- 891. 名無し募集中。。。 2009/08/09(日) 22:14:08.22 0
- 「ただいま」
「おかえり」
家に帰るとすぐに梨沙子をぎゅーっと抱きしめた
夏といえど、この温もりだけは絶対嫌にならない
急いで帰ってきたから汗かいてたけど、梨沙子は気にする様子もなくうちの腕の中にいてくれた
リビングに行くと梨沙子の手料理がテーブルに並んでいて、一気にお腹がすく
「着替えてくるね」
うちは足早に寝室に向かった
部屋着に着替えて携帯を充電器に挿す
「よし」と梨沙子の待つリビングへ戻ろうとして足が止まった
そうだ、あのメモ・・・・
机の上に置きっぱなしにしたメモを見る
次練習ある時にキャプか熊井ちゃんに渡して、真野先輩に届けてもらおう
まあうちが本人に渡してもいいし
どっちにしろ真野先輩に返さなきゃ・・・
「・・・・・」
うちは折られたままのメモを手に取った
開くことなく、カバンに入れた
- 892. 名無し募集中。。。 2009/08/09(日) 22:27:30.82 0
- あたしが用意した料理をみやはおいしそうに食べてくれる
みやのその顔を見ているだけであたしは心が温かくなる
「あれ?梨沙子食べないの?」
「た、食べるもーん!!」
それからみやは今日の練習の出来とか、どんな曲をしたかとかを話してくれる
「今日はみんな気持ちも乗ってていい感じだったんだ」
「へー、ほんと?よかったね」
「うん、なんかさ、・・・久しぶりにうち、曲作ろうかなって思うんだよね」
「曲?」
「ほとんどキャプが作ってて、うちもたまに作詞とか作曲するんだけど・・・
なんか・・・なんか今はすごくいい曲作れそうな気がするんだ」
そう言ってみやはあたしをまっすぐ見つめてきて
その目があまりにも綺麗であたしは目をそらすこともできなかった
- 894. 名無し募集中。。。 2009/08/09(日) 23:56:09.89 0
- 「・・・ねぇ曲出来たらさ、一番最初に聞いてくれる?」
「え?」
「梨沙子のために作るから。梨沙子に一番に聞いてもらいたい」
「・・・」
「いいかな・・・?」
少しだけ不安そうに聞いてくるみや。
そんなこと聞くまでもなく、あたしの答えは決まってるよ。
言葉に詰まったのはね、泣きそうになったのを必死で堪えたから。
だからみやがそんな不安な顔することないんだよ?
そんなことを思いながら、あたしはみやの問いかけに精一杯の笑顔で頷いた。
「ありがとう、みや」
ご飯を食べたあと、みやにギターを弾いてもらった。
みやはあたしの好きなアーティストの曲やボーノの曲を、弾き語りで歌ってくれた。
横からちょっかいを出したり、ギターを教えてもらったり、一緒に歌ったり。
みやと過ごす時間はいつも楽しくて、嬉しい。
みやが歌う声と奏でる音は、いつまでもあたしの中に優しく響いていた。
- 895. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 00:15:53.48 0
- みやに家まで送ってもらう・・・
あたしは今日も泊まるって言ったけどお母さん心配するからって
そういうところ、すごく大事にされてるって感じる
今日は二人乗りじゃなくてみやは自転車を押しながら並んで歩く
きっとお互い一分一秒でも長くいたかったから・・・
それでもやっぱりそこまであたしたちの家は遠くないからあっという間にあたしの家の前
みやは自転車を停めてあたしの手を取る
「この前行った旅行の話・・・いつがいいか考えといて?」
「あ、うん・・・」
「ありがとう・・・あ、さっきのお母さん心配するって話なんだけどさ」
「ん?」
「あれ・・・半分嘘」
「え?」
「ずっと梨沙子と一緒にいたら離れる時すごく辛いから
ずっと一緒に住もうって言いたくなっちゃうから」
そう言ってみやは顔を真っ赤にしなっがら頬をかく
バカ・・・もう言ってるじゃん・・・。
- 897. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 00:30:31.53 0
- あたしだって、みやと一緒に住みたいよ
毎日一緒に笑ったり泣いたり・・・いつだってみやの近くにいたい
離れたくない・・・その気持ちはきっと同じ
明日になれば会えるのに、その明日が待てない
あたし達は家の前でずっと抱きしめ合っていた
――帰ってきたらみやに聞きな?このメモ何?って
ふとさっきの真野先輩の言葉が頭をよぎって
心臓がドクンと跳ねた
思わずみやと体を離してしまう
