最近兄貴が病室に来てくれません。なんででしょう?
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好きなキャラクター第三位、草壁美鈴だお!
よく美鈴が好きだと言うと中国と勘違いされるお!
LAP61 とある昼の集結
リュウが封印されて早くも1週間がたつ。
リュウがいなくなって紅魔館には紅魔館の主、お嬢様。お嬢様の妹、フランドール様。魔法使い、パチュリー様。パチュリー様の使い、小悪魔。紅魔館の門番、紅美鈴。たくさんの妖精メイドたち。そして、私。1年強前の紅魔館のメンバーに戻った。
だが、本来はそういうベンバーのはずなのに…
「はぁ…」
窓の奥で、毎日毎日絶えず地平線から顔を出す朝日を見てため息をつく。
何かが足りない。いや、私を支えていた半分の柱が消えた。
いかに、私の中でリュウサトウという存在が沢山の割合を占めていたかわかる。
あの夜、零が粒子分解して消えた後、そのあとには一つの道具が落ちていた。霖之助さんに鑑定をしてもらったところ、「ASP」という道具らしい。
図書館の本によると、ASPはある空間エリアを囲むバリアのようなもので、人間以上の知能を持つ生物がこのエリア内に入ると、人間を上回る能力は帳消しされ、すべて普通の人間と同等の扱い、つまり能力が使えなくなるという厄介な代物だということが判明。
こんな厄介な機械を持っているのだから、一層ブラックタイガーを壊滅させるには難しくなってしまった。
そしてリュウが封印されたのち、私とお嬢様は幻想郷のみんなから情報を集めようとした。
しかし、当然彼らの情報が集まるわけでもなく、今は情報収集専門職のブン屋に頼んでいる。
そして、リュウの封印解除にも手を付けたが、アリスの封印を解除したマシンをリュウの封印された玉に当てると、そのマシンまでもが封印される始末に。
どうやら、リュウの封印された玉に触ったありとあらゆるものが封印されるという話は本当だったみたいだ。
それゆえその件についても手詰まりになってしまい、私は状況を見守ることしかできなくなってしまった。
私は極めて平然を装って生活しているつもりだが、その効果は全く持ってないようだった。勘の鈍い人にはまだ気付かれていない様子だったが、少なくとも紅魔館に住んでいる人達は私にものすごく気を使ってくれるようになった。お嬢様は私に休暇を与えてくれ、他の人にも本当に良くしてもらっている。
でも、それで事態が良くなるというわけでもない。当然だ。私も私なりに調査を進めているが、リュウの封印解除方法どころか零という男、ブラックタイガーという組織の詳細すらも掴めないでいた。これでは手も足も出ないというもの。
「はぁ…」
私は窓辺でため息をつく。
今回はアリスの封印の時のように時限性の爆弾は設置されていない。だから、あせらないで調査ができるのだが、時間があまり残されていないということには変わりはない。
リュウは球の中で出血している。一週間たった今でも流れる血はとどまることを知らず、リュウが球の中で死んでしまったらゲームオーバーだ。
10時をしらせる鐘が紅魔館に鳴り響く。
「さて、行きますか」
そう言って私は紅魔館の外に出た。
毎日10時に、私は幻想郷の調査に赴く。内容としては、ブラックタイガーの情報の調査を軸に、リュウの封印解除方法の案などを皆々に聞いて回る。非常に古典的で単純な方法だが、私たちにはこれが精一杯なのだから仕方がない。
