Red Snow Mystery Page 6


どこまで続くのやら。



『奇妙な空間は、遂にその存在を知られることになった。
 その存在は、属に言うパラレル・ワールド。

 原物と複製が入り混じる空間は、傍観すればさぞ面白いことだろう。
 故に、その珍妙な情景を文字で綴った赤雪物語は、飛ぶように売れたのである。

 さて、果たして、彼らはその捩れた世界の普遍的定理に逆らい、それを破壊することが出来るのか。
 そして、複製に殺害されること無く、赤雪旅館に訪れた者達は生還することが出来るのか。

 しかし、ある者が主導して、狂った世界を矯正させた場合、その小説はミステリーから推理物へと変貌を遂げる。
 では、ミステリーの本質、とは、一体何のことを指すのか。

 その世界は、魔法や超能力と言った、現代の科学に於いて、証明、及び認識する事を拒んでいる要素を嫌う傾向がある。
 ミステリーとは、捻じれた空間なら捻じれた空間なりの、少なくとも定理に基づいていなければ、読者側は追いついて行けないからだ。

 しかし、赤雪小説の文面には、魔法や超能力と言った非現代的な要素が多様な形容を含みながら幾度と無く登場する。
 それは何故か。

 そもそも、ミステリーに於いて非現代的な要素を持ち込もうとするならば、無理にでもその根底に現代的な、或いは科学的な要素を礎として築いて置く必要がある。
 それは、その世界における法則、と言い換えても語弊は生じない。いや、むしろその方が簡潔で理解に容易いだろう。

 その法則を、ミステリーの業界用語で表現するなら、トリックという言葉が最もしっくりと来ることは言うまでもない。
 一見、ファンタジーな世界に転移されたと錯覚してしまう様な現象でも、多種多様に、それこそ無限と言ってもよい観点の内一つから見た時、トリックは日の目を見る事になる。

 しかし、トリック、という物は実に抽象的だ。
 一口にトリックと言っても、そのトリックは、まずそのトリックという基盤の上に何が立っているのか、そしてそのトリックが作られた理由、及び目的、さらにそのトリックの規模など、枚挙に暇が無いほどの要素を包容している。

 さらに、トリックと言うのは、いくら非常識な現象の基盤の下に敷かれていたとしても、それは現代的科学によって証明される物で無ければならない。
 その束縛の中で、筆者は試行錯誤して、複雑で奇怪なトリックを生み出し、そして操る。

 そして、そこには、読者との暗黙の了解が存在する事を念頭から外してはならない。
 ノックスの十戒や、ヴァン・ダインの二十則に代表されるように、作者は読者に対して最高の物語を提供する義務がある。

 この場に於いて、ヴァン・ダインの二十則を引き合いに出してみようと思う。

 そのほとんどは、トリックの裏に隠された物は絶対に科学的な物で無ければならない、という内容の類だ。
 そして、そのトリックを暴く推理の根拠も、合理的な物で無ければならず、占いなどで解決させてならない、と記述されている。
 それは、第14項に於いて、はっきりと明記されている。

 しかし、それは一世代前の常識である事を、この赤雪旅館の批評に於いて読者には一度しっかりと認識し直して頂きたい。
 つまり、赤雪物語とは、実に画期的な文章なのである。

 そもそも、この物語の根底に敷かれている最も大きい前提、つまり並行世界と言う物は、ミステリーの要素では無くSFの要素である事を、読者には履き違えて欲しくない。
 並行世界とは、主人公を始めとする登場人物が、自分の存在する世界に違和感を抱いて初めてその姿を現すのであって、決してその存在が確固たるものである訳ではない。

 確固たるものでは無いというのは、言い換えれば不規則性を兼ね備えているということだ。
 不規則性を持つ定理は、数学を用いても証明される事は無い。数学という学問は、並行世界という難題を理路整然とした文章を連ねて証明できる程発展していない。

 世界と世界が相互に矛盾した設定や展開を持つ、という、世間では「パラレルワールドの関係性」と呼ばれることの多い関係性すら、その二つの世界が、並行する二つの平面は一直線状に於いて交わる事は無い、という幾何学的な定義すらをも凌駕して破壊するこの物語は、もはやミステリーとは呼べないのかもしれない。

 そんな中で、赤雪物語、という実にシンプルで修飾の少ない題を付けたことで、作者は本文との相違性から発生する驚きを読者に提供したかったのかもしれない。
 果たして、赤雪物語は面白いように本屋の店頭から瞬く間に姿を消し、二度と再版される事は無かったのである。
 その小説の存在自体がミステリー化されている、と思想してみても、一興かもしれない。』

「全然意味がわからないですね…。冬瑠さん…でも分からないか。殿なら分かるかも。殿は旅館にいるみたいですし、追ってみますか」



こんだけ尺取って、言いたかったのは市三郎の到来のみ。

俺マジで自重((((((



「―ああ―――そう――頼む―――」
男の声が、聞こえる。
「――だな――鍵――」
男の声は、一旦そこで途切れる。
「さて―――そろそろ役目を果たさないとな」
その萩鷲という男は、血に塗れていた。



「おかしいとは思わないか、十夜理志」
「ああ、実におかしいと思うよ、僕」
管理人室に居る、二人の少年―――否、二人の一人の少年
「「誰も、この異常な事態を異常だと思っていない」」
寸分違わぬ二人の少年の声が、被る。
「そもそも、こんな辺境の地に、こんなにも大勢の者が一度に集うわけもなく」
「しかも、侍、レーサー、学生、死神、他諸々、てんで愉快な面々だが、誰一人それを疑問に思わない」
彼らは、否、彼は、気づいた。



「――――どうなってる、こりゃ―――」
少年、赤渓郷流は、バルコニーにいた。
「―――――赤い」
何時の間にか、嵐は止み。
雪が、赤い、紅い雪が、降っていた。
―――果たしてそれは、何の色か。



久々に書いてみたくなった結果がこれだよ!
いやうんあれなんだ。即興で書いたからそんなに長く書けないんだ。
そいでもって相変わらず無駄に伏線らしきものを張るだけ張って引っ掻き回す。
うん、ごめん。




5

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年05月21日 10:29