「梨沙子?どうかした?」
- 898. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 00:37:59.04 0
- 聞かなきゃ・・・ちゃんと聞かなきゃ・・・
ギュッと拳を握り締めてみやの顔を見つめる
「梨沙子?」
みやの瞳はどこまでも優しくて・・・だから大丈夫・・・
きっと大丈夫・・・みやは全部話してくれる・・・
あたしは意を決してみやにメモのことを切り出した
- 906. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 09:51:47.30 0
- 「あのさ・・・あの、ね?」
「ん?」
うまく言葉が紡げなくて視線をみやの顔と足元に行ったり来たりさせる。
「大丈夫だから、言ってみ?」
みやが頭を撫でてくれた。さらさら髪をすべる優しい手の感触になんだか涙が出そうに
なるのをぐっと堪えて、もう一度拳を握り締めた。
「あの・・・あの机の上にね、メモ、あったでしょ。見ちゃったんだけど。」
言葉をそこで切ってみやを見る。目を見開いて固まっていた。
- 907. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 10:00:11.81 0
- それと同時にあたしの腰に回っていた腕が力を無くして解かれる。
みやは立ち尽くすような格好になって、俯いた。
あたしも同じように腕を解いて、でもみやの両脇に垂れる手を
握って、両手で手をつなぐ。
「あのメモ、なに?ももさんと連絡取ったの?」
「取ってない!・・・取ってないよ。」
弾かれる様に一度顔を上げたけど、また俯いてしまった。
だから、みやがどんな顔しているのか分からなかった。
- 910. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 10:08:52.27 0
- うちは顔を上げることができなかった。
梨沙子の顔を見る自信がなかった。あのまっすぐな目、まっすぐな
気持ちに向きあう自信がなかった。
返すつもりだったとしても、まだあのメモを持っている。
そんな状態で何を言えばいい?
カバンが急に重くなったような気がした。
たった紙切れ一枚なのに、肩にずしんと響くような重み。
沈黙が続く。
- 912. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 10:34:36.44 O
- みやは俯いたまま何も言わない
だけどあたしは逃げちゃダメだって思った
真野先輩は気になるなら全部聞きなって言ってくれた
うやむやにしちゃいけないんだ・・・
- 915. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 14:15:37.68 0
- 「みや、こっち見て。」
のろのろと顔を上げたみや。いつものように強い光を
発していないその目をしっかり捉えると、あたしは
ずっとずっと気になっていたことを聞いた。
「ももさんって、誰?」
- 916. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 14:48:48.75 O
- あたしの決定的ともいえる質問に固まるみや
あたしはみやが何かを話し出すまでじっと待つ
どれだけ沈黙が続いただろう・・・
みやは突然顔を上げるとあたしの腕をつかんで自転車の後部座席に乗せた
「え・・・み、みや?」
あたしの戸惑いの声にも耳を貸さずみやは自分もサドルに座り自転車を漕ぎ始める
あたしはそんなみやの態度にすごく怖くなっておそるおそるみやの腰に腕を回してぎゅっと目を閉じた
あたしの耳に聞こえてくるのはみやが自転車を漕ぐ音だけ
それから何分か経ったところで自転車は急に停まり、そっと目を開けると目の前は海が広がっていた
- 924. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 20:51:36.24 0
- 自転車から降りると、みやはあたしの手を握って海岸まで歩いて行った
砂浜は歩きづらい。だけど必死について行った
みやは波打ち際まで行くと足を止めた
「この海の向こうに、ももがいるんだ」
波の音に負けそうなぐらい小さな声でみやが呟く
みやを見ると、みやはまっすぐ海の向こうを見つめていた
夜の海は暗い。星の光だけではみやの表情はよく分からない
