moedra @Wiki内検索 / 「時には徒花のように」で検索した結果

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  • 時には徒花のように
    春の明るい朝日に照らされた古めかしい城壁。 かなり小さな国ではあるものの、この国を治める父には子供の私から見ても王らしい威厳と風格が備わっている。 だが20歳の誕生日を迎えたある日、私は突然父の寝室へと呼び出された。 「なあ娘よ、お前ももう今日で20歳だろう?もうそろそろ誰かと結婚してもいいのではないか?」 「あら、ちょっと前までは迂闊に結婚などするなと言っておりましたのに、一体どういう風の吹き回しですの?」 「ふぅ・・・ワシも正直、求婚のため連日この城を訪れてくる男達の相手に疲れてしまったのだよ」 父はそう言うと、普段国民の前で保っている威厳に満ちた表情を崩した。 「腕の立つ者、頭の賢い者・・・お前が望むのなら、いくらでも素晴らしい男と結ばれることができるのだぞ?」 「どうせ王家の地位と財産が目当てで表面だけを取り繕った方達なのでしょう?それに・・・」 少し迷ったが、私...
  • SS便乗者氏
    ...×♂人間、捕食) 時には徒花のように(♂竜×♀人間) 光と闇(非エロ、流血) ドラネ・コンティ(微エロ)[絵茶発] サキュバス・バニードラゴン(♀竜×♂竜)[絵茶発] 2つの灯火(非エロ、流血) エリザ(♀竜×♂人間) オロチ(非エロ)[絵茶発] ドラゴンステーキ(非エロ、捕食) ドラゴンの恩返し(♀竜×♂人間) ドラゴンレース(非エロ) ひととせの仔竜(♂竜×♂人間) ペット(♀竜×♂人間、♀竜×♂竜、Transformation) ワニ(微エロ) 王の贖罪(♀竜×♂人間) 会議(竜×♂人間、輪姦、捕食)[絵茶発] 願いの果てに(♀竜×♂人間、輪姦、Transformation) 希望の卵(♀竜×♂人間) 救出(非エロ、流血) 恐妻家(♀竜×♂人間、流血) 空からきた少年(非エロ、流血) 継承(♀竜×♂人間、捕食) 結竜の儀式(非エロ) ...
  • 私の隣には
     私が目を覚ますと、そこには晴れ渡る青空が広がっていた。 サワサワという涼しげな音が、辺りを駆け抜けている。 数秒ぼんやりとしていたが、やがて理解に至る。 この草原に休憩がてら訪れてぼんやりと空を眺めているうちに、いつの間にか眠ってしまっていたらしい。  ふいに、風が傍らをすり抜けた。まるで私が一人であることを強調するかのように。 隣には誰もいない。そのことに微妙な違和感を感じてしまう。 一部だけ切り取られた風景を見ているような違和感が。 突然不安が押し寄せ、私は慌てて辺りを見回す。 するとすぐに、何メートルか先にうずくまる、蒼と紅の大きな姿が目に入ってきた。 ――よかった。 ――居た。  蒼い体を草原に横たえ、眠っている。 大きな紅の翼も、今は元気なく垂れ下がっていた。 私はほっとして近づこうとしたが、何歩か進んで躊躇いが生まれる。 本当はす...
  • 格子の向こうに映える月2
    翌朝、あたしはまたガチャリという入口の扉の音で目が覚めた。 だが今度は丁度扉を開けたところだったようで、朝食の豚を届けにきた人間と思わず目が合ってしまう。 「おはよう。昨日は楽しかったかい?」 至極当然のように人間にかけられた声に驚いて、あたしは言葉に詰まった。 そんな硬直したあたしを優しげな目で見つめながら、人間が1頭、2頭と豚を部屋の中へと運び入れている。 「は、はは・・・そうだな・・・まだ慣れるわけないよな・・・」 急に照れ臭そうに笑いながら言った彼の言葉は、あたしにはどこか自虐的に聞こえていた。 きっと彼は、もう1人いた別の人間とは違ってあたしをここに連れてくることに乗り気ではなかったのだろう。 この部屋へ向かって建物の中を歩いている時にも、彼があたしに向ける視線には常に同情というのか、ある種の後ろめたさのような感情が見え隠れしていた。 「じゃあね。今日はゆ...
  • 忘れようとした記憶2
    Hunter-side Lioleia-side 「なぁおっちゃん、これで弓を作ってもらえるかい?」 ようやく、憧れだった念願の武器が手に入る。 僕はそんな期待感に胸を膨らませながら真っ赤に溶けた金属の熱がこもる武器工房へと駆け込むと、いつものように腕を組んでふんぞり返っているおっちゃんにやっとの思いで集めてきた素材と金を差し出した。 「何だボウズ。お前はまだハンターになりたての青二才だろう?」 だがこれまたいつものようにというべきか、僕の依頼を聞いたおっちゃんが意地悪な笑みを浮かべながら僕の頭をクシャクシャと撫で回す。 「かっこつけて弓なんぞ使っても、お前にゃあの鬱陶しい猪どもだって狩れやしないだろうよ」 「うっ・・・い、いいだろ、別に・・・」 確かに、おっちゃんの言っていることにも一理はある。 僕がこれまで細々とでも鍛えてきた片手剣を捨てて弓を使い始めよ...
  • オロチ
    「ふぅ・・・今日も暇ねぇ~・・・」 大きく広がった真っ赤な耳をひらひらとはためかせながら、透き通るような黄色いドラゴンがふうっと溜息をついた。 眠気眼に涙を浮かべながら、退屈を紛らわすために真っ白なドラゴンの首にかぷりと噛みついてみる。 「あいた!や、やめてよいたたた・・・」 唐突に首筋に牙を突き立てられて、白いドラゴンが身をまかせながらも控えめな抵抗を試みる。 首を捻ってみるが、黄色いドラゴンはなかなか口を離そうとしない。 「あら、面白そうなことしてるわね~?あたしにも噛ませてよ」 紫色の綺麗な巻き角を頭に載せた桃色のドラゴンが、それに便乗して白いドラゴンの首をパクッと咥える。 「ちょ・・・2人ともやめて~!」 手加減と悪意を同時に感じる嫌がらせに、白いドラゴンは半べそをかきながら暴れた。 「ほらほら、どうせ逃げられないんだからおとなしくしてよ」 首筋に舌をペロペロ...
