5スレ>>629

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5スレ>>629 - (2008/10/19 (日) 20:57:53) の1つ前との変更点

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 ヤマブキシティ。  東西南北に道路を伸ばし、シルフカンパニーの本社も置かれている、交通と経済の要所。  しかし現在は、ロケット団によって都市一つが丸ごと制圧されていた。  アキラ達は目立たないように徒歩で街に入ると、指示された集合場所である非公式ジム…格闘道場へと向かった。 『決戦、シルフカンパニー(前編)』 「それで、だ」  格闘道場の一室。  サンドバッグやらダンベルやらが置かれているこの部屋は、主にジム所属者のトレーニングに用いられている。  その部屋のど真ん中で、アキラは非常に微妙な表情をしてぼやいていた。 「俺たちって、ここに支援物資を届けにきたんだよな?」 「そだよ?……えい、やぁっ!」 「ふっ、せやっ!……どうかしたんですか、ご主人様?」  アキラの言葉に、サンドバッグを殴りながら答えるメリィ。  デルはデルで、別のサンドバッグを相手に蹴りを入れている。 「いや、どうもこうも……なんで俺たちはトレーニングなんかしてんのさ!?」  そう言うアキラも、口を動かしつつ体は正拳突きのモーションを繰り返している。  ……アキラ達が道場に到着してから三日。  彼らはジム関係者の指導の下、格闘技の鍛錬を行っていた。  何故、こういうことになったのか。  事の起こりは、ヨシタカに物資を届けた時まで遡る…… 『あ、兄さん』 『お、アキラか。話は聞いてるぞ、お疲れ様』 『いや、俺は大したことはしてないって』 『そうか……なら、もう一仕事頼んでもいいか?』 『ああ、俺にできることだったら』 『実はな……お前にも、攻略作戦を手伝ってもらいたいんだ』 『そか、了解……ってええええええ!?』 『すまんな……ちょっと想定外の事態で、ヤマブキジムの協力が得られなくなった』 『ええっ、なんでさ!?』 『それがな、協力したいのはやまやまなんだそうだが、こちらの想像以上にロケット団の監視が厳しいらしい』 『うわー……んで、戦力が足りないのか』 『そういうことだ。今、各方面から実力のあるトレーナーに協力を要請しているところだ』 『わかったよ、そういう事情なら仕方ないね』 『すまない、助かる……ところでアキラ。折角だし、ここで少し修行していったらどうだ?』 『修行?』 『ああ。突入予定日まであと5日あるし、もしかしたら格闘の技を少し教えてくれるかもしれないぞ』 『なるほど……それもいいかもしれない』 『よし、なら僕の方から空手大王に話はつけておくよ』  ……と、ヨシタカの提案に乗った所まではよかったものの。  道場主である空手大王に『鍛錬とは、トレーナーと萌えもんが共に行って初めて意味がある!』と言われ。  やる気まんまんのデルとメリィに引きずられる形で、練習に付き合うことになったのである。 「まぁまぁ、たまには体を動かすのもいいじゃないですか」 「っても、ここのトレーニングは俺みたいなのにはハードすぎ……」  と、ぼやいたその時。 「何を甘えたことをいっとるかアアアアアアアアッ!!!」 「うわぁっ!」  衝撃波が起こる程の叫び声と共に、走りこみに行っていたらしい空手大王とその萌えもんたちが部屋に帰ってきた。 「あ、大王様」 「お師匠様たちも、おかえりなさいです」 「おう、お前達か。打ち込みは終わったか?」 「私はもう少しで終わりますよっ」 「私も、あと十回程度で終わりです」 「そうか……よし。エビル、サラー。二人に稽古をつけてやれ」  大王がそういうと、活発そうなエビワラー…エビルはメリィに、寡黙なサワムラー…サラーはデルに声をかけた。 