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そろそろ一章に蹴りをつけないとペース的にまずい…


imageプラグインエラー : 画像を取得できませんでした。しばらく時間を置いてから再度お試しください。

あれ?まだ一度もヴィルヘルミナ貼ってなくね?
ということでヴィルヘルミナでお送りします。




LAP66  拷問、そして…


 ふっと意識を取り戻す。どうやら気を失っていたようだ。


「…ん…」
「ひゃーっひゃっひゃ、気がついたか!」
 目をあけると、そこにはあまりにも太っている男がいた。


「ここは…」
 体を動かそうとするも、うまく体が動かない。


「ああ?ここは飛行船の最深部だよぉ~。今からお嬢ちゃんは言うことを聞かないといたぁ~い目に遭うんだぞぉ~!」
 男は完全に私をバカにしているかのような口調で話しかける。


 少しずつ意識が戻ってきた。まずは状況の確認だ。


 さっき、私はデスシャドーに電流を食らい意識を失った。その間にこの部屋に拉致された、と考えて問題ないだろう。


 周りの金属で囲まれた部屋をぐるりと見てみるが、どうやらここはかなり頑丈に守られた密室の様だ。床の金属の感触が非常に冷たい。これは突破するのは不可能と考えて問題ないだろう。


 次に、この部屋にいる人間の把握をする。私のほかにはこの太った男と、


「おい、その女は反抗しないなら大切に扱えとデスシャドー様に言われただろう」
 奥の椅子に足を組んで見下ろしてくる、全身2mはあろうかという身長を持つ、全身白い肌の気味の悪い男と


「でもレッド、俺はこいつが素直に言うことを聞くようには見えないけどなぁ」
 太い男の隣で私を見下ろしてくる、全身機械に囲まれた男の三人がいた。


 状況から考えて、どうやら三人ともデスシャドーの一味らしい。


「あなた達…」
 起き上がろうとしてみるが、全く起き上がれない。それどころか…


「ひゃーっひゃっひゃっひゃ!!それにしてもかわいいじゃねぇか、ええ!?」
「きゃっ!!」
 急に太った男が私の頭をけりとばしてきた。うまい具合に前頭葉の一番の急所を蹴られ、一瞬意識が暗転する。


「おい、ディアン」
 白肌男が立ち上がり、太った男の肩を持って抑える。


「なんでぇ、レッドの親分。これじゃあだめなのかよぉ」
「当たり前だ。彼女にはまだ選択の権利を与えていない」
 白肌男はきつい目つきで太い男を睨みつける。やがて、太い男が、わかったよ、と小声で言って白肌男の手を払う。


「あなた達ねぇ…」
 大人しく前頭葉をけられてはいそうですかというわけには私も行かない。


 やったらやりかえすの精神で腕を上げようと売るが、腕が上がらない。そして、ようやく自分が何をされているのかに気がついた。


 今、私は手を腰のあたりで完全に縛られている。足もぎっちぎちに縛られ、持っていたナイフは全部没収されたようだ。つまり、彼らに反抗できる要素は一切持っていない。


 つまり、これは半強制的に彼らの言うことを聞かないとぶっ殺すぞてきなルールが定められているというわけだ。


 当然予測はできたが、時間を止められない。ASP圏内なのだろう。


 急に背中に冷や汗が流れる。自分の置かれている立場がどれだけ絶体絶命なのか、改めて思い知らされる。リュウを捨てて自分を残すか、逆みたいにリュウを残して私が死ぬ。究極の二択だ。


 一番理想的なのはリュウを助けて私も帰還することなのだが、最悪の場合…


「あなた達、何をするつもり…」
「ああ、用件は簡単だ」
 白肌男が答える。


「貴様が今首から下げているペンダントの宝石、実はそれがブラックタイガーにとってとても貴重な石なのだ。以前、ジャスティウウィングがブラックタイガーのアジトに来たとき、リュウサトウの手によってこの石が盗まれた。私たちはこの石を目的にリュウサトウを封印し奪還を試みたが、封印されたリュウサトウの首にはその宝石はなかった、そして…」


「ペンダントをつけた君を見つけたんだ。それで、話というのは他でもない。そのペンダントを渡してほしいというだけだ。渡してくれれば何もせずにリュウサトウを開放するけど、もし拒否し続けてた場合は…」


