307. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 01:31:03.21 0
次の日、愛理の会うのが少し怖くてでも学校には行かなきゃいけなくて
重い足取りのまま家を出た。
朝の清々しい空気も今だけはあまり嬉しくない。

「おはよ」
「な、夏焼先輩!?」
「そんな驚かなくても」
「で、でも!」

門扉にもたれかかっている先輩。
考えていたことが全部吹っ飛んでしまうくらいの衝撃だった。

「一応、もう一度昨日こと謝っておこうと思って」
「・・・・・・・えっと」
「ごめん、ほんとごめん。昨日はご両親平気だった?」
「あ、はい・・・」
「そっか。よかった。じゃあ、荷物載せていいよ一緒に行こ」

先輩は自転車を指差して言った。

すごく優しくて、声も表情も全部暖かくて。
これが愛理の言ってた「本当の先輩」なのかもしれないと思った。

でも、この申し出を受けるわけにはいかなかった。
309. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 01:45:29.10 0
「あの、ごめんなさい!えっと・・・友達と行く約束してて」
咄嗟に先輩に嘘をついてしまうあたし
「あ、そっか・・・そうだよね、ごめんね、急に」
先輩はいつものクールな表情になる
「すみません・・・」
「いいよ、私が勝手に来ちゃっただけだし
じゃあ先に行くね、また学校で」
そう言い残すと自転車で行ってしまう先輩
321. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 02:07:17.95 0
自転車で学校に向かう途中で梅田先輩と矢島先輩を見かけた
梅田先輩はすぐに私に気づいたようで「あ・・・」と口を開けたけど
気付かないふりをして通り過ぎる

ああ見えて梅田先輩は正直でいい人だから
きっと矢島先輩が一緒の時に私に会うとボロが出ると思う

携帯を取り出して「おはようございます。今日も部活行きます」
梅田先輩にメールを送る
328. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 07:26:17.93 O
「はぁ・・・」

朝のことを考えてついため息がでてしまう。
横には楽しそうに昨日のライブのことを語る愛理。
普段どおりの学校、だけど梨沙子の胸にはぽっかり穴が空いたようだった。
「どうしたのりーちゃん、元気ないね。」

愛理に話しかけられてもあたしは夏焼先輩のことしか考えてなかった。

「ごめん愛理、具合わるいから保健室いってくるね。」

心配そうな愛理を背にして梨沙子は教室を出る。
向かった先は保健室じゃなくて初めて夏焼先輩に出会った屋上。
階段をかけのぼる間に遠くで1限目の始業をつげるベルがなった気がした。

梨沙子は生まれてはじめて授業をサボった。
329. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 07:45:59.27 O
屋上の扉を開けると梨沙子の気持ちとは正反対の清みきった青空が広がった。
そのまま取水棟に向かう。

夏焼先輩があの日みたく寝てるかもしれない。
ドキドキする胸を抑えながら梯子を昇りきる。
しかしそこに人影はなかった。

「そうだよね・・・授業さぼってなにやってんだろあたし。」

あの日夏焼先輩が座っていた場所に腰かけて壁にもたれ掛かる。
でもここで青空を見てると不思議と心が少し晴れた気がした。
夏焼先輩もこうやってなにかの傷を癒してるのかもしれない。

昨日は夏焼先輩のことを考えてよく眠れてない。
ちょっとだけならいいかな・・・
梨沙子はゆっくりと目をつぶりそのまま寝てしまった。
330. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 07:54:10.57 O
・・・・

梨沙子は昔の夢を見た。
まだ梨沙子の名字が変わる前。
懐かしい公園といつも横にいてくれた女の子。

名前が思い出せないけどすごい大好きだった女の子。
夢の中でその女の子に抱き締められた。
すごいあったかくて気持ちよくて。

でも梨沙子はこの暖かさについ最近包まれた気がした。

「みや・・・」
気が付くと梨沙子は泣いていた。
それが夢か現実かは分からなかった。
335. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 09:49:35.46 0
はっと目が覚めた
あたし、寝てた・・・?
あれ、どうして泣いてるんだろう・・・あれ?今のは夢・・・?
なんだろう、思いだせそうで思いだせないもどかしさが胸に残る
1分2分と時間が経つほど夢の記憶は薄れていった

起きたけど今更授業に戻る気もしなくて、しばらくそのまま横たわって空を見ていた
すると、ふと誰かが近づいてくる気配がする
梨沙子は思わず寝たふりをした
336. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 10:06:04.07 0
その誰かは私のすぐ側まで来ると隣に座った
いったい誰?怖いけど、今更目を開けるのも怖い
一生懸命寝てるふりをしていたが、ふと髪を撫でられて肩が跳ねそうになる
なんだか上から顔をじっと見られているような気がした
あれ、この香り・・・・
きのうもこの香りに包まれていた
自転車の後ろに乗った時、ホテルで押し倒された時、抱きしめられた時。
そうだ、夏焼先輩だ
分かった瞬間、唇に温かいものが触れた
馬鹿なあたしは、それが先輩の唇だと分かるまで少し時間がかかった
337. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 10:13:14.12 0
ダメだ、いつもに増して授業が身に入らない
原因は分かっている
昨日の梨沙子ちゃんとの出来事
あんな必死に誰かをホテルに連れ込んだことなんてなかったし
相手に泣かれたこともなかったし
とにかく昨日はすべてがおかしかった
朝も、ほんとは友達の約束なんてなくてただ避けられただけなんじゃないかって思った
昨日のことは忘れてなんて梨沙子ちゃんに言ったけど、自分は当分忘れられそうにない