「さ、メリィちゃん。今日は昨日の続き、行こうか」 「はい、お師匠様!」 「……デル、準備は」 「できてます。今日もよろしくお願いいたします」  そんなやり取りと共に、四人は別の部屋へと移動した。 「さて、アキラ……貴様は今日のノルマは終わったか?」 「い、いや……まだあと1/3程はあr」 「遅いわああああああああっ!」 「ひぃ!」 「貴様には気合が足りん!根性が足りん!そして何よりも……速さが足りないッ!!!」  何やら大王の目が萌えt……燃えている。  そのままアキラの襟を掴んで肩に担ぐと、部屋を出た。 「今日も貴様は俺が直々に相手をしてやろう……覚悟しておけ」 「ひ……嫌だ!アレだけは嫌だああああああっ!!!」 「初日に言っただろう……俺はノンケでも構わずに喰う人間だとな」  暴れるアキラをものともせずに、大王は特別指導室(大王の自室)へアキラを連れ込んだ。  扉が閉まり、鍵をかける音がした後……一度、アキラの悲鳴が聞こえたという。 「アッー!」 『ケツ戦、格闘道場』……完 「って終わるわけあるかーっ!!!」  そう叫びながらアキラは部屋を飛び出した。  どうやら、無事に指導は終わったらしい。 「ぜー、ぜー……もう二度と来たくないな、ここは」  ぶつぶつと呟きながらアキラは廊下を歩く。  その途中、自販機で何本か栄養ドリンクを購入。  そのうちの一本を空けた時、サンドバッグを打つ鈍い音が廊下に響いていることに気がついた。 「……だれかまだ、トレーニングしてるのか?」  時刻は既に夜中といっても差し支えない時間である。  大王直々に稽古をつけてもらっていたアキラはともかく、他の人はもう休んでいる時間だろう。  気になったアキラは、音のする部屋のほうへ行ってみることにした。 (バスッ、バスッ……) 「……ここか」  幾つかある訓練場のうちの一つ。  アキラは半開きになっている扉の隙間から、中の様子を伺った。  明るくはないが真っ暗でもない部屋の端のほうで、黒髪の少年がサンドバッグに拳を打ち込んでいた。  年の頃はアキラと同じくらいだろうか。鋭い目つきでサンドバッグを見据え、黙々と正拳突きを繰り出している。  扉から見ているアキラに気づかないほど、彼は集中しているようだった。 (………声、かけづらいな……戻るか)  そうアキラが考えた時だった。 「あ、あの……」 「うわぁっ!?」 「きゃ!?」  がすどかびたーん!!! 「あ、あでで……」  後ろからかけられた声に驚いたアキラは、扉に頭をぶつけ……そのまま訓練場の床に顔面からダイブしていた。  声をかけた人物、というか萌えもん……シャワーズは、後頭部にでかい汗をはりつけて固まっていた。   「え、えーと……大丈夫、ですか?」 「あ、あんま、だいじょうぶじゃない……」 「……何やってんだ、あんた」  顔を上げると、少年は呆れた顔でアキラの方に歩いてきた。  アキラは額を擦りながら立ち上がる。 「いや、別に特に何か用事があった訳じゃ無いんだけど。こんな時間まで熱心だなと思ってさ」 「こんな時間……?」 「えと……もう、ピカチュウとロコンは寝ちゃったくらいの時間です」 「……マジか。って、なんでシャワーズが?」 「は、はい。今、フシギソウに二人を任せて、私はマスターの様子を見に……」 「そうか、わかった……気分転換のつもりだったが、随分と経ってたんだな……」 (……気分転換であそこまで集中できるのもすごいなオイ) 「あ、ところであんたはここのジムの人か?」 「え……いや、俺は外部の人間だよ。明後日のシルフ攻略戦に参加するためにここに滞在してるんだ」  アキラがそう言うと、少年はへぇ、といった反応を返した。 「あんたも参加するのか」 「も、ってことは……君も?」 