 と、白肌男のセリフに介入してきた機械男はそれだけいうと私に近づき…


 ――――ガン


「いやぁっ!!」
 私の背中を鉄の塊みたいな足で思いっきり蹴った。あまりの痛さに倒れこむ。


「このように君が痛い目を見るよ」
 見あげると、まるでサッカーボールをけっているかのように当然のように、その上残酷で冷徹な機械男の顔があった。


 全身が凍る。こいつら…精神がどうかしている…


 改めて、自分がどれだけまずい状況の下に置かれているかを認識した。そう、人間の中でもトップクラスの強さを持つ私に、死とはあまりにも無縁だった。だが、今この男たちの仲介で私は死と隣り合わせの位置に来た。


 人生で初めて味わう死の恐怖に、一切の感情を無くす。


「さぁ、どぉ~する~どぉ~する~う??」
 倒れた私の髪を無理やりつかんで引っ張り、上体を起こさせる太った男。ここにきてようやく詳しい状況がつかめた。


 ――――ペンダントを渡さないと拷問される


 彼らはペンダントを欲していた。おそらくこれは力の源だとかそういう話なのだろう。それを渡せば、リュウも私も助かる。この結果はリュウも私も、何より幻想郷の皆が望んでいることだろう。


 でも、ブラックタイガーの勢力はさらに拡大してしまう。もしリュウがいてリュウが喜ぶであろう方。そんなの、一択にきまっているじゃない…


「いやよ…いたっ!!」


「ああ、いまなんっつった?」
 私が拒否すると同時に大男は髪を引っ張り、私の頭を壁に思いっきりぶつける。


「今、てめぇどういう立場にいんのか分かってんのか…」
 握られた手から彼らのいらだちが感じ取れる。だが、ここでこのペンダントを渡すわけにはいかない。それに、全身に走る痛みで、ろくに口もきけないでいる。


「……」
「なんとか言えやゴラァ!!!」
 痛さで黙っていると、今度は頬を思いっきり蹴られた。軽く吐血する。


「うぅ…」
 そのまままたばたりと倒れこむ。元々ダメージがあったので、今の一撃がかなり重かった。


「いたいよ…」
「だったらさっさと渡してもらおうか」
 倒れていた私のこめかみを誰かのかかとに踏まれた。見ると、今度は先ほどまで成り行きを見ていた白肌男が立ち上がって私を踏んでいた。


「貴様は今どれだけ詩と接した所にいるのかわかっているのか、渡さないとお前は死ぬんだぞ」
 そのまま足にどんどん体重をかけられる。頭がどんどん圧迫され、じんじんと痛む。


 そして、今度は機械男に


「早く渡した方がいいと思うんだけどなぁ」
 白肌男に頭を踏まれて体を固定された状態で胸をけられる。


「ああっ!!」
 それが見事に急所に命中し、これまでにない痛みが全身を駆け巡る。そのまま大量に吐血し、その赤い湖に頭をどさりと落とす。白い髪が赤く染まっていく。


 それでも、やつらの手は緩まることを知らない。二人は終始同じ攻撃を続け、


「オラオラオラオラァ!!さっさと渡せっつってんだよぉ!!」
 大男は持っている杖で私の体中を殴ってくる。


 その杖の影響で服はもちろん、皮がはがれ、肉をえぐられ、体中がもう血まみれになっている。もう、死ぬのも時間の問題だ。


 選択を迫られた。リュウの彼女として最もいけないことをして生きるか。リュウの彼女としての誇りを持って死ぬか。当然後者を選びたいが、いままで無縁だった死という恐怖が初めて私を襲う。


「誰か…助けて…」
 痛みに悶える声と嗚咽で声にならない声で叫ぶ。いや、もはや囁く。


 そして、奇跡が起きた。


「ああ?助けが来るわきゃねーだろー……」
 ――――ドーーーーン


「うぎゃああああああ!!!」
「ディアン!」
 凄まじい轟音とともに杖で殴っていた大男が吹っ飛ばされた。もうかすんだ視界の先をみると、あれだけ頑丈だった壁に大きな穴があいている。