だけど、多分みやは寂しい顔をしてるんだと思う
きっと、海を見ながらももさんのことを思いだしているから
手を離すとみやがこのまま海の向こうに行ってしまいそうな気がして、あたしは握ってる手に力を入れた
「もう梨沙子、気付いてるかもしれないね。うちがこんなだから」
「・・・・・」
「前に話したよね?好きな人がいて、急にいなくなったって。それが、ももだよ」
「・・・そっか」
視線をみやから海へ移す
相変わらず海は静かに波を打っていた
みやを真似てこの海の向こうにいるももさんのことを考えようとしたけど
いくら考えてもあたしにはももさんのことは分からなかった
だって顔も知らないし、性格だって知らないんだもん
なのにみやがどれだけ彼女を好きだったかってことだけは痛いぐらい分かっちゃって、
それが凄く切なくなった
- 925. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 21:15:32.77 0
- 「どうして梨沙子、ももの名前知ってたの?」
みやがあたしに尋ねる
前に寝言でももって言ってたんだよ?と言うと、みやはそっかと力なく笑った
「あのメモね、真野先輩が落としたのを拾ったんだ」
「うん・・・」
「正直言うと、ももって名前見て、焦った。字もそっくりだったし・・・。
もものこと思い出したらなんか・・・辛くなっちゃって。だからあの日、すごい泣いた」
途切れ途切れに、でも一生懸命話すみや
あたしは黙って耳を傾けていた
- 928. 名無し募集中。。。 2009/08/10(月) 23:59:40.12 0
- 「うち、もものこと思い出すとまだ胸が痛いんだ」
少しみやの声が震えているような気がした
でもあたしはみやの方を向かなかった
みやの顔を見たら、あたしはきっと泣いてしまう
泣き虫なあたしだけど、今は絶対泣きたくなかった
そんな脆い気持ちでみやにメモのことを聞いたんじゃないもん
みやのことが好きだから、だから確かめたかった
みやが勇気を出して話してくれてるんだから、あたしも強くいたい。強くいなきゃ・・・
「忘れようと思ったけど、ももって名前聞くだけで、苦しい」
「・・・・」
「・・・あの時のショックが・・・ももがいなくなった時のショックが、どうしても忘れられない」
「・・・」
「・・・忘れられないんだ」
その言葉をきっかけに我慢してた涙腺が決壊した
分かっていたことだけど、実際にみやの口から聞くとやっぱりつらかった
立っていられなくて砂浜に座り込む
みやもしゃがんであたしの背中を優しく撫でてくれたけど、溜まりに溜まった涙は簡単に止まりそうになかった
「梨沙子・・・うちといると、つらい?」
あたしの背中を撫でながら、みやが寂しそうに言う
「・・・つらくっ・・・なんて・・っない!」
「・・・うちのこと、嫌いになった?」
「そんなことでっ・・・嫌いになんか・・・なれないっ!!」
「・・・・」
「みやはっ・・・何もっヒック・・・悪くない・・・」
「・・・・・梨沙子・・・」
- 929. 名無し募集中。。。 2009/08/11(火) 00:29:44.83 0
- みやはあたしの背中を撫でながら何度もごめんって言った
だけどあたしはみやに謝られたいわけじゃないの・・・
そんなことを求めていたわけじゃないの・・・
知りたい・・・ももさんとみやに何があったのか全て知りたい・・・
「みや・・・グスッ・・・謝らないでよぉ・・・」
「梨沙子・・・」
「だから・・・教えて・・・全部知りたいの・・・みやのこと・・・グスッ」
あたしは振り向いてみやの胸に顔を埋めて抱きついた
- 938. 名無し募集中。。。 2009/08/11(火) 12:50:17.63 0
- 少しの沈黙の後、みやが静かに口を開いた
「・・・梨沙子が知りたいなら、何だって話すよ。だけど、これだけは信じて」
「・・・なに?」
みやの腕があたしの背中にまわった
苦しいぐらい強い力だったけど、あたしにはこれぐらいがちょうどよかった
「うちは、本当に、梨沙子のことが好きだよ・・・」
「・・・・みや」
「梨沙子だけは、絶対に失いたくない」
「・・・・うん」
「梨沙子はももの代わりじゃない。これだけは、忘れないでいて・・・」
- 940. 名無し募集中。。。 2009/08/11(火) 15:31:09.67 O
- みやの言葉を聞いて余計涙がとまらなくなったあたしをみやが後ろからぎゅっと抱きしめて砂浜に座る
「梨沙子、うちの何が知りたい?
