この僕に書き出しを任せた事を後悔させてやるぜ!(
「……ふむふむ。これは中々、面白いです」
広大な図書館の片隅。
あまり人目につかない場所に在った本を引っ張り出し、熱心に読む少女の姿があった。
「赤雪物語、ですか……。是非とも作者様にお会いしたいですねー……っとと、なんと!実話だというのですか!?益々興味深いのです――あだっ!?」
一人盛り上がる少女だったが、突如頭に走った衝撃により前のめりにずっこける。
「たたた……何をするですか、ラグネル館長」
見ると、少女の後ろには何時の間にやら女性が立っていた。
勿論、ラグネル館長とは彼女の事である。
「図書館で騒ぐな馬鹿。そのくらい常識だろうが」
「他に誰も居ないですのに……それに、だとしても本の角で殴るのは反則です……というか、館長がそんないけぞんざいに本を扱っていいのですか」
「いいんだよ、これは私の私物だ」
「そういう問題なのですかね……よいしょっと」
頭を痛そうにさすりながら、少女が立ち上がる。
「それにしても、いつこっちに戻ってきてたのですか?今日は上でお仕事の日ですよね?」
「仕事と言っても、新米達に少し先輩として話をしてやっただけだ。まあ、そのまま上に居ても良かったんだが、最初から昼までには帰ってくると決めていた」
「……ほんと、こっち好きですよね。智天使の自覚はあるのですか?」
「お前だって一応能天使だろう。別に強制している訳でもないんだし、司書を辞めて帰ったって良いんだぞ、レイアシア」
「それはそれです。僕だって、ここが好きなのですよ」
――傍目にはただの郊外の図書館である。
しかして其処は、天使の図書館。
「……っと、お客さんだな。出迎えてやれ」
「はいなのですよ!」
この図書館は奇跡を綴り、幻想を捲る。
「ようこそ、ディオニュシオス天立図書館へ、なのですよ!」
あえて、次の人が凄く展開し辛い書き出しにしました(
ごめんね、あれなんだ。全ての設定を五分くらいで書きながら考えたからこうなっちゃたんだ。うん。
いっそのことこのネタを自分用に取っておく案もあったけど、既にネタが多すぎるのでやめた。
因みにレイアシアの話し方には元となったキャラが居たり居なかったり。
さあ次の人頑張れ!うん。頑張って。
図書館に訪れたのはアルバイト志願の少年だった。名を天野祐助(あまの ゆうすけ)という。
当年十七歳の彼がT公園横の、どこぞの金持ちが道楽で建てた安アパートに転がりこんでから、そろそろ一年になろうとしていた。
とかく夢見がちな彼は、
「作家になって大成してやるぞ、それまでは家に戻ってたまるか」
と、中学卒業後に家を飛び出したのであるが、作家になるというわりに当時彼が書いた作品といえば、アクセス数のすくない自分のWebページにあげた長篇小説くらいで、厄介な自尊心の持ち主の彼はこの小説をどこかに応募したり、あるいは誰かにじかに見せたこともなく、なのに「おれには作家の才能がある」と見当違いのうぬぼれをやらかしていたために、いま現在は自分の文才の有無に悶々としつつ、月に一回くらいの頻度で短篇を書いたり書かなかったりを繰り返し(これもどこかに応募したことはない)、あとは親にどうにかすがりついて得たはした金で日々を食いつなぐ生活をしているのであった。
ただその金もそろそろ底を尽きそうだから、こうしてアルバイトを探すことにしたのである。今まで同様に親のすねをかじってもよかったが、
(くそ、おれはもう十七だぞ。もうちょっとで十八! 花の大学生の年齢だ、つまりあと一年でほとんど大人になるんだ。それなのにいまだにおれは自分で稼ぐこともせずにすねかじりのまんまだ、なんて惨めな生活!)