「そうなるな……さて、俺はそろそろセンターに戻るかな」 「そか……俺はアキラ。当日はよろしくな」 「……クリムだ。こっちこそよろしく。行くぞ、シャワーズ」 「あ、はい。それでは失礼します」 「ん……あ、そだ。クリム!」  アキラは背を向けて外へ向かおうとする二人を呼び止めると、さっき買ったドリンクを一本放り投げる。 「!…これは?」 「気分転換っても、長いことサンドバッグ殴ってたら疲れただろ。差し入れみたいなもんだ」 「……なら、有難く貰っとくよ。さんきゅな」 「おう」  今度こそ廊下の奥に消えていった二人を見送りながら、アキラは明日をどう乗り切るかを考えていたのだった。  翌日の朝。  アキラを含む十数名のトレーナーと道場所属のメンバーは、この建物で一番広い訓練室に召集されていた。  作戦会議……というより、攻略チームのリーダーであるヨシタカからの作戦の通達のためである。  少し遅めに到着したアキラはデルとメリィを伴って、集まっている人々の後ろのほうに腰を落ち着けた。 「あ、もう殆どの方が集まっているようですね」 「もー、マスターったらこんなときに寝坊しちゃだめだよ…」 「いや、悪い悪い……それにしても、色んなトレーナーが来てるんだな」  軽く周囲を見渡すだけで、様々なトレーナーと萌えもんが視界に入ってくる。  大人しそうなリザードンを連れている、十台半ば頃に見える少年。  夫婦のように寄り添う、ニドリーナとそのトレーナー。  パートナーらしきヨノワールに小言を言われながら、適当に聞き流しているマスター。  旅人風の青年と、彼に付き添う小柄なムウマージ。  スピアーをイメージさせる、見たことのない萌えもんを連れた男性。  その隣にいるトレーナーは、胸の大きなピジョットに甘えられながら嬉しいような困ったような表情をしていた。  しかしその右手にはその微笑ましい光景にどうしようもなくそぐわないモノ――アサルトライフルが握られている。  ……アレは多分モデルガンだろう。いくら突入作戦だからって本物じゃないと思いたい。  更に視線をずらすと、頭にバタフリーを乗せ、珍しいドラゴン族であるハクリューを連れた見覚えのある眼鏡の青年。  隣にいる幼い少女……どう見ても10歳行くか行かないか程度の……は、大人っぽいドククラゲに抱かれながらこっくりこっくりと船をこいでいる。  また別のところに目を向けると、クリムとシャワーズの姿も見えた。 「そだね。それに、ここにいるってことは皆それなりの実力者ってことなんだよね」 「そうなりますね……もしかしたら、今年のリーグチャンプがこの中から出るかもしれませんね」 「俺達もそれを目指してる訳だけどな」  そんな話をしているうちに、時間になったのかヨシタカが全員の前に出て手を叩いた。  少しざわついていた室内が、それに反応してすっと静かになる。  それを確認すると、ヨシタカはゆっくりと話し始めた。 「……この度は皆さん、シルフカンパニー攻略作戦への参加を表明してくれてどうもありがとうございます。  事前に何人かには話しましたが、今回の作戦は格闘道場の皆さんと、我々有志のトレーナーのみで行います……」  作戦の手順はこうである。  まず正面入り口の見張りを排除、すぐに一階へ突入して制圧。  階段やエレベーターなどの逃げ道をなるべく塞ぎ、足止めのトレーナーを一階にまとめて配置するためだ。  その後、突撃班は上階の社長室を目指し、制圧・補助班は一階と外で待機するという流れであった。  そしてその説明の後、各員の役割表が配られた。 「えーと……私達は突撃班みたいだよ」 「妥当な線でしょうね。私達は一応、全部で10を超えるバッジを所持していますし」 「バッジの数だけで強さが決まるわけじゃ無いがな……お、見張りの排除はクリムが一人でやるのか」 「マスター、知ってる人?」 