自分で話すのは苦手だけど聞いてくれたことは全て話すから」
みやはあたしの耳元でそう囁いた
- 944. 名無し募集中。。。 2009/08/11(火) 17:37:24.39 0
- みやの気持ちは嬉しい。
でもいざそう言われると何から聞いていいか分からない。
あたしから聞きたいって言い出したくせに無言になっちゃって、みやにつんつんとほっぺを突かれた。
「梨沙子?なんでもいいから言ってみ?」
なんでもいいから・・・
ほんとになんでもいいの・・・?
ねえみや、ももさんの声聞きたい?
ももさんに会いたい?
会ったらなんて伝えたい?
・・・ねえもし・・・
ももさんが今ここに現れても―――・・・
――あたしのこと、選んでくれる?
色んな思いが浮かんでは、シャボン玉みたいに弾けて消えた。
そんなこと聞く勇気も、知る勇気もあたしはまだ持っていなかった。
- 946. 名無し募集中。。。 2009/08/11(火) 19:32:58.22 O
- 「ね?梨沙子?」
みやはずっと問い掛けてくれるけど、ももさんの事を聞くなんて・・・やっぱり無理だよ。
聞いたら、みやと私の中で何かが崩れそうで怖い。
今、みやは何を考えてるの?
私がこんなに悩んでるって、わかってるの?
優しくしてくれるだけじゃ、わかんないよ・・・
「・・・みやは・・・優しすぎるよ・・・」
「え、梨沙子・・・?」
「聞きたいよ、みやとももさんの事だって、何でも知りたい・・・でも、聞けないの・・・みやにはわからないよ・・・」
自分でもこんな事ぶつけるなんて、最悪だと思う。
でも、みやの腕の中で、私は止まりそうになかった。
- 968. 名無し募集中。。。 2009/08/12(水) 14:24:12.81 0
- 「聞きたいとか聞けないとか、意味わかんないよね、あたし・・・」
「・・・・・」
みやは何も言わなかった
呆れられたのかもしれない・・・仕方ないか
あたしだって、矛盾したこと言ってるのは分かってるよ
確かに、ももさんのこと全部聞きたかったよ・・・
でもね、みやが好きって言ってくれると、嬉しすぎて臆病になる
ももさんの代わりじゃないって言ってくれて嬉しかったけど、
その分また怖くなった。みやの心に居るももさんの存在が・・・
こんなに自分が弱虫でわがままだったなんて気付かなかったよ・・・
あたし、まだまだ大人にはなれないよ・・・みや
「みやには分からないって、何それ」
「え・・・?」
少し怒ってるようなみやの声に、思わず凍りつく
久しぶりに、いや初めて聞くみやの声だった
「みやには分からないなんて、そんな風に言われたくない」
「・・・・」
「梨沙子にだけは、そんなこと言われたくない」
「ごめん・・・」
「梨沙子の気持ち、分かってなかったかもしれないけど・・・うちは分かりたい。
うちには分からないって言うなら・・・分かるまで話してよ・・・」
「みや・・・痛い、よ」
「やだ。離さない」
- 969. 名無し募集中。。。 2009/08/12(水) 14:48:10.27 O
- 「みやは、みやにはわかんないもん!