と、誇り高くできているプライドが許さなかったわけである。
さて、彼がこの図書館でアルバイトをしようと思った理由であるが、いたって単純で彼はその図書館に週一回のペースで通っていること、また彼の家からもっとも近いアルバイト先だったからである。通うのに長い時間がかかるのは面倒くさいし、だから彼が自宅すぐ傍の電信柱で、
[アルバイトを募集します 履歴は問いません ――ディオニュシオス天立図書館]
とあるのを見たときは、半ば運命的な出会いを感じたものであった。
(なんと、まさか履歴を問わないとは! 中卒のおれにとって、こんなにいい場所がほかにあるだろうか! うまいこと金を稼げれば、小説用の資料にあてる金もできるだろう。そうすれば作家への扉にまた一歩近づくぞ。しかも図書館で働けるときた。本が読み放題じゃないか!)
さっそく彼は意気揚々とした気分で図書館へ向かった。アルバイトをするという、その年齢の少年にとってはある種のステータスともいえるものをついに実行できるとだけあって(不採用の可能性について思い当たりもしていたが、自分の才能ならば通るだろうと信じていた)、彼は道中天にも昇る心地であった。
図書館には家から三分も歩けば着いた。よく見慣れた門構えが彼の眼に映った。
ちなみに図書館は”T公園の中”にあった。これだけ書くと公園の敷地内の隅っこに建てられている貧相な図書館を思わせるが、そうではなく、この天使たちが運営している図書館は公園の敷地を眼いっぱいに使っているのであった。然し、傍目にはそこはふつうの公園である。通りすがりの者の眼ならば、ちゃんと滑り台やブランコなどが見えることであろう。つまり、この図書館は一般人には見えないのであった。
その図書館の門戸を、天野祐助は自然にくぐった。
どういうわけか、天野祐助には霊感だか異能力だか、そういった類の能力が備わっているのである。しかも、不思議なことに彼にはその自覚がまったくないのであった。この図書館についてもなんら特別なものはない、ごくふつうの図書館だと彼は思っているし、また、じつは過去に幽霊の類に属するなにがしを見たこともあるのであるが、そのときも単なる通行人としか思わなかった(これについては、その幽霊の形が一般的なイメージである、足がなかったり白目をむいていたりする姿ではなく、生きている人間と変わりない姿だったのも因であろうが)。
彼の先祖は坊主であるとか彼の父が語ったことがあるが、果たしてそのせいであるのか……。何はともあれ、たしかに彼はこういったふつうではないものを見ることができるのである。
思いのほか長くなってしまった……。
なんというか、次の方頑張ってください((
レフィ
「ようこそ、ディオニュシオス天立図書館へ、なのですよ!」
件の彼が図書館に入ると、その図書館唯一の司書が出迎えに来た。
初めてこの図書館に来た時から、殆ど毎回こうして彼女が出迎えに来る。
態々普通の客一人の為に出迎えをするとは、よほど暇なのかと思った天野祐助だったが、実際自分以外の客は殆ど見た事がなく、確かに相当暇らしい。
(まてよ、そうなると、何故アルバイトなど募集したのだろうか)
という疑問も持ったが、しかしこの際理由などは大した問題ではない。結局の所、働ければそれでいいのである。
「おや、これは。いつもの天野さんじゃないですか。今日もまた読書ですか?」
週に一度の頻度で来ている訳なので、当然司書にも覚えられるし、殆ど家に閉じこもっていてろくに誰とも会わない彼にとっては、数少ないまともな会話を交わす人物――まあ、人では無いが――である。
「いや、今日はその。なんでも、アルバイトの募集をしているとかで、それを受けに」
「……はや?アルバイト?」