 そして、その穴を見て呆然としていると、すぐ後ろで声がする。


「おい、咲夜にこれ以上手を出すんじゃねぇ」
 その聞き覚えのある、でもいつもより確実に低いトーンの声を聞いた瞬間、


 全身がふるえた。


 確信した。助かったと。


「ば…馬鹿な…」
 色白男はその姿を見て呆然としている。


 まさかと思ったが、次の発言で確信をもった。この男は、そう…



この男は、そう…森近霖之助だった!
とかほざいたら、多分住人一覧から名前消されますね。



LAP67 閉鎖空間での出会い


『ちょ…どこここ…』
 辺りを走り回ってみるが、困ったことにどこまで行っても暗闇だ。


 さすがの俺も疲れた。ずっと走りまくっているんだし。


『疲れたぁ~』
 俺はその場にへなへなと倒れこむ。


 今の状況を説明しよう。


 俺は零に手を触れられてからは意識が暗転し、この暗闇の世界にぶち込まれた。もうだいぶ時間がたつ。いつか目がなれるかなと思ったんだが、完全に光をシャットアウトしているのか、暗闇で何も見えない。


 しかし、そんな中唯一の光があったのも確かだ。


『なんでだろう…』
 俺はその場に座り、担いでいたその赤いライフルを床に置く。


 何故かこのライフル、この暗闇の中、唯一煌々と輝いている。まるで、ここが自分の力が一番出される域であるかのように…


『この暗闇のせいっていうこともあるかな』
 俺は辺りを見回す。このライフルが赤く光っていなければ、辺りは深い闇に包まれていることだろう。


『これ以上走っても無駄だな…』
 ようやくその結論に至った俺は、その場に腰を下ろす。


 大体予想はついていた。ここは、かつてアリスが封印されていたという球の内部だろう。どういうわけか、眠気、痛覚などの感覚は残っているのに、空腹感に襲われたことはまだない。便利なシステムだ。


 出口がないことを除けば。


『あ~、もう!』
 どうやってこのあと生活しよう…


 そう考えて、その場にごろりと横になった時だった。


『ねえ、ちょっとそこの君』
 だだっ広い空間の中で、俺のものではない声が響いた。


 起き上がると、目の前に一人の女が立っていた。


 赤いコートに身を包み、紅のロングヘアのその女は、年にしては俺と同じぐらいだろうか。いや、すこしだけ年上に見える。丸い純粋な瞳は、燃えるように赤い。


 この女を一目見て、一つ連想したものがある。


 あの晩――――ライフルを撃ちに行った晩に妖精たちから聞いた、幻想郷伝説に出てくる女。


 話によると、服やら髪やら何から何まで赤い女だったという。


 目の前にいる女も、全身を真っ赤に包んでいる。


 ただ一つ、彼女の化身ともいえた赤いライフルを除いては。


『貴方は…』
『ああ、ため口でいいわよ。敬語使われるのなれてないの』
『そう…か。奇遇だな、こんなところで出会うなんて』
 立ち上がって、女と握手を交わす。思ったより女の手は大人のものだった。


『私の名はエリーサーライト。エリスって読んでね』
『俺の名はリュウサトウだ。どう呼んでくれても構わん』
 そういうと、女、エリスは子供みたいな笑顔になった。


『じゃあ、サトでいいかな?』
『そこまで言うならサトウまで言えばいいのに』
『なんでもいいっていったじゃん』


 なんだろう。この人と話してると、なんだか幸せというか、すごく気持ちが穏やかになってくる。


 子供とも大人ともつかない雰囲気がそうさせているのだろうか。


『で、単刀直入に言うと、あたしは向こうで伝説の女って言われてるわ』


 体が硬直する。


 目の前では、びっくりした?といってこちらにVサインをしてくるエリスが映っている。


『な…何だって…?』 
 かろうじて言葉が口から洩れる。


『そりゃびっくりするよね。もはや崇拝されたといっても問題ない人間がここにいるんだもんね。』
 エリスはあくまで飄々としている。


『でも…でも、だったらなんでライフル持ってねぇんだ?』


 そうだ。本物の伝説の女だったらライフルを持っているに違いない。


 しかし、エリスは床に置いてあるライフルを指さして、一言こういうのであった。


『あなたがもってるしゃない』


 場に沈黙が流れる。
 ショックで身動きができなくなる。


『ちょっと貸して御覧』
 そんな俺にはノータッチで、至極当然のように柄に置いてあったライフルをしょった。そして、俺に背を向け、また振りかえって、
『なんか弾ない?』
 と言ってきたので、言われるがままに波動弾を一つ作って手渡した。