  • 忘れようとした記憶
    Lioleia-side Hunter-side また、茹だるような暑さの照り付ける季節がやってきた。 不思議な絆で結ばれた人間と愛娘を森に残してこの鬱蒼とした木々の茂る密林に移り住んでから早4週間。 毎晩のように降り頻る激しい雨や涼しい洞窟の中に巣食う不快な虫どもに幾度となく辟易しながらも、私は何とか新たな塒となりそうな美しい縦穴のある洞窟を見つけてほっと胸を撫で下ろしていた。 今頃はもう、あの娘も成体といって差し支えない程に大きく成長しているに違いない。 それにあの人間も・・・ 私はそこまで考えると、滝の流れる涼しげな巨洞の地面に蹲ったまま大きく溜息をついた。 この先、もう人間如きとあれ程深く関わることはないだろう。 この密林には私の敵となるハンター以外の人間などは滅多に訪れぬだろうし、あの可愛い娘と離れてしまった今となっては目の前に現れた人間どもを生かし...
  • 格子の向こうに映える月
    森の奥にひっそりと佇む、岩壁に掘られた大きな洞窟。 その薄暗い闇の中から、体長2m程の影が燦燦と明るい太陽の降り注ぐ森の中へと飛び出していった。 「いってきまーす!」 洞窟の奥で気持ちよさそうに眠っている母親に向けてそう叫びながら、全身を鮮やかな桃色の体毛に包んだ小さなドラゴンが姿を現す。 一目で雌とわかるほど優しげで可愛らしい顔をしてはいるものの、その頭からはドラゴンらしく乳白色に輝く2本の立派な角が伸びていた。 「今日も丁度いい獲物が見つかるといいなぁ」 全身を覆った桃色の体毛が風に靡くのを感じながら、あたしは遅めの朝食にするべき獲物の姿を探して辺りに視線を振り撒いていた。 長かった雨季がようやく明け、瑞々しい潤いに満ちた木々の葉も久し振りに大地を照らす陽光を受けて嬉しげにその身を揺らしている。 歩く度に左右に揺れるフサフサの短い尻尾が、時折地面に積もった落ち葉を...
  • 隻眼の蒼竜
    狂っている。 鼻をつんざく酒の臭いも、大地を揺らす人間達の舞踏も。 祭りの炎にかき消され、夜空に遍く筈の星すら見えない。 自慢の翼は縄で背に縛り付けられ、動く度に足枷が肉へと食い込む。 まだ捕らわれの身になって然程の時も経っていないはずなのに、森での暮らしが遠い昔の事のように思える。 何故、こんな事になったのだろう… ──季節は春。 忌々しい雪の季節は去り、動植物達がその息吹を取り戻し始めた頃であった。 柔らかな花々の香りが風に乗って、俺のねぐらへと吹き込む。 なんと気持ちの良い日か。 俺は春の陽気さにつられて、若草の生い茂る草原を散歩しに出かけた。 高台を吹く風が俺の翼膜をふわふわとたなびかせる。 ふと目に飛び込んだ小さな花を嗅ぐと、その香りにくすぐられた鼻は大きなあくびを出した。 と、その時である。 背後に大きな殺気を感じ、俺は大きく振り向いた。 ...
  • 隻眼の蒼竜
    狂っている。 鼻をつんざく酒の臭いも、大地を揺らす人間達の舞踏も。 祭りの炎にかき消され、夜空に遍く筈の星すら見えない。 自慢の翼は縄で背に縛り付けられ、動く度に足枷が肉へと食い込む。 まだ捕らわれの身になって然程の時も経っていないはずなのに、森での暮らしが遠い昔の事のように思える。 何故、こんな事になったのだろう… ──季節は春。 忌々しい雪の季節は去り、動植物達がその息吹を取り戻し始めた頃であった。 柔らかな花々の香りが風に乗って、俺のねぐらへと吹き込む。 なんと気持ちの良い日か。 俺は春の陽気さにつられて、若草の生い茂る草原を散歩しに出かけた。 高台を吹く風が俺の翼膜をふわふわとたなびかせる。 ふと目に飛び込んだ小さな花を嗅ぐと、その香りにくすぐられた鼻は大きなあくびを出した。 と、その時である。 背後に大きな殺気を感じ、俺は大きく振り向いた。 ...
  • 秘湯
    「ふう・・・ここがこんなに険しい山だとは知らなかったな」 鬱蒼とした森林に埋もれた山の中腹をひたすらに歩きながら、俺は切れてきた息を整えるようにゆっくりと呟いた。 1度山登りを覚えると、いろんな場所の山に登ってみたくなるのが人の心理というものだろう。 俺もそのご多分に漏れず登り慣れた山から離れて新たな頂を求めてみたが、標高が低い割に険しい道程に少し不安を抱え始めていた。 時刻は午後の5時。まだ雪が降るような季節ではないものの、さすがに空は薄っすらと朱に染まり始めている。 「こりゃあ夜は冷えるだろうな・・・」 一応簡易テントと寝袋は持っていたものの、今まで登山は日帰りが多かった俺には山中での宿泊はほとんど経験がないのだ。 分厚く茂った木々のお陰でさほど肌寒さは感じないものの、それでも時折吹き込んでくる風の冷たさに冷え込みを予感させられる。 とにかく、どこか風だけでも凌げる場所...
  • ペット
    朝目が覚めると、僕は裸で見知らぬ部屋にいた。 明らかに自分のものとは異なるベッド、テーブル、調度品。 そしてなにより、独特な獣の臭い。 ええと、昨日の夜は何をしていたっけ? 必死に記憶を辿る。確か、友達と飲んで、酔って帰る途中だったのは覚えている。 でもそこから先の記憶がない。 ということは、どこかで倒れて誰かの家で介抱されたのか? でもそんな見知らぬ酔っ払いを普通こんないいベッドに寝せるものなのかな?しかも服も着せずに。 みれば、僕のいた部屋は綺麗に片付けられていて、ホコリ一つ落ちていない。 その上ベッドときたら2メートル四方の大きなもので、明らかに部屋の中で異常な占有率を誇っていた。 僕はとりあえずベッドから這い出すと、窓を覗き込んで驚いた。 「一体何階建てなんだこの家は!?」 窓の外には霞がかった一面の空の下に深緑の絨毯が敷いてあるように見えた。 だが...
