- 55. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 17:04:30.58 0
- 困ったな。
正直、告白されたことは何度かあるけど、こんなことはなかった。
そうでもしないと開放してくれなさそうだから「答えは今すぐ出せない」なんて言ったけど、
えり以外の人と付き合う気なんて全くないのに。
てか「恋人じゃなくてもいい」ってどういうこと?
「なんでもします」ってなに?
全然わかんない。
ふうってため息をついてふと前を見ると見慣れた後姿。
「愛理!」
叫んで駆け寄る。
「舞美ちゃん」
「愛理も今帰り?」
「うん。舞美ちゃん、部活は? あ、テストで休みだね」
「そう」
この幼馴染の笑顔にはいつもほっとするんだけど、久しぶりのその顔には少し陰がある。
- 56. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 17:07:05.99 0
- 「なんか元気なくない? テスト、だめだったの?」
「違うよ」
って笑う愛理。だよね、愛理だもんね。
「舞美ちゃんは梅田先輩とは上手くいってる?」
「うぇ? なによ、いきなり?」
愛理とはあんまりそういう話しないから、びっくりして変なとこから声がでたじゃない。
「うん、まぁ、順調かな」
「そっかぁ・・・」
「何? 愛理にも遂に恋の悩み?」
「遂にってなによ? 私だってもう15歳だよ? って、私だけの悩みじゃないけどねー。なんか、恋愛って大変だなーって思って・・・」
しみじみ言う愛理。悩みってなんだろう?
・・・なんて、人の悩みを気にしてる場合じゃないのかも知れないけど。
「舞美ちゃんとこだけは順調で良かった。あ、でも、幼馴染として忠告するけど、もう少し人目は気にした方がいいよ?」
「へ?」
「ホテル出るところ、人に見られたりしたらダメだよ」
「え?ホテル? 私が?」
「見たのは梅田先輩だけだけど、舞美ちゃんも一緒にいたんでしょ?」
「・・・どこで?」
- 57. 名無し募集中。。。 2009/07/20(月) 17:10:30.36 0
- 告げられたホテルに心当たりはなかった。
てか、そもそも私たち、ホテルなんて使わないし。
でも、えりは使ったんだ・・・。それってつまり、私じゃない誰かと・・・。
恥ずかしいとこ、見られちゃったな、今度から気をつけるよ、なんてとっさにごまかす言葉が出たのはどうしてだろう?
えりの名誉のため? それとも私のえりへの気持ちを傷つけないため?
よくわかんない。なんかもう、何もかも全部わかんないよ・・・
- 164. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 21:15:15.11 0
- 愛理と別れて家に向かいながら考える。
えりがホテル・・・。
援交とかじゃないと思う。そんなこと、絶対しないって信じられる。
って、じゃあ何は信じられないの?
えりの信じられないとこ、何かある?
なかなか思いつかなかったけど、1つ・・・たった1つだけあった。
えりが私のことを本当はどう思っているか。
この間の二度目の告白には思いっきりうなずいてくれたように見えたし、キスもしてくれたけど、本当に好きでいてくれてるんだろうか?
私のこと、好きだから抱かれてくれてるんだろうか?
それとも、誰でもいいの?
