456. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 00:12:39.89 O
「ん……」

朝の日差しで目が覚めた。
重い目蓋をなんとか開けて起き上がる。
…ソファで寝たせいか体があちこち痛い。

「梨沙子…」

そっと呟いてみたけど、返事が返ってくることはない。
もしかしたら朝起きたら部屋にいるかも、なんて思っていたけど
梨沙子はやっぱりいなかった。
洗面所に並んだオレンジと黄色の歯ブラシだけが仲良く並んでいた。

沈んだ気持ちのまま、とりあえずベッドに移動しようと寝室へ行く。
すると、何かが枕元に置いてあった。

――…!まさかっ

ただでさえ起きた時からモヤモヤしてた心が、さらに締め付けられた。
457. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 00:15:56.28 O
ベッドに置かれたその箱を大事に手に取る。それは可愛くラッピングされていて、カードも添えられていた。

『みやへ☆
みや、お誕生日おめでとう♪
みやが生まれたこの日はあたしにとってもすごく大事な日です。
みやに出会えてよかったです。
大好きだよ♪りさこより☆』

うちは涙ぐんだまま、思い出したように冷蔵庫に走った。
勢いよく開けると、そこにはうちの予想通り、
梨沙子の手作りケーキが入っていた。

「梨沙子…ごめんっ…」

うちは梨沙子の気持ちを
梨沙子の信頼を
梨沙子との絆を
昨日一瞬にして踏み躙ったんだと改めて痛感して、
情けなくて声を出して泣いた。

462. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 00:43:02.98 O
ももがみやの前に現れた。
そして、梨沙子ちゃんがみやの前からいなくなった。

…どうして神様は、みやに試練ばかりを与えるのかな?


フェスの次の日、みやが心配でお節介を承知でみやの家までやって来た。
最近は使わなくなった合鍵で中に入る。

少しでもいい。
元気を、勇気を与えたい。
私ならきっとみやの力になれる…
そんなことを自意識過剰に思っていた。

でも私は、みやが想像以上に心の傷を抱えていたこと。
そして自分の無力さを思い知ることになる。

…みやは、冷蔵庫の前で苦しそうに泣いていた。
463. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 01:03:31.48 0
「みや・・・」
みやの背中に声をかける
みやはあたしの声に一瞬びくっとさせたけど振り向くことはなかった

だからあたしはみやに近づいて肩に手を置く
するとみやはゆっくりと顔をこちらに向けた

「真野・・・先輩・・・」
「みや・・・」
頬に手をそっと添えるとみやはあたしを抱きしめ首筋に吸い付きそのまま床に押し倒した
472. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 08:59:05.58 O
びっくりして抵抗するけど、みやは私の上からどかない。
…昔だったらきっとこのまましていたね。
だけど、今は違う。
首筋を這ってたみやの唇が私のそれに重なりそうになった時、
私は思いっきりみやの頬をひっぱたいた。

「バカみや!!何考えてんの!」

みやは頬を抑えながら、ゆっくり私の上からどいた。
起き上がってみやと向かい合う。

「そんなんじゃ、何もかも失うよ?しっかりしなさい!」

私は泣きそうになるのをなんとか堪えて、みやの頭を撫でた。
474. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 09:43:44.55 O
「…どっちも選べないから、どっちとも離れようと思ったの?」

みやの髪を撫でながら問う。
すでに大粒の涙を流してるみや。
ここまで泣いて、ここまで自分を失ってるみやを見るのは初めてかもしれない。
しばらく見守ってると、みやがぽつりぽつりと話しだした。

「先輩っ…うち、心のどこかで思ってたんです…
梨沙子は…きっと待っててくれてるって…」
「…うん」
「ちゃんと話せば許してくれるんじゃないかとか、調子いいこと思ってた…
だけど…きっと今も、少しずつうちから離れていってる…」
「どうしてそう思うの?」
「だってこんなに…ひどいことしたから…」

開けっ放しの冷蔵庫の中、そしてみやの手にあるプレゼントを見て
私も胸が痛くなった。
みやも心配だけど…梨沙子ちゃん大丈夫かな…

「今すぐっ…会いたい…会ってつかまえておきたい…
でも…今のままじゃ梨沙子に言える言葉がない…」
「そっか…」
「選べない…うちには選べないよぉっ…」


泣きすぎで呼吸が苦しそうなみやを、私はひたすら撫でていた。
どんなアドバイスをすればいいのか、何が正しいのか
私には当分分かりそうもない。
475. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 10:41:35.85 O
「うち・・・最低なんです」
目をぎゅっと閉じて涙を止めようとするみや
「どうして?」
「うち、あのあと・・・ももに言われたんです
うちのことが好きだって」
「え・・・」

もも言ったんだ・・・
こうするってわかってたけどいざ、本当に聞くと動揺してしまう

「来年の春には帰ってくるから待っててほしいって
付き合ってほしいって・・・



うち、それ聞いて心の奥の方で嬉しいって思ってしまったんです・・・」
477. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 12:44:21.19 O
ももが、戻ってくる・・・・?