スゴくカッコ良いみやは人気者で…
あたしなんかが付き合っていいのかな?って……思うこともある」
「梨沙子…」
「でも、みやから好きって言われると…みやと一緒に過ごす時間が長くなる度に…
自信がついたり、無くなったり……」
「………」
「ごめんなさい…みやは悪くない、あたしが勝手に自信ないだけだから…!」
ポツリポツリと言葉を紡ぐように話す梨沙子
可愛いことばかりを言ってうちに愛されてる自信がない梨沙子
うちは梨沙子が好き、愛してる
そんな想いを込めて話してる梨沙子の口を自分の唇でふさいだ
言わなきゃ伝わらない
真野先輩に忠告されたけど…
この想いは伝わってほしいと願って…
- 970. 名無し募集中。。。 2009/08/12(水) 15:27:17.89 0
- 「みやは、聞くの怖くないの・・・?」
キスのあと、分かるまで話してと言ったみやを思い出して尋ねてみた
「怖いよ。でも、これからも一緒にいるんでしょ?だったら、梨沙子の気持ち、ちゃんと聞いておきたい」
みやはそう言ってあたしの肩にこつんと頭を乗せた
みや、あたしね、やっぱり聞けないよ
ももさんのこと好き?とか、会いたい?とか
ももさんを忘れて、とも、連絡取らないで、ともやっぱり言えない
だって、言ったところでみやの答えは分かるもん
「好きじゃない」「会いたくない」
「忘れるよ」「連絡しないよ」
みやは優しいからきっとそう答えるよね
でも、心の中では反対のこと思ってるんでしょ?
それが分かっちゃうからつらいんだ
何かが壊れそうで怖いんだ
言えるもんなら、みやのどんな思いも受け止めるよって、本当は言ってあげたい
でもそんなカッコいいセリフあたしにはまだ言えないから・・・
精一杯の思いを込めて、みやに聞いた
「みや、あたし、いつかみやの一番になれる・・・?」
- 973. 名無し募集中。。。 2009/08/12(水) 17:32:11.66 0
- 梨沙子が今にも消え入りそうな声でこう言った・・・
「みや、あたし、いつかみやの一番になれる・・・?」
この言葉を聞いた瞬間うちは梨沙子の体を強く抱きしめた
こんなことを言わせてしまううちって何やってんだろ・・・
梨沙子と付き合うことになったって言った時の真野先輩の言葉が蘇る
――――中途半端な気持ちであの子と接してるんじゃない?」
――――「じゃあ、捨てれるの?それ」
- 977. 名無し募集中。。。 2009/08/12(水) 21:38:16.13 O
- 「…一番とか、そんなんじゃない……」
「……みや…」
「順番なんてうちはつけられない
梨沙子は、うちの特別で大切で、大事な…
愛しい…っ…愛しい―――」
想いが上手く伝えられないもどかしさ
自分の情けなさ
どうしたら梨沙子に伝えられる?
もものことだって特別だった。
でも過去のこと、好きじゃないって言えば嘘になる―――
でも、でも…
「梨沙子が……ぅっく、梨沙子の…こと…ヒック…が好き……」「……うん」
何故か涙が頬を濡らす
自分でも自分の気持ちがホントの自分がわからない
何で、涙が出るんだろう…
梨沙子はうちの手を握りをジッと見つめていた
こんなに真剣な顔の梨沙子を見たのは初めてで……
うちの想いは伝わったんだろうか?
うち、ホント情けないや…
全然カッコ良くなんてない―――――
- 7. 名無し募集中。。。 2009/08/13(木) 12:43:41.43 0
- 「泣かないで、みや」
梨沙子そっと手を離すと、涙を拭ってくれた
本当は自分が泣きたいだろうに、梨沙子は嫌な顔ひとつ見せずにうちの涙を拭ってくれた
「ごめんね、追い詰めるつもりじゃなかったんだ・・・」
「ちがっ・・・うちが・・・ごめんっ・・・」
「みやがあたしを好きでいてくれてるの、ちゃんと分かってるからね」
梨沙子はそう言っておでこをうちのにこつんとぶつけた
「いつか、あたしもっと強くなるから・・・」
「・・・・グス」
「みやを悲しませたりしないし、悲しむこともやめるから・・・」
「・・・りさこぉ」
「自信持ってみやの隣に立てるようになるから・・・
だから、それまでずっと側に居て・・・」
- 13. 名無し募集中。。。 2009/08/13(木) 16:14:19.68 O
- 「あたし今まで恋とかよくわかんなかった…
好きとか……
正直、今でも不安な部分、あるよ?
