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待つ袋

 今日はさわやかな日和だね。
 風がとっても清々しくて、だからあたしの体も喜んで、きしきしきし、っていい衣擦れの音を出してる。
 おひさまのまばゆい明かりをえいやっ、と体で真っ正面から跳ね返してやるのもたいそう爽快だ。
 いやぁ、こんな日なら、中のごっちゃごっちゃしたやつらのことも忘れることができそうだよ。
 もうちょっとこう、きれいに整理して詰めてくれると嬉しいんだけどねぇ。
 え? あたしがだれかって?
 なんだね、このぱんっぱんのフォルムが見えないのかい?
 向こうにゃお仲間も一緒にいるんだけどさ、あんた、散歩してくるときに見たろう? はは、知ってるくせに尋ねるのは野暮ってもんさ。
 あたしはね、あんたがたのお家から出てきたね、いろんなもんをね、あんたがたが普段を気持ちよぉく過ごせるようにね、どこか遠くへ持って行ってやるのさ。
 おっと、持って行くのはごっつい収集車のお仕事だけどね。
 あたしは順番待ちのおばさんってやつさ。
 あたしたちが歩道に可愛く並んだ姿、ちったぁ愛嬌ってもんを感じ取ってほしいね。
 ものも云わず、だれが通っても目にも留めず、ただおとなしくてさ、どんな天気の日でも待ちぼうけてさ、健気なもんじゃあないか。
 中身がどんなにうるさかろうと、あたしたちは気にしない。ただ受け入れるだけさ。
 あぁそうそう、お隣の中山さん家(ち)の中身はね、なんだかね、ぼろっちぃミキサーが入っていたね。
 後はバナナの皮だ。
 牛乳のパックもあったかな。
 たぶん、中山さんとこのぼっちゃんがたは、バナナオレを作ろうとしたんだろうけど、ミキサーが使い物にならなくって失敗したんだろうね。
 そんで、役立たずは用なしってことでぽいされたわけさ。
 気が早いこっちゃ。それにしても、いやはや分別する気はさらさらないようで。
 くっくっく。ありゃあ持って行かれず返却まちがいなしさ!
 うちのとこかい? うちは、ちゃんと分別はしているみたいだよ。
 ほれ、のぞいてみな。そうそう、そおっと開いておくれよ。油断すると中のもんをぶちまけちまう。
 あん? 結び目がかたくて開かないだと?
 やれやれ、あんたは身の鍛え方が足りないね。
 昨今の若いもんはこれだから……。
 あたしを今朝運んでくれたのもうちの長男だがね、あれもまた、なんだ、おっそろしく非力でね、この玄関から数歩もない道端まで運んでくるのにひぃひぃ云ってたよ。
 ふむ、まぁそれはいいさ。
 んとね、今日のうちの燃えるごみのラインナップはだね、……おい待ちなって、逃げなくてもいいじゃあないか。
 会社がある? はん、そんなもんさぼっちまえばいいのさ。それにほんの数分だよ、それであんたの会社が倒産するわけでないっていうのに。
 だいたいさ、あたしはもうちょいしたらあの大口の怪物に連れて行かれちまうんだから、ちょっとくらいは話に付き合ってくれよ。
 あぁ、別に怪物を恐れてるんじゃないよ? へへ、中で大暴れしてあいつの舌を台無しにしてやろうって寸法さ。向こうのお仲間ともすでに話はつけてる!
 よし、では燃えるごみのお話をしてやろう。
 うちじゃあこいつは燃やせないから、どこぞで燃やそうとしているんだね、うちの人々は。
 へへ、きれいさっぱり跡形もなく完全燃焼させてやるさ!
 未練のひとつも湧かせてやらないくらいに!
 それでその中身はだね、……え?
 中には不燃物ばっかり詰まっているだって?
 あっちゃあ!
 どっひゃあ!
 あっきれたもんだ、やっちまったよ、うちのご家族!
 おいおい! どうしたっていうんだ! は!
 どうりで体の調子がいつもとちがうって思ったよ!
 なんかね、どうちがうかってのはね、つまりはだね、
 ……ええい、とにかくしっくりこないのさ!
 こりゃなんだ、パソコンかい? しかも旧型ときたか!
 図体ばっかりでかくて腹が立つんだよ!
 あんた錆びた頭脳なんだから、おとなしくいいとこの部品だけゆずって地球の資源になりやがれ!
 スクラップにしてやる金すらもったいない、ばか!
 うおぅ、電子レンジまで入ってやがるよ! こいつも旧型!
 ただの電力泥棒じゃないか!
 なんだってそんなもんを後生大事にとってたんだか、我が家の人らは!
 ものをほっかほかにしてくれるどころか、あんたがたのお財布をきんきんに冷やしてくださるだけさ!
 はっ、ちょっとうまいこと云ってやった!
 他にはなにがある、おいあんた見てくれよ!
 まったく、そもそもこんなもんを袋に詰めるなってんだよ!
 あたしをなんだと思っていやがる!
 あたしのいつものお役目はね、中の燃えるごみをね、ぼう!ってど派手に燃やしてやってね、二酸化炭素とやらになってね、あんたがたの地球をあったかくしてやることなんだよ!
 なに、このエコの時代にいい迷惑だと!
 うるさい、あたしの勝手だ! 茶々を入れるんじゃあない!
 そんでからね、地球を取り巻く大気になってだよ、あんたがたが犯す愚行だとか、奇行だとか、英雄的な行いだとか、その他もろもろをだよ、ぜぇんぶ見守ってやるのさ!
 ほれ、分かったらさっさといい人(の)になっとくれ!
 そうすりゃあたしは安心するんだよ!
 こんな千差万別なごみを捨てるやつらでも、まだまだ見捨てたもんじゃあないなってさ!
 げっ、怪物が来た!
 あのすべてを圧倒するかのようなエンジン音、うなり音!
 ぐひゃあ、喰われる喰われる! あっ、喰われた!
 いい度胸だ! どこからでもかかってこい怪物め! あ、ちょっ、あたしゃあ燃えるごみだよ! ほっぽりだすなって! 味がまずいだと、こんにゃろ!
 不燃物だってごうごうに火をおこしゃ燃えるだろうがぁ!
 あっ、じゃあね、あんた! お仕事頑張ってくるんだよ!
 お話に付き合ってくれてありがと! 達者でな!
 また燃えるごみの日にはここに来るんだよ!
 今度こそ我が家のいいもん見せてやるからさ!
 そんじゃ、さよなら! いってらっしゃい!



