小説所 其の四
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空には暗雲が立ち込め、ぽつぽつと雨が降っている。
あの火事からどれだけ時間が経ったかは分からないが、どうやらこちらではまだ夜のままらしい。冥界とは時間の流れが違うのだろう。
背後には雨のおかげなのか時間の経過からなのか、既に火の勢いの止まった、しかし所々に木片が焼け落ちていたり、全体的に炭のようになってしまったりと無残な姿になった自分の家がある。
「好きな人との初デート、そして告白」
そう、彼は14歳。そういうことも考える年頃であろう。だが。
(・・・好きな人なんていたっけ?)
一応、通っていた学校の生徒の顔を思い浮かべてみる。
しかし思い浮かべようとしても、もやもやとした霧がかかって何となくしか思い出せない。
さっき思い浮かべてみたいくつかの未練もどうでもいいようなことばかり。というより、未練ですらない。一般の学生にありそうな未練を考えてみただけだ。
日々を無味乾燥に生きてきただけの僕には大した思い出みたいなものもない。
(未練がない・・・いや、分からない、のか?じゃあ・・・僕は一体何のために生きてきたんだ?)
雲が更に分厚くなってきて、雨も大降りになってきたみたいだ。
雨の地面を叩く音がさっきよりも鮮明に聴こえる。
本当に、僕は今まで何のために生きてきたのだろうか?
特に何か目標とかを持つわけでもなく、ずっと時間の流れに身を任せてきた。それに抗ったりも・・・いや抗う手段すら分からなかった。
生きている価値なんて、僕にはあったのか?
違う、そうじゃない。僕はずっと生きてなんていなかった。
…ずっと僕は、死んでいたんだ。
なんでだよ。何で今更こんなこと気づかせるんだよ。死んでから気づいてもどうしようもないだろうが。
もちろん分かっている。勝手に怒ったりしても意味がない。そんな考えを抱く自分がどうかしているだけだ。
そして、怒りを通り過ぎた後にやってくるのは、空虚な消失感。
(・・・なんかもうどうでもいいや。なるようになってしまえ。)
耳に響いてくるのは雨が容赦なく地面を叩く音。何かがそこを踏む音。
…踏む音?
そちらにのろのろと頭を上げて目を向ける。
30半ば程の女性だった。その姿には見覚えがある。何年もの間見てきたのに、何年もの間見ていないかのような、不思議な懐かしさを感じる。
顔が少しやつれた女性が、かすれた声でつぶやく。
「シノ・・・?シノ・・・なの・・・?」
生まれたときからその声を知っていた。間違えるはずもない。どこか懐かしい、耳に柔らかく響いてくるその声。
「母・・・さん・・・?」
by レフィ
話の流れを完全に無視してこんな内容にしてしまいました。シリアルおいしいです(違
何のために生きているかを考えるのって難しいですよね。
雨は降り続いてる。夜闇と同化してしまった真っ黒い雨。
玄関前に腰を下ろし、これまでの経緯を母さんに話した。自分が死んだこと、死神と出会ったこと・・・。
その間、母さんは何を言うでもなく沈痛そうに見える顔で聞いていた。
こんな話をする息子をどう思っているのだろう。信じてくれているのだろうか?
「信じるも何も、あなたは私のたった一人の息子なのよ。当たり前じゃない・・・。」
涙混じりのか細い声で母さんが呟く。思っていたことが口に出ていたらしい。
返事をしようとしたが、喉につっかえて上手く言葉が出てこない。しかし、母さんは何か察してくれたのか、こちらに淡く微笑みかけてくれる。
それから沈黙が訪れる。心地良い沈黙。
少し心が軽くなった。色々なことに対して。気にならないと思ってたけど、やっぱり気負ってたみたいだ。
未練がどうこうあったけど、今はそんなことはどうでもいいや。
母さんがああ言ってくれたことも嬉しかった。家とかでは避けられていたような気もしていたが、今ではそんなことを考えていた自分が馬鹿みたいだ。
「こんなことになって辛かったわよね、シノ・・・。本当に・・・こんなっ・・ことにっ・・・」
母さんはふるふると肩を震わせ、暖かい水滴を地面にはたりと落とす。
何か言わなくては。僕が辛いなら母さんも辛いはず。今度は僕が母さんの心を軽くしてあげなきゃ。
「あの・・・。えっと、いつになった千円返してくれるの?」
違うだろ。何でこんなどうでもいい言葉を出すんだこの口は。情けなさ過ぎて泣けてくる。
「そんな・・の・・返せる・・・ならっ・・・」
止まることなく地に涙がはたはたと落ちていく。
なんて言えばいいんだろうこんな時。分からない。大丈夫だよとか?違う、そんなのじゃない。
そうだ、今思っていることを言えばいいんだ。今思っていることを。なんて言う?素直に?そう、素直に。
あ・・・。
「ありがとう・・・。」
これだ。これが今僕の素直な気持ち。ありがとう・・・。
母親の方を見やる。ちゃんと伝わってくれただろうか。
別れの挨拶みたいだけど、これが言いたかったこと。
唐突に雨の勢いが強くなる。まるで、その後の言葉を聞かせたくないとばかりに。
「ありがとう・・・ですって?よくもそんなことが言えるわね・・・」
・・・え?
