195. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 12:00:34.54 0
画像を見ているうちに眠ってしまったみたいで、目が覚めたら
部屋には穏やかな朝の光がカーテンを透かしていた。
握り締めていた携帯で時間を確認すると7時半を過ぎたところ。
みやは9時からスタジオに入るって言ってたから、そろそろ起こしても
平気かな?
リダイヤルの一番上に表示された番号を見ながら、通話ボタンを押した。

5回ほどダイヤル音が鳴って、通話モードに切り替わる。

196. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 12:04:14.52 0
「もしもし?」

「んん・・・りさこ?ふぁ・・・。」

欠伸交じりのおはよう。寝ぼけたみやの声。
聞きなれたそれはとても耳に愛しく響く。

「おはよう。朝だよー。起きてくださーい。」
「んー・・・。起きてるよー・・・・。」
「7時半過ぎたよ。そろそろ用意しなきゃだよ。」
「あー。んーー・・・。ねむい・・・。もうちょっと・・・。」
「だーめ。二度寝したら間に合わなくなるもん。」
「ねむいーー。」

197. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 12:08:27.52 0
子供みたい。ついくすっと笑ってしまった。
いつもならちょっと怒るみやだけど、眠くて気づいていないのか
引き続きねむいやだーと駄々をこねている。

「んー・・・。オヤスミ。」

笑って口を押さえていたらみやが本格的に眠りに入りそうになっていた。
慌てて受話器に口を近づける。

「だめーー!!!!」
「うわっ。」

思ったより大きな声が出たみたい。
あたし見かけによらず超え大きいねってよく言われるんだよね・・。

198. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 12:14:28.68 0
「・・・ん、ばっちり起きた。」
「ご、ごめん大きな声出しちゃって。」
「ううん、あれくらいじゃないとうち起きないよ。いつもありがとうね」

それにしても。あの声は結構使えるかも、今度うちのバンドでちょっと歌ってみない?
なんてみやは少し笑ってあたしをからかった。

「ってゆうかこのまま支度したら少し梨沙子のところ寄る時間あるかも。行っていい?」
「もちろん!!」

朝からデートできる。デートなんていうほどの事じゃないかもしれないけど、でもやっぱり
みやと会うなら一分だって一秒だってデートだもん。
一気に上がったテンションのまま朝の支度を済ませた。
203. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 16:31:48.80 0
「おはよー梨沙子」
「おはよーみやあ」

しばらくして、みやが家まで来てくれた
あまり時間がないから部屋には入らず外で立ち話
少しの時間だけど、こうして朝からみやに会えてあたしは終始ニコニコしていた

「あ、今日途中まで一緒に行く」
「どっか行くの?」
「うん。ちょっと服でも買い行こうかなーって」

ほんとはみやの誕生日プレゼントを見に行くんだけど、もちろん秘密
プレゼントはだいぶ前から探してはいるんだけど、悩みすぎて毎回買えないまま今日まできてしまった
みやの誕生日まであと少し
さすがにそろそろ本気で買わないとやばい

「じゃあぼちぼち行きますかー」

みやが自転車にまたがる
あたしはいつものようにみやのギターケースを背負ってうしろへ乗った
207. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 18:53:48.07 0
「あーもうほんとどうしよ・・・」

やっぱり決まらない。
今日も決まらない。
さっきから色んなお店を行ったり来たり・・・
あれでもないこれでもないと悩んでるうちにとうとうお昼を過ぎてしまった。

プレゼント、みやなら何をあげても喜んでくれると思う。
でも、だからこそ何をあげていいのか分からない。
心に残るものをあげたいんだけど、恋人にプレゼントなんて初めての経験だしあたしはもうチンプンカンプン・・・

ネックレスとか指輪も考えた。
だけど、そういうのだったらどうせならお揃いでつけたい。
でも2つ買うとなるとお金も2倍かかるからあたしのお小遣いじゃどうしても安物になっちゃうわけで・・・
みやはおしゃれだから安物のアクセなんてあげたら逆に迷惑だと思うし・・・

