謎肉とモラの秘術




239 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/09/15(金) 03:48:15.26 B/Zv1CpT

「いらっしゃいませモニぃ。今日はどんな髪型にしますモニか?」
「そうね、前に髪が落ちると困るから今日も後ろで纏めてもらえるかしら?」
「いつもと同じモニね。お姉さんキレイな髪なのにもったいないモニねぇ。」
「料理人だから仕方ないわ。私も分かってやってることだしね。」
「お化粧して今風の髪型にすれば、こぐおやもにおが放って置かないのにモニ。じゃあ切らせて頂きますモニ。」
………
「はい、終わりましたモニよ~。」
「いつもありがとう。お代はこれでよかったかしら?」
「はいモニぃ。毎度ありがとうございますモニぃ。」
「あとこれは知り合いの人とでも食べて頂戴。」
「これは美味しそうなアップルパイモニ!お姉さんいつもありがとうモニ!」
「こちらこそいつもありがとう。また来るわね。」
「はいモニぃ~。お待ちしていますモニぃ~。」
「(はぁ~、アップルパイモニか、、、これだから貧乏レランはこまるモニ。代金も色をつけないし、もってくるならもっと金になるもの持って来いモニ)」
………
「いつも串分けてもらって悪いわね。」
「こっちも丸太ケーキ分けてもらって助かってるよ。それよりこの前 美容モニ子 に髪切ってもらってなかった?」
「いつもお世話になってるモニ子よ。それがどうかしたの?」
「あのモニ子はあまりいい噂を聞かないねぇ。脳筋に貢がせているとか、客からもらったアイテムは溜め込んで売り払ってるとか。」
「でも噂でしょ?それにそんな悪いことでもないじゃない。」
「ま、そうだけどね。人によっては気分を害する人もいるだろうからさ。」
………



240 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/09/15(金) 03:49:06.42 B/Zv1CpT

「って もっこす が言うのよ。」
「貴方、、、あのモニ子がリストに入ってるの知らないの?」
「リストって、、、Bリスト!?そんな、可哀相すぎるわ!」
「はぁ、お人よしね。そう思うのなら一日あのモニ子をこっそり見てなさい。食事は必ず
 リコールレイション
 で済ませてるから。シレーナ様が命じて、料理を渡した後もそれを店売りしてリコールレイションしたのを内のレランが確認しているわ。」
「そう、、、それでBリストなの、、、」
「あなた今月のノルマまだ達成してなかったわよね?そのモニ子にしたら?」
「、、、そうね、そうするわ。私のアップルパイも店売りされていたんでしょうね。。。」
「はぁ、貴方って本当にお人よしね。」
………
「いらっしゃいませモニぃ。ついこの間もいらっしゃいませんでしたかモニ?」
「えぇ、ちょっと髪の色を変えようと思ってね。どんな色がいいかしら?」
「お~、お姉さんにはこの色をお勧めしますモニ。きっとキレイになりますモニよ~」
………
「はい、終わりましたモニよ~。」
「いつもありがとう。お代はいくらになるのかしら?」
「ちょっとお高くなりますモニぃ。このお値段になりますモニぃ~。」
「はい、あとこれは新作のパイなの。食べてみてもらえないかしら?」
「これはいつにもまして美味しそうなパイモニ!じゃあ遠慮なく頂きますモニ。
(は~、こんな無駄に高そうなパイ作るんならその分のGかアイテムもってこいモニ。これだから貧乏レランは、、、)」
 お姉さん!体が、痺れる、、モニぃ、、、何を、食べさせた、、モニか、、、」
「そのパイに入ってるキノコはね、急性の神経を麻痺させる毒キノコなのよ。」
………



241 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/09/15(金) 03:50:10.51 B/Zv1CpT

