謎肉加工現場




150 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/08/30(水) 17:09:52.52 aAkkduc7

広い部屋で、中心の立てられた大きな柱がガラガラと音を立てて回っている。
回しているのは数十人のもにこ。
柱の地面近く、もにこたちの胸の高さから横に出っ張るように伸びている棒を
一本2~3人で前に押すことで柱を回している。
彼女たちの衣服はボロボロで、もはや目には生気がない。

「おらぁ!もっとしっかり動けや糞がぁ!」
全身をマブ装備に包んだにゅたおの怒号と共にその手からマイナーバーストが飛ばされる。
『ひいぃい!』
その炎は一人のもにこの肩口に当たり、肌をじりじりと焦がすが
当のもにこはその傷をかばうこともせず苦痛に顔を歪めて自分の仕事を続ける。
「主任~。あんまりやると怒られますよ~」
のんびりした声で主任と呼ばれた男に話しかけるこぐお。彼もまた全身マブ装備だ。
「気にするこたぁねえ。どうせ上でも似たようなことしてるさ」
「そんなもんですかねえ・・・」
のんきな声と、柱を回す音が響くここはサモンスミート精肉工場。
彼女たちが回す柱の上部で、今日も多くのエルモニーがミンチになる。

「しかし主任、ミンチメーカー回すのに何でまたもにこなんか使うんですか?
ノアストーンとかその欠片使えばすぐじゃないですか」
突然問いかけるこぐお。
「ああ、あれな。もにこを過度に働かせるとな・・・しまりが良くなるんだよ」
主任の顔がいやらしく歪む。
「し・・・しまりが?」
「そうだ。謎肉が安価で低質ながらなんとか食用として
扱われてるのは比較的肉のしまりが良く味が悪くないからなんだ」
主任はその質問には慣れているらしく、さらさらと答えた。
「あ、ああ。そういうことですね!(変なこと考えちゃった・・・)」
そしてこぐおはあることに気づく。
「じゃあ・・・今働いてるやつらもいずれ?」
「いずれどころじゃない。あの虫どもはここで柱回してそろそろ2ヶ月だろ?
確か明日じゃないかなぁ」
へぇ、と感心するこぐおに同情の色はない。
主任は虫と言ったが、自分からすればやつらは豚だ。家畜だ。
肉になるのは息をするのと同じくらい当然のことだ。

「さて、と・・・・・・よーしお前たち!今日はここまでだ!
一列に並んで部屋に戻れ!遅いやつはバーストぶちこむぞ!」
叫ぶ主任の横で、こぐおは手間省略と威嚇の意味を込めて
スペルブックに呪文をこめる。さりげなくメガバーストだ。ある意味主任より人が悪い。
しゃべる事を禁じられているもにこ達は無言で列を作る。
さきほどマイナーバーストを受けたもにこはまだ肩から肉の焦げる臭いをふりまきつつ
涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら声を上げずに歩いていた。

途中で小さな水槽に潜る。風呂やシャワーなど認められていないもにこ達は
汗を流すためにその水槽を泳いでいくのだ。もちろん列は崩さずに。

部屋に帰ったもにこ達は、全員を収納する大部屋の中で木の板に布を敷いただけの
自分の寝床のスペースに戻る。そこには食事というにはお粗末な、
謎肉のかけらが置いていた。火傷もにこは食事をすぐにかきこむと、
体力を回復するためにその場に座り込んだ。


151 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/08/30(水) 17:10:39.77 aAkkduc7

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「大丈夫もにぃ?」
じんじんする肩を押さえていると、誰かが話しかけてきた。
部屋の中ならおしゃべりは許されている。
私が焼かれた時隣にいたもに子だ。
「・・・平気もに、一晩寝れば治るもに」
治るのは本当だけど、平気、というのは嘘。
「がんばるもに、ここだけの話、もうすぐもに子達は解放されるらしいもに」
解放。どれだけその言葉を夢見てきたか。
ここに来た…連れて来られた当初、私は必死で看守どもに抵抗した。
泣いたし、怒鳴ったし、暴れたし、時には媚びた。
しかしその度に、殴られ、蹴られ、切られ、焼かれ、凍らされた。
そして希望を持つことをあきらめた。
「そんなことありえないもに・・・奴らが解放なんて・・・」
言い切る前に部屋の扉が乱暴に開く
『よーしお前達。連絡事項がある。黙って聞け』
シュニン、と呼ばれるにゅたおだ。こぐおの方は後ろについている。
『明日、お前らはこの工場を出ることができる。
もう働かなくていいぞ。ご苦労だった。以上』
それだけ言うとシュニンは扉を閉めて出て行った。