  • 悠久の欠片2
    「グルルルルルルル・・・・・・」 "今すぐそこから降りてくれば、命だけは助けてやる" そんな脅迫の言葉が聞こえてくるような迫力で、彼女がゆっくりとこちらに近づいてくる。 「あ・・・うぁ・・・ま、待って・・・」 地面の上にいた時と違い、今は巨大な飛竜と完全に目の高さが合っていた。 それ故に、鋭い視線から目を離すこともできずに体が言うことを聞かなくなる。 「す、すぐにお、おお、降りるよ・・・」 だがそうは言うものの、仮に降りていったとしても助かる保証などどこにもない。 結局その場から1歩も動くことができぬまま、俺は怒気を巻き散らす雌火竜に岩棚の上で壁際へと追い詰められた。 思わず胸の中に抱き抱えたままにしていた子竜はまだスースーと静かな寝息を立てているが、まさか彼女の見ている前でこの子を叩き起こすわけにもいかないだろう。 「グルル・・・」 子竜を盾にさ...
  • 死神と呼ばれた少年2
    「ド、ドラゴンさん・・・よかった・・・無事だったんだね!」 「え、ええ・・・あなたのお陰でね・・・」 キョトンとしたドラゴンの顔にはまだ何が起こったのかよくわからないといった疑問の色がありありと浮かんでいたものの、取り敢えずは命が助かったことを安堵しているらしい。 「どうしてあなた・・・地震が来ることがわかったの?」 やがて予想していた質問がドラゴンから投げかけられたのをきっかけに、僕は1つ大きく深呼吸して息を整えた。 「う、うん・・・そのことなんだけど・・・話すと長くなるんだ・・・」 そう言いながらそばにあった大きな木の根元に背を預けると、ドラゴンがゴロリと目の前に体を丸めて細めた視線を僕へと注いでくる。 「いいわ・・・聞かせて・・・」 そんないかにも興味津々といったドラゴンの様子に、僕は初めて明るい気持ちで自分の能力のことを話し始めていた。 「・・・それで昨日、...
  • 結竜の儀式
    多くのドラゴン達が平和に暮らす世界。 雲1つない快晴の空の下を番いのドラゴン達が陽気に飛び回り、その様子を周囲の岩山や樹上に腰掛けたドラゴン達が持て囃していた。 新たに結ばれた1対のドラゴン達を祝う、結竜の儀式。 幸せそうに翼をはためかせながら笑うその2匹のドラゴン達を、僕は少し離れたところから羨ましそうに眺めていた。 「あーあ・・・僕もあんな風にうまく飛べたらなぁ・・・」 背中から生えた大きめの翼をパタパタと動かしながら、僕は力なく呟いた。 数日前、僕は数匹のドラゴン達にからかわれて泣きべそをかいていた。 「お前まだ飛べないのかよ」 「俺達はみんな飛べるってのになぁ」 次々と浴びせられる侮辱に抵抗しようにも、空も飛べない自分の情けなさがそれを許さなかった。 「えぐ・・・だ、だって・・・うぐ・・・」 「飛ぶのなんて簡単だろ?いいか、見てろよ」 自分がお手本を見...
  • ドラネ・コンティ
    「85年物の赤ワインとチーズケーキをお持ち致しました」 高級な雰囲気を醸し出す三ツ星レストラン。 リボンのような大きな赤い耳を持った黄色のドラゴンは、運ばれてきた美味しそうなチーズケーキを見て微笑んだ。 レストランでバイトをする若いウェイターが、透き通ったワイングラスに真紅の美酒を注ぎ込んでいく。 ムシャ、ムシャ・・・ 一言も発せずに黙々とチーズケーキを頬張るドラゴン。 その様子を横目に、ウェイターのドラゴンはかしこまった様子でグラスいっぱいまで注がれたワインのボトルを戻そうとした。ところがその時・・・ ムシャ、ムシャ、パキッ、バリッ、ボリッ、ビキッ・・・ 聞き慣れない音に驚いて黄色いドラゴンの方を見ると、彼女はなんとチーズケーキばかりか皿の方まで美味しそうに食べている。 「あ、あの・・・お客様・・・?」 その信じられない光景にウェイターはボトルを傾けたまま石のように固...
  • 焼け跡に残った光
    生贄・・・時に縄張り意識の強いドラゴンが近隣にある人間達の町や村に対して、己の力を誇示するかのように理不尽な人身御供を要求することがある。 その生贄の多くはまだ成人も迎えていないような若い処女であり、不幸にもドラゴンに供された彼女達にはその残忍な捕食者の餌食となる運命が待っているのだ。 だがそこが人間の弱さというべきか、或いは逆に子孫を残そうとする生物としての強さなのか、大概の人々は大勢の安全の為に1人の若い命を差し出すという苦々しい決断を下して今日まで存続している。 だが中には、長年にわたるドラゴンの脅威にすっかり衰弱しきってしまった村もあった。 これはそんな滅びの時を間近に迎えた村に生を受けてしまった男の子の、奇妙な人生の一節である。 「長老、今年もまたこの村から生贄を出すおつもりですか?」 「もうこの村には若い女子など1人も残ってはおりませんぞ」 夕暮れの闇の中、...
  • シュピターラーのある一日。
    シュピターラーのある一日。 長旅における想いと、その行動について。 ターラーといわれる陸上歩行型の小さな竜がいる。 シュピと呼ばれる陸上歩行型の竜人を背中に乗せ、旅をしている。 ターラーは、短めの腕、著しく発達した後ろ足を持ち、 背中に何かを乗せて長距離を移動することに適した種族だ。 搭載量を上げるために、ターラーの種族は、 大きく膨らんだポケットを持つ、バックパック兼の服を着ている。 シュピは、ターラーと同じ陸上生活を営んでいるが、二本足で直立し、両手を仕事に使う。 その体つきから、全てにおいて順応であるが、全てにおいて特筆した能力も無い。 普段、シュピの種族は服は着ていないが、 ターラーの種族の服の何かに魅かれたのか、 ターラーの服を繕い直して作った服を着ている。 小さなポケットがやけに多いのはそのせいだ。 ちなみに、ターラーとは、何処かの誰か...
  • 無題n
    突然地面が消えたかのような落下感、そして俺は飛び起きた。 久しぶりに落ちる夢を見た。 部屋は真っ暗でまだ深夜のようだった。 寝なおそうと思って寝返りを打ったとたん背中に激痛が走った。 あわてて飛び起き、明かりをつける。 電灯の紐をつかんでいる腕は明らかに人間のものではなかった。 カギ爪が生えた太短い指。 ゴムのように滑らかな黄色と白のツートンの肌。 そして背中には一対の翼。 激痛の正体は寝返りを打ったときに翼の肩(?)の部分をひねったらしい。 カギ爪、ツートンカラー、翼。 こんな時どうするか。 素数だ素数を数えて(ry ~ 1分後 ~ 23まで数えたところでネタが尽きたと同時に大体の状況は把握できた。 ドラゴンになってしまったらしい。 某スレに『1000だったらドラゴンになる』とかカキコしたのがいけなかったんだろうか。 ユニットバスに移動し、そ...
