15. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 00:29:39.87 0
購買で購入したパンを持って体育館に向かう
うちの頭の中は昨日からあの言葉がぐるぐると回っている

『フォーム、まだ全然出来上がってないじゃん』

見ず知らずの女の子に言われた一言は全くもって正しくて・・・
元々口下手なうちは反論の言葉さえ出てこなかった

「このままじゃダメだ・・・」
うちは倉庫からボールかごを取り出して準備すると
食事も後にして一心不乱にシュートを打ち続けた
19. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 00:54:38.94 0
「ガタガタだね」
声がして振り返ると、昨日の子が体育館の入り口にいるのが目に入った。
昨日は私服だったけれど、今日は制服を着ている。
でも、やっぱり見覚えのない子だ。

手にはパンとコーヒー牛乳。

「・・・・・・・・」
「右手がうまく使えてないんだって。もっと手首を柔軟にしなきゃ」
「・・・・・そ、そんなのわかってる!」
「わかってないからできてないんでしょ?」
「う、うるさいなぁ!だ、誰なのさ!?」
「内緒。」
「えぇ?」
「じゃ、とりあえず右手使って打ってみなよ。見てるから」
「・・・・・・はいはい」

うちは中等部の制服を来た後輩に言われるがまま打った。
ボールは綺麗な弧を描いてゴールに吸い込まれていった。

「でしょ」

その子は得意げに笑ってピースサインを作った。
その笑顔が、なんとも言えず可愛かった。ドキっとするくらい可愛かった。
21. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 01:03:18.03 0
一人になったところで戻ろうかと思ったけどもうこれは本能?
ボールをつく音を聞いただけであたしは無意識に体育館の扉を開けていた

「あ・・・昨日の・・・」
体育館には一人練習着でシュートを打ち続けている人

そうだ、昨日のこと謝らなきゃ・・・失礼なこと言ってごめんなさいってちゃんと言わなきゃ・・・
そう思っていたはずなのにあたしの口から出た言葉は

「ガタガタだね」

あー・・・またやっちゃった・・・
でももう止まらない・・・あたしはぺらぺらとその人に気づいたことを指摘してしまっていて・・・
そして気づいたらその人が綺麗にシュートを決めていた
22. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 01:14:39.21 0
まだフォーム完成してないみたいだけどこの人・・・上手いんだ・・・
一人でちょっと見直していると急にあたしの前まで来た

「あのさ、その・・・君、ここの生徒・・・?」
「へ・・・?あ、そうだ・・・そうですけど・・・」
「そうだよね、うちの制服着てるもんね、当たり前のこと聞いちゃってごめん
なんか今まで見たことなかったから・・・ごめんね」
あたしが確実に悪いのに律儀に頭を下げてくる目の前の人

「あ、あたしの方こそ・・・勝手に入って失礼なこと言っちゃってごめんなさい」
「いや、そんなことないよ。君の言ってること・・・正しいと思ったし」
そう言ってタオルで汗をぬぐうと床に座り込んでパンを頬張る
なぜかそれにつられるように隣に座って残りのパンの袋を開いた
32. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 09:38:50.97 O
「もしかしてさ、転校生?」
「はい。中等部3年のクラスに今日転校してきました…」
「中等部3年?」

その人は少し驚いたような、何かに反応したような顔をしたけど、
すぐに話題を変えた。

「バスケ詳しいよね。元バスケ部とか?」
「はい。マネージャーやってました」
「へぇ、そうなんだ。それにしても凄い観察力だよね」

その人はまじまじとあたしを見た。
バスケに夢中で気付かなかったけど、この人、すごい美人だな…

「あ、あの…」
「ん?」
「あたし、菅谷梨沙子って言います。その…あなたは?」
33. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 09:57:29.38 O
その人は、「うちは高等部2年の…」とまで言っといて口を止めた。
次第にその口元がニヤニヤしていく。

「この先は教えなーい」
「え!?」
「だって、年下のくせに生意気だし」

その人は楽しそうな顔であたしを覗き込む。
笑ってるから冗談だとは思うけど、
気にしてることをズバリと言われたのでさすがに胸にグサッときた。

「えっと…ごめんなさい」

2つも年上の先輩にあたしやばいこと言ってたんだなあと思うと
耐えられなくなってこの場から立ち去ろうとした。
すると、腕をガシっと捕まれて元に位置に戻される。
さっきよりも近くなったその人は、驚いてるあたしを無視して
あたしの目をまっすぐ見て言った。