 エリスはそれを受け取ると、流れるような手つきでその弾をライフルにセットした。

 そして、


『サトは、こいつの反動に耐えられなかったみたいだね』
 なんて軽く言いながら、闇しかない空間に一発弾をたたきこんだ。


 ――――ズドーーーーーン


 すさまじい発砲音を鳴らしながら、弾は瞬く間に闇に吸いこまれていった。


 そして、俺は目を見張った。


 かなり鍛えこんでいるはずの俺の脚でも2メートル程度後ずさった反動を、エリスは足を全く動かすことなく反動を吸収している。


 それに、上半身もたいしてぐらつかず、自然体のままでそのライフルの反動を受け止めていた。


 片手で。


『すげぇ…』
 あの反動を一度体験しているからわかる。


 あの反動を吸収しきるには、相当の腕前が必要だ。


 どうやらエリスが伝説の女であることは、正しいようだった。


『信じてくれた?』
 ライフルを肩から外し、また何もなかったかのように静かにライフルを置く。


『あれを見て信じるなという方が難しいな』
 あんな神業を見せられたのだ。うなずくほかあるまい。


『しかし、なんでそんなお偉いさんがここへ?』
『貴方をここから脱出させるために来たの』
 ライフルを見ていた俺の顔は、ばっとエリスのほうにむけられた。


 エリスは先ほどまでの無邪気な顔は全く見せず、まるで試すような目つきで俺を見ていた。


『貴方はブラックタイガーに動きを止められたということぐらいは把握しているわよね』
 黙ってうなずく。


『それで、これは知らないかもしれないけれども、今向こうでは幻想郷の住人が総力を挙げてブラックタイガーと戦っている』


『予想はついた』
 そう答えた俺に軽く首を振った。


『ううん、貴方の考えてるような戦いじゃないわ。文字通り、総力戦よ』
 もう一度言いなおしたところ、幻想郷ではただ事じゃないことが起きているようだ。


『それで、あなたのビヨンセ、十六夜咲夜は敵の手に落ち、今は拘束されて眠っている』


『!!!』


 いままでエリスの話を冷静に聞いていたが、今の報告で一気に頭に血が上った。


『同じ部屋に、ブラックタイガーの幹部かしら?が三人待機しているわ。咲夜が起きたら確実に拷問をするのでしょうね。拷問器具までしっかり揃えてあるわ』
 次第に握っていた手の握力が上がる。


『それで、さすがに看過できないと思ったから、貴方をここから逃がして咲夜を助けてもらおうと思ったわけ』
『どうやって…』
 エリスは、一つだけ大きなため息をついた。


『そうねぇ…全ては貴方がどれだけブレイクダークを思っているかにかかっているわ』
『え?』
 今の状況とまったく関係ない単語を聞いてきょとんとしてしまう。が、エリスは真面目な様子だった。


『このライフルはね、特殊性質としてバラバラになったパーツを本体に戻ってくるように念ずれば戻ってくるシステムになっているの』
 エリスはしゃがんで、床に置いてあるライフルを指で叩いた。


『あなた、ブレイクダークが爆発したときにエンジンに赤いパーツをつけなかったかしら?』


『ああ、そういえば…』
 思い出せば、にとりのところに材料を取りに行って帰った時、材料がなくなっていた困っていた時だっただろうか。空から隕石が降ってきて、中には赤い部品が入っていたのは今でも鮮明に覚えている。