以前にブレイクダークを少し触らせてもらった時、ブラックタイガーの連中を感知するレーダーがブレイクダークについていたことを発見した。
ブラックタイガーの連中の発見にはこれを使えばいいというわけだが、なにしろブレイクダークのキーを持っていないため(どうやらリュウとともに封印されてしまったらしい)に、ブレイクダークを発進させることができない。ゆえに紅魔館周辺しか探知できないのだ。
なので、このように幻想郷中を歩き回るしかないのだが…
「あ、咲夜!」
集合場所に生える木に寄りかかって目をつむっていた朱鳥が私に気付いたのか、顔をあげた。
朱鳥はトレイキョウに住んでいたころ、零と共に生活していたという元女神だ。
どうやら朱鳥の鈍感な性格をブラックタイガーが目をつけて、彼女のもとへ零を送り込んだみたいだ。そして、朱鳥の知らないところで零とブラックタイガーは連絡を取っていた結果、このような展開になった……とお嬢様は推理していた。
今回の事件で最も自分を責め、活動を活発にしたのは他でもない、彼女だった。
彼女は自分の不注意さが今回の惨事を巻き起こしたと言って相当落ち込んでいた。
確かに朱鳥の鈍感さは度を超えたものがあると思うが、その性格を利用したブラックタイガーの悪知恵には呆然とせざるを得ないところがある。
「待たせたわね」
「そんなことないよ~。私も今来たところだよ~」
「随分と退屈そうに木に寄りかかってたのは気のせいかしら」
私がすこし彼女をおちょくってみると、予想通り
「あ~、咲夜ってば意地悪~」
といってぷぅと頬を膨らませた。思わず私はクスッと微笑してしまう。
「まあ、冗談はいいわ。とりあえず、昨日の情報の探索はどう?」
「えっとねぇ~…」
因みに、私たちは昨日ある情報を入手している。
入手した相手は名もなき妖精だ。話によると、ブラックタイガーのアジトが幻想郷の西のはずれにあるという。当然ブラックタイガーのアジトにはあの男――――零がいるわけであって、それを考えると聞いたすぐに行きたい衝動に駆られたが…
相手は見たことのない妖精だ。もしかしたらブラックタイガー側が放ったおとりかもしれない。
そういう結論を出した私たちは朱鳥にその近くのエリアの探索を一任するという方針を出していた。
「確かに、紅魔館西北西直線距離56.4kmのところにブラックタイガーのアジトらしきところがあったよ」
「そう、様子は?」
「ただ大きい飛行船のようなものが着陸したような状態のアジト。おそらく、見つかったら飛んで別の場所に移動しようという魂胆だよ」
朱鳥は呑気な性格をしていても、このようになぜか情報収集能力は優れている。ブン屋程ではないが、向こうには別の仕事を頼んでいるのであまりつついてはいけない。それでも、このように調査には十分すぎる結果を持ってくるので、頼りになる。
「私たちがその場所を知ったという情報が漏れている気配は?」
「今のところないね。でも、情報が向こうに行くのは時間の問題だよ。突っ込むなら、今しかない」
少し私は考え込む。
いくら敵とはいえ、何の考えもなしにこの世界に陣を構えたわけではないだろう。それを、リュウを封印してたった1週間で居場所を知られてしまうほど簡単な場所に陣取るのは、なにか罠があると読んでも問題はない。
それに、もし早期段階でばれたとして空中で逃げるという手段をとっても逃げることが不可能だということは敵も重々承知の上のはずだ。現に、上空では霊夢が敵の奇襲に備えパトロールしている。
もし上空から逃げようものなら空を飛べる生き物から袋叩きにされるだけだ。
なら、何故…?
