571. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 17:59:55.51 0
気がついたら夕方になっていた
うちはぼーっとしながら立ち上がる

夕飯準備しなきゃ・・・
夏休みに入ってからはいつも梨沙子がご飯を作ってうちの帰りを待ってくれていた

もう梨沙子の手料理を食べることもないんだ・・・
そう思うと涙があふれて来そうになってけどそんな資格すらうちにはないから・・・
ぎゅっと涙をこらえて携帯と財布を持って外に出た
572. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 18:20:56.16 0
マンションの入り口に見慣れた小柄な人影を見つけて、
息が止まりそうになった。

「あ、みや!」

ももがいつもの人懐っこい笑顔で駆け寄ってきた。

「やっぱり、まだここに住んでたんだね!
場所はわかってたんだけど、部屋の番号を覚えてなくてさー、
ポストにも名前書いてないし、どーしよーって思ってたから、
会えて良かったー!」

これまたいつもの、喜んでいる子犬のような勢いでももが言った。
573. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 18:22:34.96 0
「どこ、行くの?」
「あ、夕飯買いに・・・」
「一緒に行こ!」
「え?」
「ももさ、夏休みいっぱいしか日本にいられないからさ、
出来る限りみやと一緒にいたいんだ。
叔母さんに言っとけば、泊まったりもできるし」

うちの恋人の存在なんか、全然気にしてないように振舞うもも。

その強引さに、前も振り回された。
でもうちはなぜかそれがイヤじゃなくて、
どこか喜んでるところすらあった。

今。
少し困るけど。
無邪気に嬉しいとは思わないけど。

拒む元気と、一人の寂しさを我慢する気力は、この時のうちにはなかった。
576. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 18:44:08.93 0
コンビニにももと二人で入る
ももがいなくなる前、いつもフリースロー対決に勝ったうちは
ここでももにジュースをおごってもらっていた・・・

もももきっとそれを思い出したのかな
「なんかここにみやと来るの懐かしいね」
満面の笑顔をうちに向けてくる

「ももバスケ下手くそだからねぇ、あの頃は御馳走様でした―」
こうやってももと二人でここに来るのが楽しみだったあの頃に戻った気がして
うちは気がついたら昔みたいにももに憎まれ口すら叩いていた

「あー!またみやはそうやって意地悪言うんだからー」
ももは頬をぶーっと膨らませながらお菓子コーナーに駆けて行った
579. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 19:52:14.87 0
「ちょっともも! 夕飯買いに来たんだから!」
「えー、お菓子欲しい!」


・・・・・・・・・。


『みや!? どこに行ってるの!?』
『アイスコーナー』
『もう! 晩御飯買いに来たんだから』
『だってアイスも欲しい』
『もう・・・。後で買うから、先に晩御飯!』
『ハイハイ』

記憶がフラッシュバックする。
梨沙子と買い物―――梨沙子がうちで作ってくれるから、コンビニじゃなくてもっぱらスーパーで―――した時の記憶が。
580. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 19:55:29.15 0
『何食べたい?』
『エビフライ』
『また? この間もエビフライ食べたじゃん』
『だって、好きなんだもん』
『みやって、エビフライ好きすぎ。
もしかして、あたしよりエビフライの方が好きなんじゃない?』
『そうかも』
『ひっどーい!』

拗ねた梨沙子の顔が鮮明に浮かんで思わず出た微笑みは、すぐに消えた。

お互いにお互いが好きだとわかってたからこその冗談、
そんな甘かったエピソードは今、うちの胸を締め付ける苦しい過去。

・・・・・・・・・。

ダメだ。
すぐに梨沙子のことが浮かんじゃう。

もう、こんなことはないんだから。
梨沙子はうちを嫌いになったんだから。

頭を振って、ももに近寄った。

「先にご飯選ぼ」
「いいよー。後でお菓子もね」
「ハイハイ」
581. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 19:57:50.56 0
「何にする?」
「うーん・・・ももは?」
「もぉはねぇ・・・」


そう言えば。
梨沙子は何が好きだったんだろう?

いつもうちの好きなものばかり聞いてくれて、作ってくれて、
梨沙子の好きなものを作ったことなんて・・・
てゆうか、梨沙子の好きなもの・・・うち・・・知らない・・・・?