  • 禁断の意匠に抱かれて2
    次の日、俺は昨晩の激しい疲労のせいか昼近くまで深い眠りについていたらしい。 目を覚ました時には既に太陽は南中を迎えており、青々とした草木の萌える初夏の香りが辺りに立ち込めている。 「そうだ、あのドラゴンは・・・?」 俺はふと昨夜の出来事を思い出すと、まだふらつく足取りでよたよたと玄関の扉を開けて外の様子を窺ってみた。 その家の目の前で、一見すると石像に見える黒々としたドラゴンがじっとその巨体を地面の上に横たえている。 だが扉を開けた様子で俺の気配に気がついたのか、ドラゴンはおもむろに大きな頭を地面から持ち上げると心配そうな眼差しをこちらに向けた。 「おはよう・・・よく眠れたかい・・・?」 返ってくるのは小さな唸り声だけだと知りながらも、何故かこのドラゴンにはついつい気軽に話し掛けてしまう。 それは恐らく、昨日の一件で彼が随分と心の優しいドラゴンであることが容易に想像できたか...
  • 剛と柔
    鋭く切り立った断崖と険しい丘陵に囲まれた、誰1人として人間の踏み入ったことのない深い森。 その森の奥では、快適な住み処を求めて数多くのドラゴン達が身を寄せ合って暮らしていた。 翼を持つ者は外界から食料を調達し、暖かい体毛を身に纏った者は冬の寒い時期に仲間達から重宝され、限られた洞窟の中で親の異なるドラゴン達がまるで家族のように静かな夜を過ごしているのだ。 そんな中、森の端の小さな洞窟で長い間共に暮らしている2匹のドラゴン達がいた。 全身をまるで苔むしたかのような深緑の鱗で覆った初老のドラゴン、グレン。 そしてグレンとは対照的に黄みがかった山吹色の体毛に身を包んだ若いドラゴン、サントロ。 明らかな外見の相違からも判る通り、彼らの間に血の繋がりは無い。 だがそんな彼らが心を通わせ共に暮らすようになったのは、ある雷雨の夜だった。 ドオオオオン!!ゴロゴロゴロ・・・ 耳を劈...
  • 地に墜ちた女王2
    「何?もうあの雌火竜を手懐けたと申すのか!?」 翌朝僕の報告を聞いた時の王女の喜びようは、とても言葉では言い表せないものがあった。 「はい・・・ですが彼女・・・レイアとの信頼をより深めるには、あの口輪をも外してやる必要があります」 「なんじゃと?ならん!それはならんぞ!万が一にもまた暴れられてはかなわぬからな」 「で、ですが・・・」 だが王女は言いかけた僕の言葉を手で制すると、椅子からピョコンと飛び降りていた。 「くどいぞ。前の雄火竜などは口輪をつけなかったせいで取り押さえられず、結局死なせてしまったではないか」 確かに僕がこの王宮で職についた直後、今のように頑丈ではない庭園の小屋で小柄なリオレウスが飼われていたのが記憶に残っている。 だが小柄とはいえ流石は飛竜の王というべきか、甲高い咆哮を上げながら小屋を破壊し辺りを飛び回る雄火竜に手を焼き、結局数人のハンター達を雇って討...
  • 森に這う鎖
    咽返るようなビールとワインの香りが漂う、この町でも随一の大きな酒場。 酒に酔った男達がそこらじゅうで浮かれ騒いでは、せわしなく店の中を走り回る若い娘の給仕に容赦なく注文を投げかけている。 そんな喧騒の中、年季の入った小さな樫のテーブルを挟んで俺の向かい側に1人の狡猾そうな小男が座っていた。 "なんでも屋"という割には裏の仕事しか入ってこないこの俺に、何やら頼み事があるのだという。 「で・・・俺にどんな用だい?」 まだ顔に幼さの残る可愛い給仕がなみなみとビールの注がれたジョッキを2つテーブルの上に置いていくと、俺はグイッと身を乗り出して相手の返事を待った。 「あんた、この国の南東に広大な森が広がっているのは知っているだろう?」 「そりゃあここに住んでる人間ならそんなことはガキの頃に習うからな。それがどうかしたのか?」 「じゃあ・・・その森の中にでかいドラゴ...
  • 黒竜の罠
    穏やかな波に揺れる船首の先には、大西洋上にひっそりと浮かぶ小さな島がその姿を現していた。 島の中央には、船乗りの間でダイヤモンドピークという名で呼ばれる深い樹海を従えた山があった。 その樹海の中には至るところに古代の遺跡のようなものが点在し、稀少な鉱石や文化的に価値のあるものが頻繁に出土するという。いわば宝島だ。 普通ならどこかの国が領有権でも主張しだして徹底的な探査のひとつも入りそうなところだが、噂を聞いた人達が次々と島へ押し寄せ、当初無人島だったこの島も今では海岸沿いに多くの民家が立ち並ぶまでになってしまっていた。 島に住む者は週に1、2度樹海に分け入り、そこでの収穫を本土で競りにかけて生計を立てているのだ。 「どうして週に1、2度しか山に入らないんだ?」 俺は乗っていた船の船長に素朴な疑問をぶつけてみた。 かく言う俺も、そんなおいしい話を聞きつけて島へやってきた身...
  • 死神と呼ばれた少年
    ふと気がついた時、僕の眼前に広がっていたのは欝蒼と茂った背の高い森の木々だった。 これは、町のそばに広がっているあの深い森の中なのだろうか・・・? だがぼんやりとした頭でそんなことを考えている内に、僕は何気なく自分の手の異様に気がついてそれをまじまじと見つめていた。 確かに自分の手が存在しているはずの場所に見える小さな黒い蹄と腕に当たる部分に生えた白い斑点のある栗毛が、この世界での自分の正体へと僕の意識を導いていく。 ああそうか・・・今度は僕・・・仔鹿なんだな・・・ 道理で周囲に生えている木がやたらと大きく見えるはずだ。 恐らく目の高さは地面から50cmくらいといったところに違いない。 そんな新鮮な森の景色を堪能しながら、僕はしばらく森の小道を歩いていた。 ガサッ・・・ とその時、突然背後から何やら不穏な物音が聞こえてきた。 いつも感じる悪い予感に思考を巡らす猶予...
