生き餌




309 名前:(1/5) 投稿日:2006/12/16(土) 22:01:41.72 mDhh/d38

「やったもに!セレスティアローブゲットだもに!」
タルタロッサ・パレスでルートを取ったもに子が嬉しそうに黄緑色のローブを
振り回している。だが元々ルートを取っていたのはこのもに子よりずっと前に
タルタロッサキング一派と戦闘をしていたパーティーたちであったのだが、こ
のもに子がトレインしてきたタルタロッサナイト3匹によって無残にも壊滅さ
せられていた。

「もにもに~調教100あれば何でもできるもにね」
このもに子の悪行は今回に限らない。ある時はアイリーンズベルを横取りする
ために大量のイクシオンを襲わせたこともあったし、その前にはワンダークロ
ースを手に入れる為にオークの大群を襲わせたことすらもあった。しかし戦闘
を行うには武器スキルが不足しがちなこのもに子がここまで出来たのは調教ス
キルを100にまであげていたからである。スキルを駆使すればソロでも充分
戦える戦闘力を持っているのにも関わらずにこれらの悪行を行ない続けていけ
ば、非難する者も決して少なくない。だが自然調和グレイトエスケイプ、強化
魔法スティームブラッド&インジヴィリティ、そして神秘魔法スモールワープ
を駆使するこのもに子を捕まえることなど、精鋭を極める処分場の職員達であ
っても不可能であった。

とある日のこと、そのもに子がビスク西を悠々と歩いていた時であった。
「あのパンは何もにか・・・?」
露天中のコグニート男が見たこともない巨大なパンを握っていたのである。聞
けばそのパンはディスクラブバケットといい、ミーリム海岸の南東の小島にい
るとある人物が持っているということらしい。
「ひょっとしたらこれもレアアイテムもにね!だったら早速ゲットしに行くも
に!」

場所がミーリム海岸という初心者向きエリアということもあり、これまでの上
級者ダンジョンのような重装備をする必要がないと思ったのだろう、もに子は
軽装で行くことにした。またこの時のもに子はタルタロッサパレスから帰って
きたばかりということもあり、触媒や道具の準備もままならないままの状態で
あった。


310 名前:(2/5) 投稿日:2006/12/16(土) 22:03:25.23 mDhh/d38

ミーリム海岸はとにかく広い。目印が少ないネオクと比べれば迷うことはあま
りないが、その人物がいる小島にたどり着くのにも泳ぐ為にかなりのスタミナ
を使っていた。
「ぜえぜえ、やっとたどり着いたもに・・・」
小島にたどり着いたもに子が最初に目に入ったのが、見たこともない種族の老
人だった。名をマオツェン・ウーという。どうやらもに子の存在には気付いて
おらず、後ろを振り向いたまま海を眺めているようであった。
「さぁて、そのパンをいただくもにぃいいいい!」

ドガッ!バキッ!

「ぐほっ!何をするアル!」

ズバッ!

「も、もに!?こいつ強いもに!」
「誰かと思えばエルモニーの娘アルか!見ず知らずの他人を後ろから殴りつけ
るとはいい度胸をしてるアル!」

ズバッ!
ドガッバギッ!

「もにぐ・・・!?撤退するもに!」
形勢が悪くなったもに子は急いでグレイトエスケイプを発動しようとしたが、
なぜか発動しない。

<スタミナが足りません>

「も、もに!?」
スタミナが足りない原因は長時間のダッシュと水泳によってスタミナが足りな
くなっていたからであった。すぐに事が終わるとにらんでいた為にバナナミル
クは持ってきていないのも誤算の一つであったのは言うまでもないだろう。

「こうなったらスモールワープで・・・」
「させないアルヨ!」

ズヴァアアアア! (クリティカル)