梨沙子はいつだってうちのことを一番に、
ううん、うちのことだけ考えてる子だった。

嫌がらせされても黙ってるような、
自分のことはそっちのけで、うちを想ってくれてる子だった。

バカだ。
うち、ほんとバカだ。
そんな想いを踏みにじるなんて。

582. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 20:01:02.80 0
「みや?」
「え?」
「どしたの? ぼーっとして」
「あ、ううん。なんでもない」

ももの呼びかけに現実に戻る。
なんだか、ずっとずっと梨沙子のことばかり考えてる。

もう、忘れないと・・・。
忘れないといけないよね・・・。
583. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 20:17:30.42 0
結局お弁当やらおにぎりやら夕飯になるものよりも
ももが買い物かごに入れたお菓子やジュースの方が多くなった
「もも・・・勝手に色々買い込み過ぎ・・・」
「えー!いいじゃーん!食べたかったんだもん」

「・・・」
「・・・なによぉー」
「・・・財布持ってなかったくせに・・・」
「んー?なぁにー?聞こえなーい」
「・・・はぁ・・・もういいよ」
「もー、みや怒っちゃやぁ!ねぇねぇ、あの海行こうよ!」
そういってももはうちの返事を待たずに自転車の後ろに座った
588. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 21:33:44.84 0
わかってた、みやがすごく戸惑っていること
だけどももはもう諦めるのはやめたんだ
たとえみやが今ももよりも好きな人がいるとしても、それでも諦めたくない

1年前までももの特等席だったみやの自転車の後ろに乗る
その瞬間みやが並みか言いたげな表情をしたけど見ないふりをした

「もも、なんか重くなってない?」
「えー、そんなことないもん!」
「いやいや、絶対重い・・・スピードが・・・」
なんて言いながらわざとペダルをゆっくり漕ぎ始めるみや
あいかわらずももに対して意地悪なんだから・・・

そんなやりとりすら懐かしくてみやの腰にギュッと抱きつくと
みやは急におとなしくなって・・・

それから海に着くまでももたちはお互い何も話さずただ生暖かい風を感じていた
599. 名無し募集中。。。 2009/08/30(日) 23:44:43.11 0
「わぁー!!この海久しぶりー!」
ももは海に着くなり一人で自転車を降りて砂浜に駆けて行く
ホントすぐに暴走するんだから・・・
うちはため息をひとつついた後コンビニの袋を持ってももを追いかけた

ももは海に片足をつっこんでみたりときゃっきゃとはしゃいでいる
こういうところは昔から変わってない、なんか年上とは思えない

「もも、危ないからこっちおいで」
「はーい!!」
そう言ってももはうちの隣にちょこんと座るとすぐさま袋をゴソゴソして勝手にお菓子を食べ始めた
602. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 00:17:15.12 0
みやと二人海を眺めながら並んで座る
ももはみやが買ってくれたお菓子とジュース
みやはお弁当とお茶をそれぞれ口にする

そういえばみやの両親も去年から海外なんだっけ?
ってことはみや、今まで夕飯とかどうしてたんだろう
ふとそう疑問に思ってみやに質問をぶつけてみる

「ねぇ、みや?」
「ん?」
「もしかして夕飯っていつも外食?コンビニとかで食べてるの?」
「え・・・」
ももの質問に箸を止めるみや
あれ・・・?もも、聞いちゃいけないことだった・・・?

「・・・これからはちゃんと自分で作るよ」
みやは眉を困らせたように下げるとまたお茶をきゅっと飲んだ
610. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 10:37:51.82 O
「てゆーかさ、ももは一体どこに行ってたわけ?」
「え?」
「急に海外とか、どうしちゃったの?親の転勤とか?」

また思い出してしまった梨沙子のことをかき消すように、
うちはももにずっと気になってたことを聞いた。

ももは少し顔を俯かせたけど、すぐにいつもの明るい声で言った。

「なになにー?そんなに知りたいのぉ?みや。
ももに興味深々だね♪」
「…やっぱいいや。どうでもいいし。」
「ひどーいみや!」

肩をポコスカ叩いてくるももを軽くあしらう。
昔からももの前だとあんまり素直になれないのは自分でも分かってる。
まぁこれはこれで楽しいんだけど。

(…梨沙子の前だと、うちどうだったのかな)