  • 受け継がれた救い
    「まあ予想はしていたけど・・・こりゃ相当古い建物だな・・・」 鬱蒼と木々の生い茂る森の中に建てられた、小さな木造の山小屋。 辛うじて家としての体裁は保っているものの今にも崩れ落ちてしまいそうなその様子を目の当たりにして、僕は別荘での一人暮らしを決めたことを既に後悔し始めていた。 家の玄関口にかけられている"アイザック"と書かれた古ぼけた表札が、この家が先祖代々受け継がれてきた遺産であることを物語っている。 アイザック・ヴァルアス・ウィリアム、それが僕の名前だ。 学者の家系の子として生まれはしたものの、僕は正直落ちこぼれだった。 お世辞にも頭がいいとは言えなかったし、こんな隙間風の吹き込んでくるような酷い山小屋で暮らすことを決意したのだって、もともとは両親に勉強を強要されるのが嫌だったからなのだ。 ミドルネームの意味は知らないが、父も祖父も曽祖父までもがVと...
  • 獄中の宴
    満天に広がる星々の瞬きを眺めながら、俺は家の屋根の上に寝転がってウトウトと惰眠を貪っていた。 深い深い森の奥にひっそりと佇む小さな町。隣の町まで行くには険しい森の中を5日は歩き続けなくてはならないというのだから、ここは正に陸の孤島という表現がぴったりくる。 何故こんな不便なところに町があるのか俺にはさっぱり理解できなかったが、それでも森の木々に浄化された空気が見せる眩い星空を見ていると、そんな悩みもどこかへ消えてしまう。 何しろ時折森へ迷い込んだ人が帰ってこなくなる以外は、この町はいたって平和だった。 争いや犯罪も起きなければ、食料だって豊富な山の幸と草食の獣達のお陰で十分に潤っている。 正直ここに骨を埋めたいとは思わないが、少なくとも自然の素晴らしさを満喫しながら暮らす分にはさして悪い環境ではなかった。 「ん?」 本で身につけたばかりの星座の知識を頼りに星の軌跡を目で...
  • 宝玉の主
    「あった、これだ・・・」 城下町にある古めかしい巨大な図書館。その一角の古書ばかりを集めた資料スペースで、俺はついに目的の物を見つけることができた。 "世界の四大秘宝"と題されたその色褪せた資料には、古くから言い伝えられる4つの宝玉についての様々な情報が載っていた。 "神鳥のルビー"、"大亀の黒曜石"、"猛虎の白水晶"、そして"竜眼のサファイア"。 直径5寸きっかりの真球に磨き上げられたこれらの玉は最高級の国宝として、また権力の象徴として、国々が競って奪い合った。400年前には西欧で3つの大国が神鳥のルビーを巡って争い、その内2つの大国が戦いに敗れて滅んだという。 価値のあるものとはいえ何故これほどまでに宝玉を巡って血みどろの争いが繰り返されたかというと、それはこの宝玉にまつわる言...
  • 救出
    突然、私は深い眠りから覚めた。 一瞬愚か者が私の洞窟に侵入でもしたのかと思って辺りを見回すが、別に問題はない。 「フン・・・思い過ごしか・・・」 いつもならこのような真昼に目が覚めることなどほとんどないというのに・・・ 「ゴアアアアアァ・・・」 真っ黒な鱗に覆われた巨大なドラゴンは大きく空気を震わせて欠伸をすると、妙な予感に思わず目覚めてしまった己を叱咤して洞窟の冷たい地面に再び蹲った。だが・・・ ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・ 突如、轟音とともに大地が激しく揺れた。 「むおっ!?」 予想だにしていなかった巨大な地震に思わず飛び起きる。 大きな縦揺れに続く小刻みな振動に、洞窟の天井がピシピシと無気味な音を立て始めていた。 このままここにいるのはまずい。 なおも激しく続く揺れに時折足を取られながらも、私は洞窟の入り口に向かって全力で走った。 だが、後少しで洞窟か...
  • 禁忌の報い2
    どんよりと曇った胸の内とは裏腹に美しく晴れ渡った大空へと舞い上がると、俺は広大な森の様子を遥かな上空から一望した。 そんな深緑の絨毯の中にぽっかりとした丸い穴が空いていて、そこからキラキラと陽光を反射する水面が覗いている。 彼女が・・・イザベラが、毎日のように水浴びを行っているあの湖だ。 ここ数日の記憶を辿ってみれば、昼過ぎの今頃は丁度イザベラが冷たい水面を泳ぎ回っていることだろう。 一目惚れとはいえ1度は恋に落ちた女性に、俺はこれから襲いかかろうとしていた。 あの場所ならば、たとえ彼女が大声で泣き叫んだとしても助けはやってこないに違いない。 やがてなるべく羽ばたく音を立てぬように湖の上空まで静かに飛んでいくと、眼下では案の定イザベラが心地よい一泳ぎを終えて水から上がろうとしているところだった。 今だ・・・! そして気付かれないように素早くヒュウッとイザベラの背後に回...
  • 奇妙な仲介人
    世の中には、山に登ることを趣味としている人達はたくさんいることだろう。 だが一口に山といっても、その環境は場所によって全く変わってくる。 吹雪と強風の吹き荒れる雪山にしか登らない者もいるだろうし、あるいは灼熱の炎噴き上げる活火山の魅力に取り憑かれた者もいるだろう。 だが俺にとっての魅力ある山とは、切り立った断崖が立ち並ぶ岩山のことを指す。 遥か眼下を流れる川を飛び越すようにして吊り橋を渡る時の興奮、世界の全てが見渡せるような絶景。 森も少なく野生の獣もほとんどいないこの岩の楼閣に、俺は第2の故郷といったような親近感を覚えるのだ。 使い慣れた登山用具を背負ってお気に入りの岩山へとやって来た俺は、今日こそまだ到達したことのない山頂を目指してみようと心に決めていた。 普通は登山用具といえば精々テントに食料、後はいろいろと役に立つ7つ道具と着替えくらいのものだろう。 だが、岩...