でも不安とか…なんか葛藤?とか、あるけどでも
それ以上に…みやの側にいたいの」
梨沙子がハンカチを出してうちの涙を拭いてくれる
うちはこんなに梨沙子に想われてる…
自分の気持ちを真っ直ぐぶつけてくれる梨沙子が眩しくて愛しい
- 19. 名無し募集中。。。 2009/08/13(木) 21:53:48.99 O
- 「梨沙子ありがと。」
「え?」
「うちのこと好きになってくれて、ありがと」
目と鼻がまだ少し赤いみやにお礼を言われた
少し濡れたような瞳がなんだかやけに綺麗で
あたしはドキドキした
- 35. 名無し募集中。。。 2009/08/14(金) 12:42:03.44 O
- 「クシュッ!」
「あ……寒い…かな?ごめん、帰ろっか」
「うん」
潮風が少し肌寒くてクシャミが出ちゃった
立ち上がってあたしに差し伸べるみやの手をしっかり掴む
みやの温もりが潮風の肌寒さを忘れさせる
「夏風邪はバカがひくんだっけ?」
「むー、あたしバカじゃないもん」
「知ってるよ」
チュってみやは軽く口づけをして
「梨沙子が風邪ひいたらうちにうつせばいいよ」
なんて笑うからまたドキドキしちゃった…
みやと過ごす夏…
あたしが初めて恋を知った夏――――――
- 37. 名無し募集中。。。 2009/08/14(金) 13:02:07.62 0
- ももさんが心の中にいるみや
それを許すことも、責めることもできないあたし
ぐるぐると色んなことを考えて
色んな壁にぶち当たって
どうにもならないお互いの感情を下手な言葉と涙で伝えて
結局あたし達が辿りついた答えは、「すき」、それだけだった
どんなに難しく考えても、どんなに悩んでも、最後は「すき」しか残らなかった
解決したのかしてないのか正直よく分からない
だけど今回のことは二人にとってゼロじゃない
だってみやが心を開いてくれたから
つらいって、ちゃんと言ってくれたから
それでもあたしが好きって言ってくれたから
あたしも、素直に気持ちをぶつけることが出来たから
きっと無意味じゃない
「ねえ、今日泊まっていって」
「いいの?」
「うん。やっぱ帰したくない」
みやの自転車に乗って、背中に抱きつく
みやは一回だけ海を振り返ってから、行こうかとペダルを漕いだ
みや。今じゃなくていいからさ、
いつか、その目にあたしだけを映してね?
- 64. 名無し募集中。。。 2009/08/15(土) 13:14:44.24 0
- みやの部屋に戻ってあたしたちはベッドで雑誌を広げた
雑誌と言ってもファッション誌じゃなくてみやが買っていた旅行ガイド
「このあたりがいいと思うんだ、ここからそんなに離れてないし」
「あたし、遠いところでも大丈夫だよ?」
「だーめ。梨沙子はまだ中学生なんだからあまり遠いところはお母さん心配するよ」
みやはいつもこうやってあたしのことを心配してくれる
すごく優しいあたしの大好きな人・・・。
- 69. 名無し募集中。。。 2009/08/15(土) 17:49:09.94 0
- 「じゃあ、あたしが高校生になったらもっと遠く連れてってくれる?」
「うん。どこでも連れてってあげるよ」
二人寄り添って笑った
どんなに泣いても悩んでも、一日の終わりにこうやって笑い合えればきっと明日もいい日になる
そんな気がした
「みや、大好き」
「うちも大好き」
最終更新:2009年08月23日 00:15