やっぱり、自分のを我慢してみやだけにアクセサリー買おうかな・・・。
プレゼントは値段じゃないとは思うけど、少しでもいいものあげたいし。

そんなことを考えながらぼーっと歩いていると、ドンと誰かにぶつかった。
208. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 19:10:01.34 0
「すいませんっ!」
「あ、いえ」

振り返った時にはその人はもうあたしが来た方の道へ向かってスタスタと歩いていた。
小柄な後ろ姿。ピンクのおっきいスーツケースが人混みでも目立つ。


(あれ?今の人って・・・)


一瞬見えた横顔に見覚えがあるような気がして、
あたしはしばらく街行く人の群れの中にポツンと佇んでいた。
215. 名無し募集中。。。 2009/08/20(木) 22:57:16.59 0
雑踏を目の前に一瞬見えた横顔、ピンクの・・・ピンク・・・

「あ!ピーチ姫!!!!」

つい大きな声で叫んでしまった
道を行く人にジロジロ見られてる・・・
あたしバカだぁ・・・
恥ずかしくなり俯いてその場をさろうと思った


「って・・・待って!りさこちゃん!?」
ガラガラとピンクのスーツケースを転がして
ピーチ姫さんがあたしの元に駆け寄る

「ビックリしたぁ!急に名前呼ばれるから♪」
ウインクしながらキャピッとした風におどけるピーチ姫さん
「・・・う〜・・・つい叫んで恥ずかしくなったんだもん」
まだ恥ずかしいけど・・・ずいぶん久しぶりだな、なんてあたしは嬉しくなる
225. 名無し募集中。。。 2009/08/21(金) 00:07:53.11 0
ピーチ姫さんはニコニコしながらあたしの顔を覗き込んでくる
「梨沙子ちゃんはどうしたの?一人?」
「あ、はい」
「そうなんだー!買い物とか?」
「はい、でも・・・ピーチ姫さんは・・・なんでそんな大きな荷物・・・?」
「えー?うふふ、知りたい?知りたい?」
「ま、まあ気になっちゃうんだもん」
あたしはピーチ姫さんの迫力におされてついうなずいた

「えー、しょうがないなー、実はねぇ・・・ある人に会いに来たんだ」
「ある人・・・?」
「うん・・・すごく大事な人に」
そう言ったピーチ姫さんの顔は今までが嘘のように真剣な顔をしていた
227. 名無し募集中。。。 2009/08/21(金) 00:52:23.36 0
おどけてばかりいるけど時折見せる真剣な顔
ピーチ姫さんにも大切な人がいたんだっけ・・・

「あ!すいません引きとめちゃって・・・」
「ううん!もぉもね、りさこちゃんにまた会えて良かった」

今度はふんわりと優しくピーチ姫さんは微笑む
それからまた多分近い内に会えるんじゃないかな
というピーチ姫さんの適当な返事でバイバイと別れた

別れ際に

「なんか、もぉね・・・りさこちゃんとはまた必ず会える気がしてた」

だから今度もまた会えるよ、またね〜♪

なんて楽しそうに言うピーチ姫さんの言葉にあたしも実は同じ思いだった
なんか、なんていうかまたすぐ会える・・・
連絡先を聞かなくてもピーチ姫さんとは必ず会えるって気がしたんだもん
235. 名無し募集中。。。 2009/08/21(金) 01:37:13.82 0
ピーチ姫さんと別れてまた一人になる
前に学校で会ったから、てっきりこの辺に住んでる人なのかと思ってたけど違ったみたい
あの荷物からして、きっと遠くからわざわざ来たんだろう
大事な人に会うために

前だったらそういうの、バカみたいとか信じられないとか思ったかもしれないけど
今ならピーチ姫さんの気持ちが分かる
誰かを想う気持ちとか、誰かを求める気持ちとか、今ならよく分かる

だから、誰に会うかは知らないけど、ピーチ姫さん頑張ってね
会えるといいね、その人に

そんなことを思いながら、あたしは買い物に戻った
大事な人へのプレゼントを求めて―――
最終更新:2009年08月23日 00:22