そんなことないって思いたい。
でも、実際に誰かとホテルに行った、という事実がその考えの邪魔をする。
・・・だめだ。こうやって一人で考えていても埒が明かない。
えりと話をしよう、そう決めて、えりの家に向かおうとして、ふと足が止まる。
暫く考えて、私は、さっき手渡されたメモを見て、吉川さんに電話をかけた。
- 165. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 21:16:42.04 0
- 「ごめんね、いきなり電話して」
「いえ、いいんです全然。お電話、嬉しいです」
「・・・・・」
なんて切り出せばいいのか分からない。
「・・・・お返事、くださるんでしょう?」
「・・・うん。・・・・・・その前にちょっと訊きたいんだけどさ?」
「はい」
「吉川さんは、私のどこが好きなの?」
「どこって・・・全部です。美人だしスタイル抜群だし、スポーツ万能で頭も良くて、優しくて人望もあって・・・。完璧ですもん」
なんか、こんな風に言われるとすっごくくすぐったいけど、「ありがと」って照れ笑いで返す。
「でも・・・。そんなことないよ? 私、全然完璧なんかじゃないよ。空気読めないってよく言われるし、加減知らなくって突っ走っちゃってしょっちゅう周りを振り回すし、胸もないし骨っぽくってごつごつした体型だし、顔だってさ・・・」
「そんなことないです!」
吉川さんが私の言葉を強い口調で遮る。
「もしそうだとしても、いいんです。それも全部、矢島先輩でしょう? 私、そのままの矢島先輩が好きなんです」
「・・・あ、ありがと。・・・・うん、あの、嬉しい、そんな風に思ってくれて」
それは本当にそう思う。そんな風に好きになってもらえて光栄だと、心から思う。
- 166. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 21:19:54.40 0
- 「じゃあ・・・」
「でもね? 私も私の恋人・・・・」
「梅田先輩でしょう?」
「知ってるんだ?」
「皆知ってますよ、有名ですもん」
「そうなんだ・・・」ちょっと照れるけど、なんか嬉しいな。
「私もえりのこと、そういう風に思ってるんだ」
「え?」
「そのままのえりが好き。えりがどんな人でも、例えば私のことを好きじゃないとしても、やっぱりえりが好き。えりじゃなきゃだめなの」
「・・・・・」
「吉川さんが言った、恋人じゃなくて付き合うっての、どういう意味なのか、いまいち良くわかんないけど、でも私ね、他の人と付き合うとか、考えられないの。
だって私、今えりと一緒にいる時間だって全然足りないって思ってるんだもん。もっともっと、ずっとずっとえりといたいって思ってるんだもん」
「・・・・・・・・・」
「だからごめん。私、吉川さんとは付き合えない」
携帯をかけてる相手に、深く頭を下げて告げる。
- 167. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 21:21:15.58 0
- 「・・・・・あーあ・・・」
ずっと続くのかと思った沈黙の後、大きなため息をついて吉川さんは言葉を発してくれた。
「矢島先輩って、ほんと全力投球なんですね」
「え?」
「なんにでも、・・・梅田先輩にも全力投球なんですね」
「え、あ・・・・うん」今の彼女にはっきりと言うべきかどうか少しためらったけど、肯定する。
「矢島先輩の全力投球受けられるの、梅田先輩だけなんですね」
「うん」今度ははっきりと断言する。
「そっかー・・・・・。矢島先輩は難攻不落だって友達に言われてたんですけどねー、私なら! ってちょっとうぬぼれてたんだけど・・・ダメだったかー・・・」
「・・・ごめん」
なんこうふらくって意味はよくわかんないけど・・・。
「わっかりました! ごめんなさい! お騒がせして」
「・・・・・・・」
声がくぐもっているのは、彼女も携帯を持って頭を下げているからなのかな・・・
「1つだけ、お願い聞いてくださいますか?」
「なに?」
「今度、梅田先輩と私のライブ、見に来てください。結構素敵ですよ、ステージの私。 告白断ったの後悔するかも知れませんしね、ぜひお2人で来てください」
って吉川さんが笑いながらおどけた口調で誘うから、私もおどけて応える。
「うん、わかった。行かせてもらうね」
「待ってますよ! ・・・じゃあ・・・これで・・・」
「うん、じゃあ」
通話が向こうから切れた後、大きく息を吐き出して、えりの家へと向かう。
- 168. 名無し募集中。。。 2009/07/22(水) 21:23:15.47 0
- えり? 私ね、えりにホテルのこと聞く前に、ちゃんと吉川さんに返事をしておきたかったんだ。
えりの答えがどうであれ、私の気持ちは変わらないから。それは自信があるから。
でも、えりの気持ちには自信がないの。なくなったの。
あんまりそういうこと、言ってくれないもんね。
だからね、今日は教えて、ちゃんと言葉で。
私、どんな内容でも受け入れるから。
『今から会える?えりの家の前に来てるんだけど』
気付くとえりの家に着いていて、えりにメールを打った。
最終更新:2009年07月23日 20:00