861. 名無し募集中。。。 2009/07/18(土) 03:58:54.30 0
『From:夏焼雅  本題:今日も屋上で待ってるね』
3限の途中、梨沙子にメールを入れる。
今朝まで一緒にいて、朝っぱらからエッチまでしたのに、数時間会えないだけで会いたくてたまらない気持になっていた。

4限が始まると、ひたすら授業が終われと思いながら過ごした。
退屈な授業を頬杖ついて聞いていると、メールが届く。
『From梨沙子  本題:うん』
一言の短いメールだけど、心がいっぱいになる。
最近は携帯のフォルダに梨沙子だけのものを作って、梨沙子からのメールはすべてそこに入るようにした。
今みたいな暇な時はそのフォルダを開けて、今までの梨沙子とのメールのやり取りを見てはニヤニヤする。
正直、自分でも気持ち悪いと思う。

でも、いいんだ。
前みたいに好きでもない子の身体を貪って心の隙間を埋めるような無駄な毎日よりは、ずっといい。
今日もいつものように一緒にいて、一緒に帰って、家でいちゃついて・・・
そんな風に思っていた。


少なくとも、この時までは
864. 名無し募集中。。。2009/07/18(土) 07:34:18.73 0
4限の授業が終わって愛理と一緒に購買でパンを買う
愛理は心配だからって屋上の扉まで一緒に来てくれた

「じゃありーちゃん、あとでね」
「あ、うん・・・愛理、ごめんね?それにありがとう」
「いいってば!それよりも夏焼先輩待ってるよ?」

そう言って愛理はあたしの肩をぽんぽんとして階段を降りて行った

愛理、いつもごめんね?

そしてあたしは一つ深呼吸をしてから屋上の扉を開ける

開けた途端みやがこちらに背中を向けて空を見上げていて・・・
その背中を見たら今まで我慢してきたものとかが全部こみ上げて来て・・・

みやに駆け寄って後ろから抱きついた
870. 名無し募集中。。。 2009/07/18(土) 12:34:22.30 0
「わっ。」
突然背中に何かがぶつかって、おなかの辺りに白い腕が回された。
振り向いて見なくても分かる、今朝まで触れていた愛しい感触。

「梨沙子。」
確かめるように呟いて、手の甲をさらりと撫でた。
すると腕により力が篭って、ぎゅうと閉じ込められる。

「梨沙子、痛いよー。」
笑いながら少し手の甲叩いた。
まだ反応がない。

「・・・梨沙子?」
「・・・うん。」
様子が少し変だ。くるりと梨沙子の腕の中で反転して、
向き合う形になる。目の前10センチの所に、泣き出しそうな
色素の薄い茶色い瞳。

「なんかあった?」
「ううん。なんでもないよ。」
「そんなことないでしょ。だって泣きそうだよ?」
頬にそっと手を当てる。長い睫がふるふると揺れて、伏せられていた
目線が上げられて、うちの瞳を捕らえた。心配そうな顔をした
自分が梨沙子の潤んだ瞳に映っている。

871. 名無し募集中。。。 2009/07/18(土) 12:54:26.84 0
梨沙子を見ているようなその瞳の中の自分を見ているような
不思議な感覚にぼおぅっとしていると、その瞳が柔らかに細められて
梨沙子が笑ったのだと分かった。

「みやがいて、安心しちゃって。なんか涙出ちゃった。」
・・・ああ、もう。ほんとに可愛過ぎる。
ここが室内だったら絶対に押し倒していただろう。
自分を静めるために少し梨沙子から体を離して、考えてることを
見抜かれないようなるべくさわやかに、笑いかけた。

「お昼にしよっか。」
「うん!」
梨沙子、今までに知らなかった幸せをくれてありがとう。
心の中でかみ締めて、呟いた。
913. 名無し募集中。。。 2009/07/19(日) 00:09:23.28 0
お昼を食べ終わってんみやと並んで空を眺める
空を見るのは好き・・・
時間とともに変化していく空をずっとみているとすごく癒される

どれくらい眺めていただろうか・・・隣でみやがゴソゴソとしていて
「ん?」ってみやの方を見る

するとみやがニコッとあたしに笑いかける
「梨沙子、手ぇ出して?」
「へ?手?」
何だろうと思いながら手を出すとみやが何かをあたしの手に握らせた

「手、広げてみて?」
おそるおそる自分の手を広げてみる

「・・・・・・・・あ・・・」
手の中にあったのはずっと握っていたのか少し温かい鍵だった
940. 名無し募集中。。。2009/07/19(日) 13:04:22.46 0
鍵を手にしたまま、梨沙子が固まってる。
あ、れ? もしかして、スベった?
「ほら、この間みたいにさ、うちが部活ですぐ帰れない時とかにさ、
あの、擦れ違ったりしてもアレだし・・」

アレってドレだよ、なんて自分ツッコミしたくなる。
焦ってしどろもどろで、何言ってんだか自分でもわかんなくなってきた。

「だから、その、えっと、これ使って中に入ってて欲しいかなって・・・」

で、うちが帰ったら、お帰り♪とか言って出迎えてね!・・・なんておちゃらけて言えるカンジじゃない気がする・・・。

梨沙子が俯いて鍵をギュっと握り締める。

「・・・梨沙子?」
恐る恐る顔を覗き込んだうちに、梨沙子が顔を上げて柔らかく微笑んだ。

「ありがと・・・すっごい嬉しい」
目がまた少し潤んでる。嬉し泣きだよ、ね?