「え?……いや、そこの電柱に、張り紙が」
(おかしい。この反応は何も知らない反応だ。)
まさか見間違いか。いやしかし、そんな筈は。
「ああ、それは私が張ったんだ」
そんな事を思っていると、奥の方から、この図書館の館長が姿を見せた。
司書と比べて話した回数は少ないが、それでもまあ、それなりの面識はある。
「最近人手不足でな。いや、そもそも『人』手なんて最初から無いが――まあ、そういう事だ」
「はあ。でも、良いのですか?ちゃんと上の方々に許可は取ったのですか?」
「そんな事しなくてもいい位の権力が私にはある」
「見事な職権乱用ですね」
どうやら、見間違いや勘違いと言う事ではなかったようで、一安心する。
(しかし、人手不足だと。これの何処が人手不足なのか)
確かにこれだけの蔵書に対して二人は少ないかもしれないが、しかし未だに彼は他の利用者が居るのを見た事が無い。一体何処が人手不足なのか。
まあ、彼にしてみれば、そんな事よりも採用してくれるのかどうか方が重要なので、それらの事はとりあえず意識の隅に追いやる事にした。
「まあとりあえず、採用な」
「……え?」
いや。確かに採用が決まるのは嬉しいし、そもそも落ちるとは思っていなかった訳だが。
「あの、館長?面接とか、試験とかは……」
「強いて言うなら、あの張り紙を見つける事が試験だ」
「……はあ」
勿論彼は気づいていないが、あの張り紙もこの図書館と同様に、普通の人間の目に映ることは無い。
傍から見れば、ただの紙切れにしか見えない筈である。
(まあ、何はともあれ、これで働けるのだ。素直に喜ぶとしよう)
とりあえず、彼は自分をそう納得させる事にした。
慣れない書きかたして見たら文章が酷い。
なんか凄くきりが悪い気がするけど気にしない。
僕以外の人に書いて欲しい気もするけど、でも書きたかったんだ、うん。
彼は本の整理を行っていた。館長が彼に与えたもっとも簡単な仕事であった。
すでに彼がこの図書館でバイトを始めてから一ヶ月半が経過していた。当初は客への返却の催促の電話(当然これは天使宛の電話である)も任せられていたりしたが、まるで役に立たなかったのでそちらの方はすぐにやめさせられた。というのも、彼は電話の向こうの見知らぬ相手におびえるあまり、声量はなく滑舌は悪く、台詞がふわふわ浮いているような感じになり、なかなかうまい催促ができない、ひどいときには「何云ってるか分からないんだよくそが!」と相手に怒鳴られる始末だったのである。これにレイアシアは呆れはてて、ラグネル館長に、
「へっぽこな人を雇っちゃいましたね、館長」
とぽろっとこぼしていて、不運なことに、彼はこの陰口を聞いていたので、ひどく落胆したものである。ちょうどこれがここで働き始めて四日目の出来事であった。彼はバイトをやめてやろうかと半ば本気で考えたが、あれこれそれっぽい理屈をつけてまだ仕事はやめないことにした。
(まだおれは何も得ていないじゃないか。やめるなら、もらえるスキルをちゃんともらってからだ。くそ、おれには勇気が足りない!)
彼がバイトを始めてから一ヵ月半も経つころには、彼は自分には社会的な力もなにもなく、こんな言葉を使ってもよいのなら、世間知らずな間抜けであることをとくと思い知らされたのであった。またいざアルバイトを始めてそこそこ誰かと話したりすると、すっかり忘れていた人恋しさや寂しさがふつふつと湧いてきた。彼には腹を割って話せるような友人はいないし、今更になって彼は他の少年少女のようにふつうに学校に通っていればと思うこともあるのであるが、悔しいながら自業自得であるから、もはやあとの祭りなのであった。