……ってダメダメ。
すぐに梨沙子のこと考えちゃう。
他のこと考えなきゃ…他のこと…。
こんなんじゃいつまで経っても忘れられない…。

「ねぇみや」
「……なに?」
「今、誰のこと考えてた?」
613. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 13:37:16.87 O
誰のこと…

「何が?」
うちはももに聞かれて「梨沙子のことだよ」なんて言えず
はぐらかすように下手くそな笑顔で返した。

「みやもさ、もぉのこと好きだよね?」
ももの完璧な作り笑いにうちは黙り込む。
好き、うちはもものこと好きだ。
でも、さっき考えてたのは…
今日ずっと思い浮かぶのは…



梨沙子だった。




短いけど梨沙子と過ごした日々が頭を駆け巡っていたんだ。

「みや!聞いてる?」
「うん、もものこと好きだったよ」

615. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 14:31:06.25 O
「…今は、好きじゃない?」

ももは悲しそうに微笑んだ。
好きじゃない…わけがない。
うちは首を振ってそれを否定する。

でも……

「もものこと、大切だよ。だけど、もう一人大切な子がいる」

苦しんでたうちに希望をくれた子がいる。
もう忘れなきゃいけないけど
すごく大好きだった子。


…うちって一体なんなんだろうね。
梨沙子がいる時はももの影を追い掛けて、
ももといる時は梨沙子を…

結局無い物ねだりじゃんね。
623. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 15:53:22.45 O
「・・・どんな子?」
「どんなって・・・・。
うちより少し背は高くて・・・大きな子犬みたいな子。
すっごい可愛いんだけど、顔、くしゃくしゃにして・・エヘーって笑うの・・・」

梨沙子のことを口にしていたら、目頭が熱くなってきた。

「・・・素直、なんだけど・・頑固な・・・トコ、も・・あって・・・・」

唇が震えて、それ以上喋れなくて。
うちは、うな垂れて頭を載せた膝を抱える。

「どうして泣くの?」
「・・もう、会えないから・・・」
「なんで? もぉのせい?」
「違う! ・・・うちのせい。うちが悪いの・・・。
好かれてることに甘えて、最悪に傷つけちゃったから・・・」
626. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 15:55:20.25 O
「じゃあ、もう彼女さんとは終わったの?」
「・・・多分」
うつむいたまま、小さな声で答える。

「だったらさ・・・もぉと付き合っても良くない?」
「・・・・・」
「その子のこと、まだ、好きなままでいいからさ」
「・・・・・」
「もぉは構わないよ?」
「・・・・・」
「・・・・・」
631. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 16:46:15.05 0
「だめだよ、そんなの・・・」
「どうして?」
「繰り返すから・・・同じこと・・・」

このまま付き合ったってどうせももを傷つけちゃうよ。
きっと梨沙子と同じように。
うちの心の中に二人がいる限り、いつか絶対、二人とも傷つける・・・。

「はあ・・・」

ももは大きくため息をついてそのまま後ろに倒れた。
砂浜に横になりながら星空を見上げてる。
嫌われたかと不安になってももをじっと見つめた。

「こんだけカマかけても駄目ってことは、ホントに駄目なんだね」
「・・・・」
「みやは押したらすぐ倒れるかと思ってた」

うちの心配をよそにクスクス笑ってるもも。
どういうこと?と目で訴えると、ももはうちの方を向いて言った。
632. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 16:48:39.17 0
「みや、ももがいなくなって、どう思った?」
「えっ・・・ショ、ショックだったよ」
「あとは?」
「あとは・・・後悔した」
「何を?」
「・・・好きって言えなかったこととか・・・幸せにできなかったこと・・・かな」
「・・・だからだよ、みや」
「え?」
「だからみやはももを忘れられなかったんだよ」
「・・・・」
「楽しかったことは思い出に出来たけど、つらいことだけは思い出に出来なかったんだよ」
「・・・・」
「みやは過去のトラウマにとらわれてただけ。
みやは彼女に出会ってから、ずっと彼女だけを好きだったんだと思うよ?」
「・・・・・」
「みやは、同時に2人を好きになれるほど器用じゃないでしょ?」
646. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 21:55:03.06 0
淡々と話すもも。
なんだかその目が潤んでる気がして、思わず視線を逸らして海を見た。