「試してみればいいじゃない」
「あら、遅かったわね」
「親友が二人も世話になったんだ。黙ってられないぜ」
気がつくと、アリスと魔理沙が集合場所に姿を現していた。
二人も私、朱鳥とともに調査を進めていた仲間だ。二人は、いつしか三人組としてセットにされたリュウが封印されたことに黙っていられなくなったといって、私の調査の協力を申し出てくれた。
アリスは封印された本人として有力な情報を提供してくれたが、いまはまずブラックタイガーを撃滅することが目標だ。
「で、試すというと?」
魔理沙が芝生に腰を下ろした。手で勧められるが、私は軽く手を振る。
「あなたが危惧しているのは、そのアジトは囮で私たちをおびき寄せるためのものじゃないかってことでしょ」
アリスが左手の人差し指を左右に振りながら解説をする。
「それなら、こっちも囮を出すのよ。何かを囮にしてアジトに侵入させる。そして囮に罠を発動させた敵の虚を突いてこっちが撃破する」
「でも囮はどうするんだ?」
「そうね…私の人形で十分だと思うわ」
「もし、敵にその囮がわかって罠を発動させなかったら?」
「それこそ好都合ね。そのまま敵のアジト深部に侵入させてたたきのめす。駄目でもアジトの構造ぐらいは把握できるわ」
まるで軍略会議の諸葛孔明のようにすらすらと戦略を語るアリス。どうやらここに来る前に作戦の一つでも立ててきたのだろう。
しかし、アリスは一通り説明すると一つため息をついて、さらに話を切りだす。
「でも、もしアジトの外に警戒兵がいて人形がアジトに侵入する前に撃破されちゃったら駄目なのよね。こっちの収穫はないし、万が一向こうが脳筋で策をはっていなかったとしたら上空を飛ぶとかして逃げるだろうし、策があるとしたらこっちの出足を入手してさらに私たちにとって突破しにくくなる策を張られるかもしれないのよ」
立てていた人差し指を額に当て考え込むそぶりを見せる。
その穴は大きい。どちらにしろ相手にこっちが囮を使ったことを教えてしまい、それを応用して布陣されたらこの囮作戦は音を立てて崩れさる。
それだけじゃない。その人形を間者代わりにしてこっちの仲間を錯乱させることだって可能だ。そうすれば、確実に状況は向こうに傾くだろう。
しかし、その杞憂もある訪問者によって消された。
「スキマ使う?」
「ひゃん!!」
朱鳥が奇声をあげたので見ると、スキマから半身を出した紫が朱鳥の肩を持っていた。
「紫?」
突然の訪問者に魔理沙はポカンとしている。
「もし、向こう側が私たちの能力を無効化するというような物騒な装置をもっていたら能力の干渉でこっちが敵に気がついたことがばれるかもしれない」
「ASP・・・」
否定はしきれない。アジト全体にASPを張り巡らせ、自分たちはASPを無効化するAASPを装着していれば全く問題がない。
「でも、そのエリア外までだったらここから移動する手間は省ける。まあ、そこら辺は相手がどれだけ私たちを警戒しているかにかかるわね」
「向こうは私たちをそこまで重要視していない」
また新しい声。上空からだ。
「咲夜。そっちの様子はどう?」
空から羽根を広げて降りてきたのは…
「お嬢様!」
「ちょっと相手のアジトを上空から詮索してみたわ。ASPは飛行船内にしか仕掛けられてないみたいね」
「そう、御苦労さま」
そういうと、紫はスキマから全身を出して地面に足をつく。
「なら、決まったんじゃない。もうすこし詳しく作戦を立てる必要があると思うけど」
「そう、立ち話は物騒だから私の館に来なさい」
「そう、ありがたいわ。じゃあとりあえず紅魔館に集合ね。作戦を詳しく立てるわよ」
すっかりリーダー格になった紫の一言で各々は紅魔館に向かうべく移動を始めた。
だいぶ長めに更新しました。
さて、次の話から崩壊します(人数的に)。
せっかく楽しく書いてるんだから少しぐらい遊んだっていいじゃないか的なノリ
LAP62 総力戦への作戦
「まず、アリス。もう一度詳しくあなたの作戦を教えてちょうだい」
「分かったわ」
場所を移してここは紅魔館の大会議場。この部屋はコの字型に並べられた机に椅子がついているというなんともシンプルな会議室で、正面にはホワイトボードもある。全部で席が40あるという大きさを除けば、ごく普通の会議室だ。
いま、その会議室には先ほどの6人(私、朱鳥、魔理沙、アリス、紫、お嬢様)に紅魔館のメンバー(パチュリー様、小悪魔、フランドール様、美鈴)、それに紫が誘ってきたと思われる人達(幽々子、妖夢)にブン屋(文、椛)が出席している。