『あれ、実はこのライフルの一パーツだったのよ』
 そう言われて改めてライフルを眺める。


 なるほど。言われてみればこの眩しく鮮やかな赤色、このライフルを手に入れる前に一度見たかもしれないな…。


『それでこの世界にブレイクダークを呼べるかどうかで出れるかどうかが決まるわ』
 つまりはこういうことだ。


 本体のライフルには、各パーツを一か所に集合させる特殊な性質を持っている。そして、そのうち一つのパーツはブレイクダークの中に入っている。


 だから、そのパーツがブレイクダークのもとにもどってくることを本体に念じて、くれば成功。来なかったら失敗ということになる。


『あなたは、ブレイクダークをどれだけ信用しているかしら』




今回は主人公目線で書いてみました。

久々に俺到来。
ちょっといろいろ事情があって更新できずじまいですた。



LAP68  復活、そして成長


『あなたは、ブレイクダークをどれだけ信用しているかしら』


 率直でいて、かつものすごく重い内容の質問。


 俺も何度か自分に問うたことがあった。


 でも、答を出したことは一度もなかった。


 全部ブレイクダークが教えてくれたから…


 だから、今こうやって俺にその質問を投げられて戸惑ってしまった。


『俺は…』
 言葉の選択に困る。


 だか、俺を見つめるエリスの目は、これほどになく真剣だ。


『ブレイクダークのことを考えなかったことは、一度もなかった。トレイキョウにいた時は…』
 俺は、真っ暗な地面を見つめながらその問いに答えた。


『でも、幻想郷に来た一年の間、正直ブレイクダークのことはあまり見てあげられなかった。トレイキョウにいた時は一日の9割以上をブレイクダークと共に過ごしていたのに、ここに来てからは2,3時間のメンテの時ぐらいしか一緒にいてやれなかった』
 真実をすべて、包み隠さず、話した。


『それに…俺は最低なレースをした…』
『知らないかもしれないけど、私は見たわ。一部始終、貴方と咲夜の誓いまでね』
 顔が真っ赤に染まりそうなのを、首を振ってごまかす。


『もし、ブレイクダークに人格があるなら、もうブレイクダークは俺についてきてくれないかもしれない。俺はあのレースからずっと寝る前はそれしか考えなかった。ブレイクダークと積み上げてきた3年の月日が崩れ去る。それを考えるだけで…』


『じゃあ、あなたとブレイクダークの心は離ればなれな訳?』
『そんなことは……!』
 怒りのあまり立ち上がるが、その握りこぶしは握られて震えたままで、肩より上には上がらない。


『そんなことは?』
 エリスの目は、冷たい。


『ないと…俺は思ってる…ブレイクダークと走りたい…』
 ひざから崩れ落ちる。


 自分の口からそのことを言うのが、こんなにつらかったとは全く思わなかった。


 自然に目に涙が溜まった。


 この世に生れて生きてきて、18年経つが、ここまで自分を情けないと思ったのは初めてだった。


『でも…ブレイクダークは、こんな乱暴な男に愛想が尽きたかもしれない…』
 そんな折だった。


『それじゃあ来ないわね。期待した私が馬鹿だったのかしら』
 俺が初めての涙を一滴たらしたのと、エリスがそう俺をけなしたのは同時だった。


『それは…どういう意味だ…』
 地面を見つめたまま聞く。


 なお、エリスの態度は冷たかった。


『サトは、トレイキョウでどれだけブレイクダークとレースをしてきた?』
『…2年』
『出場したレースの回数は?』
『…50程度』
『レースで優勝した回数は?』
『…15回』
『新記録樹立回数は?』
『…5回』
『サトがつけられた称号は?』
『高速の白隼』


 そこまでエリスは矢継ぎ早に質問した後、一つため息をついた。


『ここまで言ってまだ気がつかないのかしら。いいわ。じゃあ最後に質問。これで気がつかなかったらここを出る資格はないわ』


 そういうと、大きく深呼吸して、大音量で俺にこう怒鳴りつけたのだった。




『あんた、ブレイクダークとはじめに何を約束したのよ!!』




『!!』
 心臓を射抜かれたようにはっと顔をあげた。


 俺の前では、怒りに唇を震えさせているエリスの顔があった。


 …そうだった。
 俺は、なんでこんな大事なことを忘れていたんだろう。


『「俺と一緒に、F-FIREに嵐を巻き起こそうぜ」』


『分かったかしら』


 …そうか。


 ブレイクダークは、放置されることが大のきらいなわけじゃない。


 そのことを理由に勝手にあいつと距離を取っていた…俺が嫌いだったんだ。


『大事なことを忘れていたよ』
 俺は、力が抜けていた足にまた力を入れて立ち上がる。


『俺は…高速の白隼だ』


 ブレイクダークは、あの夜のレースの様に、レースに嵐をおこしたかったんだ。


『俺は…ジャスティスウィングのメンバーだ』


 結局…似た者同士なんだな…俺らってよぉ!!


『俺は、リュウサトウだ!!』


 だから、俺は大声で叫んでやったんだ。


 真の俺達、レース場の「高速の白隼」をここで作り上げるために。


 ブレイクダークという、最大の相棒とともに、これからの人生を超音速で駆け抜けるために!