「ああ、夕べちょっとな……しかし一人はきつくないか」 「何か、策があるのかもしれませんね」  この日の会議はこれで終わり、明日作戦決行ということでアキラ達の訓練は休みとなった。  メリィとデルは少し残念そうにしていたが、アキラが涙を流して喜んでいたのは言うまでもない。  ……そして、決行当日の朝。  シルフ本社ビルの正面玄関で見張りをしている男…言うまでもなく下っ端団員である…は、欠伸をかみ殺しながら任務についていた。  彼は昨日、日付が変わるくらいの時刻まで見張りをした後、同僚に連れ込まれた居酒屋で一晩呑んでいた為寝不足&二日酔であった。 「ぐぅぉ~~~………かったりぃなぁこんちくしょう……」  彼がこんな状態でも見張りを任されているのは、そもそも見張りの必要性を彼の上司が感じていないためでもあった。  何せ、今のヤマブキシティはジムを除くまともな戦力は無く、そのジムでさえやりこめてしまっている今の状況では侵入者などあってもすぐに対処できる筈だからである。  だが、この日は少しばかり事情が違っていた。  彼がふと道の向かいを見ると、こちらに向かって歩いてくる目つきの悪い少年がいた。  しかも、どう見ても目指す先は自分の背後の自動ドア。  内心慌てつつ、彼は少年を引き止めにかかる。 「オイ!このビルは関係者以外立ち入り禁止だぞ。帰った帰った!」 「……そうかい。俺は一応こういう者なんだけど?」  と、少年が見せたのは小さなバッジ。  「R」の形に加工された金属に赤く塗装を施され、黄金色で縁取られたソレは、間違いなくロケット団関係者…同胞であることを証明する物であった。  更に言うならば、縁取りが黄金色であることは幹部クラスの人間であることを証明するものである。  そんなものが目の前に突きつけられ、彼の眠気は一瞬にして吹き飛んでしまっていた。 「し、ししし失礼いたしました!ところで、何ゆえに私服で……」 「あ、ああ……今朝までロッソ様の指示で、この町を開放しようと躍起になってるトレーナーの集まりに潜ってきたところでね」 「それはそれは、お疲れ様です……ささ、中でゆっくりとしていってください」  彼はそう言って道を開ける。  その横を少年が通りすぎ――― 「ああ。お仕事、お疲れさん……ッ!」  ゴシャッ! 「……っが、は」  延髄に上段回し蹴りを喰らい、彼の意識は闇に落ちていった。 「……目的のためとはいえ、親の名前持ち出すことになるとはな……(溜息」  少年……クリムはそうぼやくと、予め渡されていたメンバーのアドレスにメールを入れる。 『首尾良し 作戦開始』  一分後、集まったトレーナー達は正面から一斉に雪崩込んだのであった。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・あとがき  ども、約二ヶ月ぶりに話進みました曹長ですってみぎゃーっ!?(10万V+火炎放射 アキラ「あー、とりあえず俺をあんな目に遭わせてくれたってことで作者は今ケシズミになってもらってるから、今回は俺とホウが後書き担当な。     流石のメリィやデルも、アレだけはめっちゃ怒ってたし……当然、俺も怒ってるけど」 ホウ 「……大人気ない」 アキラ「お前が言うか、お前が。     話は変わるけど、今回は色々とどっかで見たことある人たちが集まってたな」 ホウ 「ん、作者の独断……事後で承諾はとってた」 アキラ「まったく……とりあえずこの場を借りて、SSスレの住民の皆様に感謝です。     特にストーム7氏とは、本格的にクロスオーバーさせて頂いて感謝感激雨霰」 ホウ 「これからも、よしなに」 アキラ「お前そういうキャラじゃねーだろ、自重しろ。     さて、次回はバリバリの戦闘編だな」 ホウ 「……バリバリバトル、いぇー」 アキラ「ムリに乗るなっての。それじゃ、また次のヤマブキ編(中編)でお会いしましょう」 ホウ 「……何時になるかはわからないけれど」  
