確かに、オレは筋肉質な、いかにも"男"な体つきじゃない。 綺麗な顔だとか 高い声だとか そう言われるのは、最早日常茶飯事になりかけてる だからって…"コレ"は無いと思わないか?――――――― とりあえず、今オレがこの状況に陥るまでの話をしよう、それが順序ってもんだよな。 事の起こりは、今朝だ。 オレ達、野生の萌えもんだって、恐らくはニンゲンと大差ない生活を送っている。 朝起きて、身支度を整えて、食事をとって、その日一日をはじめる。 そう、そんなごくありふれた一日が、今日も始まる―――はずだったんだがな…。 ポッポのさえずりで目が覚めた。コレは野生の萌えもん達にはごくありふれた事だ。 ニンゲンが目覚まし時計…?で朝起きるのと似たような。 とりあえず手櫛で、この種ならばみな平等に長い赤髪を整える。半ば寝ぼけたままシャツとズボンを身につけて―― ――――――と、こんな話はどうでもいいな。 問題は食事の時だ。オレの所は一家揃って食事をするのが普通なんだが…… 「……時に、息子よ。」 正直なところ、この問いかけには驚いたんだ。 普段おどけた(と言うか、フザケまくっている)親父が、こんなな真剣な顔で、重々しく言葉を発した事はなかったからな。 当然、こっちとしても、ちょっと身構えて返答したわけだ。 「ん、なんだ親父、急に改まって。」 親父は、一息つくとこうのたまいやがった。 「前々から思ってた事なんだがな?お前……女装したら似合うんじゃないか?」 丁度、口に入れたオボンの実は、勢いよく口を飛び出し、親父の顔に直撃した。 まじめなことを言うのかと思えばコレだから困る…… 「な、何言ってんだ!仮にもオレは男d「あらあらあら、面白そうじゃない?」 このタイミングで話を遮るとはやるな母さん…オレも感心してる場合じゃないんだが。 母の絶妙なアシストを受けて、親父が続ける。 「ほら、お前、女っぽいって良く言われてるだろ?」 反論出来ないが親父が息子に、若干鼻の下伸ばしつつ、言う言葉じゃないと思うんだが。 「と言うわけでだ、もう女の子で良いじゃな「よくねぇよ!」 「そんな可愛い声で叫ぶなよMy daughter」 「もう既に娘扱い!?」 いかん、親父が暴走しかけてる…この親…早くなんとかしないと…。 ……とにかく落ち着け、KOOLになるんだ。…よし、 「あのな、いくらオレが女っぽいからってそれは無いだろ?なぁ?」 この「なぁ?」が間違いだったのか、あるいは地雷だったのか。いずれにせよこの一言で俺の運命は決定的なものになったらしい。 振られた相手、今まで話の蚊帳の外に居た妹は、口を開くなりこういった。 「そうだなぁ、私、お姉ちゃんがほしかったんだよね!」 ――――――。 ――――。 ――。 うん、なんだ、その……。何、オレそんなに男じゃないほうが良かったの? 「せめてフォローしてくれ…。」 「ぇ~?だってさぁ、お兄ちゃんとっても可愛いんだよ?勿体無いと思わない?自分で」 「思いません。」 「そんな事無いよ!森のみんなもすごく可愛いって言ってるもん!」 あぁ、そんなこと聞きたくない! 「えっと、ほら、お兄ちゃんとよく一緒に遊んでるガーディ君いるじゃない? お兄ちゃんと別れた後、『アイツが女だったらなぁ……』って言ってるの聞いたこと有るよ!」 アイツ、妙に目つきがエロイと思ったが何考えてたんだ!? 親父、ほほぅ とか言ってるんじゃない!息子相手に鼻の下を伸ばすな! 「流石だな息子よ。」 それは息子に対する誉め言葉じゃないよな? 「と言うわけだ、おとなしく女装しろ♪コレは家長命令だかr―――――― とりあえず、渾身の一撃をお見舞いした。というか、そうでもしないと女装することは目に見えていた、が…。 ま、時既に遅しとはこのことか。 「ちょ、何してんだ、おい!」 見ているだけと思ったが、妹が腕をがっちりホールドした。 