「ちー、私授業さぼるね」
「まーた屋上?」
「うん。気が向いたら帰ってくるわ」

無性に澄み切った空が見たくなって、いつもの場所へ早々と足を進めた
338. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 10:27:40.12 0
なんなんだろう、この状況は・・・
目の前にいるのは眠っている梨沙子ちゃん
今自分を悩ませている張本人がそこにいた
引き返せばよかったのに、なぜか足は梨沙子ちゃんの方へ向かっていた
(・・・また泣いてる?)
頬に涙のあとを見つけた
何が原因かは分からない。何か悲しいことがあったのかもしれないし、もしかしたら昨日のことを思い出して泣いてるのかもしれない
分からないけど、なんだかほっとけなくて頭をそっと撫でた
その後はあまり記憶がない
どうしてこんなことしたのかも分からない
気付けば梨沙子ちゃんに口づけていた

340. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 10:33:51.65 O
りーちゃん、大丈夫かな?
初めてああいうところに行ったから疲れさせちゃったかな
なんか今日は顔色も悪かったし

一時間目が終わってもりーちゃんは戻ってこなかった
次の時間が終わっても戻ってこなかったら保健室に様子を見に行こう
そう思って授業に集中するべく黒板に目をやった
344. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 11:25:23.11 O
夏焼先輩の唇だと認識した瞬間思わず目を開けてしまう
「!!!!」
目を開けるとやっぱり夏焼先輩が目を閉じて私に口づけていた

これがキス…
なんだろう…この感覚…
温かくて優しくて…気持ちいい…

気付いたら私はまた目を閉じて先輩のキスを感じていた
346. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 14:06:17.50 0
夢中で梨沙子ちゃんに口付ける
一度離して、もう一度口付けようと顔を近づけた時

「・・・先輩」
「!!!」

思わずバッと離れる
や、やばい起きちゃった・・・
しばし二人で見つめ合う

「・・・もしかして起きてた?」

恐る恐る聞くと、梨沙子ちゃんは何も言わずに微笑んで瞳を閉じた

「・・・・」
「・・・・」

私は、梨沙子ちゃんの隣に行くと再びそっと唇を重ねた
351. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 16:09:12.14 O
どれくらい唇を重ね合わせていたんだろうか

そっとどちらからともなく離れて見つめ合う
先輩のきれいな瞳に吸い込まれそうになるあたし
先輩はそっとあたしの髪を撫でる
なんて優しい手つきなんだろう
それだけであたしはぼーっとしてしまう

そしてさっきまでのことを思い出し顔が赤くなる

あたしキスなんてさっきのが初めてだったのに
もう二回目しちゃった…
356. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 21:07:35.41 0
恥ずかしくて目をそらしたくなった。
でも、まっすぐ見つめられ、どうしようにも目が外せない。
「梨沙子」
名前を呼ばれた。
“梨沙子ちゃん”じゃなく“梨沙子”って。
それが嬉しくて、また顔が赤くなる。
「ずっとうちのものでいてよ。」
夏焼先輩のもの?私が?
それって付き合うってこと?
いや、たぶん違う。
付き合って欲しいなら多分そのままいうし、うちのものなんて言い方しないもん。
たぶんこれは・・・
357. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 21:15:22.58 0
そんな関係、いくら憧れの先輩と言えど嫌だ。
でも、この目で見られたら拒否できない。
あまりの展開に顔を伏せていると、急に抱きしめられた。
「ん・・・」
「梨沙子」
名前を呼んでくれる。それだけでこんなに身体が熱い。
たぶん先輩は身体だけの付き合いの人ならいっぱいいると思う。
でも、ほとんどの場合が先輩から求めたんじゃなくて、相手の人に求められたんだと思う。
今、その先輩に求められてる。
それだけで自分が特別な存在になれた気がした。
「梨沙子、うちのもになってくれる?」
理想は、夏焼先輩の彼女になりたい。
でも、十分じゃない。学校中の憧れの人のものになれるんだから・・・。
私は、ゆっくり・・・・ほんとうにゆっくりと、首を縦に振った。



雅目線



358. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 21:22:17.78 0
2回、短いキスをした。
あの時、ももがしてくれたように。
顔をそっと話すと、梨沙子ちゃんは真っ赤になってて、どこかポーっとしていた。
綺麗な髪。つい手を伸ばしてみた。
こうしてなでていると愛くるしさが湧いてくる。
“あの子、うちがもらってもいい?”
思い出されるのは熊井ちゃんの言葉。
この子だけはうち以外の人に目を向けさせたくない。
「梨沙子」
じっと目があう。
この目が私の理性を崩していく。
「ずっとうちのものでいてよ。」
359. 名無し募集中。。。 2009/06/26(金) 21:29:58.05 0
さすがに梨沙子ちゃんは動揺していた。
恋愛どころか、告白さえもされたことがないんだろうな。
その複雑な表情さえ愛しくて、すこし強めに抱き締めてみた。
ん・・・と、小さな嬌声が聞こえて、さらに興奮の度は増していた。
「梨沙子」
そういえば、うちさっきから梨沙子って呼び捨てにしてる。
今までちーともも以外はほとんど'さん'とか'ちゃん'をつけて呼んでたから、自分でもびっくりした。
それぐらいこの子にいれ込んじゃってるってことなんだろう。
「梨沙子、うちのものになってくれる?」
ここまでして断るはずがない。自信があった。
あれだけ周りにキャーキャー騒がれたら嫌でも自分の魅力に気づかされる。
本当は私の魅力ってのが好きじゃないけど・・・
でも今はその魅力をフルに使って梨沙子を自分のものにしようとしている。
10秒・・・ぐらい経った。
梨沙子なりに迷ったんだと思う。でも・・・うちの勝ち。
ゆっくりとうなずいた。
最終更新:2009年07月05日 20:20