 ヤマブキシティ。  東西南北に道路を伸ばし、シルフカンパニーの本社も置かれている、交通と経済の要所。  しかし現在は、ロケット団によって都市一つが丸ごと制圧されていた。  アキラ達は目立たないように徒歩で街に入ると、指示された集合場所である非公式ジム…格闘道場へと向かった。 『決戦、シルフカンパニー(前編)』 「それで、だ」  格闘道場の一室。  サンドバッグやらダンベルやらが置かれているこの部屋は、主にジム所属者のトレーニングに用いられている。  その部屋のど真ん中で、アキラは非常に微妙な表情をしてぼやいていた。 「俺たちって、ここに支援物資を届けにきたんだよな?」 「そだよ?……えい、やぁっ!」 「ふっ、せやっ!……どうかしたんですか、ご主人様?」  アキラの言葉に、サンドバッグを殴りながら答えるメリィ。  デルはデルで、別のサンドバッグを相手に蹴りを入れている。 「いや、どうもこうも……なんで俺たちはトレーニングなんかしてんのさ!?」  そう言うアキラも、口を動かしつつ体は正拳突きのモーションを繰り返している。  ……アキラ達が道場に到着してから三日。  彼らはジム関係者の指導の下、格闘技の鍛錬を行っていた。  何故、こういうことになったのか。  事の起こりは、ヨシタカに物資を届けた時まで遡る…… 『あ、兄さん』 『お、アキラか。話は聞いてるぞ、お疲れ様』 『いや、俺は大したことはしてないって』 『そうか……なら、もう一仕事頼んでもいいか?』 『ああ、俺にできることだったら』 『実はな……お前にも、攻略作戦を手伝ってもらいたいんだ』 『そか、了解……ってええええええ!?』 『すまんな……ちょっと想定外の事態で、ヤマブキジムの協力が得られなくなった』 『ええっ、なんでさ!?』 『それがな、協力したいのはやまやまなんだそうだが、こちらの想像以上にロケット団の監視が厳しいらしい』 『うわー……んで、戦力が足りないのか』 『そういうことだ。今、各方面から実力のあるトレーナーに協力を要請しているところだ』 『わかったよ、そういう事情なら仕方ないね』 『すまない、助かる……ところでアキラ。折角だし、ここで少し修行していったらどうだ?』 『修行?』 『ああ。突入予定日まであと5日あるし、もしかしたら格闘の技を少し教えてくれるかもしれないぞ』 『なるほど……それもいいかもしれない』 『よし、なら僕の方から空手大王に話はつけておくよ』  ……と、ヨシタカの提案に乗った所まではよかったものの。  道場主である空手大王に『鍛錬とは、トレーナーと萌えもんが共に行って初めて意味がある!』と言われ。  やる気まんまんのデルとメリィに引きずられる形で、練習に付き合うことになったのである。 「まぁまぁ、たまには体を動かすのもいいじゃないですか」 「っても、ここのトレーニングは俺みたいなのにはハードすぎ……」  と、ぼやいたその時。 「何を甘えたことをいっとるかアアアアアアアアッ!!!」 「うわぁっ!」  衝撃波が起こる程の叫び声と共に、走りこみに行っていたらしい空手大王とその萌えもんたちが部屋に帰ってきた。 「あ、大王様」 「お師匠様たちも、おかえりなさいです」 「おう、お前達か。打ち込みは終わったか?」 「私はもう少しで終わりますよっ」 「私も、あと十回程度で終わりです」 「そうか……よし。エビル、サラー。二人に稽古をつけてやれ」  大王がそういうと、活発そうなエビワラー…エビルはメリィに、寡黙なサワムラー…サラーはデルに声をかけた。 「さ、メリィちゃん。今日は昨日の続き、行こうか」 「はい、お師匠様!」 「……デル、準備は」 「できてます。今日もよろしくお願いいたします」  そんなやり取りと共に、四人は別の部屋へと移動した。 