519. 名無し募集中。。。:2009/09/19(土) 21:06:22.03 0

夏休み明けの新学期1日目。
あたしの記念すべき転校1日目。
空は快晴だったけど、あたしの心は曇っていた。


「親の転勤でこの学校に転校してきました、菅谷梨沙子です。よろしくお願いします。」

教壇の前に立たされたあたしを待っていたのは、クラス30人の珍しそうな視線。
そりゃそうだよね・・・3年のこんな時期に転校なんて、多分日本であたしだけだよ・・・
ただでさえ人見知りで人前が苦手なあたしにとって、この時間は苦痛でしかなかった。

第一印象が大切なのは分かってるけど、笑顔を振りまく余裕なんてあたしにはなくて。
緊張を隠す為に早口で一言「バスケが好きです」とだけ言ってあたしは逃げるように席に着いた。

あーあ・・・こんなんでやってけるかなあ・・・
「緊張してます」の一言でも言えたらよかったんだけど・・・
弱いトコ見せるの苦手なんだよなあ・・・

「へー、バスケ好きなんだあ」

席に着いてへこんでいると、突然隣の席の女の子に声を掛けられた。

525. 名無し募集中。。。:2009/09/19(土) 23:04:42.84 0

いきなり声をかけられて一瞬びくっとなる
今の、、あたしに言ってるんだよね・・・?
おそるおそる隣に顔を向けると、綺麗な黒髪をおさげにしたなんていうか・・・
一言で言うと「お嬢様」っていうのがぴったりの女の子

「あ・・・」
あれ?でもこの子、どっかで見たことあるような・・・

「あたしもバスケ好きなんだぁ
でもこんな時期に転校って珍しいね」
「・・・あ、うん」
あたしの戸惑いにもお構いなくニコニコと話しかけてくる女の子
すると担任の先生がその女の子を呼ぶ

「あ、鈴木!お前学級委員なんだから菅谷に学校案内頼むな」
「ハイ!先生」

へー・・・この子学級委員なんだ・・・うん、似合うよね・・・
何て一人ボーっと思っていると

「エヘヘ、あたしは鈴木愛理。よろしくね」
少し顔を横に傾けてニコッとあたしに笑いかけた

542. 名無し募集中。。。:2009/09/20(日) 14:39:57.34 0

それから授業が始まりまだ教科書もないあたしに
隣の鈴木さんは「一緒に見よ?」って言って机を引っ付けてきた

この学校はレベルが高いのか授業も前にいた学校と比べ物にならないくらい難しい
もともと勉強が得意じゃないあたしはノートを取るだけで精一杯
だけど鈴木さんはノートを取るのも早いし、自分から手を挙げたり・・・

うん、優等生なんだねぇ・・・

なんて横目でちらっと見てしみじみそう思う

なんだかんだで午前の授業が終わるとすぐに携帯を取り出して何やらメール?を打っている鈴木さん
よし、って一言つぶやくと突然あたしの方を向いて

「お昼一緒に食べよ?学校案内も兼ねて」
そう言ってちょっぴり強引にあたしの手を掴んだ

10. 名無し募集中。。。:2009/09/21(月) 03:02:18.45 0

学級委員の鈴木さんに校内を案内してもらう
実は昨日一人でうろうろしたから大体はわかるんだけど・・・
でもせっかくだし、ね

「ここが音楽室!」
「あ、そうなんだ」
「うん、あたしね、合唱部なんだぁ。だからここ学校の中で好きな場所の一つ」
「へー」
学級委員で合唱部・・・絵に描いたようなお嬢様って感じだね

「ねぇ、菅谷さんはどうするの?」
「どうするって?」
「部活のことだよー。前の学校では何か入ってた?」
「あー・・・うん、前はバスケ部」
「バスケ部!?すごいじゃん!」
「でも選手じゃなくてマネージャーやってたの」
「マネージャー?あ、だから今朝の挨拶の時バスケが好きって言ってたんだぁ・・・
じゃあうちでもバスケ部入るの?」
なぜか前のめりになって尋ねてくる鈴木さんにちょっと身をひいちゃうあたし

11. 名無し募集中。。。:2009/09/21(月) 03:24:26.63 0

「あーうん、どうしよっかなぁって悩んでる」
「えー!入りなよぉ!うちのバスケ部って結構強いんだよ?
なのにマネージャーの数が少なくて困ってるみたい」
「そ、そうなんだ」
鈴木さんの気迫に押され気味のあたし

「そうだ!じゃあ次は体育館案内したげる!」


・・・・・・なわけで今あたしは鈴木さんに連れられて体育館に向かっている
お互いの手には途中の購買で買ったパンとコーヒー牛乳

「うちの体育館はねぇ、ちょっと自慢なんだぁ
バスケ部のために改装したといってもいいくらい設備も整ってるし」
あたしはなんで鈴木さんがここまでバスケのことになると熱くなるのかよくわかんないけど
バスケが好きなら仲良くなれるかも・・・なんて思いながらパンを齧る

―――ダムダムダム
「あ、ボールの音・・・」
中からかすかに聞こえるバスケットボールをつく音
「ん?誰か自主練中かな」
二人で体育館の入り口まで来たところで流れる校内アナウンス
≪ピンポンパンポン≫
『中学3年の鈴木さん、担任の先生がお呼びです。職員室まで来てください』

「あー・・・また先生、あたしをこき使おうとしてる・・・全く・・・
ごめん、菅谷さん、先生に呼び出されちゃったから行かなきゃ・・・
あ、中勝手に入ってもいいと思うし見学していってよ、ね?」
そう言い残すと鈴木さんは駆け足で校舎棟に戻っていった
最終更新:2009年09月22日 16:58