そんな折、図書館に珍しく来客があった。冬の寒さが身にしみてくる時候であった。図書館には暖房はなく、古典的にも暖炉で炎をぱちぱちと焚いていた。
客は若い女であった。白いダウンを着こみ、マフラーを首にぐるぐる巻いていた。外はよほど寒いのか、鼻頭が真っ赤になっていた。
なにが珍しいかというと、客が天使ではなく人間であったことである(祐助がいるときに訪れた客は皆天使ばかりだった。書くまでもないかもしれないが、彼は客が天使であることには気が付かなかった)。
カウンターにいたレイアシアは祐助が来たとき以来の深い驚きに屈し、いつもの歓迎の口上を云うのを忘れた。
客の女はカウンターにいたレイアシアに声をかけた。
「あの……」
「あっ、はい。――あ、ようこそ、ディオニュシオス天立図書館へ、なのですよ!」
「はい、どうもこんにちは。……その、質問があるのですが。わたし、立花有子(たちばな ゆうこ)と云います」
立花有子と名乗る女はいったん云いさして、
「ここはふつうの場所ではない、ですよね?」
「はい?」
レイアシアは眼をまんまるくした。
「いえ、わたし、霊感が強くて……」
「あ、なるほど」
(そっか、天野さんとはちがってちゃんと自覚がある人なのですね。霊感、ってちょっとちがう気もしますけれど。ふむ、たいへん興味深いです)
「そうなのですか。ふむ、いえ、僕たちはいわゆる天使というやつなのですよ。それでですね、ここはたしかにふつうの人には見えない図書館です。地上の本から地上にはない天界の本まで、なんでも取り揃えてますよ。なにか本をお探しなのですか?」
「はい。あ、いえ、本といいますか、相談事があるのですが」
「相談事? なんでしょうか?」
「わたし、ストーカーに尾《つ》けられているんです」
「へ?」
「信じてもらえないかもしれませんが。いるんです! でも、ふつうの人には見えないみたいなのです」
急展開入りました(
なぜ有子が警察ではなく図書館に来たかというのは、最後に彼女が云っているとおり普通の人には見えないからです。一応補足(
レイアシアは驚いた。なぜなら、普通の人には見えない《モノ》―要するに天使―は彼女の知る限りでは善良な人物しかおらず、仮にそのような犯罪行為をしたのなら上の《モノ》によって裁かれ2度と人間界に訪れることは出来なくなるからである。
だから、彼女はその話をどうも信じることができなかった。
「それはきっと気のせいなのですよ」
「いえ、間違いありません!私は尾けているモノをこの目で見ました!」
「あのですね、天使はそういう犯罪行為をすると即刻上にばれてこの世界から削除されてしまうなのです。ですので、その話は信じられないのですよ」
「でも……!」
「申し訳ないのですが、僕ではお役に立ちそうにないのです」
「そう……ですか……」
立花有子はひどく肩を落とした。すると、そこへラグネルが現れた。
「どうしたレイアシア。お客さんか?」
「ラグネル館長!実はですね、ここにいる立花有子さんが普通の人には見えないモノに尾けられているそうなんです……でも、僕たち天使はそんなことしたらすぐに天界に強制送還されますし……僕には信じられないのですよ」
「そうか……立花さんは天使が見える特別な存在なのだな?」
「そうみたいです。自覚もあるようです」
「そのようだな。では、立花さん、いくつか質問させてもらってもいいかな?」
立花有子は悩んだ。彼女はまだ天使というものを信じられなかった。しかし、この状況を打開するために勇気を出すと決めていた。
「はい!」
「では……尾けてきたモノは見たのか?」
「はい。ごく普通の大人の男性に見えました。でも、一瞬だったので顔は見ることはできませんでした」
「そのモノは一般の人間には見えるのか?」
「見えないと思います」