「さて、アキラ……貴様は今日のノルマは終わったか?」 「い、いや……まだあと1/3程はあr」 「遅いわああああああああっ!」 「ひぃ!」 「貴様には気合が足りん!根性が足りん!そして何よりも……速さが足りないッ!!!」  何やら大王の目が萌えt……燃えている。  そのままアキラの襟を掴んで肩に担ぐと、部屋を出た。 「今日も貴様は俺が直々に相手をしてやろう……覚悟しておけ」 「ひ……嫌だ!アレだけは嫌だああああああっ!!!」 「初日に言っただろう……俺はノンケでも構わずに喰う人間だとな」  暴れるアキラをものともせずに、大王は特別指導室(大王の自室)へアキラを連れ込んだ。  扉が閉まり、鍵をかける音がした後……一度、アキラの悲鳴が聞こえたという。 「アッー!」 『ケツ戦、格闘道場』……完 「って終わるわけあるかーっ!!!」  そう叫びながらアキラは部屋を飛び出した。  どうやら、無事に指導は終わったらしい。 「ぜー、ぜー……もう二度と来たくないな、ここは」  ぶつぶつと呟きながらアキラは廊下を歩く。  その途中、自販機で何本か栄養ドリンクを購入。  そのうちの一本を空けた時、サンドバッグを打つ鈍い音が廊下に響いていることに気がついた。 「……だれかまだ、トレーニングしてるのか?」  時刻は既に夜中といっても差し支えない時間である。  大王直々に稽古をつけてもらっていたアキラはともかく、他の人はもう休んでいる時間だろう。  気になったアキラは、音のする部屋のほうへ行ってみることにした。 (バスッ、バスッ……) 「……ここか」  幾つかある訓練場のうちの一つ。  アキラは半開きになっている扉の隙間から、中の様子を伺った。  明るくはないが真っ暗でもない部屋の端のほうで、黒髪の少年がサンドバッグに拳を打ち込んでいた。  年の頃はアキラと同じくらいだろうか。鋭い目つきでサンドバッグを見据え、黙々と正拳突きを繰り出している。  扉から見ているアキラに気づかないほど、彼は集中しているようだった。 (………声、かけづらいな……戻るか)  そうアキラが考えた時だった。 「あ、あの……」 「うわぁっ!?」 「きゃ!?」  がすどかびたーん!!! 「あ、あでで……」  後ろからかけられた声に驚いたアキラは、扉に頭をぶつけ……そのまま訓練場の床に顔面からダイブしていた。  声をかけた人物、というか萌えもん……シャワーズは、後頭部にでかい汗をはりつけて固まっていた。   「え、えーと……大丈夫、ですか?」 「あ、あんま、だいじょうぶじゃない……」 「……何やってんだ、あんた」  顔を上げると、少年は呆れた顔でアキラの方に歩いてきた。  アキラは額を擦りながら立ち上がる。 「いや、別に特に何か用事があった訳じゃ無いんだけど。こんな時間まで熱心だなと思ってさ」 「こんな時間……?」 「えと……もう、ピカチュウとロコンは寝ちゃったくらいの時間です」 「……マジか。って、なんでシャワーズが?」 「は、はい。今、フシギソウに二人を任せて、私はマスターの様子を見に……」 「そうか、わかった……気分転換のつもりだったが、随分と経ってたんだな……」 (……気分転換であそこまで集中できるのもすごいなオイ) 「あ、ところであんたはここのジムの人か?」 「え……いや、俺は外部の人間だよ。明後日のシルフ攻略戦に参加するためにここに滞在してるんだ」  アキラがそう言うと、少年はへぇ、といった反応を返した。 「あんたも参加するのか」 「も、ってことは……君も?」 「そうなるな……さて、俺はそろそろセンターに戻るかな」 「そか……俺はアキラ。当日はよろしくな」 「……クリムだ。こっちこそよろしく。行くぞ、シャワーズ」 「あ、はい。それでは失礼します」 「ん……あ、そだ。クリム!」  