 ――――キィィィィィイイイン


 だから、ブレイクダークのエンジン音が、この暗闇の世界を白銀の世界に変えながらこっちに近づいてきたことに、俺は全く動揺しなかった。


 ただ、一言かけてやった。


『しらねぇ間にずいぶん成長しちまったな。お前』
 真っ白に輝くブレイクダークのボディを撫でてやりながら、優しく。


 そして、こっちにも忘れない。


『多分、一生忘れない時間を過ごしたよ。ありがとう、エリス』
『サトが望むなら、いつでも私はサトを応援するよ』
 俺達は、固い握手を交わしあった。


 その時だった。


『ここで会ったのも何かの縁だね。少し私の力を与えるわ』


 エリスが目をつむると、俺の手もとが赤く光りだした。


 それに共鳴して、エリスの髪とか、服とか、赤いところ及びライフルが共に光り出した。


『我らのもとに、栄光と汚れ無き誇りあれ』
 あとは、一瞬の出来事だった。


 まず、目の前に赤い閃光が走った。


 思わず俺はあいている手の方で目を覆った。


 そして、しばらくして閃光がおさまったところで目を開いてみると、


『あれ?』
 目の前には、眩しいほどに輝いている白銀の世界が広がっているだけで…


 その場にはエリスはいなかった。


 ついでに、赤いライフルもなくなってしまっていた。


 まるで霧散してしまったかのように消え去ってしまっている。


 しかし、代わりにあらわれたものがあった。


『……!』
 手のひらに、赤く刻印が刻まれていた。


 まるで禍々しい印だ。


『それは、特別な吸血鬼に宿る力』
 しばらく俺の手のひらを眺めていると、どこからともなく声が聞こえてきた。


 声色からして、エリスだろう。


『それは、貴方が念じればその力を発揮するわ。その刻印で、自分の潜在能力を極限まで引き上げることができるの。そして、それを発動すると…いや、これは発動してのお楽しみにしておこうかしら』
 姿が見えない状態での会話なのに、先ほどの調子は全く変わっていない。


 さすが、相当の話術の持ち主、といったところだろうか。


『その力は、試運転として向こうの世界に戻った時に強制的に発動されるわ』
『勝手にそんなことされると非常に困るんだが』
『いいじゃない。いつでも女は身勝手な生き物よ』
 全く、と大げさにため息をついてやる。


『それじゃあ、いきなさい。地面にあらわれた矢印に沿って走っていれば出れるわ。真紅の勇者と白銀の猛馬に、神の御加護があらんことを』
『そして、伝説の女の御加護があらんことを』
『それだけ無駄口が叩ければ上々よ。さあ、行きなさい、それと』


 そして、少しの空白を入れて、優しい口調でこういったのだった。


『妹を……レミリアとフランを、よろしくね』


 その言葉に後押しされて、俺は覚醒したブレイクダークを発進させた。


 俺は、いや、俺達は今、光り輝く真の「高速の白隼」になれているのだろうか。


 いや、絶対になっているだろう。


 なんでかは知らないが、今なら確信を持って言えるだろう。


 なんでか?


 そんな質問を持っているやつに、一言だけ言ってやろう。









「『俺達を、誰だと思って居やがる!』」



第一章クライマックスです。

そして勝手にれみりゃの姉を作成させたことをここで謝罪。
二次創作だからいいんだよ。



LAP69 苦悶の先の出会い


 あまりの喜びで、言葉を失った。


 と同時に、驚きでも言葉を失った。


 白銀に光り輝くブレイクダークに乗って助けに来てくれたリュウは、普段とは全く違った。


 その髪は紅く光り輝き、着ている執事服は、燃えているのではないかと錯覚してしまいそうなほど赤く染め上がっている。その瞳、眉までもが赤色に塗りつぶされ、持っている三節棍は、そんな風に赤く光り輝くリュウの中でも一際目立って赤く輝いていた。