もも、うちそんなこと言われたってよく分かんないよ・・・
うちが忘れられなかったのは“もも”じゃなくて“つらかった時の記憶”ってこと?
うちが好きだったのは、執着してたのは、過去の思い出だったってこと?
分かんない・・・意味分かんないよバカ・・・

「ていうか本当はこんなこと言いたくなかったんだけどね。
みや、分かりやすいんだもん。すぐ分かるよ」
「・・・」
「その子が頭から離れないくせに、無理しちゃってさ」

そう言うももの声は震えてた。
自分のことなのに分からなくて、ももまで泣かせてしまって
言葉に出来ないもどかしさがうちを襲った。
647. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 21:57:21.96 0
「難しいんだよ、ももの話は・・・」
「うん、みやバカだもんね」
「うっさい」
「・・・でもね、もし」
「・・・?」
「もし、それでもまたもものこと好きになってくれる可能性があるなら、付き合ってほしいんだ。
さっき言ったことを踏まえて、もう一回考えてほしい。」
「・・・・」
「ももは、これからみやに好きになってもらえればいい。だから諦めないよ。
彼女のとこに戻る気がないなら、もものところに来てほしい」
650. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 22:34:31.09 0
戻る気・・・・・?

うちに戻る気があってもなくても一緒だよ・・・
梨沙子はもううちを受け入れてくれないんだから・・・

だからって、梨沙子はダメだから、じゃあももとってのはダメな気がする・・・

でも、それでもいいってももは言ってくれてる・・・

・・・・・・・

あーもう! わっかんない! わかんないよ!
651. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 22:36:53.79 0
「・・・今、彼女さんとは会えないんだよね?」
黙り込んでるうちに痺れを切らしたのか、ももがまた切り出した。

「うん・・・」
「じゃあさ、あと5日、ももと一緒におためし期間してみない?」
「え?」
「ももが現れて昨日に今日じゃん?
そんなすぐ、気持ちの整理とか決心とかできないよね?
別にいきなり恋人として、とかじゃなくていいからさ、
先輩後輩アーンド友達として過ごしてみようよ」
「・・・・・」
「それでさ、夏休み終わって、ももが帰る時に、
みやがもものこと、やっぱり「今」大切だって思ってくれたら付き合お?
彼女さんのことまだ好きでもいいからさ」
「・・・・・」
「でも、ももはやっぱり過去で「今」は彼女さんだけだって思ったら・・・
・・・そん時はキッパリ諦めるよ」

笑顔だけど、瞳の奥に切ない色を隠した真剣な目で言う。


今どうしたらいいのかわかんないうちは、
それもいいかもってちょっと思った。
664. 名無し募集中。。。 2009/08/31(月) 23:49:35.63 0
ももの真剣な目を見て・・・切ない瞳を見たくなくて
うちは気づいたらももをそっと抱き寄せていた

「・・・みや・・・?」
「・・・」
「・・・」

ももに驚いたように呼ばれてもうちは何を口にしたらいいかわからなくて
ただ抱きしめるしかなかった
ももはしばらくうちの腕の中でじたばたしてたけど
それからおとなしくなってうちの背中に腕を回した
689. 名無し募集中。。。 2009/09/01(火) 09:52:56.10 O
「ごめん…少しだけ……このままで」
みやは静かに呟いた
静かな中、波の音とみやの安定した心音がもぉの耳に響く。

みやはもぉを抱きしめてくれてる。
でもドキドキとか…ないんだね。


寂しがり屋のみや
自分のことを知らなすぎるみや
とても傷ついたようなみや

どれだけ、もぉはみやを苦しめたのかな。
きっと今も苦しめてる。
でも、もぉは前みたいに黙ってることはしたくない。
隙があればみやの弱さにだってつけ込む。

それくらい好きなんだよ、みや。
…ここまでやっても振り向いてもらえなければキッパリ諦めるよ?
全部みや次第なんだから…………
697. 名無し募集中。。。 2009/09/01(火) 18:13:05.48 0
ももをぎゅっと抱きしめて抱きしめて、思う

