10年後の謎肉
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:33:25.44 ID:LMOS3uU3
PresentAgeから10数年、BSQとELGがダイアロスの支配権とノアストーンを賭け、
互いの血を血で洗う時代が到来した。
弱き者は闇に飲まれ、強き者が自由を謳歌するこの時代は、後にWarAgeと呼ばれる事となる。
これは、そんな時代に闇の世界へ足を踏み入れた1人のニューターの物語・・・・・・・・。
~in ヌブールの村~
「あ~あ、今日も良い仕事したぜ」
一仕事終えた俺は、体を休めるべく自分の家へと向かっていた。
基本的に尾行等に対して注意は怠らないが、襲撃に対する注意はしていない。
このヌブールの村は、例外的に全ての人間が争う事を禁止されている中立地帯であり、
ココでは双方の軍属も、中立も関係なく生活せねばならない。
なので、尾行等といった間接的な事は出来ても、襲撃といった直接的な行動は起こせないのである。
暫く鬱蒼と生えた獣道を進むと、少し開けた場所に出た。
ココに、俺の家がある。
周りにも幾つか家があるのだが、そこはもう長い間使われていないので、全て廃墟になっている。
廃墟となった家々を見ると、そこの主達の事が思い浮かぶ。
- まぁ、ロクでも無い奴等が多く、こうなるのも当然だったのだろう。
そう、全ては数年前、エルモニー人権宣言がBSQ・ELG両国によりダイアロス全土に行われた時まで遡る。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:34:11.86 ID:LMOS3uU3
~数年前 エルモニー人権宣言後~
ダイアロス全土のエルモニー処分場・並びにその関連施設に、
自由の身となったエルモニー達が大量に押し寄せていた。
未だに囚われ続けている同族を助ける為でもあったが、更に別の目的もあった。
処分場での記録、である。
誰というエルモニーが誰によって引き取られた、又は引き取り先から連れ戻され処分された、
どの職員が処分を実行したか、引き取り先や職員の住所・氏名など等、
事細かに記録されている謄本が目的であった。
法律は、遡及効を有しないのが当然の事であるが、当然の事ながらエルモニー達の気が収まる筈が無かった。
(注:【遡及効】とは、制定される前まで遡ってその制定内容を発揮する効果、という意味。
この場合で言えば、エルモニー人権宣言が制定される前に、
エルモニー達を虐待していた人や処分場職員は処罰の対象にならないという事)
手始めに、エルモニー処分場の職員が一人行方不明になり、数日後に死体で発見された。
そして次々と職員達が、変死体で発見され続けた。
誰の犯行かは、明らかである。 そしてその行動は、次第にエスカレートしていった。
ダイアロス各地に居る、エルモニーを引き取った者達も、死体で発見され続けた。
これが俗に言う、エルモニー人権事変である。
そして、エルモニー達の魔手は、ついに非武装地帯・ヌブールの村にも及んだのである。
エルモニー人権宣言後も、ヌブールの村では未だに引き取られたエルモニー達は自由では無かった。
理由としては、
ELG・BSQに属さない地域のため、宣言を知らせる者が居なかった
処分場職員が殆ど抹殺された為、連絡が届いていない
エルモニー処分場関連施設が存在しなかった場所の為
戦略的に、価値が低い場所の為
宣言後、引き取り主がエルモニーに情報を隠し続け、外に出さなかった 等が挙げられる。
しかし、処分場の記録を手に入れたエルモニー達が来るまでに時間は掛からなかった。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:35:39.34 ID:LMOS3uU3
~数年前(人権宣言後) in ヌブールの村~
「何をする、離せ!! ええい離さんか!!」
俺が家前の広場に来ると、隣の家のサディスト親父がエルモニー達に引きずられて居た。
奴の家から、よくもまぁココまで虐待できるもんだと思う位、
みずぼらしくボロボロになったもに汚ともに子が保護されていた。
エルモニー達は、そのままサディスト親父を村の外、アルビーズの森へと引きずって行く。
そう、ここヌブールの村では、人を傷つける行為は御法度なのだ。
「貴様ら、こんな事をして許されると思っているのか!!!」
