- 773. 名無し募集中。。。2009/07/16(木) 04:22:01.12 0
- 「はぁ・・・」
もう今日何度目の溜息だろうか。
いや、今日だけじゃない。あの日以来溜息しか出ない。
―――――捨てられちゃった。
あんなに尽くしてきたのに、終りはこんなにあっけないんだ・・・
健全な関係じゃなかったけど、本当に好きだった。
ピルルルルル・・・
なんだ、こんな時に・・・
「はい、お電話ありがとうございます。ライブハウスモーニングです。」
「あ、私、安倍と申します」
「はい、ブッキングのご依頼ですか?」
「いえ、ちょっとお伺いしたいことがありまして」
伺いたいこと?
まいったな、こういう話は店番の私に言われても困るのに。
「はい、なんでしょう。」
「そちらの常連アーティストで、Buono!というバンドがあると思うんですが」
Buono!・・・今一番思い出したくない名前なのに・・・
にしても、何の用だろうか。
- 877. 名無し募集中。。。2009/07/18(土) 14:24:32.89 0
- どうしよう・・・と、とりあえず、みやに知らせなきゃ。
でも、今学校・・・・もうお昼か。
お昼休みだよね・・・でも昼休みはあの子と一緒に・・・
迷っても仕方ない!電話しないと!
ピルルルルル・・・・ピルルルルル
ダメだ出ないや。
どうせあのかわいい彼女とイチャついてるんでしょ、この一大事に。
そうだ、清水さんなら・・・!
ピルルルルルル、ガチャ
「もしも・・・」
「清水さん!」
「わわ、真野ちゃん!?」
「そうです!今時間大丈夫ですか?」
「う、うん」
- 878. 名無し募集中。。。2009/07/18(土) 14:34:34.79 0
- 「―――ということなんです・・・」
「・・・・・それ、ほんと?」
「なんで私がうそつくんですかぁ!!」
「あ、ごめんごめん・・・いきなりすぎてびっくりしただけ。で、みやに伝えた?」
「あのバカ電話に出ないんです。どうせ―――」
「分かった!連絡ありがとう!じゃあね!」
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
真野ちゃんの話を簡単にまとめると、うちらにライブの依頼が来たっていうこと。
でも今までみたいにキャパ100とかの小さなライブハウスとはわけが違う。
とあるプロダクション主催のイベントみたいなもので、プロで飯を食ってる有名なバンドも顔を出しているそうだ。
イベントは3日間に及んでやるらしく、うちらの予定のところにはあの、MilkyWayもいるらしい。
と、とにかく熊井ちゃんとみやに知らせなきゃ。
みやは電話に出ないって真野ちゃんが言ってたからとりあえず熊井ちゃんだ。
- 879. 名無し募集中。。。2009/07/18(土) 14:39:23.76 0
- 「ユリナちゃん、あーんして。」 「あーん♪」
ピルルルルルルル
誰だよ、うちの至福の時間を邪魔するのは・・・
って、キャプ!?やばっ!
「ごめんなかさき、電話・・・」
「いいけど・・・女?・・・浮気したらお弁当にトマトいれるからね!」
「そんなんじゃないよ!」
――――――
「もしもし、キャプ?」
「熊井ちゃん・・・落ち着いて聞いてね」
「ライブが決まったの」
「ああ、そう。じゃあチケット届いたらうちもまわしt」
「そんなんじゃないの!!!!」
「わわ、急に大声出さないでよ。」
「もう!詳しいことは今度の練習で話すから!」
「・・・・・・う、うん・・・?」
「みやも熊井ちゃんもバカ!」
ツーツーツー
真野ちゃん目線
- 939. 名無し募集中。。。 2009/07/19(日) 11:49:58.89 0
- 清水さんとの電話を終えて自分の席に戻る
BUono!の3人があの大きなイベントに参加できるなんて・・・
確かに3人のポテンシャルはすごいものがあるし、ルックスだって・・・
だけど・・・
あたしは携帯の待ち受けに設定しているみやとのツーショットを眺める
「みやがどんどん遠くなるな・・・」
ももがいなくなってから急接近したあたしたち
もともとももとあたしは幼馴染で学校は違えど仲が良くて・・・
初めてももにみやを紹介されてあたしは一目惚れした・・・
ねぇ、みや?あたし、ずっとみやに隠してたことがあるんだ・・・
あたしね?ももが海外に行くってこと・・・前から知ってたんだ・・・
Buono!目線
- 77. 名無し募集中。。。 2009/07/21(火) 02:43:49.90 0
- 愛理ちゃんにはっきり別れを告げた。
これでよかったんだ。すっきりしたよ。
今はとりあえず、Buono!だ。
スタジオで詳しくはなすなんて言ったけど、練習の日は明日。
そこまで待ってられないよ・・・
熊井ちゃんにもう一度電話してみる。
―――――――――――――――
ピルルルルルル
わ!またキャプから電話だ。
「も、もしもし・・・?」
「熊井ちゃん、今ひとり・・・?」
「あ・・・はい」
ほんとは一人じゃないけど、昼電話で怒られたから、咄嗟に嘘をついた。
今は家にいる。いつものようになかさきを連れ込んで・・・
そんなことバレたら、絶対怒られる。
「ライブの話だけど・・・」
- 78. 名無し募集中。。。 2009/07/21(火) 02:48:44.24 0
- 「え?あ、でもそれは今日の練習で話するんじゃ・・・」
「その前に話だけでも聞いて!」
「あ、うん」
「あのね・・・『ユリナちゃーん!』」
なかさき!こんのバカ・・・・
なんて間の悪い・・・
「熊井・・・」
熊井!?熊井ちゃんじゃなくて熊井!?