こいつ見かけによらず力が有るんだよな…………なんて冷静な判断をしている場合か、オレ。 「ほらー、お父さんがよく言ってるじゃないですか~」 「…あ?」 「『家 長 命 令 は 絶 対 だ』って♪」 「何でそんなに楽しそうなんだ!離せ!ハナセ!☆HA☆NA☆SE☆!!!!!」 「ふ、抵抗しても無駄だぞ、息子よ。」 不敵な笑みを浮かべるな、…ってか復帰早いな親父。 じゃ無くて早く脱出しねぇと… 「いいいいくら息子が似てるからってこれはねぇだろ!?なあ、か……」 ――――――あさん、と言いかけて口が止まった。 いや、母親がそれはそれは見た事もないような笑みをして こちらに迫ってるところだったからな。 目の前に来るなり、 母さんは後ろに回していた手を横に広げた、手に持った物を俺に見せるためだろう。 凝視。 右手、妹の普段着……ちなみにワンピース。 左手―――――――――――――――うん、俺は何も見なかった。シリコンパットなんて物は俺の目に入らなかった。 「さぁ、お着替えしましょうね~?」 「母さん?!なぁ、冗談だよな!?冗談なんだよなぁ!?ちょ、や、め、t…」 あぁ、抵抗はしたさ、妹を蹴り、親父に火炎放射を浴びせ掛け、母親の服を破って見たが、 親二人+妹にかかれば息子の一人なんて、割と簡単になんとかなるらしい。 というか、母さん。何処に服とパット隠しもってたんすか、それぞれ累計10枚はダメにと思うんだが・・・。 「うぅ…。」 「やっぱりー、似合ってるヨ、お兄ちゃん♪泣いてる顔もかわいいね~…」 あぁ、此処はもうありがとうと言うべきなのか?嬉しさ?ナニソレ、オイシイノ? 「流石は、我が息子だな!」 まず聞きたいんだが、このエロ男はそもそもオレのこと息子として見てんのか? 「うん、いい感じねぇ~……全く違和感が無いもの」 母さん、嬉しくない。嬉しく無いぞそれは…… ……仮にも息子が女装してるんだ、ニコニコしながらこっちを見ないでくれ……。 「…(グスッ)……お前ら……絶対、絶対に許さん……。」 「ひどいなぁ、お兄ちゃん。私達ろこんの中でも可愛いほうなんだし、絶対に女の子で居た方が良いよ!」 「そうそう、この娘の言う通りよ。」 「ふ、やはり言い出して正解だったな!」 さっぱり嬉しくない誉め言葉を、オレの隣で3人が言い合ってる。 オレは「とうとう女装させられた」と言う事実と、 そもそもの問題として妹すら振り切れなかったという悔しさで、ただ泣くしかなかった。 これで、―――3人が言うには完璧な女の子の―――少年ロコンは誕生したわけだ。 ―――――――――――――――――――――――――― 「ふぅ…。」 ため息を付いたところでどうにもならんが、つかずにいられるほうがおかしいんじゃないか? 「さて、どうすっかな……。」 森のはずれの木陰にいるが、此処じゃ何時ニンゲンに捕まるかわからん。 ……かといって、森の中に戻ったら… ……バレるかもしれんし……。 あぁ、チクショウ…………ふざけ半分ですまないだろ…あんなルールしきやがって……。 とにかく、ヒト…あと萌えもんの目につかないところを探そう。 あと、あと半日でこんな格好ともおさらば出来るはずだ――――――――。 ********後書き*********** とりあえずマズ一言。"事"が始まる前で既に前後編に分けなきゃいけなくなったと言うこの事実。 ムっちゃ長いですがご了承ください…。 此処まで書きましたが、私が受信した第1電波の内容はコレで半分です。 めちゃくちゃ長い上に読み飽きた?ごめんなさい…。 後半も書きあがったらそちらも上げますので、読む気力が有るならお付き合いくださいませ。 では、超長文&超駄文で失礼しました。書く作業に戻りますね。 …え、もう書くな?おk、とにかくコレを完結させて来きます、話はそれから―――― I.D.Y.