- 801. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:35:43.26 0
- 大急ぎで家に戻って、目に入らないようにクローゼットにしまっていたものを取り出した。
慎重にラッピングをほどく。
破らないように、傷めないように。
梨沙子のココロに触れているつもりで。
出てきたのは、キレイな細工が施された、オルゴール付きの陶器のジュエリーボックス。
ねじを回そうと裏返すと、タイトルのシールが貼ってあった。
松浦亜弥の「dearest.」・・・?
どんな歌だったっけ?
蓋を開けると流れてきた、聴いたことのある優しいメロディー。
『君と巡り逢えた奇跡が この空の下で輝いてる』
歌詞を思い出して愕然とする。
- 802. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:38:28.36 0
- よく中を見ると、そこには小さなメモ。
震える手で取り出して開く。
「あたし、ココロはずっとみやのそばにいるけど
カラダもいつも一緒ってわけにいかないから
だから、あたしがいない時は、このオルゴールを聴いててね
中に入れるアクセサリー、今度お揃いで買おうね♪」
視界がぼやけてくる。
梨沙子! 梨沙子! 梨沙子!
油断すると大声を出して叫びそうだった。
『世界中でただ一人 君が好きだよ その手をずっと離さないでいてね』
サビの歌詞が頭に浮かんだ時、自分を抑えられなくなった。
狂いそうなほど梨沙子が恋しかった。
気が付いたら、部屋を飛び出して、梨沙子んちへと駆け出していた。
梨沙子目線
- 804. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:45:55.16 O
- 真野先輩にはご飯は家で食べるって言ってるからって断って帰って来て、
ママにはご飯は食べて来たって言って、部屋にすぐ入った。
- 797. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:28:32.87 O
- まだ、あたしショックなんて受ける感情はあったんだ…。
彼女とももさんが手を繋いでいる場面を目の当たりにして
あたしは胸が刺されたようにズキズキしてた。
でも心とは裏腹に意外と簡単に笑顔は作れて……
感情も無くなればいい!
そうすれば何も痛くないし悲しくもない。
恋なんて知りたくなかった。
知りたくなかったよ………
- 805. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:48:27.20 0
- 床にへたり込んで、ベッドにもたれてそんなことを考えていると、
耳に馴染んだ着メロが鳴って、
飛び上がってお尻が床から離れたんじゃないかってくらい驚いた。
『みや』
そう表示されている携帯の画面を見つめる。
何の用なの? これ以上、あたしを踏みにじらないで。
だけど、思っていたよりも短いコールで電話は切れた。
ガッカリしている自分につくづく呆れる。
バッカじゃないの、あたし。
なに期待してんだか。
あー、もうやめやめ!
あたしもシャワーしてこよっ!
立ち上がろうとしたら今度はメール音がして、
またびっくりして腰が砕けたみたいに座り込んでしまった。
雅目線
- 806. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:49:57.68 0
- 電話をかけても予想通り梨沙子は出てくれなかった。
しつこく鳴らしても無駄だとわかっているから、早目に切ってメールを打った。
『今、家にいるよね? 部屋の電気付いてるし。
出てこなくてもいいから、窓の外見てくれないかな?』
窓を見上げて待っていたけれど、部屋の中で人が動く気配はなかった。
やっぱダメか・・・。
これも予想してたけど、ちょっと堪える。
仕方がないから、一方通行のメールをまた送る。
『遅くなっちゃったけど、プレゼントありがとう』
一方通行ってより、既に独り言みたいなものだよね、と思いながらまたメールを送る。
『すごく、嬉しかった。大切にするよ』
これには返事をくれるんじゃないだろうか?
5分くらい? 3分?
ううん、本当は1分くらいかも知れない――待つ身には時間が現実よりも随分長く感じられるから――期待して待ってみたけど
部屋の動きも、返事がくる様子もなかった。
- 807. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:51:28.19 O
- だよね・・・。梨沙子には、もう終わったことだもんね。
窓を見上げ続けるのが辛くなって俯いて携帯の画面を見つめる。
上を向いてる方が涙は止めやすいんだけど、誰も見てないからいいよね・・・。
この続きは・・・・・・伝えるべきかどうか・・・
今更こんなこと言っても仕方ない言葉が浮かんでくる。
だけど、もう会うこともメールを送ることもできないかも知れないから、
最後だから、と自分に弁解しながら、入力した。
梨沙子目線
- 808. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:52:33.78 0
- 『今、家にいるよね? 部屋の電気付いてるし。
出てこなくてもいいから、窓の外見てくれないかな?』
うそ!?
