アットウィキロゴ

1スレ目>>829~>>836

―
 
「こんにちわー!」
 
お昼過ぎの少し眠くなっちゃう時間帯、私が丁度あくびを噛み殺していた時に二人は訪ねて来ました。
 
「こんにちは、薫ちゃん、久しぶりだね。あと…あれ、博士…?」
 
「ごめんね、今ちょっとイヴさんは巴ちゃんの力のトレーニングに……」
 
私がそう言うと博士は小さく微笑む。
 
「いや、君でいいんだ、イヴさんに聞いたらと口を濁されてしまったからね」
 
「えっと…私に聞きたいことって…一体何を聞きたいのかな?」
 
…師匠が口を濁す?
 
「単刀直入に聞くと魔族と竜族の関係についてだ」
 
「魔族と竜族の関係……」
 
「薫ちゃんのが竜族なのは知ってるからともかくなんで魔族なの?」
 
沈痛な面持ちで語りだす博士。
 
「ブリュンヒルデと名乗る魔族に…会ってしまったのだ……」
 
「薫に仇を討つなら相手になると言っていたよ…」
 
「私には一体なんのことだか…」
 
「…そっか」
 
…イヴさんが言わなかったのも分かるかな…。
 
…言わなかったのは分かるけど…私は……。
 
 
「うん、教えてあげるね…」
 
「本当かっ!?」
 
「ありがとーお姉ちゃん!」
 
私がそう言うと目を輝かせる博士と薫ちゃん。
 
…薫ちゃんはともかく…やっぱり博士も研究畑の人間だね…。
 
「…遥か昔の魔界、魔族と竜族の二大勢力の戦争があったみたいなんだ」
 
「その結果、魔族は勝利し、残された竜族は着実に減らしていったみたい…」
 
「…みんなしんじゃったの…?」
 
「薫、辛いなら聞く必要ないんだぞ?」
 
「…ううん…かおる、きちんと聞かなくちゃだめな気がするんだ…」
 
「…続けるね…?」
 
説明するのも辛いなぁこれ…。
 
 
「しかし不思議な話だ…昔魔界で起きたハズの話がなぜこちらの世界に伝わっているんだ?」
 
流石博士、察しがいい。
 
「うん、そもそもこの話自体は魔界の悪魔から伝わった話なんだ」
 
「まかいのあくま?」
 
私の服にキュッとしがみつこうとする薫ちゃんの手をそっと握ってあげる。
 
「ありがとう…お姉ちゃん…」
 
…可愛い…。
 
……じゃないじゃない…。
 
「正確には悪魔と契約した人間かな?」
 
「…分かりやすそうなのだと悪魔憑きって言って分かるかな?契約の代償はさまざま、珍しいのだと悪魔への完全服従とかもあるけどね…」
 
「完全服従か恐ろしい話だな…」
 
 
「変な悪魔だと契約した瞬間にペロッっと魂ごと食べられちゃうかもしれないからそんな契約殆どないけど…」
 
「…竜と契約した人間は居ないのか?」
 
「ごめん、もしかしたら出来るのかもしれないけど私は知らないかな…」
 
「…そうかそれと…裕美くんは薫の力についてどう思う…?」
 
「…薫ちゃんの魔法、竜言語魔法は互換性がないから私にはなんとも…」
 
「ごかんせー?」
 
「魔法でも魔術でもない…って言っても分からないよね…」
 
「うーん…ちょっと見てて貰えるかな?」
 
私は窓を思いっきり開いて誰も居ない方向の壁に向けてボールペンを向ける。
 
 
『水流よ!』
 
私はスタンダードな水魔法を壁に打ち付ける。
 
「これが魔法…大事なのはこの後なんだけど……」
 
そう言って私はボールペンを一振り。
 
「せんせぇ!すごーい!お水が浮いて動いてるー!」
 
「あはは、次のは魔力消費が激しすぎるから私じゃちょっとお風呂場からお水借りなくちゃ厳しいからね…」
 
「い、いくよっ!」
 
『水よ!大いなる我が力に従い、その静寂なる身を激動に身を任せ我が敵を排除せよ!』
 
『スプラッッシュ!』
 
先ほどとは桁違いの水量の水が壁を深く抉る。
 
「これが…魔術…」
 
私は肩で息をしながら説明を続行する。
 
「私たちの使う魔法は一部を除いて魔術の簡易版として生まれたって感じかな?」
 
「でもこの通り魔力を持ってさえいれば使える…もっとも人間の魔力じゃ殆ど使えないも同然だけど…」
 
「私も補助として水自体は用意しちゃったしね…」
 
「…魔術とは随分と攻撃的なものに見えるな」
 
驚いた顔をして真剣な声色で話す博士。
 
 
「というより魔法自体が必要以上に攻撃的にする必要が無かっただけかな?」
 
「必要が無かった?」
 
「だって私たち魔法使いは基本的に社会に溶け込んでたり隠遁生活してたんだよ?」
 
「そもそも戦う魔法なんて必要なかったから……」
 
「暑いから氷作って涼む、寒いから熱魔法と風魔法でヒーターとかそんな感じかな?」
 
「…凄く普通だな」
 
「あはは、そんなものだよ?」
 
「かおるもこおりつくれるー?」
 
「…氷山なら作れるかも?」
 
作られても困るけど。
 
 
「…しかし結局薫を守る手段は見つからず仕舞いか、情けない…」
 
ガックリと肩を落とす博士。
 
「…せんせぇ……」
 
薫ちゃんが博士を心配そうに見る。
 
ここまで話しちゃったんだ。途中で投げ出す気はない。
 
「博士にこれをあげるね?」
 
懐から小さな巾着を取り出す。
 
「…びーだま?せんせぇいいなー!」
 
巾着の口から出てきた硝子玉を覗きこんで羨ましそうな顔する薫ちゃん。
 
 
「これは…?」
 
「赤に炎の魔法、青に氷の魔法、薄い水色に水の魔法、緑に植物の魔法、黄色に雷の魔法…それと透明のビー玉に薫ちゃん用の変身魔法が込めてあるよ」
 
「…強く念じれば誰でも発動するけど、込められた魔法は使い捨てだから大事に使ってね?」
 
「いいのかい?」
 
「…使わなかった日の魔力をストックしてあるだけだから気にしないで欲しいな」
 
きっとこれから先も薫ちゃんと暮らしていくなら必要になるから…。
 
「でも出来るだけ戦う事態なんて起きないほうがいいけどね…」
 
「私のような年寄りにこれを使いこなすのは無理さ、透明のビー玉以外は全て薫に預けるよ」
 
「うん…かおるがせんせぇをまもるよ!」
 
巾着袋を握りしめながら薫ちゃんは真剣な顔で宣言する
 
「…そっか、頑張ってね薫ちゃん…」
 
 
 
「ぜったい……かおるがせんせぇもお姉ちゃんもみんなまもるから!」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2013年06月26日 19:22