みやもだろうけど、私も動揺してる。
そして、私もだけど、みやはもっと混乱してるんだろう。

寂しがり屋で、優しくて、てゆうより、ちょっと優柔不断で人を拒むことができないみやは、
どうしていいかわからないんだろう。

でも、このままじゃ、みんな傷つくよ。
誰も幸せになれないよ。


・・・しょうがない。
私がカンフル剤になるとするか。
私も、みやが好きだし。
みんな、好きだし。

悪役を買って出てあげますよ。
吉と出るか凶と出るか、それが誰にとってなのか、
予想もつかないけれど。
478. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 12:51:21.36 O
「良かったじゃん」
「え?」
「ずっとみや、もものこと好きだったんだし」
「でも・・・」
「戻ってくるなら、もう寂しい思いもしなくていいじゃん?」
「だけど、梨沙子が・・・」

「梨沙子ちゃんはさ、私にちょうだいよ」
「は?!」
「だからぁ、梨沙子ちゃんが欲しいって言ってるの」
「ちょ、真野先輩。何言ってるんです?」
「この間話した時に思ったんだけどさ、梨沙子ちゃん、すごくかわいいんだもん。
それに、15とは思えないくらい色っぽいしね。
って、そんなこと、みやはよーく知ってるだろうけど」
わざといやらしい微笑を浮かべて言う。
479. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 12:56:07.46 O
「ま、待ってください! うち、別に梨沙子と別れたいわけじゃ・・・」
「わかってるよ。でもそれって、寂しいからキープしたいだけでしょ?
今別れなくったって、ももが戻ってきたら結局そっちに行くんでしょ?
それまでの繋ぎでしょ?」
「そんなんじゃないです!」
みやが大声で反論するけど、冷静に応える。
「そっかな? そうは見えないけどな。
梨沙子ちゃんもそう思ったと思うよ? 昨日のみや見たら。
ま、元々判ってたみたいだけどね?」
「え? な、なにがです?」
「自分だけにはならないってこと。
梨沙子ちゃんにはみやしかいないけど、
みやは梨沙子ちゃんだけには永遠にならないってこと」
「そんな・・・」

480. 名無し募集中。。。B 2009/08/28(金) 12:59:59.87 O
「この間、そんなこと言ってた、寂しそうに。
あれ見てね、愛しくなったの。
あんな風に一途に誰かを想える子ってすごく素敵だなって思った。
今はみやのことしか見てないけど、私のことを見て欲しいなーって思ってたの。
だからね、みやは遠慮なくもものとこに行きな?
梨沙子ちゃんは、私が大切にするよ。
私は梨沙子ちゃん一人だけを好きでいられる自信があるし」

口を挟む暇も与えないで、一気にまくし立てる。
みやは、呆然と私を見ていた。


・・・さぁ、みや、どうする?
そろそろ、腹を括りなよ。
483. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 13:55:10.25 O
「……………め、ダメだよ……」
絞り出すようにみやは呟く。

「みやに―――今のみやにそんなこと言う資格あるの?
彼女がいるくせに違う女を抱きしめて
挙げ句に泣かせてばっかりなんじゃない?」
今はみやが泣いてるけど…

涙を流したままあたしを見つめるみや。
そんな顔は今までみたことなかった。

恋に正解なんてないだろうけど
あたしは信じたい。
過去の恋だったモノが焼け木杭に火がつく可能性だってある。

わかんないことばかりだけどみやが今求めてるのは誰なのか
早くハッキリ自覚しなさいよ!!
496. 名無し募集中。。。 2009/08/28(金) 20:20:11.88 O
「ちょっと頭冷やして考えな」

最後にそれだけ言って真野先輩は帰って行った。
部屋に一人になると、とたんに物凄く寂しくなった。

――梨沙子ちゃんはさ、私にちょうだいよ

さっきの先輩の言葉が胸に刺さる。
先輩、本気かな…
本気で梨沙子に惚れたのかな…

梨沙子がうち以外の誰かのものになるなんて絶対に嫌なのに、
それを強く主張できない自分が酷く情けなく思えた。

――キープしたいだけでしょ?

違う、違うよ…
梨沙子はももの代わりじゃないもん…
寂しいからじゃなくて、梨沙子だから側にいてほしいんだ…


…だったら梨沙子を迎えにいけばいいのに、どうしてうちの足は動かないんだろう…
どうしてももがくれたメモを握り締めてるんだろう…
最終更新:2009年09月01日 00:04