しばらくの間沈黙が部屋を支配する。
そして、大歓声。
「やったもにぃ~!!」
「出られるもにぃ!うれしいもにぃ!」
大騒ぎで耳鳴りがする中、隣のもに子が得意げに言った。
「ね?言ったとおりもに!」
「・・・うん!」
久しぶりに、笑った。

その夜は、深夜になってもおしゃべりが絶えなかった。
おにいちゃんのところに帰っていっぱい美味しいものを食べるとか、
そんな話ばかりだったけど。


翌朝、私は作業開始の時間に近い早朝に目が覚めた。ほかのもに子も同様だ。
今日はゆっくり眠ってもいいのだが、2ヶ月とはいえ習慣化されるとすぐには感覚は抜けはしない。
肩の火傷はすっかり治った。
起きてから数時間後、シュニンとこぐおがやってきた。
『この工場は君達がもともと居た地より遠くにある。
故にテレポートオールで数人ずつ飛ばすので、まず番号1から4まで来なさい』
私の番号は11。3番目か・・・胸が躍る。
昨日私に話しかけたもに子は10番なので一緒に帰れそうだ。帰ったら何をしよう。

1時間後、私の番号がシュニンに呼ばれる。あの子と他の9番、12番の2人と一緒に歩く。
たくさんの階段を上り、途中ある部屋でシュニンの歩みが止まる。
「どうしたんですもに?この部屋が出口もにぃ?」
ここぞとばかりに媚びた動きを見せるもに子達。それを見てシュニンは顔を崩さずに
『私の案内はここまでだ。この部屋には香草風呂と代えの服がある。
君達もその格好では外へ出れまい。使いなさい。出口はこの部屋の奥になる』
「わぁ~い!やさしいシュニンさんだぁいすきもにぃ~」
言葉と同時に部屋になだれ込む3人。私も後を追う。
無表情のシュニンの眉がピクピク動いてたのが気になった。

「すごいもにぃ~。このお湯いい香りもにぃ~」
「湯船にもレモンとか浮いててすてきもにぃ~」
思い思いに入浴を楽しむ3人。私もおもわずはしゃいでしまった。
こんな気持ち良いお風呂はいつぶりだろう・・・。


152 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/08/30(水) 17:11:19.15 aAkkduc7

しばらく楽しんだ後、入浴を終えてシュニンに言われたとおり奥の出口から
浴室を出ると、みすぼらしいもに子が待機していた。
「もにぃ?」
不思議そうにそのもに子を見る私達。
『あの、お着替え・・・お持ちしましたもにぃ』
陰気な物言いと同時に差し出されたカゴには4人分の服が入っていた。
「すごいもにぃ!このお服草でできてるもにぃ!」
「しかもハーブもに。いい香りするもにぃ~」
大騒ぎしながら着替える4人。
『お着替えが終わりましたらあちらの出口へどうぞもにぃ・・・』
あいかわらず陰気な口調で話すもに子。
「ご苦労もに!お前もうちょっとハッキリしゃべらないと
もに子みたいに便利なおにいちゃんをゲットできないもによ!」
大笑いしながら部屋を出て行くもに子達。
一人残された陰気もに子の目には、同情の色が浮かんでいた。

部屋を出ると、中心にぽっかりと穴の開いた大部屋についた。中心で渦を巻いていて、
たとえるなら・・・そう、カオスエイジのボスの間の出口のようだ。
私達が柱を回していた部屋に少し似ている気がする。

そこに二人のガードがいた。
『やあ、着いたか。さて、それじゃあ解放しようかな。
番号9番と10番はきてくれるかな?』
「おにいちゃんがお外へ連れて行ってくれるもに?」
『…ああ、そうだよ。そこの穴の近くに立っててね』
「・・・もにぃ?」
2人のもに子を穴の前に立たせ、ガードたちがさらにその前に立つ。
『それじゃいくよ』
『せーのっ』