叫ぶ親父に対し、エルモニー達を率いてきた隊長らしいもに汚が言った。
「意味も無く人を傷つける事はしないもに。 お前は、これから相応の罰を受けるだけもに」
そして、そのまま親父とエルモニー達はアルビーズの森へと消えていった。
と、俺の家の向かい側の家から、その家の主人ともに子が出てきた。
そこの主人は重度のモニコンで、俺が奴の家に行くと
もに子に腰を振ってない時は無いという位のツワモノであった。
「お兄ちゃん、私お兄ちゃんと一緒にアルビーズの森を散歩したいもにぃ」
もに子が主人に媚びる。
主人はこの一言で股間にテントを張り、もに子を抱きしめようとするがもに子は上手く避けて言った。
「人目があるから、ここはダメもにぃ。 前みたく、森の人気の無い所なら・・・・・・恥ずかしいもにぃ」
- 時々、アルビーズの森や村の外れを散歩してた時に聞こえた喘ぎ声は、こいつらだったのか。
気になっていた事が晴れてスッキリした俺をよそに、ルンルン気分で村の外へと向かう主人ともに子。
「な なにをする きさまらーー!」 「ずっと気持ち悪かったもに。 死ね、この早漏短小包茎!」
モニコン主人の断末魔と、もに子の声が聞こえてきた。 合掌。
俺が自分の家のドアを開けて中に入ろうとすると、さっきの隊長らしいもに汚が寄って来て、言った。
「貴方は、そこの家の主人ですね? 貴方は、人権宣言の1年前に、
一人のエルモニー女性を引き取っていらっしゃいますね。
私達は、引き取られたエルモニー達を保護しに参りました。
ですので、失礼かとは存じますがその女性に会わせて頂きます」
「ククッ、臆面も無くそんな事を言えるたぁ、本当に失礼な奴だな。
拒否してもさっきの奴等みたく強引に来るんだろ?」
皮肉を言ってやると、もに汚は少しやりにくそうな顔をしたが、俺がドアを開けてやると一緒に入ってきた。
俺は、その時、コイツが一瞬だけ 「お前もさっきの奴らと同じくぶち殺してやるもに」
と言いたげな歪んだ笑みを浮かべたのを見落とさなかった。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:36:38.93 ID:LMOS3uU3
~数年前(人権宣言後) in 俺の家~
玄関から、そのままリビングへと向かう。 隊長もに汚も付いて来ているようだ。
さて、どうやってこの糞ウザイもに汚を料理してやろうか・・・・・と考えていると、台所から人影が出てきた。
「マスター、お帰りなさいませ」
整った顔立ちに、長い髪を下ろし、後ろで結っただけの地味な髪型、
しっかりとした作りのクロースローブを見につけている女性のエルモニーだった。
コイツが、俺の引き取った奴だ。 コイツとの出会いは、隊長もに汚の言った通り人権宣言1年前の処分場だ。
当時の俺は余り余裕のある生活ではなく、
まともなハウスキーパーやメイドといった家政婦の類は雇えるものではなかった。
しかし、生来の面倒臭がりの性格が影響してか(仕事や趣味に関しては正反対だがな)、
家事や計画的な金の使用という事が出来なかった。
そこで、人件費の掛からない家政婦を手に入れるべく、処分場を訪れたのだった。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:38:01.89 ID:LMOS3uU3
~人権宣言1年前 in エルモニー処分場~
俺が鑑賞用通路に入ると、牢屋の中に入れられているエルモニー達が一斉に騒ぎ出した。
泣き喚き、少しでも俺に気に入られようとするもに汚やもに子達。
俺は、そんな奴等には目もくれない。
恐怖で濁った目は、その恐怖が取り去られた時、必ず相手に牙を剥くからだ。
気持ちの良い青年と言われている、胡散臭い野郎が絶対的軍事力を誇るBSQを去った事は、
今後必ずBSQ・・・・いや、ダイアロス全土を揺るがす何かが起こる事を予想させる。
そんな大事な時に、俺の足元を掬う様な邪魔な奴を手元に置く気は毛頭ない。
俺の気を引こうとするエルモニー達を無視し、
檻の中を素早く見ながら通路を奥へ進んでいくと、一つの檻の中に座ったまま目を瞑っているもに子を発見した。
「おい、そこの騒いでないお前だ。 コッチを向いてから立ち、俺の目を見ろ」
俺がそいつの牢屋の前で止まって言うと、
同じ牢屋の中に居るもに汚が俺の視線を遮る形で鉄格子に掴まりながら言った。
「お兄ちゃん、あんな全く喋らない無愛想な奴より、口の達者な僕の方がお得もに。
