アルティス語(ロメリア語、Altish Romerian)はインド・ヨーロッパ語族の北スラヴ=エシェルトボルン語派に属し、アルティス帝国コーカサス地方を発祥とする言語。発音、文法ともに欧州のどの言語にも似つかない。
目次
文法
アルティス語は言語類型論的には屈折語と膠着語のハイブリッドである。但し屈折語的な性格が見られるのは名詞の格変化と動詞活用のみであり、動詞接尾辞の追加は完全に膠着語的である。語順はSVOとSOVが可能であり、修飾語はいくつかの例外を除いて基本的に被修飾語の後ろに置かれる。
名詞は7つの格を持ち、動詞は活用語尾によって時制(テンス)と相(アスペクト)、法(モダリティ)を表し、態(ヴォイス)は動詞接尾辞によって表す。日本語において活用語であった形容詞は活用を失い、コピュラ動詞aneによって時制などを表すようになった。名詞の文法情報を格変化と後置詞の2つによって表す点、形容詞が変化しない点などはアジア系のアルタイ諸語の文法に類似している。
名詞関連
名詞の格変化
名詞(主格語尾により4つの変化形を持つ)および代名詞(人および無生物に分かれる)は七つの格(主格、対格、生格、与格、向格、奪格、具格)を持つ。
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第1型 |
第2型 |
第3型 |
第4型 |
|
アルティス |
真珠 |
紅玉 |
操舵士 |
主格 |
Altis |
lamh |
duc |
saidiac |
対格 |
Altise |
lame |
dul |
saidél |
生格 |
Leties |
lamr |
dur |
saidér |
与格 |
Alti |
lami |
duri |
saidéri |
向格 |
Alétis |
lamé |
dugh |
saidégh |
奪格 |
Altes |
lamhar |
dusar |
saidiasar |
具格 |
Alty |
lamhle |
dule |
saidéle |
語末のc, e, 子音の後ろのrは発音されない。よって、第3,4型の主格語尾-c、第2型の生格語尾-rは発音されず、具格語尾のleの発音は[l]である。
それぞれの格は次のような意味を持つ。
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意味 |
形態 |
語源 |
主格 |
主文の主語 |
-h, -c |
が |
対格 |
直接目的格 |
-e, -l |
を |
生格 |
(1)所有格、(2)関係節の主語 |
-r |
の |
与格 |
間接目的格 |
-i, -ri |
に |
向格 |
位置 |
-ré, -é, -gh |
へ |
奪格 |
(1)時間的出発点、(2)空間的出発点、(3)順序の起点 |
-har, -sar |
から |
具格 |
(1)手段、(2)道具、(3)コピュラ文の補語、(4)位置 |
-le |
で |
それぞれの格が持つ意味は起源となった現代日本語の格が持つ意味と大体において一致するが、いくつか注意すべき点がある。
日本語では関係節の主語を専らガ格で表すが、アルティス語では(主格ではなく)生格を用いる。
De samade sote loma far sori sa? (直訳:私のここに同席することをあなたが構わないか?)