母親の方を見やる。どこまでも冷淡な表情。誰・・・だ、この人は?
「私はあなたといて感謝したことなんて一度もないわ。」
夜はまだまだ長い。
夜独特の冷たい風が過ぎ去っていく。
空には白く仄かな光を纏った霊魂が無数に漂っている。今日もたくさんの人が死んだようだ。
磁場の影響が強かった地域からもだいぶ離れ、ごつごつとした岩山の麓にある洞窟。サイ達は、今晩はここで休みを取ることにした。
サイは中に姉とキレオを残し、見張り・・・といっても何があるわけでもないのでぼーっと空を眺める。キレオの魂もあの中にあれば良かったのに、とか思いつつ。
当然ながら、死神が全ての死人をこうやって送ったりするわけではない。何らかの問題がある人間をこうやって送るのだ。
そいつが自分の管轄内にいたことは、大変予想外、大変迷惑なことであったが。
といっても初めてのことではなく、今までもこういうことは何度かあった。しかし。
「直接死んだ人間を運ぶのは嫌なんだよ・・・。」
ただでさえ空の霊魂からの悲痛な叫びが脳内に響いてきて鬱陶しいというのに、キレオまでいるとなるとさすがに憂鬱になってくる。
一応こいつは笑ったりしてたが、明らかに引きつっていた。時折泣く寸前の泣かない顔までしてるのだから、たちが悪い。
辛いなら辛いで、素直に泣いてくれた方が遥かにマシだ。
今まで運んだやつも全員そうだったが、なぜどいつもこいつも人間はそうなのだろうか。本心を隠してまで自らを演じようとする。
こちらからすれば鬱陶しいだけだ。そう、鬱陶しいのだ。本当に。
本当に・・・辛いからやめてほしい。
「サイ~、見張り変わろうか?」
姉が真っ暗な洞窟からひょこひょこと出てきた。
「ん、そうだな・・・。」
このままだと、暗い方向に思考が沈んでいきそうだったのでちょうど良かった。少し寝てすっきりしよう。
寄りかかっていた洞窟の淵から立ち上がろうとする。
「あんまり気負わなくてもいいのよ、サイ?」
遠くには海があり、霊魂の光が水面に映りきらきらと輝く。
周りの岩山沿いに広がっているのは黄土色の大地。現世から迷い込んだのであろう虫の鳴き声が聴こえてくる。
それらを掻き消す風の音と入り混じった、不快なような心地良いような不思議なBGM。
「・・・分かってるよ。」
やっぱり見抜かれていたのか・・・。こういうときだけ妙に察しがいいのだ。
軽く返し、洞窟内部へと歩いていく。
ほんの少しだけ、ほんの少しだけだがフィーナに感謝した。
by レフィ
シノ君は感情がころころ変わるなぁ。
母親さんの容姿とかちゃんと書こうと思ったんですが、全く思いつきませんでした(爆
まぁ、どうせ何回も出てくるようなキャラじゃないだろうし丸無視でいいよ。きっと。たぶん。おそらく。
どんどん物語壊すぜえ!(やめろ馬鹿
女はいった。
「まんまと罠にかかってくれて、挙句の果てにありがとう?苦笑にもほどがあるわ。」
女の冷酷な顔が冷たい笑顔を浮き出させる。背中がぞっとする、なんだこの感触は…
彼は罠という黒ずんだその言葉に動揺を隠せなかった。
「わ…罠…いったい何のことだよ…」
「あら、詳しく教えてほしいのかしら。小生意気な子ね。」
女の表情がことごとく冷たい。彼が混乱の底に落とされえたのはいうまでもない。
「今後長ーく付き合ってもらうのだから自己紹介しておかないと悪いわねえ。」
女は冷ややかな笑みを浮かべると語り出した。
「私の名前はシュガル・マンホーネツク。死神よ。あなた、サイとか言う小生意気な死神と契約したそうだけど、あの契約は破棄したほうがいいわ…。私たちに着いた方がいいわよ、シノ・レモドント」
そういって彼の首をなでまわす。
彼はまるで何のことだか分らなかった。ただ、ひとつだけ人間の本能が叫んでいること
――――――――――今の状況は限りなく危険。
「どうするの。早くしないとお仕置きするわよ。」
女がせかす。首をなで回す手からは、恐怖を感じさせる冷たさがあった。こんな奴について行ってはまずい…
「……かない。」
「何。もう少しはっきり言いなさい。」
「僕は、いかない。サイを信じ、グハッ」
いきなり視界が真っ白になったかと思うと胸に激痛が走った。彼は血混じりの咳をした。
「あら、小生意気な小僧ね。この私を振ってまで、サイとか言うやつについて行く気なの。私を拒否したこと、すぐに後悔すると思うわよ。」
そして何処からともなく出した斧を彼の首に突き付ける。
by混沌を呼び込む霧雨又津
主人公殺したら話し終わるからそこ気をつけてね。
最終更新:2009年08月03日 19:39