渡したんだよ!!!」
「だってぇ、すこしアリスの封印解除方法を探してみるっていってたんだもん」
さすがに怯んだか、先ほどよりも声が小さくなる。
「だからってわざわざ渡すあほがいるか!」
「でも、いろいろ試した方がよくない?」
「た、確かにそうかも知れんが…」
急に正論を言われて面食らう。でも、アリスの黒玉をもらった後に失踪ってあまりにも怪しすぎる!
「まあいい。あの二人を帰すことが先だ」
俺は半ばあきれながらプリズムリバーの練習場に向かう。
見ると、もうすでに三人での合わせは完璧になっているようだった。さすがは姉妹。すこし最初はぎくしゃくしていたとしても、最後はしっかりまとまるんだな。
「リュウ、おそいぞ」
ルナサがすこし不機嫌そうな顔をこっちに向けてくる。時計を見ると、すでに3人を小一時間またせてしまっていたようだ。
「すまない、少し長くなってしまった」
俺は頭を下げながらポルウを取るが、
「知ってる~?もう本番の時間だよ~?」
「はぁ!!!???」
あまりの不意打ちに大声をあげてしまう。
「もう結構お客さん来てるよ」
リリカが後ろからさならる追い打ちをかけてくる。しまった…まさか最初ちょっと合わせてあとはぶっつけ本番とは…。うまくいくだろうか?
「まあ、ちゃんとできてたんなら問題ないと思うわ」
ルナサが慌てる俺をなだめるように話しかけてくる。でもなあ…
「ま、頑張れ頑張れ!!」
メルランに背中を押されて俺達はみんなが待ってる舞台(詳しく言うと縁側の廊下。中庭が客席みたいな仕組みになっている)に押し出された。
みると、大層な人数の人(人じゃないやつのほうが大勢いるが、面倒くさいので人でまとめている)が集まっていた。ざっと50人程度だろうか?なかにはしっかりお嬢様と咲夜もいた。緊張するなあ。
「皆さん、お待たせしました。コンサートを始めたいと思います」
ルナサの挨拶で小さな会場に拍手が沸き起こった。
ルナサが曲の説明をしている間に中庭に集まったメンツの顔を見渡す。たくさん人がいるが、やはり八雲一家と魔理沙はいない様子だ。八雲一家は別のルートで解除方法を探している様子だが、魔理沙の情報は一切入っていない。やはり気を狂わせてどっか行ってしまったのだろうか?
……いや。
とりあえずコンサート前なのでそういう雑念は取りはらおう。
そして。ルナサの説明が終わり、演奏がスタートする。俺は全神経を指先に込めて吹いた。
そして…
物語は…動く…
最終更新:2010年03月08日 15:07