梨沙子とは違う体付き
梨沙子とは違う匂い
梨沙子とは違う体温

この温もりを愛しくは感じるけれど
それは、親しい人みんなに感じてきた温もりで

かつて真野先輩や梅田先輩と抱き合った時と同じ
カラダは熱くしてくれるけれど、どこか物足りなくて
ココロまで、それも燃えるほどに焦がしてはくれない

・・・今、ももとの距離はゼロなのに
こんなことを考えてるうちが
またももに恋をすることができるんだろうか・・・

どこか疚しさを感じて
さりげなくももの体から腕を離した

「・・・そろそろ帰ろっか・・・」
「・・・うん」

ももの顔には寂しさがはっきりと浮かんでいたけれど
気付かない振りをして、うちは立ち上がった
719. 名無し募集中。。。 2009/09/02(水) 12:50:14.62 O
親戚の家に泊まっているって言うとみやはももを送っていくって言ってくれた
そうやって優しいからももは諦められないんだよ・・・

「あっ、みや、ここ」
ずっと着かなければいいのになんて思ってたけどそんなわけにもいかず・・・
「うん、じゃあ」
みやはすぐに自転車に乗ろうとするからももはおもわずみやを引き止めた

「待って!!」
「ん?」
「あのさ・・・あの・・・その・・・」
「どうしたの?」
こんなこと言っていいのかな?・・・でも
「あのね!明日さ、あの・・・どこか行かない?
あ!映画とか!ほら、せっかく夏休みだし!」
緊張してきっとすごく早口になってたと思う
急に恥ずかしくなってきて俯いてしまう

「映画かぁ・・・まぁ・・・何もないしいいよ」
「ふぇ!!いいの?」
絶対断られると思ったのに簡単にOKが出てつい変な声が出てしまった

「ぷっ・・・何その声?」
そう言ってみやはあの意地悪な顔でももをからかった
728. 名無し募集中。。。 2009/09/02(水) 17:56:45.33 0
じゃあまた明日ね、と言ってももと別れた。
よく考えたら「また明日」なんてセリフ、ももに言うのは久しぶりだ。


――みやは過去のトラウマにとらわれてただけ。

自転車をゆっくり漕ぎながら、さっきももに言われた言葉を思い出す。
トラウマかは分からないけど、確かに辛かった。
ももがいなくなったあの日、うちは大好きな人に裏切られたような、置いていかれたような気分になって
とてつもない孤独感に襲われた。
そして後悔した。何も言えなかった自分に、何も出来なかった自分に。

それからずっと、消えたいって思ってた。

そんなうちが心から笑えるようになったのはいつからだろう。
幸せって思えるようになったのはいつからだろう。
心が一人ぼっちじゃなくなったのは、いつからだろう。

――みやは彼女に出会ってから、ずっと彼女だけを好きだったんだと思うよ?

うちは梨沙子だけを・・・?
そんなの、今となっちゃよく分からないよ・・・
でも、ももはそれを分かってても、それでもうちといたいって言ってくれた。
淡々と言ってたけど、どんな気持ちで言ってたんだろう。
どれだけ怖かったんだろう。
その想いの重さに足が震えた。
729. 名無し募集中。。。 2009/09/02(水) 18:01:05.84 0
「・・・梨沙子・・・どうして隣にいないの?」

いつも一緒にいたのに。
あんなに大好きだったのに。
寂しい夜はいつも側にいてくれたのに。
どうしてうちは失ったの?

気付けばうちは梨沙子の家の前まで来ていた。
2階の梨沙子の部屋にはまだ明かりがついてる。
しばらく2階を眺めていたけど、なんだかももを裏切ってる気がして家に帰ろうとした。
するとタイミングよく電気が消えた。

「・・・おやすみ、梨沙子」

ほんのちょっとでいい。
寝言でもいいから、うちの名前を呼んでほしい。
せめて夢の中ぐらい、うちの側にいてよ、梨沙子。
最終更新:2009年09月04日 23:40