第35章
『矢』
納得学園、弓道場。
『…それで、私に話とは?』
「…バシュ!…ドッ!」
矢を放つ音が小気味良く響き、そして的の真ん中に突き刺さる。
『…ですから、選挙では汰譜王を応援して頂きたいのです。汰譜王ならきっとこの学園を変える事が出来るはずです!』
女は力強く男に言った。
「…バシュ!…ドッ!」
矢の音だけが響く。
男は何も答えない…。
『…どうか…』
女は力弱く男を見つめ願いを込めた。
『…変える…か…』
小さな呟きと共に男は口を開く
『…何人もの人間が学園を変えようとして…そして…。…私にも志はあっても…力無く今までこうして苦悶の日々を送ってきた…今その想いを解き放てるのか…。』
「…ギリリッ…バシュ!…ドッ!」
今までよりもさらに力を込めた矢は的の真ん中に深く突き刺さった。
『…では…』
『…貴女からは純粋な想いを感じる事が出来た…ただ…』
『…ただ?』
『…。』
『…どうしました?』
2人の静寂な時を遮るように異音が混じり始めた。
『おっ!桜舞ちゃん見ーっけ!』
『…?…貴方は誰ですか?』
『誰だって良いじゃん。それよりもさ~、実は汰…』
的の方から突然現れた男は桜舞へと近付いてきた。
「…バシュ!バシュ!バシュ!…ドッ!ドッ!ドッ!」
その瞬間、男の足下の地面には3本の矢が突き刺さっていた。
『…去れ…悪しき者よ…次は外さぬ…』
『…。』
『…。』
2人の睨み合いと共に辺りは再び静寂へと変わる。
『…クッ…』
男は素早くどこかへと消え去った。
男が去っても弓は空の方に構えられたままだった。そして静かに口を開く…。
『…そこにいる者よ…お前からは…影を感じる…いつまでもそこにいるのならば…お前も…射る…。』
『…。』
…しばらくして、男が構えた弓はいつもの様に的に狙いを定めた。
『…やはり綺羅は…悪だ…。…そして何か解らぬものもいる様だ…。
…微力ながら…この徐盛…貴女に協力しよう…。…但し…貴女が言った者に…悪意が感じられたら…私は迷わずその者も…射る!』
「…バシュ!…ドッ!」
矢は的の真ん中に突き刺さった…。
最終更新:2007年02月28日 16:04