  • 禁断の意匠に抱かれて
    カッ・・・カキッ・・・ガッ・・・ 町の片隅に佇む小さな小屋の前の広場に、断続的な金属音が響き渡っている。 岩肌に押し当てたノミにハンマーを叩きつける度に、砕けた細かな岩の破片がキラキラと辺りに飛び散った。 照りつける太陽の暑さに滲み出した玉のような汗を拭いながら、ハンマーを振るう手にさらに力を込める。 「はは・・・今日も精が出るじゃないか、ルイス」 不意に背後からかけられたその声に、俺は作業の手を止めると静かに後ろを振り向いた。 「何か用かい?グレッグ」 背後に立っていたのは、俺よりも3歳ほど年上の友人だった。 年が違うのに幼馴染というのもおかしな話だが、実際の所この小さな町では彼ほど親しい友人は数少ない。 「あんまり根詰めると日射病で倒れちまうぞ。ほら、こいつでも飲めよ」 そう言うと、グレッグは手にしていた冷たい水の入ったコップを俺の前へと差し出した。 「ああ...
  • Lunatic
    月の光がもたらす狂気。 視界に伸ばしたその腕は、漆黒の鱗をまとう。 都会。 夜も深けて、車の音がまばらに聞こえる住宅街。 会社の残業で遅くなってしまい、こんな深けた時間になってしまった。 人間の息吹を感じない、いつもと全く違う公園の遊歩道を歩いていると、 突然後ろから大きな影に襲われた。 心臓が大きく痛むような感覚と息の詰まるような驚きを覚え、 体が動くままに飛びのいた。 その姿は他の人から見れば、実に滑稽だっただろう 襲われた影のほうをよくよく見てみれば、誰もいない。 街灯の周りを蛾が飛んでいる。 時折、蛾の影が地面に映る。 深けた時間と言うことで、私の気が小さくなっているのだろう。 これが正体かと、ひと時の安堵を覚えたが、 いつも歩いている道だというのに、今までこんなことなどなかった。 影と言うものは、光源に近づけば近づくほど...
  • 森の主達2
    ジョリ・・・ 「うあっ・・・」 だが予想に反して先に顔に触れたのは冷たく伸びた爪の先ではなく、唾液に熱く湿ったドラゴンの舌だった。 ビクビクしながら薄っすらと目を開けると、ドラゴンの2つの青い眼が俺の顔を覗き込んでいる。 「まだ我を信用しきれておらぬようだな」 「だ、だってあんなことされたら・・・誰だって殺されると思うに決まってるだろ・・・」 「フン・・・勘違いしているようだから言っておくが、我らは決して邪悪な生物などではないのだぞ?」 ドラゴンは少しばかり怒っているのか、組み敷いたままの俺の体にさらにズシッと体重を預けながら先を続けた。 「空腹の時を除けば、我らは誰も殺しはせぬ。月の出ぬ晩に貴様らの村へ鹿を届けるのも、それが契約だからだ」 「じゃ、じゃあ・・・本当は俺を殺す気なんてないのか?」 息苦しげにそう聞き返すと、まるで黙れとでも言うように再び頬を思い切り舐め上...
  • 恐妻家2
    「うふふふ・・・それじゃ、遠慮なく頂くわね・・・」 俺の両手を地面に押しつけたまま、ドラゴンは腰を浮かせて体を揺らめかせた。 視界を塞ぐ巨竜の影に、否応無しに不安が膨れ上がっていく。 大きい・・・あまりに大きすぎる。 このドラゴンの巨大さに比べたら、あの雄のドラゴンでさえまるで子供のように見える。 むしろなぜこうまでサイズの違う雌雄がともに暮らしているのか疑問に思うほどだった。 ドラゴンの股間に咲いた真っ赤な花びらがグワッと花弁を広げ、恐怖に縮み上がった俺のペニスに狙いをつける。 「はあ・・・あ・・・」 息の詰まるような圧迫感が、その場を支配していた。 膣と呼ぶにはあまりに深く、また性器と呼ぶにはあまりに凶悪で、見る者を恐怖と絶望の淵に叩き込むような絶対的なドラゴンの秘所が、俺の目の前でグチュグチュと音を立てて蠢いている。 「うああ・・・や、やっぱり待って・・・」 ...
  • 毛鱗の番い2
    「何だい、この小僧は・・・?」 きっと彼は、私の悲鳴を聞いて駆けつけて来てくれたのだろう。 だが勢いで飛び出してきてしまっただけなのか、自分の何十倍も大きな老竜の姿を認めるや否やあまりの恐ろしさにその場で立ち止まってしまう。 「ク・・・クゥ・・・」 「邪魔するでないよ・・・それとも、お前もこの小娘のようになりたいのかい・・・?」 ギリリリッ・・・ 「ああ~~っ!」 私は見せしめのために突然全身を締め上げられて、老竜の思惑通りに苦痛の悲鳴を上げてしまっていた。 だが仔竜が次に見せた行動は、老竜はもとより私の予想をも裏切るものだった。 産まれたばかりで右も左もわからぬ子供がこんな光景を見せつけられれば必死で逃げ出しそうなものなのだが、彼はこともあろうに薄ら笑いを浮かべて油断していた老竜の顔に向かって突進していったのだ。 ガッ 「うぐっ!」 まだ幼いとはいえ生まれな...
  • 手乗りドラゴン
    「おーい、そろそろ帰るぞー」 遠くから、パパが僕を呼ぶ声が聞こえた。 薄っすらと紅葉を始めた赤と黄色と緑の森が、視界一杯に広がっている。 今年もこの山に遊びにくるのは最後になるだろう。 「うん、今行くー」 真っ赤に燃えながら西に傾きかけた太陽を恨めしく思いながら、僕はパパ達の元へ向かった。 その時、ふと大きな木の根元に不思議な色の石があるのを見つけた。 白と赤の斑模様で、見事なまでに真ん丸だった。 「なんだろ?これ」 10cmくらいのその石を持ち上げてみると、大きさの割りに少し軽く感じた。 綺麗な石だし、記念に持って帰るのもいいかもしれない。 僕はその石を背中に背負っていたリュックに放り込むと、大きなキャンピングカーに飛び乗った。 「ふあぁぁぁ・・・」 遊び疲れて唐突に襲ってきた眠気に目を擦りながら、車の中で石を取り出す。 軽く叩いてみると、コンコンと石にしては...
  • 秤上に揺れる哀と愛2
    ブシュゥッ! 「は、ああぁ・・・」 長時間に亘る一方的な責め句の果てに堕とされた、めくるめく絶頂の感覚。 生まれて初めて味わうその幸福なはずの瞬間がこんな怪物の手によるものだという空しい現実に、私はグッタリと力尽きた体を地面の上に横たえながらその両目に未だ枯れぬ涙を浮かべて荒い息を吐いていた。 グボッという音とともに膣から引き抜かれた竜の尾には溢れ出した大量の愛液が纏わりついていて、完膚なきまでに蹂躙された四肢にはもうほとんど力が入りそうにない。 そしてようやく残忍な雌竜の責めが終わりを迎えると、私はそのまま緩んだ意識を失ってしまっていた。 心行くまでその心身を弄ばれた娘が緊張に張り詰めていた意識の糸を断ち切ってしまうと、不意に遠く洞窟の外から複数の馬蹄の足音が微かに聞こえてくる。 「おやおや・・・こんなに簡単にやってきてくれるなんてねぇ・・・全く、馬鹿な人間達だよ・・...