日本語のニ格は間接目的語と位置の二つの意味を持つが、アルティス語ではそれぞれ与格と向格によって表される。
また、向格はヘ格に起源を持つがアルティス語ではその意味を失っており、<方向>は名詞sath(語源は「方(かた)」)を用いた"saté + (生格)"という統語的構造によって示される。ここでsatéはsathの向格である。
位置を表す格には向格と具格があるが、この使い分けはニ格とデ格の使い分けと一致すると考えてよい。
具格にはコピュラ文の補語を示す役割があるが、これは「AはBだ」という文がアルティス語においては"A(主格) ane B(具格)"のように表現されるということである。日本語「AがBである」のような構造に現れるデ格の用法に起源を持つと考えられる。
第1型 語源がV1CV2(V1=V2)の構造をもつ名詞 Altis(アルティス)、 Alta(アルティス文字)、 azz(敵)
第2型 語幹が子音でおわる名詞の大部分(第1型以外) éboth(微笑)、 ïomh(恋人)、 laimh(国民)
第3型 語幹が母音もしくは半母音でおわる名詞の大部分(第4型以外) greuc(星)、 goc(時空)、 nuïc(耳)
第4型 動詞語幹が語尾-iacによって派生した名詞 izomiac(挑戦者)、 rinusiac(記事)、 useriac(移民)
第1型に属する単語のうち、現代日本語において語源が「ん」で終わる名詞(lorann<とうさん, sarann<かあさん, aronn<あそん 等)は例外的に主格語尾-nを持つが、このような名詞も主格以外においては第1型と同じ格語尾をとるようである。
代名詞の格変化
日本語と異なり、アルティス語は有情物を示す代名詞が発達している。代名詞のうち有情物を示すものは数と人称によって分かれ、無情物は数と近称 / 中称 / 遠称によって分かれる。代名詞は名詞と同じように七つの格に変化する。
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有情物 |
単数 |
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有情物 |
複数 |
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無情物 |
単数 |
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一人称 |
二人称 |
三人称 |
一人称 |
二人称 |
三人称 |
近称 |
中称 |
遠称 |
(語源) |
わ |
な |
か |
わ・ら |
な・ら |
か・ら |
こ |
そ |
あ |
主格 |
fe |
de |
se |
farh |
darh |
cnac |
so |
re |
ai |
対格 |
fal |
dal |
sal |
fare |
dare |
cnal |
sol |
rol |
al |
生格 |
far |
dar |
sar |
farer |
darer |
cnar |
sor |
ror |
ar |
与格 |
feri |
deri |
seri |
fari |
dari |
cnari |
sori |
rori |
ari |
向格 |
feré |
deré |
seré |
faré |
daré |
cnaré |
soré |
roré |
aré |
奪格 |
fasar |
dasar |
sasar |
farhar |
darhar |
cnasar |
sosar |
rosar |
asar |
具格 |
fale |
dale |
sale |
farle |
darle |
cnal |
sole |
role |
ale |
後置詞
日本語の助詞のうち、格変化語尾にならなかったものは後置詞として残った。
a:主題化の後置詞。日本語の「は」に当たる。主語となる代名詞と結合する(例:Fe+a→F'a)。
F'a usere.(私は移民します。)
Dar saurh a ? (あなたの家族は?)
F'a Alty. (私はアルティス人です。)
éü:呼びかけの後置詞。主格の後に来る。日本語の「よ」に当たる。
Gereulach éü!(星たちよ!)
sa:疑問の後置詞。日本語の「か」に当たる。
Facle sa?(分かりますか?)
De samade sote loma far sori sa?(同席してもいいですか?)
le, lo:並列の後置詞。日本語の「と」に当たる。
te:引用の後置詞。日本語の「と」に当たる。
Gobé fal Lamhiri te!(ラフィールと呼ぶがいい!)
動詞関連
動詞語尾
アルティス語の動詞語尾には三つのムード(直接法、仮定法、命令法)、分詞、四つのアスペクト(不定相、完了相、進行相、未然相)に応じて以下のように分類される。
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直説法 |
仮定法 |
命令法 |
分詞 |
不定相 |
-e |
-éme |
-é(no) |
-a |
完了相 |
-le |
-lar |
― |
-la |
進行相 |
-lér |
-lérm |
― |
-léra |
未然相 |
-to |
-dar |
― |
-naur |
( )内は母音のあとの場合。
完了相は過去時制をかねる。
De dorle soci Kréïchberk zaine. (あなたはクライスベルクから乗った、だよね?)
