341. 名無し募集中。。。 2009/08/25(火) 11:20:58.26 O
「かんぱーい!!!」

外の見つからないような所でこっそり乾杯…の予定が、
結構大きな声を出しちゃった。
「やばっ」とか言ってるものの、それすら大声なキャプ、熊井ちゃん、真野先輩、うち。
なんかバカみたいで面白くて、4人同時に吹き出した。


ライブは大盛況で幕を閉じた。
お客さんがくれた拍手が今も耳から離れない。
緊張した。だけどそれ以上に楽しかった。
感動した。夢みたいだった。
うちらの興奮はしばらく醒めそうにない。

「愛理たちもうすぐ来るってー」

携帯を見ながらキャプが言う。
あぁ早く梨沙子に会いたい。
会って聞きたい。
感想を聞きたい。

まだかなまだかな?と、梨沙子が来るのを待っていた。

するとうしろから「…みや?」と呼ぶ声が聞こえた。

うちは迷わず、笑顔で振り向いた。
387. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 08:53:12.43 O
一瞬、頭の中が真っ白になった。

「……うそ…」

手に持ってたコーラが地面に落ちる。
なんで…?どうして…?
どうして…ここにいるの…?
これは夢…?

「も、も…なの?」
「みや…久しぶり」

変わらない笑顔で微笑むもも。
あぁ、ももだ…
ももが目の前にいるんだ…
次の瞬間、心の奥に眠ってた思い出が一気に溢れだした。
もう無意識だった。
頭で考えるより先に、うちの足はももに向かって走りだしていた。
388. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 08:58:08.69 O
何を考えてたかと聞かれたら正直分からない。
ただ、本当に本物かどうか確かめたくて、現実かを確かめたくて
うちはももを思いきり抱き締めた。

周りの声も、雑音も何も聞こえない。
感じているのはももの温もりだけ。

ももの腕がうちの背中に回ると、堪えてた涙が溢れ出した。
うちは泣きながら、ももをひたすら抱きしめ続けた。



この行為が、どれだけ梨沙子を傷付け悲しませたのか
この時の自分は全然気付いていなかった。
397. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 13:11:02.96 O
「愛理…?」

キャプの声にハッと我に返る。
ももを離して振り向くと、目に涙を溜めた愛理ちゃんがうちを睨んでいた。
隣に梨沙子はいない。

「…梨沙子は?」

愛理ちゃんが小さく首を振ったのを見て、うちはすべてを悟った。

慌てて梨沙子のあとを追おうとする。
すると愛理ちゃんが強い力でうちの腕を掴んだ。

「これ以上りーちゃんを傷つけるつもりなら行かないでください!!」
400. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 14:19:24.51 0
「みや。うちが行くから」
うちの肩を優しく叩いたキャプは真剣な眼差しをして
そしてゆっくりと走り出した
「佐紀ちゃん!」
「ん?」
「りーちゃんこと…お願いします」
少し間があいてキャプが大きく「うん」と頷いた

うちは馬鹿だ…
もう梨沙子を追いかける資格もないんだね…
全部うちのせい…

「みや?」
ももがうちの手を握り心配そうにしている
やっとももに会えたのにうちの心の中は苦しさでいっぱいだった
405. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 16:27:39.14 O
「ももが心配しないで大丈夫だよ」

複雑な思いでそっとみやの手を握ると、振り向いてそう言ってくれた。
でもみやは悲しそうな顔をしていた。

みや。もぉにはね、どうしても伝えたいことがあるの。
だからここまで来たの。
これ以上胸に秘めとくことは出来ないんだ。
数年分の想いを、言葉にしたいんだ。
迷惑なことしてるのも、誰かを傷付けてるのも分かってる。
だけど、ここで引き下がれない。
伝えなきゃきっと後悔するから…。

「…みや、二人で話がしたい」
414. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 17:29:32.01 O
二人で話がしたい
ももにそう言われた

うちだって…
うちだって話したいよ
話したいこと、聞きたいことが山ほどある
文句の一つや二つだって言ってやりたい

でも、梨沙子をほっとけない…
梨沙子の傍にいなきゃ…
だってずっと一緒に…
うちらはずっと一緒にいるって…


「あ、キャプ戻ってきた」

熊井ちゃんに言われてバッと顔をあげる
だけど、そこに梨沙子はいなかった
戻ってきてくれなかった
424. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 18:48:16.83 0
「梨沙子は?」
「・・・帰ったよ・・・」
キャプの静かな口調が、却って胸騒ぎを引き起こす。

でも、どうしよう? どうしたらいいんだろう?

このままじゃいけない、それは分かってるんだけど、途方に暮れることしかできないうちの腕を、ももが引っ張る。

「ね、あっちで2人で話せない?」
「でも・・・」
「お願い!」

うちは昔からもものお願いに弱い。
わがままだと思っても、ついつい聞いてしまう。

「・・・・・」
愛理ちゃんの刺すような視線や、キャプの何かを語りかけているような目から敢えて顔を逸らして、
うちはももにひっぱられるままに、足を進めた。

425. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 18:54:29.90 0
さっきこっちを睨むように見ていた子から離れて物陰でみやと2人きりになって、
深呼吸して切り出した。

「ごめんね、突然現れて」
「・・・・・」
「もぉね、知ってたんだ、みやに恋人がいること、真野ちゃんに聞いて。
でもね、もぉ、その人に負けないくらい、みやのこと、好きだと思う。
ずっとずっと好きだったの」

みやが目を見開いてる。

「もぉね、来年の春には日本に戻ってくるの。
だから、もしみやが今でも少しでももぉのこと好きでいてくれるなら、待ってて欲しい。
みやとおなじガッコに行けるとは限らないけど、戻ってきたら、付き合って欲しい」

さっきより更に驚いた顔になって、金縛りに遭ったかのように硬直してしまったみや。

・・・少しは悩んでくれてる?

「・・・・・」
「・・・・・」
お互いに無言が続く。
打ち上げの喧騒はすぐ側なのに、ここだけが隔離された別世界のような静けさが漂っている。

「今すぐ答えてくれなくていいから。もぉ、待ってるから。
これまでだってずっとみやのこと想ってたんだし。」
426. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 18:56:23.73 0
これ、もぉの今の連絡先。そう言って携帯番号が書かれたメモを渡された。

それから、うちの肩に手を置いて、ももがゆっくりと近づいてきた。

キスされる・・・!
避けるべきなのか受け入れるべきなのか、悩んでいる間に唇が触れた。
・・・うちの頬に。

「誕生日、おめでと。
時間なくて、プレゼントが買えなくてごめんね。
今度渡すから」

今度・・・
次があるんだ・・・
427. 名無し募集中。。。 2009/08/27(木) 18:58:02.63 0
親戚んちにいて余り遅くなれないから、今日は帰るね、と言ったももと別れて、一人で家に向かう。

うちは完全に混乱してた。
フェスの興奮冷めやらぬ間に、ももと再会して、梨沙子が帰っちゃって、ももが帰ってくる・・・

そうでなくても、考えることは苦手なうちは、なんかもう、わけわかんなくなってて。
家に着いて、疲れ切ってソファーに倒れこんで、気付いたら眠ってしまって。


ベッドの上にそっと置いてあった綺麗にラッピングされた箱に気付いたのは、翌朝だった。
最終更新:2009年08月28日 00:18