思わず窓に駆け寄りたくなったけど、ぐって踏みとどまる。
また傷つくだけだもん。
でも、無視してシャワーしに行こうとしても、結局それもできなくて、
そっと部屋を抜け出して、みやからは見えないように、電気の点いてない隣の部屋の窓から覗いた。
確かにみやはそこにいて、あたしの部屋を見上げていた。
胸が締め付けられて、自分がまだみやのことをちっとも吹っ切れてないことを思い知る。
『遅くなっちゃったけど、プレゼントありがとう』
またメールが来た。
どうしたらいいのかわからない・・・。
あたしの返事は期待してないかのように、次のメールが来た。
『すごく、嬉しかった。大切にするよ』
一体みやは何を考えてるんだろう、全然わかんないよ・・・。
さっきまでももさんと一緒にいたじゃん。
なのにどうして今こんなことをあたしに言うのよ・・・。
- 809. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:53:42.42 0
- 次が来るかと待っていたけれど、携帯は黙ったまんまで。
あぁ、これで最後にするのかも知れないな。
みやはあれで義理堅いから、もらった物のお礼をちゃんと言って、
ケリをつけようとしてるんだろうな・・・・
ぐるぐる考えて、そう結論付けようとした矢先に、またメール音がした。
雅目線
入力はしたものの、送信ボタンを押すのに躊躇する。
だって、余りにも惨めじゃん。
それに。
これが最後のメールになるんだろうから・・・。
でも。
伝えたい言葉を伝えないでいるより、
全部伝えて砕け散る方が吹っ切れるよね・・・
もう1度窓を見上げる。
やっぱり梨沙子の姿はない。
ふっ・・・
思わずこぼれた小さな苦笑が、背ならぬ指を押してくれた。
梨沙子目線
- 810. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:55:07.67 0
- は? 画面の文字が一読では信じられなくてもう1度読む。
読み直しても同じだった。
『これで梨沙子が側にいてくれてると思って暮らせるよ。
梨沙子はもう、そんなつもりがないのはわかってるけど・・・。
うちは、ずっと梨沙子のことを好きでいるから』
わけがわかんない。
あんなところに出くわした後に、なんでこんなこと言えるの!?
もしかして、ももさんが戻ってくるまであたしをキープしたいってこと?
それとも二股かけ続けるってこと?
信じらんない。
サイテーだよ、みや。
なんだかすごく腹が立って、思わず発信ボタンを押していた。
雅目線
- 811. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 07:56:50.72 0
- 送信ボタンを押した後、怖くて顔を上げることが出来なかった。
開くことのない窓を見るのは辛い。
もう帰ろう。
伝えたい言葉は伝えたし、これ以上ここにいると、死にたくなりそうだ。
失望と疲労と、どこか安堵の入り混じったため息をついて、
梨沙子の家を離れようとした。
・・・ら、いきなり電話が鳴った。
- 813. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 08:29:52.12 O
- 震える手で通話を押した
『あたしはキープにはなりたくない』
「え?あ、違っ…梨沙子をキープにするつもりなんかないよ!」
梨沙子の怒りが見えるような声色とキープという言葉にうちは驚いて否定した
『…っじゃあ、何で……』
「梨沙子が好き」
『……うそつき』
「ウソじゃないよ!
うちは梨沙子と離れてる間も心は梨沙子を求めてて…
ももと一緒にいる時も梨沙子のことが頭から離れなくて…
気づいたんだ。
うちが『今』、『これから』一緒に…
ずっと一緒にいたいのは…
梨沙子だって…」
携帯の向こうの梨沙子の顔は見えない。
何も答えてくれないのかな…梨沙子…
『ばか』
え?