随分と派手なメンバーだが、果たしてこれだけ大勢いるなかで方向性は決定するのだろうか。
「さっきも云った通り相手がなぜこんな簡単に見つかる場所に陣取ったのか。この答は一目瞭然ね。さて、私たちはこれをどうにかして突破しなくてはならないのだけれども…」
アリスは文が撮ってきた写真を指し棒でたたきながら流暢に説明をしている。
「この罠はおそらく赤外線か何かのセンサーで作動するようになっているね。だから、門番もいないし、周りの包囲網もあまりに薄い」
朱鳥が口をはさむ。
「そう。つまりここで何かに反応するとそこで罠が発動して私たちに不利な状況を作り出す。何に反応するかまでは分からないのだけれども、ここまでこのセンサーに一任しているということはおそらく埃一つで反応するぐらいに敏感なものになっているでしょうね」
ちなみに、今回の作戦のリーダーは紫とアリスだ。紫は一度アリスの封印を解除したということで信頼が厚いし、今回の作戦の原案者がアリスだということで満場一致で決まった。
「でも、知っての通り機械は融通が利かない。だから、こっちは囮を出す」
「それが上海人形だってことですね」
手帳から目を離さずに文が確認をとる。
「そうね。上海人形だったら罠が発動して撃滅されてもこっちに損害はない。まあ、また人形を作らなきゃいけない私の手間が増えるけど、それくらいは目をつむるわ。そして、罠が発動しなくても、最深部に人形の存在をひそませて、あらかじめ人形につけた盗聴器で相手の策を聞き出せば確実にこっちが有利になる」
「それで、罠が発動した後はどうするんだ?」
「おそらく、相手は罠がかかった瞬間に上海人形に群がってくるか、あるいは放置するのどちらかを取るでしょうね。もし、本当にこんな早期段階で見つかると思っていなかったら慌てて上海人形をつぶしにくるでしょう。そうなったら、群がってきた相手を囲んで一気殲滅する。そして、もし相手がこの事態を予測していた場合、確実に意識はエリア外に向くわ。そうなったらスキマを使ってASP圏外ぎりぎりまで移動して潜入、そのまま迅速に叩けば問題がないわ。ただ…」
「飛行船内にASPが張り巡らせられていた場合は?」
「レミリアの疑問は今回の事件の成功失敗のカギを握ると思って問題ないわ」
アリスは指し棒を机の上に置く。
「この前零が発動したASPのエリア内で、唯一零だけは能力を使っていた。おそらくブラックタイガー主要人物、または全員が小型のAASPを持っていることは確定して問題がないわね。大してこっちのAASP所有数は0。ASPエリア内での戦闘の勝率はないに等しいわ」
「ASPエリア外で発動した能力の効果をASPエリア内に持ち込むことも不可能なの?」
「そんなことできたら苦労しないじゃない、幽々子。あとは、能力に頼らずに使用することのできる武器が頼りね。咲夜のナイフのように…」
「それについて一つ情報なんですが」
ずっと自分の手帳を見て沈黙していた椛が椅子から立ち上がる。
「私の知るところ、飛行船内のASP有効エリアは確認できる限りかなり狭いです」
「そうなの?」
椛の情報にアリスが食いつく。
「ええ。少なくともあの飛行船の入り口から見える範囲ではどこにも張られていませんね」
……怪しい。
確実に私たちを誘っているかのようだ。入口にはセンサーのみ。それも、発動するかどうかは確認されていない。内部ではASP有効エリアが狭い。早期段階でアジトの居場所が漏れる。
これは…「空城の計」?
「入り口だけっていうのが怪しいわね…」
私の抱いた疑問は紫にもシンクロしたようだ。
「一度私たちを中に誘い、その上で入口を閉めるとかして孤立させ、そのまま攻撃する、という作戦を立てているなら納得がいくわね…」
「それを防ぐための囮よ」
アリスの言うとおり、たしかにそれを防ぐための囮だ。入口のセンサーが作動して、入口を閉められ、孤立を防ぐための囮だ…
なら一層怪しい。敵がそのように構えているならこっちが囮を放ってくることぐらい容易に想像できるはず。それを知ってまでASPを張らない理由は…
「2重センサー…という話はないのかしら」
気がついたら口が勝手に動いていた。
病室は暇だから、一章終了まではなだれ込むつもりです。
さて、咲夜さんは何を考えついたのでしょうか?