  • 渇望の日々
    深い木々の生い茂る密林の洞窟であのリオレイアと不思議な一夜を過ごしてから数ヶ月・・・ 僕は毎日のように護身用の弓を携えながら、彼女のもとへと足を運び続けていた。 もちろんこれは、巨大な雌火竜に対する警戒のためではない。 季節は暑さの厳しかった温暖期から早くも夜の冷え込む寒冷期へと移り変わり、食料の乏しさから空腹で凶暴化した獣達が森のそこかしこで跋扈しているからだ。 尤もそれは当の彼女も同じであるらしく、僕も最近はポーチの中に詰め込めるだけの生肉を押し込んでいる。 そして冷たい風の吹き込む巨洞の中で蹲った彼女と出会う度、僕はその骨付き肉を彼女の口元にそっと運ぶのだ。 プシュン!・・・ズバッ! 身の丈程もある大弓から勢いよく放たれた幾本もの矢の雨が、僕の周囲に五月蠅く付き纏っていた毒針を持つ大きな羽虫を正確に捉えていた。 その激しい射撃の衝撃で、憐れな的となった獲物が緑色...
  • 湖の邂逅1
    翌日目が覚めたのは昼の少し前だった。 隣の大きな寝床で寝ていたはずのドラゴンは、いつのまにか財宝の山の頂上に寝そべっている。 すると、物音に気付いたのかドラゴンがこちらを振り向いた。 「覚悟は決まったか?」 「あんたの夫になるよ」 その言葉に、ドラゴンの顔に穏やかな笑みが浮かんだ。 俺はそれから、食料の調達方法を何とかしなければいけなくなった。 水はドラゴンが毎日あの澄んだ湖へと連れて行ってくれるため心配は要らなかったが、食べ物となると話は別だ。ドラゴンは長い間何も食べなくても平気でいられたが、俺はそうはいかない。 木の枝を加工して手作りの槍を作ると、俺は毎日狩りに出かけ、兎や鹿を狩って帰って来るようになった。 ねぐらでは組み上げた薪にドラゴンが炎を吐きつけ、焚き火を起こす。 そして、狩ってきた動物の肉を焼いて食べるのだった。 初めて...
  • 無題{改}
    太陽がようやく暑くなってくる時間だったが2頭の竜はまだ眠気眼で飛んでいた。 青い空の下、2頭の竜とまばらにある雲の影だけが下の草原に映っている。 住処から目指す湖までそこそこの時間を2頭は飛行してきた。 途中後方の竜が何度も「引き返そう」と思い立ったが前方の竜にいさめられてここまできたのだ。 真っ白な体で前を飛んでいる♀の竜の名前はエミネス。 一児の母として、常に息子に愛情を注いできた母竜である。やや勝気ではあったが、さっぱりとしていて周りとうまくやっていける性格が幸いし母子家庭ながらいままで苦労してなんとか自分たちの縄張りと住処を確保してきた。 後方を飛んでいる青空のような全身青い色で覆われた若い竜の名前はヴァイン。エミネスの一人息子である。 エミネスとは対照的におとなしい性格だがしっかりしていてエミネスの至らない部分をよくサポートしてきた。 現在160歳でまさに成...
  • 深淵の冷熱
    雲1つない快晴の空から降り注ぐ眩い陽光が、遥か彼方まで続く真っ青な海を照らし出している。 そんな優しげなそよ風に揺れる海面の数メートル下で、全身を黄緑色の鱗で覆った1匹の雄龍と、キラキラと水中に差し込む陽光を反射する紫色の雌海竜が戯れるようにして泳いでいた。 彼らはほんの数日前、大陸棚の水底にその口を開ける海中洞窟で出会った新たな番い。 水を掻き尾を靡かせて泳ぐ龍と大きな胸ビレを巧みに操ってその身を躍らせる海竜は、種族こそ違えど互いに深い理解と愛情を交わし合った仲だった。 初めて海竜と過ごした幻想的な一夜から3日後、ワシはすでに日課となりつつある妻との狩りにでかけていた。 ワシがかつて住んでいた湖とは違い、この海には実にたくさんの獲物となる魚達が住んでいる。 だがこの数日間妻とともに過ごして学んだことは、海で魚を狩ることがいかに難しく、そしてワシがいかに井の中の蛙だったか...
  • 宝玉の主2
    ―――72年前 「そっちへ行ったぞ!」 「矢は当たったか!?」 厚い木々に覆われた薄暗い森の中で、黒いドラゴンが木の陰で蹲っていた。 弩から放たれた矢を肩と背中から引き抜くと、傷口から真っ赤な鮮血が滴り落ちる。 「グググ・・・おのれ人間どもめ・・・」 突然の人間の襲撃に怒りを燃やしたドラゴンは、背後にガサッという物音を聞いて振り返った。 その瞬間、無防備だったドラゴンの背中に植物毒が塗られた矢が数本、ドスドスッという鈍い音とともに突き刺さった。 「グアアッ!」 強烈な激痛にドラゴンが仰け反る。 矢に塗られた劇毒で体が痺れ、指の先から尻尾の先までがピクピクと痙攣した。 「仕留めたぞ!」 「よし、馬で引きずっていこう」――― 「人間どもは体の自由を奪われたワシの尻尾に縄を結び付け、数頭の馬でワシを引きずっていった」 ドラゴンは依然怒りを湛えた眼で俺の顔を覗き込...
  • 分かたれた者達
    アルコールの匂いとベタつく光沢が染み込んだ、小さな樫の木のテーブル。 その前でグラスを片手に椅子に腰掛けながら、俺はカウンターの奥の壁にかけられた丸時計へと目をやった。 「あの・・・」 突如背後からかけられた、おどおどした小さな声。正に時間通りだ。 俺は顔色1つ変えずに後ろを振り向くと、そこに立っていた小柄な町長の姿に目を止めた。 「この度はありがとうございました。これが・・・謝礼の金貨50枚です」 そう言って、町長がズッシリと金貨の詰まった麻袋を俺の前に差し出す。 「ああ、悪いな。また何かあれば言ってくれ。すぐに駆けつけるよ」 「は、はい・・・」 俺が金貨の袋を受け取りながらそう言うと、町長は俺に対してある種の恐れでも抱いているのかしどろもどろに歯切れの悪い返事を返してきた。 その様子を一瞥し、ガタンという音を立てながら軋む椅子から立ち上がる。 そして呆然と俺の後ろ...