アキラは背を向けて外へ向かおうとする二人を呼び止めると、さっき買ったドリンクを一本放り投げる。 「!…これは?」 「気分転換っても、長いことサンドバッグ殴ってたら疲れただろ。差し入れみたいなもんだ」 「……なら、有難く貰っとくよ。さんきゅな」 「おう」  今度こそ廊下の奥に消えていった二人を見送りながら、アキラは明日をどう乗り切るかを考えていたのだった。  翌日の朝。  アキラを含む十数名のトレーナーと道場所属のメンバーは、この建物で一番広い訓練室に召集されていた。  作戦会議……というより、攻略チームのリーダーであるヨシタカからの作戦の通達のためである。  少し遅めに到着したアキラはデルとメリィを伴って、集まっている人々の後ろのほうに腰を落ち着けた。 「あ、もう殆どの方が集まっているようですね」 「もー、マスターったらこんなときに寝坊しちゃだめだよ…」 「いや、悪い悪い……それにしても、色んなトレーナーが来てるんだな」  軽く周囲を見渡すだけで、様々なトレーナーと萌えもんが視界に入ってくる。  大人しそうなリザードンを連れている、十台半ば頃に見える少年。  夫婦のように寄り添う、ニドリーナとそのトレーナー。  パートナーらしきヨノワールに小言を言われながら、適当に聞き流しているマスター。  旅人風の青年と、彼に付き添う小柄なムウマージ。  スピアーをイメージさせる、見たことのない萌えもんを連れた男性。  その隣にいるトレーナーは、胸の大きなピジョットに甘えられながら嬉しいような困ったような表情をしていた。  しかしその右手にはその微笑ましい光景にどうしようもなくそぐわないモノ――アサルトライフルが握られている。  ……アレは多分モデルガンだろう。いくら突入作戦だからって本物じゃないと思いたい。  更に視線をずらすと、頭にバタフリーを乗せ、珍しいドラゴン族であるハクリューを連れた見覚えのある眼鏡の青年。  隣にいる幼い少女……どう見ても10歳行くか行かないか程度の……は、大人っぽいドククラゲに抱かれながらこっくりこっくりと船をこいでいる。  また別のところに目を向けると、クリムとシャワーズの姿も見えた。 「そだね。それに、ここにいるってことは皆それなりの実力者ってことなんだよね」 「そうなりますね……もしかしたら、今年のリーグチャンプがこの中から出るかもしれませんね」 「俺達もそれを目指してる訳だけどな」  そんな話をしているうちに、時間になったのかヨシタカが全員の前に出て手を叩いた。  少しざわついていた室内が、それに反応してすっと静かになる。  それを確認すると、ヨシタカはゆっくりと話し始めた。 「……この度は皆さん、シルフカンパニー攻略作戦への参加を表明してくれてどうもありがとうございます。  事前に何人かには話しましたが、今回の作戦は格闘道場の皆さんと、我々有志のトレーナーのみで行います……」  作戦の手順はこうである。  まず正面入り口の見張りを排除、すぐに一階へ突入して制圧。  階段やエレベーターなどの逃げ道をなるべく塞ぎ、足止めのトレーナーを一階にまとめて配置するためだ。  その後、突撃班は上階の社長室を目指し、制圧・補助班は一階と外で待機するという流れであった。  そしてその説明の後、各員の役割表が配られた。 「えーと……私達は突撃班みたいだよ」 「妥当な線でしょうね。私達は一応、全部で10を超えるバッジを所持していますし」 「バッジの数だけで強さが決まるわけじゃ無いがな……お、見張りの排除はクリムが一人でやるのか」 「マスター、知ってる人?」 「ああ、夕べちょっとな……しかし一人はきつくないか」 「何か、策があるのかもしれませんね」  この日の会議はこれで終わり、明日作戦決行ということでアキラ達の訓練は休みとなった。  