「もう、梨沙子は泣き虫だなぁ!」
「だって・・・ホントに嬉しいんだもん・・・」
そんな梨沙子が愛しくて、肩に手を回して抱き寄せる。

梨沙子の頭をうちの肩に乗せて、ってできればカッコ良かったんだけど、
悔しいかな、身長のカンケーでちょっと難しいから、こつんって頭と頭を合わせて、
それから昼休みが終わるまで、ボーっと二人で空を眺めてた。
942. 名無し募集中。。。2009/07/19(日) 13:14:52.89 O

授業が始まってからさっきみやからもらった合い鍵を取り出し眺める

いつでも部屋にきていいって言われて胸がきゅっとなった

しばらく鍵を眺めると携帯が震える
慌てて確認するとみやからのメール

『今日バンドの練習終わったら会える?
キーホルダー買いに行こうよ』
3. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 01:26:52.35 0
みやのメールを読んで口元がにやけるのがわかった
きっとこの鍵につけるキーホルダーのことだよね?

やっぱりみやが持っている鍵用にお揃いで買いたいな・・・
そういえば今日はバンドの練習って言ってたっけ?
練習の間、早速合鍵でみやの部屋に入って夕食の仕度しようかな
あ、その前に買い物して食材も調達しなきゃ
みやの冷蔵庫、ほとんど入ってないし

ここまで自分が恋愛にのめりこむ性質だってことに改めて驚いてる
でもきっとそれは相手がみやだから・・・

そんな幸せな気分に浸っていたところで
はっと今は授業中であることに気づき慌ててノートを取り始めた
52. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 16:30:45.14 0
結局みやのことばかり考えて授業にはほとんど集中できなかった。
愛理にも「りーちゃん何か良いことあった?」って言われるし、そんなに顔に出やすいのかなあたし・・・

放課後スーパーに寄ってからみやの住んでいるマンションへ向かう。
なんかこうしていると本当にあのマンションでみやと一緒に住んでいるように思えてくる。
というか、いつか本当に一緒に住めたらいいな・・・
そうすれば今よりもっとみやと一緒の時間を過ごせるのに。
夕飯の準備をしながらそんなことを考える。

「ふぅ・・・ちょっと休憩」

夕飯の準備をほぼ終えると、ちょっとでもみやの温もりを感じたくて寝室のベッドに倒れこむ。
枕に顔を埋め息を吸い込むとみやの匂いがする。
それだけで胸が締め付けられるような切ない気持ちでいっぱいになる。

「みや、早く会いたいよ・・・」

みやのことを想いながらあたしは目を閉じた。
53. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 16:32:02.96 0
どれくらい眠ってしまったのだろう。
ふと気がついて時計を見ると、みやとの待ち合わせ時間まであと10分を切っていた。
いけない!
あたしは慌てて飛び起きると髪もボサボサのまま急いでマンションを飛び出した。

「ちょっと!」

マンションを出たところで、突然誰かに肩を強く掴まれる。
今急いでるのに!と思って振り向くと、そこにはみやのファンの子たちが立っていた。

何でこの子たちがここにいるの?
疑問に思っていると、そのままコンクリートのブロック塀に押し付けられた。

「あんた夏焼先輩のマンションに出入りしてんの?」
「・・・」
「黙ってないでなんとか言いなさいよ!」

その瞬間、頭の中にピシャッという乾いた音が響く。
頬にヒリヒリとした痛みが残り、涙が滲んでくる。

逃げようとしても肩を掴まれていて逃げることが出来ない。
辺りは既に暗くなり人通りも少なかった。
あたしは恐怖に震えながらこの前あたしを助けてくれたあの人のことを思い出していた。

(助けてピーチ姫・・・)
92. 名無し募集中。。。 2009/07/21(火) 12:52:34.63 0
助けてピーチ姫・・・

そう思うけど、この間みたいに偶然誰かが助けてくれるほど人生は甘くない
壁に押し付けられながら何度も何度も頬を叩かれた

助けて・・・みや―――・・・


気がついた時にはもうみやのファンはいなかった
やっと終わったんだ・・・という思いから思わず座り込む

「痛いよぉ・・・」

頬が痛いのか心が痛いのか分からないけどとにかく痛くて、
胸の鼓動が止まらなくて、
みやに会いたいと、ただひたすらそれだけを思っていた
最終更新:2009年07月23日 19:21