「その男について気になったことは?」
「えっと……あっ!私見たんです!その男が人間と重なった時、体が透明化したのを!」
「ふむ……それは天使ではないな」
「え?天使じゃないのですか?」レイアシアが口を挟んだ。
「ああ。そのモノは人間だ。ただし、普通の人間ではない」
「ど、どういうことなのですか?」
「詳しくは私の口からは話せない。ただ、そのモノを懲らしめることは私たち天使にはできない」
「ならどうすれば……」
「天使が見える人間2人でそのモノを同時に殴ればいい。そうすればそのモノはその透過能力を失い普通の人間となる」
「でも……私以外にあなた方を見ることができる人間に出会ったことはありません……どうすればいいのでしょうか?」
「それならここにいる。ほれ、あいつだ」
そう言ってラグネルは図書館の隅で作業をしていた天野祐助を指差した。
「へ……俺が何か?」
「お前、この立花有子さんと協力してやれ。拒否権はない」
「……は?」
こうして、天野祐助と立花有子は協力してそのモノを懲らしめることになった。
そして、そのモノを懲らしめることによって起こる世界の危機を、彼らはまだ知らない。
何というか…ほとんど会話ですね。
そして、作業時間の割に文章短いです。すみません。
まぁ、とりあえず超展開を起こさないようにはしました。
鍵的には頑張ったと思うんだ。うん((
てか、レイアシアは女なのに一人称が僕なのね。
個人的にはボクの方が(ry
決行は明日になった。有子はすでに図書館を後にしていた。
「やっぱり、おれはいやなんですが」
と彼は心底困ったような笑みを浮かべて館長に云った。寂しがりやの彼は誰かから何かを頼まれること自体は嬉しいし、お世辞でも云われたかのように喜ぶのであるが、
「おれに犯罪行為なんてさせないでください」
と、規範に忠実な彼は罪を犯すことに震え上がっていた。ちなみに彼がこの事件について聞いているのはストーカーを懲らしめろということのみで、そのストーカーがふつうの者だと見えないらしいだとかそういった類のことはいっさい聞いていない。
「まぁまぁそう云わずに……。困ってる人を助けるんですよ、りっぱな行為じゃないですか」
と純朴な司書は笑顔で云った。さっそく彼はおぼえたての言葉で返した。
「駄目です。それは”人道”に反します」
(ふん、小生意気なくそがきめ)
話を聞いていた館長は内心でつばを飛ばした。ただ、この手合いの若者の扱いにくさはよく分かっていたから、彼女は若者の自尊心を傷つけぬよう、ついでに刺激してやるために、言葉を選んで云った。うまいこと嘘も混ぜた。
「いいか、この事件はなんとしても解決しなくてはならない。お前には残念なことかもしれないが、利害が一致しているんでな。S会社を知っているだろう? 立花さんはあそこの理事の娘だ。つまり助けてやれば金が入るかもしれん。そしてうちは経営がそこそこ危ない。だから金が欲しい」
「だったらおれ以外の方に頼めばいいじゃないですか。腕っぷしの強い人とか」
「わが図書館の財政難を他所さまに明かせと? それは無理な相談だ」
「なら自分でやるとか……」
「わたしは怖いんだ。女だからな」
ラグネルはしなを作って見せた。
(ちょ、最低な女だな! 自分が怖いからっておれをぱしるのか!)
そうは思いもするが、財政難というのっぴきならぬ事情には彼はついつい反応してしまい、なおかつここにいる男は自分ひとりということもあり、彼が妙な義務感にかられるのもまた事実であった。解決しなければならないなどと云われると、彼の中の従順っぷりが否応なしに刺激された。
レイアシアの一人称に気づかず慌てて修正した人が約一名((
ラグネルさんはわたしで合ってるよね……?