「もにぐへぇ!」
もに子は自分の魔法詠唱が中断されると同時に強烈な一撃を喰らい、昏倒した。


311 名前:(3/5) 投稿日:2006/12/16(土) 22:05:06.67 mDhh/d38

目が覚めたもに子が最初に違和感を感じたのは、両手と両足が全く動かない状
態になっていたことであった。釣り竿の糸で縛られているのだ。
「やっと目覚めたアルネ。このもに子」
首の自由は利くので声のする方へ振り向くと、髭を生やした老人マオツェン・
ウーの姿があった。
「も・・・もに子をどうするモニか?」
「ワタシ、究極の料理を作る為にサメを釣っているアル。だけどちっとも釣れ
ないアル。だからお前をエサにしてサメを釣るアル」
陽気な印象のアルアル口調とは裏腹に背筋の凍るようなことを言い出すマオウ
ェンに、もに子は恐怖し、反抗しようとする。
「い・・・いやもに!離せこのジジィ!耳が遠くなって聞こえないもにか!?」
「アイヤー、お前言葉遣いを選ぶアルね。」
ザゴッ!
もに子の顔数センチ手前にカッパーチョッパーが突き立てられる。その恐ろし
さにモニ子は戦慄した。
「もにいいいいいい・・・・!」
「パッチでチョッパー復活したアルよ。でもお前の噂はよく聞いているアル。
お前はあちこちの人にいっぱい迷惑かけているアル。だから許さないアル」
マオウェンは地面においてある釣り竿を持ち上げ、釣りを行なう。モニ子はふ
と見ると夜空の月明かりに気付くが、もに子の体と釣り竿との間に糸が光って
いるのを見ることができた。だが、それがその後の自分の唯一の生命線である
ことを、思い知らされるのであった。


312 名前:(4/5) 投稿日:2006/12/16(土) 22:06:51.32 mDhh/d38

バッシャアアァァァン!

「も、モニモガボガボガボ!」
マオウェンが勢いよく釣り竿を振り下ろす。もに子の体は釣り糸を通じて空中
に持ち上げられ、海中に勢いよく水しぶきをあげた。
「も、ガボガボモニガボモニ!」
このもに子の水泳スキルはゼロであったために、あっという間にゲージがゼロ
になりHPがどんどん減っていく。さらにもに子のHPは戦闘によって傷つい
ていたためにほとんど残っておらず、残りHPは既に30をきっていた。
「おっと、勝手に死んでもらっては困るアル。サメには生餌が一番アル」
タイミングを見計らってマオウェンが竿を上げると、もに子の顔が水面に浮か
び上がってくる。だが息継ぎする間を与えるとすぐにマオウェンの竿使いがも
に子を海の中に沈めてしまう。
「ガボガボガボ!」
「たくさん暴れるアル。お前の傷ついた体から流れる血がサメを引き寄せるアル」
その言葉どおり、3回目の息継ぎが終わった直後にモニ子の視界に、巨大なサ
メの背びれが水平線上に現れた。
「も、もに!サメが来たモニ!は、早く上げるもに!」
しかしマオツェンは聞く耳持たずだ。じたばたしながらもに子は必死に叫んだ
りもがくが、その行動がサメを呼び込んでいることにすらも気がつかない有様
だった。サメの顔が水面から上がり、狙いを暴れるもに子に合わせていく。
「も、もに!嫌もに!助けてお兄ちゃん!」
「あ~?耳が遠くて聞こえんなぁ~~~?」
サメの口が大きく開く。その口はエルモニーならば一口で飲み込んでしまうほ
どのものであろうか。だがここで問題なのはサメに関する情報の正確性よりも
、このもに子がサメのエサになるかどうかの生命に関する問題であった。サメ
はスピードをつけて加速し、もに子めがけて飛びかかる。

「ギシャオオオオオオオオオオ!」
「も、もにいいいいいぃぃぃぃ!」



313 名前:(5/5) 投稿日:2006/12/16(土) 22:09:12.54 mDhh/d38

          • そのもに子が姿を見せることは二度となかった。人は誰もが彼女が
処分場送りになったのだと思うようになっていたが、処分場のリストにそのも
に子の名は無く、職員達も首をかしげるばかりであった。いずれにせよ悪行を
重ねるもに子がいなくなったこともあり、人々は一時の安息を得ることができ
たのである。

だがその話が立ち上がる直前の日のこと、とある冒険者がマオツェンの所に訪
れると彼が鍋を持って料理をしていたという。彼は尋ねてみると、マオウェン
はこう答えたという。
「とうとうねんがんのキングシャークを釣り上げたアルね。ワタシ」
「どうやって釣り上げたんですか?」
「それは秘密アル、そんなことよりもフカヒレスープを飲んでみるアルか?」
善意を受け取りそのフカヒレスープを分けてもらい食べてみたところ、微妙に謎肉の味がしたという。




以上です。お目汚し失礼いたしました。
初代スレのマオツェンネタからインスパイヤさせていただきました。マオツェンは意外と
強いですよね。やられた人は黙って手を上げてください。

          • orz



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最終更新:2007年07月29日 21:33