人狂弄び(ニンギョウアソビ)

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ああ。
何故だろうか。
なんで、また。
護れない。
闘うと、決めたのに。
護れない―――――
なんで、俺は。なんで――――
俺は、逃げるように、
目を、開けた。



「――――――」
起きる。
目覚める。
――夢を、見ていた気がする。
悲しい、ユメを。
内容は、全く思い出せないけれど。
「……って、それより、どこだよここは」
俺が寝ていたのは、やけに高級そうなベット。
部屋を見渡すと、これまた高級そうな雰囲気が漂っていて、所謂『御邸』といった感じの部屋だった。
高級そうな雰囲気と共に、何故か妖しげな雰囲気も漂っているのだが。
当然、こんな部屋に見覚えは無いし、入った覚えも無い――――と。
そんな事を考えていると、部屋の扉が開いた。
「……あら、お目覚めでしたか」
入ってきたのは、メイド服に身を包んだ、いかにも『仕事の出来る女』といった雰囲気のある女性。
ここの、使用人か何かだろうか――――と。
「あの、なんで、俺は?」
さっきまで、紅桜さんと一緒に街に向かっていた筈なのに、何時の間にやら――――って、そういえば紅桜さんも居ないし。
「貴方は、館の目の前で、ボロボロで倒れていたのです。そのまま放っておくのも、気分が悪かったので」
――――ああ、そうだ。思い出した。
あの後。紅桜さんと街に向かっている時。
山の中腹の、細い道を歩いていたら、急に道が崩れたのだ。
そして、落ちた先がこの屋敷だった、という訳だ。
よく、死ななかったもんだ。自分でも驚きだ。
怪我もしてないし――――怪我をしてない?
「あの、さっき、ボロボロで、って」
「はい。ボロボロでした。身体も、服も。体中が傷だらけで……あら?」
「傷が、無い――」
怪我をしていたという俺の身体には、傷跡すら残っていなかった。
治ったにしては、速すぎる。だからといって、嘘をついているわけでもないだろうが――って。
「……服も、ボロボロ?」
「ボロボロです。使い古しの雑巾くらいには」
確かに、俺が今着ているのは、見覚えの無い服だった。
「心配せずとも、ちゃんと元通りにして差し上げますよ――――と、自己紹介が未だでしたね」
思い出したように言った後、一つ咳をし、
「神無月(かなづき)沙耶、と申します。この館で、使用人をしている者です」
と、丁寧な口調で自己紹介をした。
「あ、赤渓郷流、です。その……旅人、です」
こちらとしても、自己紹介をしない訳に行くまい。
とりあえず、セカイがどうとかいう話は伏せておく。面倒になりそうだし。
ああ、それと、もう一つ聞かないといけないことがあった。
「あの、俺の他に、誰か居ませんでしたか?」
誰か、というのは、勿論紅桜さんの事だ。
あの人が居ないと、俺はどうしようも出来なくなる。
帰ることはおろか、このセカイを旅する、というだけでも困難になる。
「いえ、貴方の他は、誰も」
「そうですか――――」
マズい。非常に、拙い。
あの人が居ないと、如何し様も無いのに――――
とそこで、腹がひとつ、ぐぅ、と鳴った。
「……あ」
「あらあら。今、昼食を用意しますね」
「あ、そんな、結構ですから――」
ぐぅ。
――おのれ、腹の虫め。そんなに飯が食いたいか。
うん、食べたいです。
「遠慮しなくて、いいですよ。久々の、客人ですから」
「いえ、その。ありがとう、ございます。何から、何まで」
やはり、どう足掻いた所で空腹は誤魔化せそうも無い。
ここは、素直にご馳走になる事にする。
「それでは、食堂にご案内します」
そして、使用人――沙耶さんに着いて、食堂に向かった。