翌日、有子と祐助がストーカー退治に出発した後。
「……しかし、大丈夫でしょうかね、天野さん」
「さあな。まあ、最悪失敗しても何とかなるだろう」
「いや、何ともなりませんですって」
この人は本当に智天使なのだろうかとたまに本気で思う。全く威厳が無い。
「まあ、そもそも本来うちの仕事ではない訳で――引き受ける義務も無い事だからな」
「それはまあ、そうですけどね。でも、引き受けた限りは責任があるでしょう」
「そりゃそうだ」
軽く笑いながら、館長が煙管に火を点けて、咥える。
図書館で、しかも館長が喫煙するというのはどうなのかと思うのだが、何度言っても止める気配が無いので諦めた。
「……そういえば、僕がここに来てから何年くらいでしたっけか」
「んー?そうだな、ざっと百年くらいじゃないか?」
「もうそんなに経ちましたか。月日が経つのは早いものです」
「まあ私は更にその五倍はここで館長をやっているが」
「まじですか」
「因みにお前は89321代目の司書だ。お前以外はすぐに辞めた」
「でしょうね。館長についていけるのは僕くらいですよ」
……いや、でも、89321って。まあ、館長の事だ、入って早々無茶振りでもされたんだろう。
僕や、天野さんみたいに。
「……どう思います?天野さんの事」
「ん、そうだな。容姿だけならそこそこ良い方だと思うが」
「いや、そういうのじゃなくて。いつまで続けられると思いますか?」
「ああ、そっちか。……まあ最初は、一週間持つかどうか、って感じだったが」
そこについては珍しく館長と意見が合った。
僕も、大丈夫かなこの人、と本気で心配したものだ。
「まあ、変にプライドが高い事もあるし、後一年位は持つんじゃないか?」
「そのくらいですか」
「それ以上持ったときには盛大に誉めてやるよ」
まあ確かに、そんな程度だろう。
実際、昔もここで天使ではなく、普通の人間が働いていた時期があったが、彼らも総じて一年と持たなかった。
まあ、昔よりも仕事は楽になったが――いつ『本来の仕事』が入ってくるか分からないのだ。
もしそうなれば、彼だって――
「……ん、お客さんだな」
「あ、ようこそ、ディオニュシ――って、あれ?」
そこに居たのは、和服を着、腰に刀を差した少女。
それだけで異様だが、更に異様なのは――翼。
悪魔である事を隠そうともしない、黒色の翼だった。
――だがしかし、この少女を僕は知っている。
「済まぬが、でぃおにゅしす天立図書館と言うのは、ここで合っておるか?」
「ああ、合ってるよ。だが、悪魔が一体何の用――」
「明日楽(あすら)じゃないですか!久しぶりなのです!」
「おお、れいあしあ、久しぶりよのう」
「……え?知り合い?」
珍しく館長がぽかんとしている。
「ああ、彼女は明日楽と言って、昔、悪魔討伐の時に知り合ったのですよ」
「うむ、余とれいあしあとはその時から無二の親友なのじゃ」
「ああ、そうか――って待てよ。なんで悪魔討伐で悪魔と友人になってんだよお前は。堕天でもする気か」
「いえ、むしろ逆でして――その」
「俗に昇悪魔、と言われる奴じゃ。今はれいあしあと同じく能天使の階に就いておる」
そう。彼女は悪魔は悪魔でも、数少ない善良な心を持った悪魔だったのだ。
まあ、非常に少ないパターンで――というか、公式にも彼女以外にはまともに確認されていない極稀中の極稀だ。
「……お前すげえよ。色んな意味で」
「そうですか?……それにしても、どうしたのですか?突然」
「いや、何。どうも、れいあしあの働く図書館であるばいとを募集しているという話を聞いてな」
「はあ、成る程。……館長、あれ、天使も採ってるんですか?」
「ああ。一応な。尤も、入った奴は五分で辞めるだの、三日耐えたら英雄だの、事実無根な噂が立ってる所為で誰も来ないが」
過大表現かもしれないが決して事実無根でも無い気がする。
天野さんに関しては人間ということもあって少しは気を使っているようだが、基本的にこの人の天使遣いは荒い。凄く荒い。特に新入りには容赦が無い傾向にある。
確かに、辞めたくもなる。僕も入りたての頃は何度辞めようと思ったか。
「では、余を働かせては貰えぬか?」
「あ、いいよ、別に」
(だいぶ軽いのです)
こうして祐助が留守の間に、また一人、新たな天使が増えたのだった。
「……というか、その翼仕舞えないのか?」
「まあ、その気になれば出来るぞ」
「じゃあそうしてくれ。流石に翼は誤魔化すのが面倒だ」
ストーカーがどうこうの話がどうにも上手く思いつかなかった結果こうなった。
このキャラ自体は書き始めから考えていたんだけどね、うん。
話が繋がってないようにしか見えないけど、まあ良いじゃない。良くないな(
最終更新:2012年03月30日 14:40