メリィとデルは少し残念そうにしていたが、アキラが涙を流して喜んでいたのは言うまでもない。  ……そして、決行当日の朝。  シルフ本社ビルの正面玄関で見張りをしている男…言うまでもなく下っ端団員である…は、欠伸をかみ殺しながら任務についていた。  彼は昨日、日付が変わるくらいの時刻まで見張りをした後、同僚に連れ込まれた居酒屋で一晩呑んでいた為寝不足&二日酔であった。 「ぐぅぉ~~~………かったりぃなぁこんちくしょう……」  彼がこんな状態でも見張りを任されているのは、そもそも見張りの必要性を彼の上司が感じていないためでもあった。  何せ、今のヤマブキシティはジムを除くまともな戦力は無く、そのジムでさえやりこめてしまっている今の状況では侵入者などあってもすぐに対処できる筈だからである。  だが、この日は少しばかり事情が違っていた。  彼がふと道の向かいを見ると、こちらに向かって歩いてくる目つきの悪い少年がいた。  しかも、どう見ても目指す先は自分の背後の自動ドア。  内心慌てつつ、彼は少年を引き止めにかかる。 「オイ!このビルは関係者以外立ち入り禁止だぞ。帰った帰った!」 「……そうかい。俺は一応こういう者なんだけど?」  と、少年が見せたのは小さなバッジ。  「R」の形に加工された金属に赤く塗装を施され、黄金色で縁取られたソレは、間違いなくロケット団関係者…同胞であることを証明する物であった。  更に言うならば、縁取りが黄金色であることは幹部クラスの人間であることを証明するものである。  そんなものが目の前に突きつけられ、彼の眠気は一瞬にして吹き飛んでしまっていた。 「し、ししし失礼いたしました!ところで、何ゆえに私服で……」 「あ、ああ……今朝までロッソ様の指示で、この町を開放しようと躍起になってるトレーナーの集まりに潜ってきたところでね」 「それはそれは、お疲れ様です……ささ、中でゆっくりとしていってください」  彼はそう言って道を開ける。  その横を少年が通りすぎ――― 「ああ。お仕事、お疲れさん……ッ!」  ゴシャッ! 「……っが、は」  延髄に上段回し蹴りを喰らい、彼の意識は闇に落ちていった。 「……目的のためとはいえ、親の名前持ち出すことになるとはな……(溜息」  少年……クリムはそうぼやくと、予め渡されていたメンバーのアドレスにメールを入れる。 『首尾良し 作戦開始』  一分後、集まったトレーナー達は正面から一斉に雪崩込んだのであった。 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ・あとがき  ども、約二ヶ月ぶりに話進みました曹長ですってみぎゃーっ!?(10万V+火炎放射 アキラ「あー、とりあえず俺をあんな目に遭わせてくれたってことで作者は今ケシズミになってもらってるから、今回は俺とホウが後書き担当な。     流石のメリィやデルも、アレだけはめっちゃ怒ってたし……当然、俺も怒ってるけど」 ホウ 「……大人気ない」 アキラ「お前が言うか、お前が。     話は変わるけど、今回は色々とどっかで見たことある人たちが集まってたな」 ホウ 「ん、作者の独断……事後で承諾はとってた」 アキラ「まったく……とりあえずこの場を借りて、SSスレの住民の皆様に感謝です。     特にストーム7氏とは、本格的にクロスオーバーさせて頂いて感謝感激雨霰」 ホウ 「これからも、よしなに」 アキラ「お前そういうキャラじゃねーだろ、自重しろ。     さて、次回はバリバリの戦闘編だな」 ホウ 「……バリバリバトル、いぇー」 アキラ「ムリに乗るなっての。それじゃ、また次のヤマブキ編(中編)でお会いしましょう」 ホウ 「……何時になるかはわからないけれど」  

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