「バスケ部のマネージャーになってくれるなら、許してあげる」
「………え?」
「うちは、バスケ部の夏焼雅。よろしくね、梨沙子」
39. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 12:38:48.58 0
「夏焼・・・先輩・・・変わった名前ですね」
「うん、よく言われる」
「あの、マネージャーって話なんですけど途中から入っちゃってもいいんですかね
こんな中途半端な時期だし」
あたしは一番気になっていたことを夏焼先輩にぶつける
「いつでも入っていいんじゃないのかなぁ・・・うちもそこらへんのことよくわかんないけど
でもうちの部さ、ホントマネージャー少なくてさ」
「何か意外。この学校、強豪校だって聞いたんで」
あたしの前の学校でも弱小校だったけどマネージャーは5,6人いたのに・・・

「うちの学校ってさ、進学校だからさみんな勉強がメインって感じなんだよね
バスケ部はスポーツ推薦の子がほとんどだから勉強より部活っていうスタンスなんだけど」
「スポーツ推薦・・・」
「マネージャーもマネージャー推薦みたいなのを作ってくれたらいいんだけど
部活の練習時間も長いし、土日も練習ばっかりだから成績にも支障出るって言ってみんなやめてく」

やっぱり厳しいんだ・・・だけど・・・だからこそやってみたい・・・

「梨沙子が入ってくれたらきっとまぁも喜ぶと思うよ」
「まぁ・・・?」
「うちと同じ学年のマネージャー。先輩が引退してからは一人で頑張ってくれてるんだ」
40. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 12:52:34.77 0
そう先輩が言ったところでガラガラと扉の開く音
「あ、みや!あんたまたここでパン食べて・・・」
「げっ、まぁ・・・」
先輩は入ってきた女の子人を見るなりパンを後ろに隠した

「隠してもばれてます―!別に食べるなって言ってるわけじゃないでしょ
パンのかすをボロボロこぼすなって前に言ったでしょ?」
「はーい、ごめんなさーい」
そう言ってこぼしたパンかすを指で拾っていく先輩
なんか・・・子供みたいで可愛い・・・
思わずあたしはクスって笑ったら梨沙子もこぼしてるって
あたしの座ってるところを指さしてにやって笑った
44. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 14:50:09.05 0
「あれ、愛理じゃないんだ・・・・・・誰?」
うちは大体お昼は愛理と一緒にいるし中等部の制服だし
菅谷さんはどうやら、まぁに愛理だと思われてたらしい。

「初めまして!今日、転校してきた菅谷梨沙子です!!
前の学校でバスケ部のマネージャーやってました!!」
・・・アレ?うちとの初対面とは大違い・・・
菅谷さんは姿勢をピッと正してまぁに挨拶していた。

「え?もしかして・・・マネージャー志望なの??」
「それは「そうだよ、菅谷さんバスケに詳しいし、まぁも助かるっしょ♪」
「ちょ、ちょっと先輩!勝手に・・・」
「勝手じゃないじゃん。よろしくって言ったしー」
うちは梨沙子の言葉を遮って代わりに答えた。
だって少し前にそういう話をしたじゃん?

45. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 14:59:22.30 0
「へぇー・・・可愛い子じゃん。マネージャーやってくれるの?」
夏焼先輩の話を聞きあたしの方に寄ってくるマネージャーの先輩

ど、どうしよう・・・なんか・・・断れる雰囲気じゃ・・・
隣の夏焼先輩を見るとあたしを見てニヤニヤ笑っている
周りからは何言われても顔色変えずにこなすって言われるけど
本当はただ断るのが苦手なだけなんだよね・・・

「あ、まぁ・・・」

言っちゃった・・・思わず頷いてしまい心の中で頭を抱える

「本当に!嬉しいな!!一緒に頑張ろう?」
頷いたと同時にマネージャーの先輩はあたしの手を取りギュッと握ってきた

うぅ・・・力強い・・
・この人・・・マネージャーより選手の方が向いているんじゃ・・・
47. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 15:09:13.19 0
「梨沙子ちゃん、あたしは須藤茉麻、これからよろしく!」
「梨沙子でいいです!よろしくお願いします。」
「了解――・・・梨沙子、まず最初に教えとくね」
「はい?」
「体育館でパンを食べる時は食べかすに気をつけてね」
「あ、ごめんなさい・・・」

まるでお母さんが娘に優しく躾けるようなやり取りがおかしかった。
48. 47 2009/09/22(火) 15:11:56.48 0
「まぁ、梨沙子のお母さんみたいじゃんw
梨沙子、まぁのことはママって呼びな?
茉麻って漢字、ママとも読めるしww」
うちはちゃかしながら言ったんだけど梨沙子はこういう時だけ何故か素直に
「ママ・・・」
とか言っちゃって実はかなりユーモアに溢れてるまぁは
「なんだいベイビー?」
と返す。
ていうかマジで二人はそう呼び合うの?
なんてうちはボケ〜ッと考えてた。
51. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 15:20:12.22 0
ふたりのやりとりをボーっと眺めていると
コートサイドに置いていた携帯が震え始めた
「あ、愛理だ・・・」