LAP63 賭けに等しい作戦の決定
「2重センサー?」
すかさず紫が聞き返す。
「そこまで開放的な布陣をしているなら、こっちが囮を放つなんて容易に想像がつくはずだわ。でも、敵はあえて門を無防備にしている。これはだれがどう考えても敵がこっちを誘っている。なら、入口のセンサーが見せかけだとしたら?」
「!!」
場の空気が凍る。私の言葉に各々がなにかピンと来たのだろう。
「入口のセンサーが見かけ倒しだとして、そこに囮を通す。安全を確認したうえで私たちがさらに奥に忍び込むうちにもう一つセンサーがあれば、完全に油断をしていた私たちの後ろで入口が閉ざされ、そのまま袋叩きにされる。こういう作戦を向こうが立てているという可能性は十分にあると思うわ」
「なるほど…」
隣でお嬢様が考え込むような唸り声を上げる。
「でも、その理論だとセンサーの数の予想がいくつになっても到達しませんよね」
「そう、確かに妖夢の言うことは正しい。この理論を使えば飛行船内のセンサーが百個、千個、一万個あっても何の疑いもない。だから、囮を違うものに変える」
「というと?」
幽々子が首をかしげる。
一気にしゃべり通したので、一度水を口に含んで口内を潤す。
「上海人形ではあまりにも耐える力が足りない。だから、もっと高い耐性能力を持ったものが飛行船を走り回り、ほとんどすべてのセンサーを反応させきってしまった状態からの反応を待つのよ。当然、そこまでぐしゃぐしゃにされては相手も相当焦るでしょう。そこで紫がスキマを使って責めるのよ。確か、入口はASPエリア外だったのよね、椛」
「え、ええ…」
「ならば、その僅かな猶予を使ってスキマから入って攻めれば、センサーを錯乱させたことでパニックに陥った敵を残らず殲滅することができる」
「その作戦、良くできているがあまりに大きい穴がある」
指し棒で魔理沙が私をビシッとさした。
「その囮、だれがするんだ?」
その答えを、私は堂々と言えた。あの時の勇気には我ながら脱帽だった。
「私なら、それぐらいの覚悟はできているわ」
そういって机に一本のナイフを刺す。
周囲がどよめく。
「ちょ、本気!?」
「敵地に一人で突っ込むことになりますよ?」
「無事で帰れる保証なんて、どこにもない」
口々に不安の声を洩らす一同。だが…
「そうね、敵地に一人で突っ込むなんてあまりにも無謀すぎる。でも、それが一番堅実で迅速だっていうこと、あなた達も心の底では思っているんではなkて?」
私には恐怖なんてかけらもない。それをアピールするためにあえて強い口調で話す。
「今回の作戦、失敗すれば今より確実にリュウの封印解除から遠ざかるわ。だからこそ一発で成功させなければならないの。それには多少大きいリスクを背負わなければならないのは定めってもの。それに…」
言いたくなかったが…周りを説得するにはこれを言うしかあるまい。
「ずっと黙っていたけど…リュウは私の彼氏だから…」
あまりの恥ずかしさに顔を真っ赤にしてうつむく。ずっと黙っていたことだけどこの作戦内容を納得させて遂行まで移すにはこれしか切り札がなかったから…
周囲のどよめきは一層高まる。
「嘘!?」
「あの二人…仲がいいとは思っていたけど…」
「まさか付き合っているなんて…」
「お黙り!!!」
一つの甲高い声でどよめきは一瞬で収まる。
怒鳴り声の主――――お嬢様は立ち上がり、私の目をじっと見据える。
「本気なのか?」
少々の沈黙ののち、武者口調でお嬢様が私を試すかの様に威圧する。
お嬢様が本気で私を試している証拠だ。
だが、私も引けない。
自分の好きな人を取り戻すために。
首にかかっているペンダントの宝石をお嬢様に見せる。リュウからもらった、マリンブルーとエメラルドの宝石だ。
もはや遺品と化してしまったその宝石をお嬢様の右目と重ね…
「この宝石に誓います」
「そう…」
お嬢様は少しうつむいて目を閉じる。
そして、そのまま私に背を見せ、今度は紫を目を合わせる。そして、
「私はこの作戦を推すわ」
それだけ言ってまた座った。
次は紫が私を試すかのように睨んでくる。
「随分と必死ね、咲夜」
「当たり前じゃない」
紫は私の目を見、私は紫の目を見、紫が私の心中を探るかのように視線をずらす。
そして、長い長い沈黙の後、一つのため息をついてこういった。
「作戦を説明するわ」
次回、とうとう総力戦の火ぶたが切って落とされます。
咲夜さんは、果たして作戦を無事成功させるのでしょうか?