「あ、あの〜・・・・」
「練習で、覚えてなさいよ」
「はい・・・」
プツ・・・・ツーツーツー
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
- 113. 名無し募集中。。。 2009/07/21(火) 20:37:51.55 0
- やっばい・・・
絶対怒られる・・・
重い腰を上げ、ベットで寝ているなかさきに布団をかけてスタジオへと向かう。
スタジオでは、いつも通り、キャプが一番についていた。
いつもとちょっと違うのは、いつも朗らかなキャプが仏頂面で足を組んで待っていたってこと。
ビクビクしながらスタジオの中に入った。
「お、おまたせぇ〜・・・」
「・・・・」
怒ってるよぉ・・・キャプがガン無視なんて前代未聞だもん・・・
「あ、あの〜」
「みやは?」
「へ・・?あ、ああ、もうすぐ来るんじゃない?」
キャプはため息をひとつ漏らし、ベースのセッティングを始めた。
そのあとはひたすら沈黙で、苦痛以外の何物でもなかった。
みやが能天気に「ごめーん!おまたせっ!」なんて言ってきたときは、本気でひっぱたいてやろうかとすら思った。
- 114. 名無し募集中。。。 2009/07/21(火) 20:42:35.53 0
- 「遅いっ!!!」
うちとみや、同時に身体が跳ねた。
「ごめん・・・キ、キャプ怒ってる?」
「別に。うちが怒ってるのはそこのでっかいの!」
うちか・・・やっぱり。
「いや、あのごめん・・・」
「大事な話があるってのに家に女連れこんで、なに考えてるの!バカ!」
硬直するうちを外目に、みやが尋ねる。
「大事な話って・・・何?」
- 127. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 02:01:45.84 0
- 「・・・すごい、ね」
「・・・うん」
キャプから説明を受けたうちらは、感動というか驚きというか・・・
とにかくうまくリアクション出来なかった。
「だから大事な話だって言ったでしょ!!それなのにあんた達・・・とくに熊井!あんたは・・・」
「ごめんなさいっ!」
「とにかく、そこに向けて全員気持ちひとつにしないといけないの!」
「え、じゃあキャプ、Buono!に残ってくれるの?」
みやの問いかけに、うつむくキャプ。
どうしたんだろう。
「う、うちなりに、考えたの。やっぱり、Buono!でやっていくのが正解なんじゃないかって・・・」
「「キャプ!!」」
見事にハモったみやと私は、たまらずキャプに抱きついた。
「ちょ、苦しいって・・・」
「キャプ大好き!」
「うちもー!」
「分かったから・・・。」
この時、私も相当浮かれていたから気付かなかったけど、こんなはしゃいでるみやを見たのは初めてかもしれない。
やっぱり梨沙子の影響が大きいんだろう。
- 128. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 02:10:14.15 0
- 確かに一度、私は梨沙子を本気で好きになった。
でも、やっぱりこれでよかったんだ。
笑顔のみやを見て、つくづくそう思ったんだ。
「も、もういい加減離れてよ、ふたりとも」
「ほんとありがとう!お礼なら何でもするよ!」
「お礼なんて・・・」
「・・・一晩無料でお相手しますよ?」
冗談のつもりだったのに。
本当に軽い冗談のつもりだったのに、次の瞬間にはビンタが飛んできた。
「いったーーーい!」
「ははは、今のは熊井ちゃんが悪い!」
「もうっ!いいから練習始めるよ!」
なんだかんだ、すっかり仲直りだ。
何度もぶつかり合ってきたけど、そのたびうちらは乗り越えてきた。
そして、キャプ脱退寸前という大きな壁も、乗り越えた。
うちらはもう、どんな壁だって乗り越えて行けるよ。
ね、キャプ。
最終更新:2009年07月27日 16:02