それに、お兄ちゃんなら、、、、僕の初めてを捧げてもいいもにぃ・・・・・」
馬鹿げた事を言っているもに汚に鉄格子越しにブラインドジャブをかまして黙らせた後、こう言った。
「俺は同じ事は2度と言わない。 言った通りにしろ」
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:38:39.49 ID:LMOS3uU3
素直にこちらを向いてから立ち、俺の目を見るもに子。 まずは小手調べだ。 言った事を忠実に記憶し、守るか否か。
次に、目を見て見詰め合う。 恐怖・焦りに支配された目でもなく、諦め・狂気を含んだ目でもない。
ましてや、これをチャンスと考え、期待する様なそぶりも見せなかった。 静かだが力強い瞳だった。
最後に、体つきを見る。 非力そうだが、やってやれない事は無いだろうといった体格・体つきだ。
そして、もう一度目を見る。 どうやら、コイツはずっと俺の目を見ていたようだ。
「・・・・・合格だ。 今後、お前に俺の身の回りの世話をして貰う。 さっさとこっちに来い」
俺がそう言うと、このもに子は意外な事を言った。
「拒否・・・・・したら?」
「このままココで果てるか、変態に引き取られて果てるか、だ。
だが、お前に選択権は無い。 今からお前は俺の物だからな」
牢屋の鍵を開ける看守に、多めのチップを渡す。 看守のバモ姉が、俺に耳打ちする。
「へぇ、、、、この子を持っていくなんて、大した目を持ってるねぇ。 あんた、将来大物になりそうだよ」
「こいつの利用価値と、俺が大物になる事を理解してるとは、
あんたもかなりの人物だろうよ。 それが、何でこんな所に居るよ?」
「ふふ・・・・ヤボな事はいいっこ無しだよ。 ・・・・・・あんたとは縁がありそうだねぇ、コレは返しておくよ」
そういうと、バモ姉は俺にさっき渡したチップを返してきて、こう言った。
「縁があって、次会った時は出世払いでチップを弾んで貰うよ。 これは、先行投資みたいなものさ」
「ククッ、あんたのその賭け、後悔はさせんさ。 次会う時が楽しみだ」
俺はバモ姉と不敵な笑みを交わし、もに子を連れて処分場を後にした。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:39:45.02 ID:LMOS3uU3
~人権宣言1年前 iin 俺の家~
興味は無いが、使うことになったもに子の身の上を聞いておくことにした。
捨て子でニューターの賢者の老人に育てられた事、
その影響で脳筋の多いエルモニーの中で珍しく魔法型である事、
ある日山賊に襲われて老人が身代わりになって死んだ事、
逃げている最中に野良エルモニーとして処分場職員に捕まった事。
俺が一番興味を持ったのが、こいつの生い立ちだ。
エルカブモニア語訛りが嫌いな俺にとって、標準語で喋るコイツは都合が良い。
家についた俺は、もに子に新しい服(といってもクロースローブだが)と
銀行の通帳と暗号を渡しつつ言った。
「処分場で言った通り、家事と俺の身の回りの世話、それと財産管理をやって貰う。
貯金残高を考えつつ、毎日の食事等良く考えろ」
「・・・・・・・私が貴方の全財産を取って逃げるとは思わないのですか?」
「思わんさ。 仮にそうされたとしても、俺の人を見る目が無かっただけだ」
即答だった。 強権者の信頼を得た人間は、2つの行動パターンに分かれる。
1つは、その信頼を盾にやりたい放題悪行を重ねる奴、もう1つはその信頼に答えようと努力を重ねる奴。
当然後者は希少だが、俺はコイツが後者だと踏んだ。 そしてそれは大当たりであった。
元々頭が良く理解が早いこいつは、俺の好み・望む事を理解し、財産管理も危なげなくこなした。
そう、こいつは俺にとって空気の様に無くてはならないもの・・・・・・・とまでは言わないが、使える奴だった。
それから1年が過ぎ、人権宣言が行われたが、それを知らせてもこいつは俺の元を去ろうとはしなかった。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:40:57.44 ID:LMOS3uU3
~数年前(人権宣言後) in 俺の家~
こいつを目の前にした隊長もに汚の態度は、滑稽だった。
顔を赤くし、見てるこっちが恥ずかしくなる位に狼狽していた。
「き・・・きききき君みたいな可愛い子は、
やっぱりコイツにあんな事やそんな事といった羨ましい虐待を受けてるもに!?
