314. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 13:10:41.30 0
熊井先輩と別れてからも家へ向かう足取りは重かった
「あれ」とか「あの時」とか、自分だけが仲間はずれにされてる気がして
すごく胸が痛かった…

「あたしあの部活にいていいのかな?」

なんてことも思い始めて…
「はぁ…」
深くため息をつき家の門を開けたところで隣に人影が現れ思わず大声をあげた
「きゃっ!」
襲われる!そう思って目を瞑って頭を抱えた

「誰も襲わないけど」
そう意地悪っぽく笑ってる声が聞こえ顔をあげる
街灯に照らされ光っているその顔はあたしを胸を痛ませてる張本人、夏焼先輩だった
「夏焼先輩…なんであたしの家…」
「入部届けに住所書いてあったから自分で調べて来ちゃった」
「来ちゃった♪じゃないですよ!もうほんとびっくりしたんだから…」
「ごめんごめん。ほら、今日初日だったし大丈夫かなぁって心配になったから」
夏焼先輩はいつもおちゃらけてるくせにこういう時だけ優しさを見せる…
ほんとにずるい…
315. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 13:21:50.61 0
「ってかさ、ご近所さんなんだね。うちもこの近くなんだぁ」
「そうなんですか・・・あたし引っ越してきたばっかりだからよくわからなくて」
「あはは、そりゃそうだ」
何が楽しいかよくわからないけど夏焼先輩はご機嫌でずっとニコニコ笑ってる

「先輩、今帰りなんですか?」
「あ、うん、今から帰るとこ」
「こんな遅くまで外で遊んでるなんて不良だ!」
「梨沙子だってそうじゃーん!」
「うぐっ・・・」
「みんなと仲良くなれた?」
「・・・」
マックでなかなか先輩たちと上手く話せなかったことを思い出してつい下を向いてしまう

「・・・よし、梨沙子コンビニ行こう!」
「へ・・・?」
黙ってしまったあたしに突然そんな提案をしてくる夏焼先輩

「そこの公園で二人で歓迎会しよう!梨沙子の」
「え・・・」
「バスケ部へようこそ!そしてこの街へようこそってことで!」
330. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 21:29:00.37 0
コンビニでお菓子やらジュースやらを買い込む
「こんだけあれば足りる?」
「大丈夫だと思いますけど・・・ってなんであたしをじっと見るんですか?」
「えー・・・梨沙子よく食べそうだから」
「それ、太ってるって言いたいんですか?」
「いやいや、丁度いいと思う、うん、あはは」
夏焼先輩はわざとらしく笑いながらカゴを持ってレジの方に行ってしまった

331. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 21:41:10.74 0
コンビニに行って梨沙子にアイスとコーラとお菓子を何個か買ってあげた
じゃあ乾杯しよう!と、思いっきり振っといた方のコーラを梨沙子に渡す
梨沙子がコーラまみれになるとこを想像してニヤニヤしてると・・・
「・・・!!いやー!!やめて!!」
突然梨沙子は缶のフタをうち目がけて開けてきた
プシュー!!と飛び出たコーラがうちに思いっきりかかって超サイアク!
梨沙子はめっちゃ笑ってるし!
悔しいからうちも梨沙子に向かってコーラを噴射させた
公園のベンチでお腹抱えて二人で笑った

第一印象はそれこそよくなかったけど
こうやって笑顔の梨沙子を見てるとこれが本当の梨沙子なんじゃないかなって思えてくる
素直じゃないし生意気だけど、ふとした時すごい可愛い
そんなことを考えてたら自然に口が動いてた
「ねえ梨沙子」
「はい」
「なんかつらいことあったら、すぐうちに言いな?」
332. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 21:54:05.33 0
「え・・・?」
思いがけない言葉に思わず夏焼先輩の方を向く
でも夏焼先輩は「うわ、炭酸抜けてる」ってコーラに夢中で・・・

「どういうことですか?」
「んー?だって梨沙子、ちょっと人見知りだし、素直じゃないじゃん」
「・・・」
「梨沙子はさ、笑ってた方が可愛い・・・ってうちは思います」
言うだけ言って夏焼先輩はコンビニ袋をあさり始める

「あ、これこれ。超おいしいんだよー」

鋭いこと言うかと思ったら子供みたいに無邪気にはしゃいじゃって・・・
変わった人だ・・・でも・・・いい人だと思う・・・

335. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 22:09:18.59 0
「先輩も・・・」
「ん?」
「先輩も・・・無理しそうだから・・・
  同学年の友達に弱音吐けなかったら、あたしに言っていいですよ」

後輩が何偉そうなこと言ってんだって思われたかも知れないけど
あたしは真剣だった
上辺じゃなく本気で思ったことだった
夏焼先輩みたいに優しい人って、多分色々我慢してると思うから・・・
先輩はお菓子を持ったままあたしの方を見て固まっていた
336. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 22:16:04.95 0
梨沙子に弱音を自分に言っていいって言われて驚いた
そんなこと梨沙子に言われるなんて思ってもみなかった

でも考えてみればそうかもしれない・・・
キャプテンに任命されてみんなのお手本にならなきゃってずっと思ってた
もっと頼れる選手にならなきゃ、もっと頑張らなきゃって・・・