LAP64 作戦決行
幻想郷メンバーとブラックタイガーの対決の作戦はこうだ。
まず布陣として、先鋒は私だ。私が飛行船に潜入し、ところどころに設置されているはずのセンサーを全部反応させる。
おそらく、センサーが反応すれば敵全員にそれが伝わるだろう。そうすることで敵を完全に私に引きつける。
そうすれば、入口に若干の余裕ができるはず。その瞬間にすかさず入口付近に立って待機する朱鳥が上空を切る。これが一斉攻撃の合図だ。
まず、文、椛、にとり(妖怪の山チーム)はにとり作成の三人がかりで引ける大型バズーカーを、反対側では魔理沙とアリスがマスタースパークを放ち、飛行船の胴体を前後でぶち抜く。
そうすることで機内の敵にさらなる焦燥を与えるであろう。それと同時に紫、藍、橙の八雲一家とお嬢様(八雲チーム)がスキマで入口から機内に潜入、魔理沙と合流して紫以外が内部で暴れ、さらなる敵の焦燥を招き入れる。
その奇襲で敵を翻弄したのち、こんどはお嬢様と私を除く紅魔館メンバー(紅魔館チーム)と八雲チームから離脱した紫がそのまま機内に入り敵の主要人物のいる部屋の探索に当たる。
敵は序盤で相当混乱しているはずなので、彼女らが幹部を探していると気がつけるやつらは少ないだろう。
その間マスタースパークを撃ったアリスは各チームが持つ人形を通信機代わりにして作戦の細かい指示などを飛ばす。
そして、紅魔館チームが主要人物のいる部屋を発見したら、一度紫が紅魔館チームから離脱。後機内の他チームと合流し至急その部屋に駆けつける。
機内が混乱一色に染まった頃合いで幽々子、妖夢(白玉楼チーム)は機内に潜入し咲夜と合流。咲夜をアリスのもとへ避難させた後に上空で警戒中の霊夢及び妖怪の山チームと合流し、一気に弾幕を上空からぶっかけ、飛行船が上空から逃亡することを完全に防ぐ。
また、飛行船の外部ではプリズムリバー三姉妹と萃香(プリズムチーム)が常に飛行船周囲を警戒し、新手が登場したら、人形通信機でアリスに連絡を送る。
連絡が入ったらアリスは待機している永琳、妹紅、慧音、てゐ、鈴仙(永遠亭チーム)に指示を出し、警戒していたエリアの一人と合流して敵が飛行船の中に入らないように攻撃をする。
また、今回の作戦は確実に全てがすんなりいくわけがない。なので、友軍として早苗、神奈子、諏訪子(八坂チーム)は船外で待機。苦戦を強いられているチームがあれば即刻駆けつけて援護できるように万全の態勢を維持する。
最後に紅魔館チームがデスシャドー、および零の姿を発見したら八雲チーム、紅魔館チーム、白玉楼チーム、魔理沙が合流し、一気にたたきのめすという、あまりにも壮大すぎる作戦が遂行される。
最初、永遠亭のメンバー、及び八坂神社の面子の協力が得られるかどうか不安だったが、意外にも8人は快諾してくれた。輝夜は面倒くさいとか言ってこないみたいだが、あまりさわらないでおこう。
また、霊夢、萃香、にとり、プリズムリバー三姉妹はリュウとの関係が深く、この作戦には一も二もなく了承してくれた。持つべきものは友というが、良くできた言葉だと思った。
そうして今に至るわけだが…
「周りに気配はないわね…」
「そうだね…」
さすがに朱鳥の顔からもいつもの呑気な表情は取ってみれない。常に刀のつかに手を置き、いつ奇襲されても刀を抜けるように態勢を整えている。
ここは飛行船ゲートG13。アジトの入口だ。ゲートG13とはいっても他のゲートはすべて封鎖されている。つまり、入口はここしかあいていない。