そ、それにどうして僕らの様なエルカブモニア訛りが無いもに?
コイツに強制的に矯正されたもに!? ・・・・今のはちょっと面白かったもに」
- 全然面白くねぇよアホがと殺したくなった所だったが、俺はあえてその衝動を押さえ込んで言った。
「お前の望む通りに言え。 俺に遠慮する必要は無い」
「そうもに! 僕が君を守るから、遠慮なく押し殺してきた本心を言うもに!」
「私は、今後もここでマスターの身の回りの世話をしていきたいと思っております。 ・・・・・これが、私の本心です」
その言葉を聞いたもに汚は顔色を赤から一瞬に青に変え、こいつが強制してるだの、孔明の罠だの騒いで居たが、
暫くしたら
「君は本心を偽ってるもに。 僕は何時までも待つから、本心を言う決心がついたら、僕に連絡して欲しいもに」
と連絡先を言って去っていった。
- ククク、コレは思ったより簡単にあのもに汚を消せるな。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:42:14.52 ID:LMOS3uU3
~数年前(人権宣言後) in アルビーズの森の外れ~
1ヶ月後、私はあの隊長もにおさんに、
アルビーズの森の外れで二人っきりで本心を話したいという内容の手紙を送りました。
理由としては、マスターが居る所で本心なんて怖くて話せないからです。
それに、私にとって救世主の様なもにおさんに
私の本当の心を伝える為には、1人で来て頂く事が必要だったのです。
時間になると隊長もにおさん、本当に1人で待ち合わせ場所へ来て下さいました。
「子猫ちゃん、僕が来たからにはもう大丈夫もに! さぁ、もう障害は無いから君の本心を言うもに!」
興奮しているもにおさんをよそに、私は クスッ と妖艶な笑みを浮かべながらゆっくりともにおさんへと歩みを進める。
「や・・・・やややややや、やっぱり君は僕の事を愛していたもに!?」
静かに、もにおさんの胸の中に頭をうずめる私、そして次の瞬間
「殺したい程・・・・・・・愛しています」
ズブリ、と鈍い音をたててゆっくりともにおさんの中に吸い込まれて行くシルバーナイフ。
もにおさんは何が起きたか理解できないといった顔のまま、膝をガクガクと震わして、そのまま地面に跪きました。
「き・・・・君の愛は、と・・・とても痛いもに・・・・・」
それでも健気に笑顔を作り、私を見上げるもにおさん。
この人なら、私の全てを受け止めてくれそうです。
この人となら、私は生きていける・・・・・・・。
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:43:39.36 ID:LMOS3uU3
「な訳ねーだろ、この万年発情期が」
と、そこで俺はドミニオンを解いて言った。
目の前の愛しの(?)もに子が消え、急に俺の姿が現れて目を見開いて驚くもに汚。
「かふっ、、、、、な・・・・一体これはどういう事もに!? 貴様、殺してやるもに!!」
どこにそんな体力が残っているのか、急に立ち上がり俺に飛び掛かかろうとするもに汚。
が、精神的ダメージと肉体ダメージが相まってかその動きは鈍く、
俺は簡単に攻撃をかわし、もに汚を動けなくなるまでボコった。
「ククッ、種明かしをしてやるよ。 まず、あの手紙は俺が書いた偽手紙。
まぁ、幾ら脳筋のお前でも今では理解出来たろう?
次に、さっきの姿だが・・・・、お前らが殺したモニコンの主人、アイツがこれまた変態でな。
色々なもに子の人形を持ってやがったのよ。
奴は俺がドミニオン出来ると知ると、急に仲良くしてきやがった。
で、不本意ながら(一方的に)親密なお隣さんって訳さ。
まぁ、金に困った時に、屈辱的だが奴の人形にドミニオンして金を貰ったりした経験があるがな。
その時に、奴にみっちりと変な事を仕込まれてな。 さっきの俺の笑み、結構きいたろう?