「御馳走様でした」
出された食事は、やっぱりと言うか随分と豪華だった。
しかし恐るべきは俺の胃袋で、それらをすべて平らげた。
別に普段はそれほど食べる方でも無いのだが――よほど腹が減っていたのか。
「それにしても、本当に、色々とありがとうございます」
着ていた制服も、元通りに直してもらった。
直した後がさっぱり見当たらず、どういう手段を使ったか見当もつかないが。
「いえ、いいんですよ。どうせ、私が仕えるべきお嬢様が、こちらに来て食事をする事も、寝室を使うこともないですし、そもそも、私以外に、使用人は居ませんし」
「……それは、どういう?それに、その、お嬢様以外に、誰か居ないんですか?」
寝室を使ったり、食堂に着たりする事も無いって、どうして――
それに、普通、お嬢様とは、名のある家の当主の娘、だろう。それならば、誰か、他に――――
「……お嬢様のお父様も、お母様も、私以外の使用人も、皆、殺されました。それから、お嬢様はずっと――地下に、閉じ篭ったままなのです」
――殺され、た?
家族を、殺された?
「――――――なんで、そんな」
どうして。
なんで、そんな。
――なんで。
何故、なのか。
その答えは、やはり、なんとも。
――あまりにも、非日常だった。
「……それを話すには、まず、この辺りに伝わる伝説を、知る必要があります」
「伝説、ですか?」
伝説。
なんともまあ、ファンタジーだ。
やはり、今までの日常とは、かけ離れている。
「この地には、吸血鬼が住んでいたと言われています。吸血鬼は、人を襲い、村を滅ぼし、血を吸い。人の居場所を奪っていった――」
「――――」
吸血鬼。
やはり、非日常。
或は、今までの日常が、あまりに非日常だったか。
――どちらにせよ。今までの日常からは、想像も出来なかった出来事に巻き込まれているのは、間違いない。
そういえば。途中に、村の跡地のようなものがあった。あれが、その、吸血鬼とやらの所為なのかは、わからないが。
「しかし、結局、戦闘技術に長けた者、対魔の力を持つものにより、滅ぼされた。そういう、伝説です」
「……つまり、それって」
吸血鬼が居て、それが滅ぼされた、という伝説。
それと、家族が殺されたという、ここのお嬢様とやら。
それらに、接点があるとすれば。
「吸血鬼、でした。お嬢様の、お父様は。しかし、争いを好まず、人を襲う事をしない方で、近くに住む人間からも、信用されていました。それ故、人間の使用人が何人も働いていたり、時々、館で催し物をしたり、と――とても、優しい人だった。そして、人間の女性と結婚し、子供も生まれ、とても、幸せだった」
「……それが、なんで」
殺される必要なんて、どこにも無い。
ましてや、母親や、使用人は、人間なのに――――
「吸血鬼狩り、ですよ」
「吸血鬼、狩り?」
――――それは。
ある意味で、正しい行為なのかもしれないが。
「善良だろうと、吸血鬼は、皆、殺され、関わった者達も、裏切り者、と――」
それは、酷く。
「村の人達も、皆、殺されました」
酷く、愚かな事だと、思った。
「でも。お嬢様だけは、使用人達が、地下の隠し部屋に、隠したんです。それで、お嬢様だけは、助かりました」
そして、俺も、愚かだ。
「――――それで。その子は、それから、その部屋から、出てこない」
「……その通り、です」
それは、馬鹿げた事だと、自分でも思う。
自分でも、よく、分からない。
何故、そんな事を、考えたのか。
想ったのか。
俺は。
「その子と、会わせてくれませんか?」
――その子を、助けたいと想った。
「……如何なっても、責任を持ちませんよ、私は」
少し、唖然とし、少し、悩んだ顔をした後。
拒否するでも、受け入れるでもなく、
そう、沙耶さんに、言われる。
――ああ、俺は。
「勿論、如何なっても、貴方に責任なんて、ありませんよ」
なんて、馬鹿な事を、しているんだろう。
如何考えても、おかしいと思う。
会った事も無ければ、何かしら繋がりが有る訳でもない。
馬鹿だ、俺は――――本当に。
「……止めましたからね、私は」
そして。
沙耶さんに着いて、部屋を、後にした。
――そうして、暫く。
長い、階段を下りた先に。
その少女の、部屋があった。
――否。部屋と呼べるような物ではない。
それは、まるで――牢獄。
「お嬢様、少し、宜しいでしょうか」
部屋の扉の前に立った沙耶さんが、中へと、呼びかける。
「……何よ」
部屋の中から返ってきた声は、予想以上に幼い。
しかし、その声は、暗く、冥く。幽れていた。
「客人が、お嬢様に、お会いしたいと」
「――――――」
静まる。
暫しの、静寂。
そして。
「――――――いいわ」
そして、俺は。
「では、お入りください」
俺は、部屋へと、足を踏み入れた。



この調子で一気に書ききれ―――ればいいね。




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最終更新:2012年07月09日 22:21
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