ごみをなめたらあかん。


船の上


 無味乾燥に浮いている
 海の上 船の上
 すっとぼけた船長はどうやら方位磁針をなくした模様
 さてどうしたものかと途方に暮れる
 船員どもにはとりあえず時間稼ぎの酒を渡しておいた
 彼らはさっそく抗議した
 「ぼくたち子供だからお酒は呑めません」
 見てみれば みんな赤いほっぺたをしている
 つねってやればおもちのように伸びそうな
 四つ五つの子供ばかりを
 どうして船に乗せたのかと
 船長は疑問に思った
 「いつからこんなに大勢いたのかなぁ ちょいと抱えきれないね
 よくよく考えてみれば どいつもこいつも駄々はこねるしよく食うし
 まったくもって腹が立つ 面倒見るのもなかなかに面倒くさい」
 と云ってみるけれど むむ これはしかたがない
 酒では駄目だったから 船長は陽気に歌でも歌ってみた
 ヨーホー ヨーホー
 ちょっとは楽しくなってきた 虚空を振動する船長のだみ声のおかげよ
 「歌声に誘われて人魚でも出てきてくれないかしら」
 と船長はふと思った
 聞けば人魚の肉を喰らうと不老不死になるのだとか
 人間さまの永遠のあこがれ 退屈しのぎにゃ持って来いかもね
 暇を持て余した船の上 歌う船長
 なんだか神々の遊びでもやっているような気分
 世界を創るのが神々の遊び
 クオリティは高いのだけど 終止符が見当たらない
 無味乾燥に浮いている
 海の上 船の上
 すっとぼけた船長はどうやら方位磁針をなくした模様



暇な気分を詩にしてみた。だるっだるな感じに仕上がっております


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最終更新:2012年03月23日 10:51