「、、、~ん、っっ、はっ、お姉さんここはどこモニか!?どうしてモニ子を括り付けているモニか!?」
「あら、起きられたのね。よかったわ。解毒剤を注射しても中々起きないからもう寝たまま始めるところだったのよ。」
「始めるって何をモニか!?モニ子に何をするつもりモニか!?どうしてモニ子がこんな目に遭わなくちゃならないモニか!!??」
「あなた自分のことなのだから噂ぐらい知ってるでしょう?」
「噂ってパンダにアイリーンズベル取らせてきたりとか美容でもらったアイテム店売りしたりとかモニか!?確かに本当のだけれど、こんな目に遭わされるほど悪いことじゃないモニ!?もっと悪いやつはいっぱいいるモニ!」
「別にね、それは大したことじゃないのよ。確かに私があげてきたパイも店売りされてたと思うと悲しいけれど、それはね大したことじゃないの。」
「じゃあなんでモニ子がこんな目に遭ってるモニか!早く縄を解くモニっ!」
「問題はね、貴方がリコールレイションでしかお腹を満たさないところにあるのよ」
「そんなの知ったことじゃないモニ。色白こぐおなんかみんなしてることモニ!早く解くモニっ!!」
「貴方の場合は悪質だったのよ。もらった料理を店売りしてのリコールレイションだったから。それでシレーナ様から裁定が下ったわ。」
「あんな偉そうな料理しか出来ないオバハンなんて、モニ子に夢中な脳筋パンダに頼めばアクセル様にお願いして首チョンパできるモニよ!ウダウダいってないで早く解くモニっ!」
「リコールレイションって異世界から食料を召喚してるのよね。あなた異世界なら食料が何もしないでも出てくると思う?」
「ひっ、そんなこと知ったことじゃないモニっ!」
「そうね、知られていたら大変だわ。私たちレランギルドがレイションを作ってるのよ。それでビスク軍の一部の魔法使いに異世界に送らせているみたいね。それを貴方たちが再召喚してるって訳」
「そんなことモニ子に聞かせてなんになるモニか!?モニ子には関係ないことモニ!お家に帰してモニぃぃぃ!」
「脳筋パンダじゃない貴方なら、もう分かってるでしょうけれど、そのレイションの材料が、あなた、なのよ」
「っひ、いやモニぃぃぃ、誰か助けてモニぃぃぃ、殺されるモニィィイイイイイイイ」
「助けを求めても無駄よ。ここはビスク港のレランギルド専用倉庫。つまりレイション工場だから。あれが一つ前のレイションの材料よ。」
「ぃイヤぁああああああ!」
「このモニ汚の首、脳みそが見えてるけれど、、。脳みそが一番美味しいのはやっぱりコグニートね。
 仲間のレラン達は顔を顰めるけれどシレーナ様が黙認して下さってるから食べられるのよ。本当は内臓と一緒にビスク港の魚の餌なんだけれどね。美味しいのにみんな勿体無いことするわ。」
「モニ子はあんなのになりたく無いモニぃいい。お金あげるから助けてモニ。いくらで助けてくれるモニか?。もちろん今日のことは忘れるモニよっ。お姉さんその手にもってる包丁を下ろすモニっっっ!」
「お金ってね、いざとなると何の役にも立たないのよ。お世話になってたから無痛で処理してあげようかと思っていたんだけれど、お金でどうにかなると思ってる人って、私好きじゃないのよね。ん、ふんっ。」
「ぃああああああああ。腕、モニ子の腕ぇぇぇええええ!」
「可哀相に痛いでしょう。残りの腕と足を切り落とすまでには気を失っているわ。ふんっ。」
「あああああああぁあああぁぁぁぁ、ぁ、ぁ」
「腕だけで気を失ってしまったわね。ちょっと残念ね、、、」
………
「美味しい」
………



242 名前:名無しオンライン 投稿日:2006/09/15(金) 04:52:30.22 B/Zv1CpT

私は先のビスクとエルガディンの戦争でアクセルに求められレイションの開発に着手していた。
なんでも異世界を経由して物資を運ぶ魔法が制限付きではあるが実用化できたそうで、軍が真っ先に食料輸送に利用しようと思うのも当然だった。
そこで出世を求めたアクセルが請け負って私に依頼したのだった。
条件はとにかく保存が効く生肉。どうしても生肉と生水しか異世界に送る魔法を開発できなかったらしい。
そこで各種モンスターから動物の肉を送ってみたようだが、再召喚時に腐ってどうにもならないケースが多発したのだそうだ。
再召喚時には異世界に送った順に召喚されるのではなく、異世界に存在する召喚対象の肉全てからランダムに召喚されるのだ、というのが原因だそうだ。
ともかく私は研究した。自国の兵士が飢えるのは嫌だったから。しかしそうそう成果は出なかった。
………
ある日レランギルドの近くの一家が一人を除いて惨殺される事件が起こった。確か父親が軍高官だったか。エルガディンの刺客にやられたのだろう。それか自軍の対立派閥、例えばアクセルの派閥などに。
戦争には莫大な食料が必要となる。エルガディンまで遠征しているのだから輸送だけで大量に消費される。よって国内でも食料統制が行われていた。
そんな状況で惨殺された家族に一人のコグニートの娘が残されていた。刺客がやり損ねたのだろう、あるいは忍びなく思ったか。
どちらにせよ年端もいかぬ子供なぞを引き取る裕福な家庭はなく、軍高官の父の人脈を辿ることも娘には思いつかず、二、三日、家の周りをうろついているのを近所の人が見た以来、誰も見ていないそうだ。
近所の人も生前は戦時下に関わらず派手な生活をしていた家の娘など誰も気にかけない。いや内心ほくそえんでいる。
そんな話を耳にして、何を思ったか私はその家を訪れた。
………
そこには確かにコグニートの娘がいた。血塗れで。そしてキッチンには長くて丸くて細長い、、、人の足が。そう、この子は母親の足を食べて飢えを凌いでいた。ちゃんと包丁で食べやすいように切って、火を通して。
あぁ、可哀相な子。
………
その一家の殺された人間はどうしてか母親だけが死体の腐敗が殆ど無かった。これはと思った私はアクセルに調べさせると、モラ族の蘇生術が関係しているらしい。
どうやらモラ族の蘇生術を受けたことがある者は、その死体がいつまでたっても腐らないようなのだ。そういえば母親と娘はコグニートらしい外見だったが父親はそうではなかった。
おそらく母親が島の外からの人間だったのだろう。
こうしてモラ族の蘇生術を研究し、その死体保存効果を得ることの出来たビスク軍は食糧問題を大きく解決させた。そしてアクセルの地位も。
戦後はアクセルによりこの秘術は隠匿されている。また戦時中アクセルの上官だったものは悉く島外へ出るなどして姿を消している。冒険者達は過去を気にしない。
やはりこの娘の一家を惨殺したのは、、、今となってこのことを知るのは私とアクセルとその腹心ばかりだ。
この娘を私のギルドの後継者にしよう。この娘にはその資格が十分にある。



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最終更新:2007年07月29日 01:23