- 814. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 08:40:25.11 O
- 「ばかって?え?」
プツッ―ツーツーツー…
そのまま通話は切られて……ああ…
もう本当に本当にダメなんだ――――
耐えていた涙がコンクリートに雨のように落ちる
「みやのばか」
!?
「っ、梨沙子……何で…」
玄関から顔を出して確かに梨沙子はそこにいた。
ゆっくりと、でも確かにうちの側にと距離を縮めてくれる。
「まだ、あたしみやのことわかんない」
「………」
「みやのこと、きっと信じられない」
「…っ、ごめ」
「それなのに、まだみやのこと好き」
梨沙子は淡々と言いながらハンカチでうちの涙を拭ってくれる。
そんな姿さえ愛しい。
あれ?梨沙子、今うちのこと好きって………
- 815. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 08:56:21.06 0
- 「みやなんて、キライになれたら楽なのに」
「そんな・・・」
「忘れようとしても、忘れられなくて
久しぶりに会ったと思ったらももさんといるし・・・」
「あれは・・・その、ももが変わってなすぎて・・・でも」
「ももさんといるときもあたしのこと考えてくれてたんでしょ?」
梨沙子は少し小悪魔みたいに笑った
綺麗な涙を零しながら梨沙子は微笑んだ
「嬉しい、でも、怖い」
「怖い?・・・何が」
「みやを好きになって、また」
ウラギラレルコト
梨沙子は前と変わらず優しかった
でも前とは違うガラス玉のような目をするようになったと・・・
うちはこのとき気づいた
でも、そういう風にさせたのもうち・・・なんだよね、きっと――――
- 818. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 12:08:39.98 O
- 「うち、梨沙子だけだって、信じてもらえるようにがんばるから」
梨沙子がまた、無邪気な笑いを浮かべてくれるように、そう思いながら雅は言った。
「だったら・・・」
「ん?」
「・・・・だったら・・・ももさんの写真、捨てて・・・」
「え?」
ガラス玉のような瞳のままで梨沙子は言った。
ひどいことを言ってるとちゃんとわかっていた。
なんてヤな子なんだろうと自分でも思っていた。
でも、裏切られ続けて凍った心は、そんなに簡単に溶けなかった。
試すようなこと言うなんてズルイと思っても、本音がこぼれるのを止めることができなかった。
- 819. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 12:10:39.31 O
- 「いいよ」
「え?」
拍子抜けするほどアッサリと雅が言う。
それを聞いた梨沙子の瞳に温度が戻ってきたように、雅は感じた。
「いいよ。梨沙子がうちに来た時に、梨沙子の前で捨てるよ」
無理をしている風ではなかった。
お安い御用、そんな穏やかな笑顔に、逆に梨沙子の心がざわめく。
「・・・じょ、冗談だよ・・。いいよそんなことしなくても・・・」
なんだか雅にも桃子にも申し訳なくなって、梨沙子は俯いて小声で呟いた。
「そうなの? あ、でも、うちには来て欲しいな。あした、うち来てよ」
顔を上げると、この上なく優しい目で雅が見つめていた。
みやって、こんな目をする人だったっけ?