男心を手玉に取る仕草や間の取り方とかが上手になっちまったって訳さ。
んで、その時にその人形を作ったもっこすの親父の連絡先を記録しておいた。
そして、お前が帰った後にそのもっこす親父に連絡を取り、
俺の家政婦の姿そっくりの人形を作って貰ったって訳さ」
ドミニオンを解いた今、その人形は俺のポケットの中に入れてある。 こんなもん人に見せられるか!
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:45:30.10 ID:LMOS3uU3
もに汚の動きが完全に止まったのを確認し(死んではいない)、さてコレをどうしようかと思っていた矢先
パチパチパチパチと拍手の音が聞こえてきた。
- 勿論こんな事をするのだから念入りに尾行も注意したし、シーインビジも掛けたし、
何よりも気配を感じなかった。 嫌な汗が背中を流れるのを感じた。
「ふふ・・・・・・、やっぱり縁があったようだね」
木陰から音も無く姿を現したのは、1年前のあの看守だったバモ姉だった。 ・・・・生きていたのか。
「あんた、やっぱりあたしが言った通り、大したタマだねぇ。 いとも簡単にこのもに汚を手玉に取るなんて。
コイツはね、多くのエルモニーを指揮して処分場を襲撃して、その記録に載っている者達を襲っていたんだ。
その手際、指揮能力、そして本人の戦闘能力。 かなり高かったんだけど、あんたの敵じゃなかったねぇ」
表向き友好的な態度だが、ピンと張り詰めた空気が事態を物語っている。
「完璧な生命体など居ない。 誰しも欠点・弱点はある。 無論、あんたにもだ」
やりたくは無いが、俺はこのバモ姉との一戦も覚悟していた。 しかし、フワリと張り詰めた空気が消える。
「ふふ、探りを入れなくてもよくってよ。 じゃぁ、本題を言うよ。
出世払いのチップとして、そこのもに汚を貰っていくよ。 ずっと狙ってたんだけど、中々隙が無くってね。
モタモタしてて期限が近付いて来た時に、あんたがいとも簡単にやってしまったという訳さ」
「・・・・・・・期限? このもに汚が、何かしらの依頼の対象物になってたって事か」
「ふふ、やっぱりあんたは頭の回転が早いねぇ。 決めた、あんたを私のクライアントに紹介するよ。
あんたは実力はあるけど、それを活かす場に恵まれてないってのが嫌という程感じるよ。
勿論、この紹介料も、出世払いで頼むよ。 あんたなら、実力を活かす場所さえあればすぐに稼げるさ」
「ククッ、じゃぁ俺がその料金を払う時は、あんたは俺の部下だな」
「ふふ、あたしを乗りこなせるなら乗りこなして御覧なさい、ボウヤ? その時を楽しみにしているよ」
名無しオンライン sage 2006/06/29(木) 23:46:04.94 ID:LMOS3uU3
このバモ姉にそこまで言わせるクライアント。
恐らく、物凄い権力・財力・そして能力を持ち合わせている奴だろう。
まずはそいつの依頼を、クライアントにとって一番理想的な形で遂行しまくってやろう。
そして、俺の実力を認知させ、一番の信頼を得てそいつの右腕にまで上り詰めてやる。
最終的に、そいつの全てを奪い取ってやる。 ククク、楽しくなってきたぜ。
と、瀕死のもに汚を縛って袋に詰め込みながら、バモ姉が言った。
「あらあら、もう先の事を考えちゃってるのかい?
あんたは頭は良いけど、先を考え過ぎるのも考え物だよ?
ほら、あんたを紹介するんだから、ついてきなよ」
バモ姉と並んで歩きながら、俺は気になっていた事を言った。
「しかし、このもに汚が目的って、一体どんな依頼内容なんだ?」
「ふふ、エルモニー処分場は表向き消滅したけど、実はね・・・・・・」
PresentAgeから10数年、BSQとELGがダイアロスの支配権とノアストーンを賭け、
互いの血を血で洗う時代が到来した。
弱き者は闇に飲まれ、強き者が自由を謳歌するこの時代は、後にWarAgeと呼ばれる事となる。
そんな時代に、強き者の自由をも食らう闇の活動の記録が、極秘裏に残されている。
その記録の解読は、まだ始まったばかりである。
最終更新:2007年07月28日 21:56