「・・・?」

タックル。無音でもに子の体を押し飛ばしたそれは、あまりに単純なものだった。
「も・・・もにいいいいいいいぃぃぃぃぃぃ」
ドップラー効果で徐々に小さくなる叫び声。
暫くしてぐちゃり、という音が聞こえた気がする。

「ひぃぃぃいいい!!」
12番がへたり込む。足元に広がる水たまり。失禁したようだ。
『おやおや仕方ないね。さ、次は君達だよ』
「う、嘘もにぃ!シュニンは解放してくれるって言ったもにぃ」
私は声の限り叫んだ。
『解放はするよ。このまま生きててもつまらないでしょ?』
「いやもにいやもにいやもにいやもにぃいいい!」
ガードのパンチがおなかを貫く。
「もげえええええええ!!」
『聞き分けのない子は嫌いだなぁ』
胃から液体が逆流する。食事はほとんどしていないから
出るのは胃液だけだ。
「げふっ!げえええ!!」


153 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/08/30(水) 17:12:48.19 aAkkduc7

『おーい、12番こんなになっちゃったけどー?』
12番を担当しているガードが呼びかける。
朦朧とした意識の中で私も目を向けると、
そこには後ろ髪をつかまれぶら下がった状態で
股の間から液体を垂れ流した12番が
うつろな目で「もにぃ・・・おにいちゃん・・・もう食べられないもにぃ・・・」と
いつまでもつぶやいていた。
『どうせ挽くんだ。変わらないよ。捨てちまえ』
その言葉と同時に12番が穴の中に投げ入れられる。もう声は聞こえなかった。
そしてガード達の視線は私に向けられる。
私は・・・私は・・・
「お、おにいちゃん♪」
歩み寄るガードの動きが止まる。これだ!
「もにぃ・・・おにいちゃん・・・大好きもにぃ♪一緒に暮らそうもにぃ☆」
無言のままのガード。もう一歩か。
「一緒に暮らしたらいっぱい美味しいお料理作るもにぃ、もに子は料理スキル80もによ?」
「それに・・・恥ずかしいけど・・・えっと・・・一緒にお風呂に入るもにぃ・・・」
もにもにと体を動かしながらうつむいて呟く
「おにいちゃんなら・・・いいもにぃ…ぐへえ!!!」
突然目の前に火花が散る。何?どうしたの?
少し間をおいて、鼻から血が大量にでてくる。どうして!?どうして!?
『いやーやっぱ気持ちいいなぁ~』
おなかに蹴りを入れられる。威力はさっきの非じゃない。
「もげえあああああ!!!!」
『最初のうちは片っ端からもに子いたぶってたんで今じゃ飽きて普通に仕事してるけど・・・
やっぱお前みたいなの見ると・・・ヤっちゃいたくなるわ~』
「た・・・たすけて・・・もに」
さらに殴ろうとするガードを押しのけてもう一人のガードが私の体をやさしく抱える。
『お・・・おい』
殴ろうとしたのを邪魔されたガードは不思議そうに眺める。
「お・・・おにいちゃん・・・助けてくださいもにぃ・・・・」
私を抱きかかえたガードに必死で媚びる。
するとそいつは優しく笑いかけてきた。こいつならいける!
「もにぃ~」
『・・・だーめ♪』
「え?」
その瞬間、浮遊感。投げとばされた。
地面に、いや、あれ?地面が、ない。
ここは、穴の、ん?穴の、中?

「もぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!」
その声は暫く響き、ある瞬間ぷっつりと消えた。

静かになった部屋でガードたちが話している。
『おっまえ好きだよなーそういうの。単純にいたぶる俺がかわいく見えるぜ』
『お前ももに子の顔が絶望に歪むの見てみろよ。絶対ハマるって!』
『そんなもんかねぇ。次やってみるか?』
そこにドアの開く音が響く。
「ここが出口もにぃ?」
2人はニヤリとして部屋に入ってきたもに子達にやさしく語りかける


『やあ、着いたようだね・・・・』



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最終更新:2007年07月29日 00:50