アルティス語の仮定法はヨーロッパ語文法における仮定法と異なり、実現可能性に関して中立的であり、単純に条件を示す。
F'ane réfaiseni, saurh loméme. (家族が一緒なら、私は幸せだ。)
動詞接尾辞
動詞接尾辞としては、使役の-as-、受動の-ar-、否定の-ad-が挙げられる。動詞接尾辞は動詞語幹と活用語尾の間に挿入され、その順序も-as-/-ar-/-ad-と決まっている。すなわち、sac-e(「書く」を表す動詞語幹+直説法現在の活用語尾)に対して、sac-as-ar-e(書かさせる), sac-ar-ad-e(書かれない), sac-as-ad-e(書かせない), sac-as-ar-ad-e(書かせられない)となる。訳語を見れば分かるように、この順序は日本語から引き継がれている。
造語法
接尾辞の中には動詞語幹について名詞化するもの、名詞語幹について意味を拡張するものなどが存在する。語幹末が子音であるか母音であるかによって異形態を持つものがあるが、以下においてはスラッシュの前が子音の後に現れる異形態であり、スラッシュの後は母音の後に現れる異形態である。
- iac/-gac:動詞語幹について「~する物、者」という名詞を作る。
usere(移る) + iac > useriac(移民)
cilug-(皇位を継承する) + iac > cilugiac(皇太子、皇太女)
belysé(官制する) + gac > belységac(管制官)
- hoth/-coth:動詞語幹について「~すること」という抽象名詞を作る。hが前に来る子音によっては同化現象を起こすのは音韻規則に従う。動詞が主語や目的語などの要素を持つこともあり、その場合には単なる語の派生ではなく、関係節を形成する文法的役割を果たす。
cair-(入る) + hoth > cairhoth(入学)
doz-(望む) + hoth > dozzoth(望み、願望)
cime-(秘密にする) + coth > cimecoth(秘密)
sa-(買う) + coth > sacoth(買い物、ショッピング)
- ragh:動詞語幹について「~する様子、~する機能」という抽象名詞を作る。守備範囲が広い。
mén-(船) + ragh > ménragh(平面宇宙航行機能)
- lach:名詞語幹について「~の集団」という名詞を作る。
gosuce-(家臣) + lach > gosucelach(家臣団)
方言
- アルティス帝国中央州で話されているメルシュマン方言が標準語として認知されている。中世以来、広大な領土と民族を保持しているため、多くの方言を持つ。
主な方言
- メルシュマン方言
- コーカサス方言
- サル・ギュネイシュ方言
- プラトリア方言
- アルベリオン方言
語彙
よく使われる語彙
- 日本:Jupone(ヤポーン)・日本人、日本の:Juponesk(ヤポーネスク)
- ⇒大日本帝国:Glos Juponesk Impellrent(グロス ヤポーネスク インペレント)
- アメリカ:Ameriko(アメリコ)・アメリカ人、アメリカの:Amerisko(アメリスコ)
- ⇒アメリカ合衆国:Uni Tich Amerisko(ユニ ティッチ アメリスコ)
- スティリア:Stiland(スティラーント)
- グリーンランド:Vaiseland(ヴァイスラーント、氷:Vaic ヴァイス 生格・Vaise)
- アイスランド:Noldland(ノルドラーント、ノルマン人の土地という意味)
- ウェスペルタティア:Nova Transland(ノヴァ・トランスラント)
- 中国:Chine(秦が由来)
- ⇒中華人民共和国 Satiud le Stacce Chine:(セイタイド ラ スタッセ シン)
- 皇帝:Impellratle(インペラートル)⇒帝国:Impellrent(インペレント)
- 神聖アルティス皇帝:Czar(ツァーリ・ツァー)
- 国王:Krawnerle(クラウナール)⇒王国:Krawnerlitich(クラウニティク)
- 首相:Dgniele-tia(ドグニールティア、大臣の長という古代ロメリア語が語源)
- 条約:Akalcer(アカルサー)
- 協定:Shaghfont(シャグフォント)
- 覚書:Anqlire(アンクリアー)
最終更新:2009年02月19日 23:56