 まるで、その容姿は「伝説の女」の様だった。


「覚悟は…」
 リュウが三節棍を一振りするだけで、ブラックタイガーの三人はびくりとすくみあがっている。


「出来てんだろうな?」


 そのあまりにも凄い迫力に負けて、


「うわああああああ!!!」
 太った男がドアめがけて走りだした。が、


「誰が逃げていいっつったんだよ」
 リュウの三節棍の一振りで、背中で鈍い音を作りながらその場に倒れこんだ。


 そんな太った男の様子を見て、残りの二人は完全に竦んでしまったようだ。


「てめぇらは、どうなんだよ。死にてぇのか。はっきりしろよ」


 リュウの口調に背筋がぞっとする。


 心の底から怒っているのが、言葉からでも十分なほど伝わってくる。


 と、そこに…


 一人の訪来者が来た。


「デスシャドー…」
 リュウは、後ろを見ずともそこに誰がいたのか分かった様だった。


「確実にお前の登場で分が悪くなったな」
「悪いな。そんなことに頭が回らないほどに今キレてるんだ」
 暫くにらみ合いが続く。その間も、リュウを煌々と包む光は褪せることを知らない。


 そうしているうちに、二人の頭は冷めたのか、竦んでいた二人がリュウに襲いかかった。


「随分とふざけた口調を聞いて…死んでも知らないよ」
「お前をたたきのめし、デスシャドー様の手を煩わせないのが俺達幹部の役目だ」
 色白男は短剣を、機械男は太った男が持っていた棍棒を掲げてリュウに向かっていったが…



 ――――波動流眼五式「刃」



 リュウの体から発せられた強力な波動の衝撃波によって、二人は猛烈なスピードで壁に叩きつけられた。


 壁に激突した二人は、ぐったりとその場に倒れむ。


 あの様子では、もう意識はないだろう。


「で…お前もこうなりたいか?」
 獣の様な瞳を、今度はデスシャドーに向けた。


 また沈黙が辺りを支配するが、デスシャドーは一つため息をついて、仕方なさそうに言った。


「ふむ、なにが起きたのか分からないが、今のお前には何となく勝てない気がするな」
「なんとなく、じゃなくて絶対と何故言わない」


「私のプライドが許さないんでね、撤収!!」
 そう短く叫ぶと、デスシャドーと、気絶した幹部の三人は一瞬にして姿を消した。おそらくテレポーテーションでも使ったのだろう。