愛理に対してもそうだ・・・
うちは年上だからもっと愛理に頼ってもらわなきゃって結構必死だ

梨沙子に言われた言葉はうちにとってハッとさせられるようなことで
だから素直に一言
「ありがとう」
とお礼を告げた
339. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 22:50:11.01 0
「別に・・・」
梨沙子はそっけなく呟いて下を向いてしまったけれど、うちは気にしない
だって真っ赤になってる耳を見れば、梨沙子の気持ちはだいたい分かるから
ただ照れくさいだけなんだよね?
だんだん分かってきたよ、梨沙子のこと
不器用だけど優しい子なんだってこと

「・・・先輩は」
「うん」
「どうしてあたしをバスケ部に・・・?」
小さな声で梨沙子が言う
うちは答える前に、空になった缶を少し離れたごみ箱に投げた
340. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 23:04:40.18 0
ガコン!
「ナイスシュー!」
夏焼先輩は見事に缶をゴミ箱に投げ入れる
思わず小さく拍手をすると先輩はゆっくりと振り返る

「悔しかったから・・・初めて会った子にへたくそって言われて」
「あ・・・えっと・・・その・・・ご、ごめんなさい」
「超ムカついた・・・何言ってんだって」
「・・・」
「・・・」
「・・・あの・・・あた「なぁんてね、ジョーダン!」
「へ・・・?」
「悔しかったのはホント。だけどあの時下手くそって言われて逆にほっとした
面と向かってあんなこと言ってくれる人、なかなかいなかったから」
「・・・」
「うん、だから梨沙子と一緒ならもっと上を目指せると思った
そして上手いって言わせたいって思った」
そして先輩は座っているあたしの目の前に立って腕を伸ばして頭に触れる

「それに・・・うちが梨沙子に言われたとおりにしてシュート決めたとき・・・
笑顔が可愛かったから」
「え・・・」
「もっとその笑顔見たいな―って思った」
342. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 23:17:42.69 0
あたしの笑顔を・・・?
やばい、顔がどんどん熱くなってく気が・・・
「ぷっ。梨沙子、顔赤いよ」
案の定、すぐに先輩にからかわれた
「あ、赤くないです!!」
「はいはい。赤くない赤くない」
そう言ってよしよしと頭を撫でてくる先輩
もう!そうやってすぐからかう!って文句を言おうとして、やめた
なぜなら先輩が凄く真剣な目であたしを見ていたから

「うち、へたくそって言葉は好きじゃないけど、そう言ってくれる人は嫌いじゃないよ」
「・・・・」
「ちゃんとうちを見て言ってくれる人は、嫌いじゃない」
「・・・・」
「梨沙子はうちを思って言ってくれたんでしょ?」
その真剣なまなざしに吸い込まれそうになりながら、あたしは小さく頷いた
343. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 23:28:34.18 0
「えへへ、やっぱり梨沙子はすごいや・・・」
「すごくなんか・・・」
「梨沙子がいてくれるともっと強くなれそうな気がする
ねぇ、梨沙子・・・?」
「はい」

あたしに向かって手を差し出してくる夏焼先輩

「これから、よろしくお願いします」
346. 名無し募集中。。。 2009/09/27(日) 23:50:07.36 0
梨沙子は一瞬ポカンとしたけど、すぐにうちの手を握ってくれた

「こちらこそ、よろしくお願いします」

改めてこんなことするのは恥ずかしかったけど、梨沙子は眩しいぐらいの笑顔をくれた
それがやけに嬉しかった

「そろそろ帰ろっか!」
「はい!」

まだ交換してなかったメアドを交換して、うちらは家路についた
349. 名無し募集中。。。 2009/09/28(月) 00:01:03.06 0
部屋に入るとそのままベッドに寝転ぶ
目を閉じると先ほどの出来事が鮮明に蘇ってくる

“なんかつらいことあったら、すぐうちに言いな?”
“梨沙子はさ、笑ってた方が可愛い・・・ってうちは思います”
“それに・・・うちが梨沙子に言われたとおりにしてシュート決めたとき・・・
笑顔が可愛かったから”
”うち、へたくそって言葉は好きじゃないけど、そう言ってくれる人は嫌いじゃないよ”

「ほんと・・・変な人・・・あんな恥ずかしいこと堂々と言っちゃうなんて」
353. 名無し募集中。。。 2009/09/28(月) 00:29:24.89 0
先輩、誰にでもああいうこと言うのかな・・・?
嘘言う人には見えないけど・・・
でも・・・正直・・・嬉しかったな・・・
あたしを必要としてくれてるみたいで・・・
居場所をくれたみたいで・・・嬉しかった

あたしは携帯を取り出すと先輩宛てのメールを作ってみた
この溢れてしまった感謝の気持ちをどうにか伝えたいと思った
だけど、ストレートに「ありがとう」は恥ずかしいし・・・
「よろしくお願いします」はさっき言ったし・・・
んあーどうしようどうしよう!

散々悩んだ結果、『またコーラ奢ってくださいね♪』とだけ打って送信した
354. 名無し募集中。。。 2009/09/28(月) 00:41:38.13 0
返信を待つ間バスケの雑誌でも読もうかと思って途端に着信音
「早っ!!」
差出人は夏焼先輩で

『今日はありがとう☆
梨沙子とあんな風にいっぱい話せて楽しかったよ♪
明日も練習大変だけどお互い頑張ろうね☆
でもコーラはもう奢らないよーだ!
次は絶対炭酸抜きにするから(∂Д∂#)』

そして添付の画像はコーラのシミがべっとり付いたシャツを見て泣き真似している先輩

「あはは、先輩・・・暇すぎ・・・
それにしてもこの顔文字・・・なんか可愛い・・・」
最終更新:2009年10月05日 00:07