5スレ>>503-1

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5スレ>>503-1 - (2008/07/28 (月) 19:32:19) のソース

「マスター、暇してんのん?」
「ああ、何も見たいものがないのにテレビをつける程度にはな」

トキワジムのリビング。俺が適当にニュースを眺めていると、エプロン姿のフライゴンが声をかけてきた。

「ほんなら、ちょっとホットプレート出してくれへん?」
「ん、分かった。もう生地できたのか?」
「後は混ぜるだけやな。先に温めといて」
「はいはいっと」

今日は珍しく、フライゴンが夕食を担当している。
彼女の料理の腕前は、フシギバナやシャワーズには敵わないものの、かなり上の部類に入る。
特にジョウトの郷土料理なんかはかなり得意だ。今も、お好み焼きの生地を作り終えたところだった。

「よ…っと。…やっぱ、鉄板がないとイマイチしまらへんな…ま、ええけど」
「さすがに鉄板なんて置けねぇだろ、うちには」
「そりゃそうやけどなぁ…とととっ!」

生地を焼こうとしていると、油が飛んだらしく慌てて顔を引くフライゴン。
…その姿を見ていると、ふと疑問がわきあがった。

「なぁ、フライゴン」
「ん、どしたん?」
「そのサングラス…いや、メガネか?外したとこ見たことねーんだけど」
「え?」

そう。料理の時も、バトル中も、寝ている時も。コイツはあの赤いメガネを外していない。
確か、シャワーズの証言だと入浴中も一度も外していないらしい。

「外したところとか見たいんだけど・・・ダメか?」
「うー…悪いけど、それはちょっと勘弁してほしいなぁ…」
「そっか…なら、いいや」

…ホントはよくはない。だから俺は、フライゴンが布巾を取るためにこちらに背中を向けた瞬間に、
その後ろに立っていた。

「ちょっと、何しとん、マスター…って、ひゃあっ!?」
「なんだ、壁に押し付けたくらいで大げさな」
「だ、だって…」
「…フライゴン…」
「ぅ、あ……」

壁に手をついて逃げ場をなくし、体ごとこちらを向かせて顔を近づける。
フライゴンは顔を真っ赤にして首をあらぬ方向へ動かしていたが…やがて、抵抗をやめて目を閉じた。
…チョロいな。

「それっ」
「あっ!」

目をつぶっているフライゴンから、メガネ(?)を奪うのは至極簡単だった。
即座に体を引いて、数歩分の距離を取る。

「…ふふ、まだまだ甘いな、フライゴン。…メガネないと、なかなか新鮮だな」

普段半端に隠れていた目があらわになると、今までなかった可愛らしさが見えた気がした。
そして、数秒間茫然としていたフライゴンが我に返り、怒って抗議してくる。

「もぉ、何するんですかぁ、御主人様!」
「………ゑ?」

…何いまの。なんか、ジョウト弁じゃない…ってか、それ以前になんかおかしいぞ!?
フライゴンがそのイメージに似合わないぱたぱたという足音を立てて、こちらに走ってくる。

「かえしてくださいよぅ!……うひゃあっ!?」
「うわぉっ!?」

な、何もない所で転びやがった!?
顔面を強打したらしく、両手をついて床から体を離すが、震えて立ち上がらない。

「だ、大丈夫か……?」
「大丈夫、です…い、いたくないもん…ぅ…」

…なんだこのギャップ。…だがそれがいい、とか以前の問題じゃないか!?
なんか可愛らしいけど、でも危ないぞこれ!?

「…………えい」
「あっ…」

とりあえず、顔をあげたフライゴンの顔に、さっきから左手に持っていたメガネを返す。

「……マスター、何すんの…はひゃっ!……う、うぅ、酷いですよぉ…」
「お、おぉー…」

面白い…。
メガネを取り上げ、ポケットにしまって逃げ回る。

「ほら、返してほしかったら捕まえてみな」
「あぅぅ、待って下さい~」





「う…ひっく…ぐす…」
(…やりすぎたな…)

あれからしばらく逃げ回りながらからかって楽しんでいたのだが、
最終的にフライゴンは(メガネなしのまま)うずくまって泣き出してしまった。

そっと近寄り、メガネをフライゴンの顔に返した。

「うぅ…ひぅ…うぇえ…」
「…フライゴン…」

怒って殴りかかってくるかとも思ったが、元に戻っても泣いたまま。

「もう…ぅ…あんなとこ見られたら…はぅ……生きていけへん…ぐすっ…」
「…悪かったよ、フライゴン」

とりあえず俺も膝をつき、抱き締めて軽く背中をぽんぽんと叩いてやる。

「別に、メガネ外したら性格が変わってドジになるくらい気にしないって。
 むしろあっちも可愛くていいじゃないか」
「うぅ…うぇぇぇぇぇ…」
「よしよし…」

泣きながらしがみついてくるフライゴンを受け止める。
…思えば、コイツの泣いてる所を見るのは初めてかもしれないな。

「よし…じゃ、機嫌なおして、夕飯の用意しようぜ」
「ん…せやな」

涙をぬぐって立ち上がると、フライゴンは自分でメガネを押し上げた。

「行きましょう、御主人様♪」
「あ、あぁ…」

ホント、別人だよな…

俺はフライゴンに引っ張られ、リビングへ連れられて行った。


















「ほな、マスター。女を泣かせた責任、とってもらおか?」
「ちょっと待て!何だよそれ、聞いてないぞ!?」
「(すちゃ)…ご主人様の…いじわるぅ…ぐすっ」
「あー、もぉ、分かった!何でもしてやるからそれはやめろ、卑怯だ!」
「(かちゃ)分かればよろしい。ほな、明日は朝から付き合ってもらうで?」
「…全く…まずいものを呼び起こした気がするぜ…」
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