うちは二人から少し離れて携帯を取りに行く
メールの差出人は案の定愛理で

『みや、今日はごめんね?
放課後練習早く終わるって言ってたよね?
終わったら会いたいな』

「会いたいだって・・・まじ可愛い・・・」
うちは愛理からのメールを思わず保護してすぐさま返事を打った
60. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 16:15:17.04 0
メールを打ち終わって横を見ると、梨沙子とまぁは転がってたバスケットボールを拾って
ドリブルをして遊んでいた
なんかホントに親子みたい
ボールを嬉しそうにまぁにパスする梨沙子の姿は、本当にバスケが好きなんだなって感じさせた

「梨沙子さ、そんなにバスケ好きなら選手やればよかったのに」
「あたし運動音痴ですもん」
「あー、じゃー無理だね」
「ま、夏焼先輩よりかは上手いと思いますけど」

さっきのお返しと言わんばかりにニヤニヤ顔でうちを覗き込む梨沙子
やっぱうちのこと舐めてる!と思って頭を軽く叩くと、
いたーいなんて言いながらイヒヒィって変な声で笑うもんだから
思わずうちもまぁも笑っちゃった

こいつ、思ったより絡みやすいかもなんてこっそり思った
61. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 16:26:22.88 0
夏焼先輩の策略?でついマネージャーをやることになったあたし
だけど「やる!」って一度言ってしまったら胸のつっかえがとれた感じがして
やっぱり内心やりたかったんだって気付かされた

うん、だってバスケってこんなにも楽しいんだもん!
マネージャーの先輩の須藤先輩改め、「ママ」とボールで遊びながら実感する

夏焼先輩は片手に携帯を持ってあたしたちの方をニコニコと眺めている
きっとこの人もバスケ大好きなんだろうな・・・なんて思うと嬉しくなった

つい軽口を言うと夏焼先輩があたしの頭を軽く叩いてきて
ママからボールを奪うと
「よし!2対1で勝負だー!」
なんて言って勝手にドリブルしていった


「ふふふ、全くみやはバスケ大好きなんだから」
ママは夏焼先輩をしょうがないなぁみたいな呆れ口調で笑っていて
「ホント、そうですよね」
あたしも同意するようにうなづいた
66. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 17:08:53.51 O
「梨沙子、ボール!」
持ってたそれを軽く奪って夏焼先輩はドリブルして走る。
ママがガードをしている―――

その姿はとてもマネージャーには見えず
紛れもなく“選手”だった…。
ママって―――――


「梨沙子!パス!!」
なんと夏焼先輩があたしにボールを投げてきた!
「え〜!?2対1じゃ…」
「だからうちと梨沙子対まぁ!」
夏焼先輩はシュート!とあたしに指示する…
ママを見たら

「打ってごらん、ベイビー」
と微笑まれる。
戸惑いながらあたしはスリーポイントラインから打った。
ボールはリングに入ったと思ったら回転して外に弾かれた。

「とぉっ!」
ママが弾かれたボールをみやより先にリバウンドした!
こ、これは一体?

「―…あ、あたしは元々は選手だったんだ」
驚いたあたしの表情を読んでくれたのかママはそう言った。
63. 名無し募集中。。。 2009/09/22(火) 17:00:46.04 0
3人で遊んでたらあっという間に昼休み終了のチャイムが鳴って、
あたし達は体育館を後にした

「じゃあ、放課後また色々教えるよ。顧問の所に行って入部の手続きもしようね」
「部員のみんなに紹介するから。遅刻しないで来るんだよ?」
「ありがとうございます。あっ、でも・・・」
「でも?」
「部長さんとか、キャプテンとかに言わずに放課後行っちゃって平気ですかね・・・?」

いくら先輩二人と知り合ったからといって、いきなり部活に顔出すのはどうなんだろう・・・
休み時間に挨拶ぐらいは行った方がいいんじゃないかな・・・
本気で悩むあたしをしばらくポカンと見ていた二人は、顔を見合すとふふっと笑った
え?なんで笑うの?

「何言ってんの。もうキャプテンに言ったじゃん」
「へ?」
「言わなかったっけ?うちが新キャプテンだよ、梨沙子」

それだけ言うと、二人はじゃーねーと言いながら高等部の方に歩いていってしまった
小さくなってく二つの背中をぼーっと見つめながら「聞いてないよ!」と心の中で叫んだ
最終更新:2009年09月22日 17:18