「絶対、生きて帰ってきてよ」
「ふふっ、意外と心配症なのね」
私はもはや涙目になっている朱鳥の肩にポン、と手を置く。
そして、あいている手で親指を立ててみせ、
「私を誰だと思っているの?」
リュウのお株を奪う、あのセリフを言って見せる。
「じゃ、いってくるわ」
私は朱鳥に背を向け呼吸を整える。
随分と強がって見せたが、内心怖い。どこにASPが仕掛けられ、いつ私が死と隣り合わせ、またはそのまま重なり合わさってしまうか、わかったもんじゃない。それでも、生きてこの作戦を成功させねば…リュウが、絶対喜ぶはずがない。
「いってらっしゃい…」
朱鳥の声に押されるように、私はゲートの中に走りこんだ。
実は…
この時点で30人動員という大惨事が起きています。
今後、どのように作戦が進んでいくのかな~
っつか、全員登場させたら何が何だか分からなくなるわいwwww
LAP65 最悪の事態
「いたぞ、こっちだ!!」
が、あまりにも予想に反した事態が起きた。
結構な距離を走ってわかったのだが…
――――センサーは入口の一個だけだった
敵を買いかぶりすぎた。まさか、本当に敵が脳筋だったなんて…
「ちっ」
軽く舌打ちすると、一気に弾幕を敵にぶち込む。まだここらへんはASPの対象外の様だ。弾幕をぶち込むたびに、どんどん敵は倒れていく。
しかし、キリがない。
倒しても倒しても、湧いて出てくるかのように敵があふれてくる。さすがに私も息が上がってきた。
「勘弁しな!」
いつのまにか後ろに回ったのか、一匹の怪獣が斧を自分に振りかざしてくる。それを…
「はぁぁっ!!!」
精一杯ナイフを振って軌道をずらす。
そして、斧の重さで前かがみになったそいつを
「せいっ!!」
そのまま横に人なぎする。
怪獣野郎は腰のあたりから真っ二つに分裂した。
そのまま、怪獣野郎の後ろに隠れていた連中を投げナイフで確実に仕留める。これで後ろは完全に始末したが、
「観念しろぉ…」
「死ねぇえええ!!」
「ぐひゃっひゃっひゃあ!!」
前方の敵がまた爆発的に増えた。
おかしい…何かがおかしい…
作戦はすでに紅魔館チームが敵の部屋を探すところまで進行している。が、機内に入った私以外の仲間たちは全員疑問に思っていることがある。
――――敵がいない
そりゃそうだ。
私の目の前に敵が全員居るんだから。
「はぁ!!!」
「ふん!!」
「やぁぁっ!!!」
近づく敵をナイフと弾幕で一人一人処理していくが、数が一向に減らない。
今は作戦が変更され、八雲チームは白玉楼チームとともに私の探索をしていることを通信機で知らされた。
がもうその作戦に移動してから20分程度がたっている。機内はそこまで広くないはずだ。なのに、何故…
私の通信機も、先ほど都合よく敵に破壊された。
私だけ、なぜかこの飛行船内で仲間から切り離されているというか…
敵の狙いは、どれだけ人を増やしても私一人に絞られている。
これだけは間違いがない。
ナイフを放り投げつつ頭の中で状況を整理してみる。
まず、あの後ゲートに入った瞬間にいきなり警告音が鳴り、入口が閉ざされた。上海人形を入れていたらあの時点で一瞬で人形がズタズタになっていただろう。その後、予想通り敵は私を捕まえるために私に群がってきた。
しばらく飛行船を走ってセンサーのありそうな場所をたどっているうちに、飛行船内では爆音が響いた。大型バズーカ―とマスタースパークによる胴体貫通の爆音だ。飛行船内は一時猛烈な閃光が走り、大爆音の後に機体が派手に燃焼し始めた。