  • 我が翼を想いて3
    バサ・・・バァサ・・・バァサ・・・ やがて10分程もそうして翼を動かし続けていると、突然体が軽くなったかのような感覚が全身を駆け巡っていく。 効率のよい羽ばたき方が体でわかってきたのか、翼や筋肉の疲れ方も先程に比べると大分楽になったようだ。 「こ、こんな感じかな?」 「そうだ。だが、空を飛んでいる間中ずっと羽ばたいている必要はないぞ。風を利用して、緩やかに飛ぶのだ」 彼女はそう言うと、僕の上達振りに満足したのか相変わらずたどたどしい歩き方で僕の方へと近付いてきた。 そしておもむろに僕の肩口の毛を両手で引っ張りながら、彼女が何やらウンウンと唸り始める。 どうかしたのだろうか? 「全く・・・人間とは思ったよりも随分と不便なものなのだな・・・尾が無くては、歩きにくくて仕方がない」 だがその全く予想だにしていなかった彼女の愚痴を聞いて、つい笑いを堪えられずに噴き出してしまう。 ...
  • 生贄の少年
    「なかなかちょうどいい子がいないわね」 「そりゃそうよ。だから私達、いつもいつも10日以上も時間をかけて探してるんじゃないの」 「あ、みてあの子、命数がのこりわずかよ」 「あらほんと、それに年もいい感じだし。あの子にしましょうか」 僕は今まで「特別な事」に出会ったことがなかった。 テレビや雑誌で出てくるようなドラマティックな出来事なんて絵空事だと思ってたし、僕にとっては身の周りに起こらないことなんて、宇宙の外で起こってることと変わりなかった。 高校からの帰り道、僕はいつものように長い長い通学路を歩いていた。 なんてことはない1日。365日、金太郎飴を切ったときみたいにどこをとっても変わり映えしない1日が永遠に続いているようだ。 家まであと100メートル。交差点を曲がって車通りの多い道に出る。 その時、突然キーッという甲高い悲鳴のような音を立てて、対向車線を走っ...
  • 竜の呪い2
    スッと彼女の目が開いた。そして、視線がゆっくりとアレンの方へ移動した。 それを認めたアレンの顔に希望の色が浮かんだ。 「ミーシャ姫!」 だが、ミーシャはもう一度ゆっくり目を閉じた。そして・・・ 「うああ、ああ、ああああぁ!」 苦しそうな悲鳴とともに激しい痙攣を起こした。アレンには何が起こったのかわからなかったが、すぐに事の異常さを認めた。 彼女の手に金色の毛が生え始めたのだ。それは瞬く間に全身に及び、腹の辺りを残して彼女はフサフサの短毛に覆われた。残された腹の皮膚も、徐々に白くなり、人間の皮膚ではなくなっていく。 そして、彼女の美しかった顔は鼻を前に長く伸ばしたような形になり、口が左右に大きく裂けた。頭部には艶のあるすらりとした角が伸び、腹の下からアレンの太腿よりも太い尻尾が伸びている。 ミーシャが人外の変化を遂げている間、アレンは次第に重くなる彼女を支えきれず転倒し、彼女...
  • 湖に漂う羨望2
    だめだ、やっぱり見ちゃいられない! ズブ・・・ズブ・・・ 「あっ・・・や・・・やぁ・・・」 絶望に染まった彼女の喘ぎ声に意を決すると、僕は洞窟の入口からおじちゃんに聞こえるように大声を上げた。 「やめて!おじちゃん!」 その声にわずかながら驚いたおじちゃんが動きを止め、クルリと僕の方を振り向く。 「何だ小僧、ワシに何か文句でもあるのか?」 「か、彼女を許してあげて。僕なら何でもするから・・・さ・・・」 それを聞くと、おじちゃんが無抵抗になった彼女の顎を片手でそっと持ち上げて僕の方を向かせた。 そしてフサフサと赤毛を靡かせる彼女の顔に頬を擦りつけながら、こちらをギロッと睨みつける。 「ほう・・・お前がこの小娘の身代わりになるというのか」 勢いでおじちゃんを止めに入ったまではいいものの、はっきりと"彼女の身代わり"などと言われてしまってはついその覚悟が...
  • 翼の庇護
    どんな国でも、町でも、村であっても、これまでに1度も天災に見舞われたことがないという地域は恐らく存在しないだろう。 大風、竜巻、洪水、山火事、落雷、地震、噴火・・・ 程度の差はあれ、人々は昔からこれらの災害から身を守るために知恵を絞ってきた。 家の床を高くし、森を伐採し、堤防を作り、柱を太くし、危険な地域には住まないというように。 だが天災のなかには、どうしても人の犠牲なくしては逃れられないものがある。 そしてついに、私が幼い時から愛してやまなかったこの平和な村にも、その類稀な天災が訪れた。 村の周囲をグルリと囲む山々を包んだ、緑豊かな森。 近頃その森の中から1匹の大きなドラゴンが姿を現し、村に被害を与えているという。 まだ誰かが犠牲になったというわけではなかったが、皆が寝静まった後連日のように畑が荒らされ家畜が奪われていくというのだ。 だがある夜村長が村の力自慢達を集め...
  • 継承
    「へえ・・・ここかぁ・・・」 すでに日が暮れて暗くなった山の中に建てられていた山小屋を見ながら、僕は感嘆の溜息をついた。 切り株や小さな畑が辺りに点々と作られていて、誰かがつい最近までここで生活していたことを物語っている。 先日、僕は20歳の誕生日の贈り物に父が所有していた小高い山を譲り受けた。 ほとんど手付かずの森林の中にポツンと山小屋が一軒だけ建っていて、父は少なくとも数年の間ここで暮らしていたという。 だが、どうにかして手に入れた大きなお金で新しい家を建てるらしく、父は僕にこの山の登記所を手渡す時にこう言った。 「お前なら、きっと私より有意義な生活を送れるはずだよ」 その言葉の意味はよくわからなかったが、まだ若い僕にとっては自分の土地が手に入ったということが何とはなしに嬉しかった。 しっかりたてつけられた扉を開けて小屋の中に入ると、青と緑のチェッカー模様の布団が...
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