久しく忘れていて、初めて見た時のように梨沙子はドキドキした。
閉じ込めていた色んな感情が蘇ってくる気がした。
- 820. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 12:12:14.74 O
- 「宿題、した?」
「え?」
「した?」
「ま・・まだ・・・。愛理の、うつさせてもらおっかなって・・・」
「だめだよ、宿題は自分でやらないと」
ニヤッ。わざと意地悪っぽく雅が笑う。
その顔もあたし、好きなんだよね、と梨沙子は思った。
「うちもまだなんだ。一緒にやろ?」
「うん・・・」
素直に頷く。
みやだってほんとは清水先輩のをうつすつもりだったんでしょ? って言葉は言わないでおいた。
どちらからともなく手を繋いで、無言で空を見上げた。
『君と巡り逢えた奇跡が この空の下で輝いてる』
どこからか、この曲が聞こえてくるようだった。
- 821. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 12:17:34.39 0
- 「あ!梨沙子はさ、その・・・真野先輩とは・・・」
「真野先輩は優しくてとってもお姉さんな感じ。
ももさんは勘違いしたみたいだけど付き合ってるとか
そんなんじゃないよ・・・」
淋しそうに梨沙子は呟いた
ゴメン、そんな顔しないで・・・
うちの涙を拭う梨沙子の手を握った
「好きだよ梨沙子」
「信じられないよ、みや」
「り・・・!」
急に梨沙子がうちを抱きしめた
少し震えてる気がする・・・
- 822. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 12:20:21.38 0
- 「信じられないの。だって『また』『もし』『今度』・・・
なんて考えたらあたしおかしくなる。
信じるって何?みやをまた信じていいのかなって?」
「・・・・梨沙子・・・」
「あんなに苦しかったのにね、それでも」
「それでも・・・?」
「みやになら裏切られたっていい。だからもう、いい。」
「何が・・・いいの?」
「わかんない。でも『今』ってみやが言ったから」
「うん」
「あたしも『今』したいように動いちゃった・・・」
「えっと・・・」
「『これから』がどうなるかわかんないけどあたし―――みやが」
スキ
抱きしめられてるから顔は見えなかった
でも小さな声で確かに梨沙子はそう言ってくれた
- 828. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 13:24:10.66 0
- 「・・・ありがとう・・・っ」
うちは強く、強く梨沙子を抱きしめた
「ふはっ!苦しいよみや」
「あ、ごごごめん!」
「ううん、久しぶりのみやだから・・・なんか照れる・・イヒィー」
梨沙子特有の笑い方にどこか安心する。
最初は抱きしめられてたのを抱きしめ返したら
力を込めすぎたみたいだ・・・だって、もう離れたくなかったから、つい、ね。
「ねえ、知ってる?みや」
「何を?」
「あたしを幸せにするのも・・・傷つけるのもみやなんだよ―――」
茶色い瞳が不安げに揺れた
それはとても儚く脆く・・・美しかった
「もう!もう・・・傷つけない!!守るよ、梨沙子を」
ずっと繋いだ手を強く握った
「言ったじゃん。あたしを傷つけるのはみやしかいないよ・・・きっとね」
「でも!幸せにだってできるんでしょ?
未来は・・・決まってなんかないかもしれないけどさ
梨沙子との『永遠』・・・うちは信じるよ」
うちの言葉に茶色い瞳は少しずつ滲んで一筋の涙になった
「・・・じゃあ、あたしも信じようかな」
今度はうちから抱き寄せた
バカなうちだけどバカなりに好きなんだ・・・
苦しめてごめんね・・・・・・・・
- 829. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 13:57:40.38 0
- ずっとずっとこのままでいたかった。
抱き合ったまま時間が止まればいいのにって思った。
だけど、うちにはもう一つ、やらなきゃいけない大事なことがある。
梨沙子のことに必死でつい後回しにしてしまったけど、
絶対にやらなきゃいけないことが、まだ残ってる。
うちはそっと梨沙子の体を離して言った。
「梨沙子、聞いて?」
「うん」
「うち、やんなきゃいけないことがあるんだ」
「・・・え?」
「ホントは、ここに来る前にするべきだったんだけど」
梨沙子はじっとうちの眼を見つめて不安そうな顔してる。
でもうちは逸らさずに、まっすぐに伝えた。
「ももと、ちゃんと話してくる」
- 830. 名無し募集中。。。 2009/09/04(金) 14:11:14.27 0
- ももはきっとまだうちを待ってる。
だから言わなきゃいけない。あの時の答えを出さないといけない。
もものために、うちのために。
そして、梨沙子のために。
梨沙子はしばらく考えたあと、うちの手をぎゅっと握った。
「・・・わかった」
「うん。絶対戻ってくるから、待ってて。」
「うん。戻ってこなかったら、ホントにバイバイだからね?」
「分かってる」
うちはそっと手を離すと、走り出した。
ももに会うために。
きちんとケリをつけるために。
「みや!」
少し離れたところで梨沙子が叫んだ。
「抱きしめていいのは、一回だけだからね!」
一瞬何を言ってるのか分からなかったけど、
きっと梨沙子はうちがどれだけももが好きだったかを知ってたからそう言ってくれたんだと思う。
うちは梨沙子の優しさを受け止めて走り出した。
最終更新:2009年09月05日 00:05