 その部屋には、私と、リュウしかいなくなった。


「リュウ…」
 私は泣きながら地面にぺたりと膝をついてしまった。


「咲夜……、!!」
 ようやく目があったリュウは、私を見るなり目を丸くした。


 そこで、今私がどういう状態なのかを再認識させられた。


 そうだ。私は瀕死の状態だったのだ。


「咲夜…ああ…間に合わなかったのか…」
 リュウは私の顔を優しく手で包み込んでくれる。


 その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。


 心配させてしまったのか。


 心配してくれる人がそばにいてくれると思った瞬間、気がゆるんでしまった。


「リュウううううう!!」
 私はそのままリュウに抱きついて泣き崩れてしまった。


「あ、おい、咲…」
 ぎゅっと抱きしめられて、若干リュウがたじろいたが、もう私はそんなことに気をまわしている程気持ちに余裕はなかった。


 暫く、リュウに抱きついて泣いているのが精いっぱいだった。


 リュウはそんな私を、途中から優しく、傷口に触れないよう抱き返してくれた。



第一章第三篇、終了。

無事、第一章フィナーレに入れます。
ながかった…



LAP70 戦後の決意


 どれほどそうしていただろうか。


 そろそろ咲夜以外の人と顔を合わせに行かないとまずい気がする。


 みんな心配しているだろう。


 でも、まだ咲夜は俺の胸の中にいる。


 もう泣きやんだみたいで、今は静かに俺に収まっている。


 というか、咲夜の怪我が見ていられないほどひどいから、速く治療した方がいいと俺は思うんだがな…


「咲夜、そろそろ怪我を治療した方がいいと思う。お前の為だ」
 ちょっと背中を優しく叩きつつ声をかけてみる。


 だが、返事はない。


 おかしいと思って顔を覗き込むと、


「…すー…すー…」
「……ハハッ」


 寝てしまっていた。


 泣きまくって疲れたんだろう。


「…運んでやるか。よっと」
 俺は、胸の中で寝てしまっている咲夜を起こさないように、そっとお姫様だっこして持ち上げた。


「もう少し、もう少しだけ付き合ってくれよ。相棒」
 ブレイクダークがちょっとうなずいた様に見えたのは、きっと見間違いではないだろう。






「リュウ!!咲夜!!」
 俺が咲夜をブレイクダークに乗せて、超徐行運転でアジトから出ると、幻想郷の皆皆が出迎えてくれた。


 でも、俺との再会を喜ぶよりも、俺の腕の中で傷だらけで寝ている咲夜を見て、大半の連中が死んでいると錯覚したみたいだ。次々に顔色を青くして咲夜に駆け寄ってきた。


「大丈夫だ。ちょっと寝ているだけだ」
 といっても、全然言うことを聞いてくれないので、ひとまず永琳に咲夜を預けた。


 どうも、エリスが授けてくれた力とはあの赤く光ることのようだった。


 以後は俺の推測だが…あの状態になるには、誰か身近にピンチに陥った仲間がいて、助けなければならない状況にいないといけないようだ。咲夜が拷問されて瀕死状態だった事からの憶測だ。


 で、自分が赤く光ると何が起きるか。それは憶測でなく先ほど実感した。


 いろいろと細かい点はあるが、一言で効果を言うと、各能力が上昇した、だろう。


 まず、自分で押さえきれないほどの力が体の中からあふれてきた。あれは、たぶんこの刻印が力の源になってくれたのだろう。


 それに、必要以上に頭が回った。


 それらをふまえると、そのように考えるのが妥当だろう。


 そして、その後のことなんだが…


 喜んで出迎えてくれると思っていた俺が馬鹿だった。


 まず、俺は人垣をかき分けてお嬢様に生存報告をしようとしたら、出会いがしら本気で頬をひっぱたかれた。その時に俺の体が3メートル近く吹っ飛ばされたのは、幻想郷内でしばらく笑い話にされた。


 さらに「こんな不出来な執事で、恥かしいと思わないの?」とそのあとに説教が続いた。何度も美鈴が俺に助け船を出してくれたが、それが火に油を注いだみたいで、普段の仕事中で居眠りをすることを美鈴もしっかりとがめられた。あまりにもかわいそうだったな。


 でも、説教をしているお嬢様の目尻にうっすらと涙が浮かんでいるのを見て、少しは心配してくれたんだなと反省すると同時に少し安心してしまった。


 お嬢様にエリスの話をしようかどうか迷ったが、失言になってしまうと怖いので、右手には刻印を隠すために黒革の手袋をつけるようにした。


 幸いなことに、お嬢様はそれを見て手の傷を隠すためだと勘違いしてくれたみたいで「早く治しなさい」と優しく声をかけてくれた。


 また、傷が治った咲夜にはとりあえず思いっきり手綱を握られた。咲夜曰く「彼女を一人にしてどこに行ってんの!?行動で弁償しなさい!」ということだ。


 飛行船の中じゃあ俺に姿を見るなり泣きついてきたのに、その態度の変え方はないよ咲夜さん…


 それで、どんな雑務を任せられると思ったら、まったく予想とは反し再度お嬢様から休暇をもらって、いろんなところに行った。


 素晴らしい景色を見て回ったり、いろんな生き物に触れ合ったり…少なくとも忘れられない思い出になったことだけは確かだった。


 そして、今回事件に巻き込まれた朱鳥だが、朱鳥は事件が終わった途端に皆に挨拶をして向こうの世界に帰って行ってしまった。


 どうも彼女の持っている刀で幻想郷を守る結界を切り払い、そこの亀裂から帰ったそうだ。便利すぎるだろおい。


 また、しばらく俺とアリスは魔理沙の扱いに手間取った。俺達はどっちも魔理沙を残して封印されてしまっているから、魔理沙は一人だけ仲間はずれの感じだぜとかいって拗ねてしまったのだ。


 いや、絶対封印されない方がきつくなくていいんだよと二人で説得したのだが、なかなか言うことを聞いてくれなくて大変だった。


 それでも、やはり1週間もたてば機嫌も直ったみたいで、今では楽しく三人で話をしたりしている。


 しかし、俺は悩んでいた。


 いや、あの事件が終わってから、俺はずっと考えていたんだ。


 あの時とのエリスとの会話が全然頭から離れない。




 ――――ブレイクダークとともに、レースに嵐を巻き起こす




 そろそろ潮時だと思ったのは、3月下旬のことだった。


 そして、今に至る。



くそ――――っ!!!

このページ内で話が終えられなかった――――ッ!!!!









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最終更新:2010年04月16日 21:22