それと同時にアリスから八雲チームが機内に潜入したという情報をもらった。そう、作戦は順調に進んでいた。ここまでは。
確実に敵の動きがおかしかった。
閃光や大爆音、さらには機体を包み込む火災にも彼らは微塵も動揺しなかったのだ。
それに、八雲チームが機内で暴れだしてからも、敵は一人残らず私の身を狙ってきた。これで役目は終わりだと思っていた私は驚愕せざるを得なかった。
それ以降も、紅魔館チーム、および白玉楼チームが相次いで機内に潜入してきたが、やはり全員同じ疑問「敵が一人もいない」を感じていたようだった。当たり前だ。
あまりにも私の前の敵の数がおかしいのだから。
なら、何故?もうすこしで幹部の部屋が敵にばれ、下手すればそのままボスがやられてしまうかもしれないというのに、なぜこいつらは私のみを狙って攻撃してくる?
「御苦労」
私の背中で一つの男の声が聞こえた。
始めは全く意識せずに目の前の敵をただ黙々と撃破していたが、急に
「ぐぎゃあああああ!!!!」
目の前の連中が一瞬で灰になった。
助けが来たのかと錯覚し振り向いたが、灰が舞う空間の奥では不気味な格好をした大男が一人立っていただけだった。
黒いマントに黒いマスク、黒いスーツに黒い靴。その全身黒ずくめのいかにも怪しい男に、私は見覚えがあった。
あの夜、リュウがブン屋を門に見送った後、リュウに歩み寄ってレースを申し込んだ…
「デスシャドー…」
肩で息をしつつ、デスシャドーに投げナイフを構える。
飛行船内に入ってからすでに投げたナイフの本数は延べで1000本は超えているだろう。
「お初にお目にかかる、十六夜咲夜殿」
デスシャドーは丁寧にお辞儀をしてくる。
「こんなところに、一体何のご用で?」
「きまってるじゃない!!リュウを元に戻して!!」
やつの姿を見て、怒りが込み上げてきた。
そうだ、リュウを封印したのは零だが、それを支持したのはとてつもなく高い確率でこいつ――――デスシャドーだ。
私の怒鳴り声が飛行船にさみしく響く。
「いかにも、リュウサトウを元に戻すことは大して手間のかかることではない。しかし…」
デスシャドーは私に手をかざしてくる。
「その条件として、貴殿が必要なのだ。少々手荒で申し訳ないが、すこし御同行願いたい」
そして、デスシャドーの手が握られる。と、
――――バーーーン
「いやあああああ!!!」
体に猛烈な電流が走った。いや、走り続けた。
「紹介が遅れた。私はデスシャドー。かつてリュウサトウが生活していたトレイキョウで組織された団体、ブラックタイガーの長を務めている。私はいま貴殿に施しているような電流を筆頭に、様々な現象を実体化できる能力を持っている。貴殿の持つ時を操る能力も、僭越ながら持っているのは確かだ。自分で言うのは恐縮するが、いわば、私は最強の男なのだ。もし、これ以上貴殿自身が御身体にこれ以上の損傷を与えたくないと望むなら目を閉じていただきたい」
「そんなこと…だれが…するもんですか…」
空前絶後の痛みに悶えながらも必死に耐える。
そして、
「致し方がない。なら、少し眠っていただこうか」
と聞こえたのを最後に、2倍強に膨れ上がった電流の強さを前に私の意識は完全に飛んだ。
だいぶ今後の展開が読まれそうですが、
とりあえず、30人どころか1人しか登場しなくてよかった…
最終更新:2010年03月31日 14:55